アニポケ世界で全国図鑑完成の旅(全1025)(ただしパッチールのフォルム違いは除く)   作:ビビリダマ

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13.ポケモン世界にも学歴はある 29/1025

 

 

 いつの世も、凡人は生まれ持った才覚や危険な挑戦によらずに良い地位を得ようとし、教育と学歴に頼る。

 

 教育は建前上は、施せば誰でも同じ段階に行き着ける、或いは学歴制度によって行き着けたことにするためだ。

 

 このポケモン世界もまた、例外では無いようだ。

 

「ポケモンゼミナール、山奥の全寮制・高入学金・高授業料、実技無しでポケモンリーグに出られる、ねぇ」

 

 次の旅路に現れたのは、霧の中でランニングマシンをしながらポケモンクイズをしている謎の集団。おそらくアニメオリジナル施設、私の記憶の限りでは有名校と言われている割に、ポケモンリーグなどで言及された覚えがない事から、なんとも言い難いレベルなのだろう。

 

 そんな思考をしている内に、話は進んでいく。愛の鞭と称して、ランニングマシンの速度を上げながらクイズで一人をいびりまくるポケモンゼミ生に例によってサトシ君が激昂。が、喧嘩を売った相手はエリート校あるあるの低学歴見下しを発動し、同レベルに落ちたくないと散々馬鹿にしながら、霧の中に消えていった、というのが今回のことの顛末である。

 

 ……しかし、これは、アレだ。前世の詐欺まがいのプロゲーマー育成学校だとかユーチューバー育成学校だとかと同じ匂いがプンプンする。

 

 教育や学歴には、ただ一つ、確かな欠点があり、スポーツや芸術などの分野においては、教育過程野終了が、生徒に何も保証できないという点だ。いや、ポケモンリーグ出場権のように、機会自体はきちんと与えることは出来るのだが結局成果は出せませんでしたと、自己責任論を振り翳すのだからなおさらタチが悪い。

 

「初級でジムバッチ2つ、中級でジムバッチ4つ、上級でジムバッチ8つと同等、つまりポケモンリーグへの資格が得られます」

 

 閑話休題、いびられていた子の名前は「ジュン」

 罰金を課してくる奴ではなく、恐らくアニポケオリキャラだ。

 

「あっ、私もその資格知ってる。あー、でも……」

 

 コハルさんが何やら歯切れを悪そうにしている。……まさか既にとっているのか?

 

「まさかコハルもこの資格とってるのか?」

 

 珍しく、サトシ君と思考が被った。

 

「ううん、私は持ってないよ。この資格はただ"研究者だとか学者志望、あとは出張の多いサラリーマン・公務員の人が手早い自衛能力の証明"で取っている事が多いってお父さんに聞いたことを思い出しただけ」

 

 ちなみにコハルさんのこの言葉の言外の意味は、『この資格だけで、ポケモンリーグ目指すのは無茶だと思う』ということである。前世で言うと、英検が英語を話せる・読める能力は保証するけれど、アメリカ人のマドンナの子を口説き落とせることまでは当然保証されていない、と例えるのが近いだろうか。

 

 あっ、じゃあこの学校は、金持ち向けの情弱ビジネスということですね。自分のことをエリートだと思い込んでいるバカボンボンを量産するのは本当に如何なものか。

 

 とはいえ、そんなことをゼミナール生に伝えて教育制度の抜本的な改革を促す暇など無い。社会の大きな問題に子供の身で首を突っ込むのは、端的に言って時間の無駄だ。

 

 そもそも、ポケモンに関する教育制度なら公式機関がポケモンスクールやタマムシ大学(オーキド博士の出身校)などが作られており、そちらは驚く程真っ当であるため、社会全体としてもあまり意義のない学校なのだ。

 

 ジュンから初級で留年し続けて完全に養分になっている人の話を聞きながら、私は今回の件に深入りしないことにし、状況を見守ることに。

 

 サトシ君は、この愛の鞭だとかいうカルト習慣を辞めさせるため、原因人物を聞くと、初級クラスの優等生・セイヨという人物が浮上。これがまぁ、美人なこと美人なこと。となると、この集団はセイヨを姫とする姫サーのようなものか。

 

 私は、この手の美人過ぎる人物にはまず気後れが、次に諦めが来るため基本的に好きにはなるが、どうこうは一切しないし、出来ないというのが基本である。万年非モテの弱者男性などこんなものである。

