アニポケ世界で全国図鑑完成の旅(全1025)(ただしパッチールのフォルム違いは除く) 作:ビビリダマ
レッテルなんて、剥がしても剥がしても誰かが勝手に貼っ付けてくる
うっとしいったら、ありゃしない
あたしは、あたし。カスミという世界にただ一人の可愛い女の子
姉がどうだとか、周りと比べてどうだとか、みんなそんなのばっか
あたしはそんなみんなにどこかイライラしていた
みんな人を見たいようにみる
ポケモンバトルが強いことは、乱暴で荒っぽい
もう少し、女の子らしく
らしく、らしく、らしく
『らしく』って、なによ
意味分かんない、なんでただ強い、ただ出来るだけじゃダメなの?
そんな窮屈さに耐えかねて、あたしはハナダを飛び出した。
状況が変われば、出会いがあれば、機会があれば───
でもけっきょく、出会えたのは
じてんしゃを壊した、逆にちょっと人を見なさすぎな、向こう見ずのサトシ
石のように安定している、安定優男のタケシ
なんだかいつも自分の事で頭一杯って感じの、頭でっかちのゴウ
そして───
あたしとおんなじように、ラベルでガチガチに包まれていた女の子、コハル
この子がとっても可愛く見えたのは、あたしと似てたけど、あたしとちょっと違ったから。ただ似てるだけなら寧ろ、嫌いになってたわね。
彼女、ポケモン博士の娘みたいで、小さい頃からずっと、押し付けのように『ポケモン』に関して色々、期待されていたらしい。
だから、意地でも『ポケモン』に興味をもってやらない、というあたしと似たような反抗心もあったと言っていた。
あたしはその話を聞き出したときは、深く共感したものだ。初めて、自分の気持ちを共有、分かってくれたみたいで、とても楽しかった。
だけど───
「ありのままの自分を他の人に見てほしいって思っているときは、そもそも自分すら、ありのままの自分を知らない、見ていないことに気が付いたんです」
▲
「おっ、コハルにゴウじゃん!もうハナダシティに着いていたんだ!」
前回のトキワの森と違い、今回は比較的短期間でおつきみ山を踏破したようで、ポケモンセンターにてサトシ君、タケシさん、そしてカスミさんと出会うことが出来た。
……うむ?カスミさんは、確か原作だと、武者修行に出た手前、すぐ帰ってくるのが恥ずかしい、という理由でこの街に入った途端に隠遁していたような……。
「こんにちは!サトシ、カスミさん、タケシさん、えっと……」
まぁ、その答えは、きっと全てコハルさんが知っている。
今、考える意味は無いだろう。
「ふふん、分かってるじゃないの。じゃあ早速行くわよ!ハナダジムへ!」
……本当に、カスミさんに何があったのだろう。
─────
───
─
「違う!『ハナダ美人4姉妹』!相変わらず、ムカつく所ね!」
という訳でハナダジム。姉達が、早々に帰ってきたカスミをいじっているが、このジムには、少々制度的に不思議な部分が幾つかあった。
まず、ジムリーダーが4人体制であるということ。まぁ、これは他地方にも例は見られるから良いだろう。
1番違和感を感じるのは、評判。控えめにいって、ちょっと評判が良すぎる。ジムなんて、大体ひよっこ雑魚トレーナーを片っ端から篩にかける為、基本的にはトレーナーから恨まれる仕事である。まぁ、ニビジム内でのタケシの振る舞い方を見るに各々対策はしているのだろう。
そんなジムリーダー業が少しシンクロショー興行を行ったくらいで、ここまで評判が良くなるだろうか?