 

 で、肝心のジュンは、性格悪くても可愛ければ良いと言っている始末で、サトシ君やタケシさんも写真一枚で骨抜きにされ同意している始末ではないか。

 

「……」

 

 コハルさんが僅かに気後れや心配、ちょっぴりの嫉妬が混じったような複雑な視線を我々に向けている。いや、君が妬むレベルの相手では無いと思うぞ。多分、中身だけで三周差つけるくらいコハルさんの方が可愛い。やっぱり性格の良い子は幻のポケモン並みに貴重なのである。

 

 その後の顛末は、外面が悪くて性格まで悪い奴もいる、という暴言を通り越して侮辱行為レベルのサトシ君の悪意あるぼやきにカスミさんが激昂し、セイヨとかいう人をぶっ飛ばしに、カスミさん(とついでにコハルさん)がゼミナールに乗り込んだ。

 

 今回は、私はパスである。普通にカルト教育詐欺グループ、それも対外的には名門校として有名になっているレベルで根が深いものなど関わり合いになったら、母体組織に恨まれる……かもしれない。

 

 その事だけ、コハルさんに耳打ちし、私は外縁部でポケモン蒐集に勤しんだ。

 

 

 

 ▲

 

 

 

 ナゾノクサを新たに入手し、ホクホクでいるとゼミナール方面から爆音と悲鳴が聞こえてくる。

 

 流石に、旅の仲間の緊急事態という事で救援に向かうと、悲鳴を上げているのはゼミナール生であった。

 

 タケシさんとカスミさん、というジムリーダー二人組とコハルさんによる見るも哀れな蹂躙劇が行われていたのだ。

 

 初級はおろか、中級・上級クラスの連中まで手も足も出ずにコテンパンにされ、心がへし折られていく。資格勉強でポケモンリーグをどうにかしようとする程度の低い脳味噌の連中の底はあまりに浅く、最初から勝ち目など無かったのだ。確かアニメに於いてはカスミさんが負けていたような気もしたが、この世界の正規ジムリーダーは正真正銘のポケモンバトルのプロであるようで、勝負にもなっていないようだ。……割と強さにシビアなんだよなぁ、私が来たアニポケ世界。

 

 擬似的な道場破り。こりゃ、この学校の名声を完全に地に落とすつもりだな。

 

 もうどうにでもなれー、と彼らの人生と引き換えに私達のポケモンに経験値が溜まっていく光景を眺めていく。

 

 イシツブテがゴローンに、パラスがパラセクトに、サンドがサンドパンになっていきもうホクホクである。

 

 サトシ君も、ピカチュウが真面目に働いているため初級ゼミナール生など敵では無く、ポケモンを次から次へと黒焦げにし、ついに優等生のセイヨさんも討ち取った。

 

 こうして、彼女らは何やら改心した風になり、これからもっと頑張っていく事を夕焼けの空に誓って、ハッピーエンド───

 

 

 

 

「───じゃないよね、全然!結局あの人達、変な資格取る為に青春とお金全部使っちゃうよ」

 

「よすんだ、コハル。新興宗教や詐欺による洗脳の根は深い。特に苦境に陥れば、さらに信仰は深まるからな」

 

 その夜、テントでポケモンのチェックやレポートの執筆をしながらコハルさんとそう談義する。

 

 結局、ポケモンゼミナールは変わらない。

 

 山奥にあり全寮制であるが故に、今回の醜聞の隠蔽も容易だし、再び教師による洗脳が行われれば、今回の出来事も時間と共にすぐ風化していくだろう。

 

「そんな……じゃあ、今回の事は意味無かったってこと?」

 

「そんなことは絶対無い。彼らは学校の外にも世界がある事を知った。0か1の違いは、思っている以上に大きいものなんだ。だから、いつか誰かが、あの学校から一歩踏み出すキッカケになる……かもしれない」

 

「かもしれない〜、ってなんで最後まで自信持って言えないの、ゴウ」

 

「いや、こういう事に絶対って無くて、特に俺、学者志望だし、軽々しく絶対だとかの断定表現は───」

 

 コハルさんの思い詰めていた表情が緩み「でも、すこしホッとした」と溢しながら彼女は穏やかにはにかんだ。

 

 まだまだ私達の力は社会に比べれば限りなく小さいけど、何かを変える種を蒔くことくらいは出来るのだと、そう学んだ旅の一夜であった。

 

 

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