少し気になってジムに向かう前に調べてみたら、原因はすぐ分かった。それはハナダジムのバッチ取得率が、他ジムより優位に高い事。
何処かのシンオウ地方のジムリーダーみたいに、バッチをタダ同然でばら撒いているという訳ではないみたいだが、何というか、とても簡単に、正規にバトルして勝たせてくれる、と行った具合だ。で、相手が優しいお姉さんときたら、そりゃ、評判も良くなるだろう。3姉妹側も、力を入れずに戦う事で評判が良くなるなら、そうしない理由は無い。
と、すると少しカスミさんの事情も見えてくる。
多分、彼女は『強すぎる』のだ。
4人でジム運営を行っているときは、他のトレーナーの低難易度の評判を聞いていって、カスミさんにコテンパンにされた間抜けが量産されたと思われる。
そりゃ、『美人3姉妹とその出涸らし』などという酷い風評も流されるというもの。
トレーナーからしたら完全に1/4がハズレのルーレットであるのだ。
「……まぁ、良いわ。姉さん達、別にあたしは旅から帰ってきた訳じゃなくて、ちょっと施設とあたしのポケモンを使いたいだけだから」
姉達は、それをサクッと了承。曰く、マサラタウンのトレーナーに戦えるポケモン全てコテンパンにされて、皆、療養中らしい。……なんてこったい、あまりにもやる気が無さすぎる上に弱過ぎる。
「なんだ?俺のジム挑戦は?なんでカスミとコハルがバトルフィールドに?」
サトシ君は状況が未だ飲み込めないようで、ピカチュウ共々混乱状態。
「……やっぱり、乙女はロマンに生きて強くあってこそ、その才能と夢の先行き、そして尊い在り方に敬意を表して、本気で相手をしてあげる」
「分かっています、私も私の全てを出し切って、この道を行きます。どうかご指導ご鞭撻、宜しくお願いします」
いつの間にか、二人の少女の間の熱は、完全に高まっていた。
つらつらと、審判からルールが説明される。
使用ポケモンは6体、技は4つ。バトルフィールドはプールに幾つかの足場がある形の水のフィールド。
先攻はチャレンジャー、交代はチャレンジャーのみに認められる。Lv帯域も二つ目のジム相当。成る程、使用ポケモン以外は、一般的なジムのルールのようだ。
「My Steady!パウワウ!」
「お願い、ピジョン!」
掛け声と共に、モンスターボールは投げられた。
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開幕、出た瞬間にピジョンは『でんこうせっか』、パウワウはその発動の僅か後に、『アクアジェット』を指示もなく仕掛けた。
相殺され、状況は均衡に。
「『こごえるかぜ』!」
「『たつまき』!、『こごえるかぜ』を全部巻き込んで!」
駄目だ、指示速度が早すぎて私の思考が追いつかん。
ただ、こおりタイプとひこうタイプの対面、ゲーム的な盤面ならかなりコハルさんが不利な局面であることは、素人目にも───。
「……『たつまき』でプールの水を吸い上げて、『こごえるかぜ』を巻き込んで水嵩をほぼ無くしたのか。カスミのポケモンは水タイプ中心であることを考えた見事な策だ。これでカスミは地の利を失った」
タケシさんが、隣でそう冷静に解説する。
なんてこった、普通はひこうタイプを出した時にこおりタイプが出てきたら不利を感じでとっとと交代、そうでなくても素早さで上回っている以上、攻撃を優先するのが、凡人の思考だ。
しかし、コハルさんは違った。この局面を見て、咄嗟に出る判断が、後続を全て弱体化させるもの。『天才』とは正しくこういうことを言うのだろう。
「───ッ」
カスミさんに動揺が走る、否、同じような場面に遭遇して動揺しない人間などいない。ギャラリーの我々ですら圧倒されているのだ。
「『でんこうせっか』」
その、思考の隙、数瞬のラグを、彼女は逃さない。
カスミさんも、慌てて指示を飛ばすが間に合わず、直撃。
パウワウが敗れた。
「稽古をつけるとか、大事言っちゃったけど、これは想像以上ね。でも、これこそがポケモンバトル、こういうのこそ、ジムリーダーやっていて良かったって思える瞬間!さぁ、次は───」
彼女の瞳に再び、意志が宿る。生動感、何かを見つけたような、思い出したような、そんな空気を感じた。
そのまま彼女が繰り出す、次のポケモンは───
───その瞬間、ジムの壁が弾け飛んだ。
いつもの名乗りと共に、過去最高に空気の読めないロケット団が姿を現したのだ。
「さぁ、プールの水を全部吸うニャ!にゃ?なんで水が無いニャース?」
現れたのは盗品を合体させたポンプマシーン。水ポケモンは水が無ければ弱い、というのは当然だが、残念ながらここにはもうソレをやらかしちゃった先人がいる。
「……」
無言の怒りと共に、
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この山場を崩された物語のその後は、語るに及ばない。
コハルさん(ついでにサトシ君と私)は、ジム防衛、再建の手伝いの功績でブルーバッチを渡されてしまう。
それで良いのかジムリーダー、と相変わらず思うところはあるが、こういう事故・事件系の被害者・貢献者というのは、元気な市民からの不要な後押し(というか圧力)でやれ表彰するべきだ、バッチあげるべきだ。という意見が噴出してしまうもの。我々3人はハナダジムが炎上する事を回避する為に、泣く泣くバッチを受け取ることに。……初ジムバッチ・ゲットだぜ(超不満)
1番心配だったコハルさん、カスミさんの双方は思ったよりケロっとしていて、普通に仲良くポケモンについて談義している。
「まさか、水を無くしちゃうなんてね。でも見てなさい!あたしの本気はこんなもんじゃないんだから。
───あと、ありがとね、あたしを見つけてくれて」
「えっと、その……」
「はい、堅苦しい話おしまい!お互い、長旅になりそうだし、決着はまたの機会にしましょう?あと、カ・ス・ミ」
「?」
「これだけ仲良くなれたのに、敬語でさん付けなんて、むず痒いったらありゃしないわ。私達、友達でしょ?」
「うん、カスミ!じゃあ、またバトルしようね!」
かくしてまた一つ、旅路が眩い思い出で彩られていく。
ただ私の不手際で巻き込んでしまった彼女の道行きが、どうかこんな幸せで溢れるように、私は強く願った。