アニポケ世界で全国図鑑完成の旅(全1025)(ただしパッチールのフォルム違いは除く) 作:ビビリダマ
長期的な野外生活というものは、体力・精神をかなり蝕むようで、私も疲れがよく分からない領域にまで突入している。
ポケモンゼミナールを出立してから二日ほど、我々は最早街道ですらない獣道を歩き、どこに進んでいるかも分からない状態で道を進んでいた。サトシ君達にとってはいつもの迷子(放送の都合)である。
せっかく迷子になったのだからとポケモンを探してみるも、ポッポやコラッタ、キャタピーなどの最早ハズレエンカとなったポケモンしかいないのだ。
遭遇トレーナーがいない為、育成も芳しく無く、いつポケモンセンターに辿り着けるかも未知数という観点から、ポケモンの体力維持の為、身内内でのバトルも打ち止め。
ひたすらレポートを書き、学問に励みながら、道を歩き続けるポケモン要素が希薄な二日間であった。
「ゴウ、これ、やっぱり遭難しているよ」
コハルさんが、そう耳打ちしてくる。
「……方角自体は、ハナダを出てからずっと南下さえしていれば、このまま歩いていくと、7番どうろか8番どうろに出る筈。街道に出られれば、すぐにポケモンセンターを目指せるし、歩いているトレーナーに助けを求められる。……本当に耐えられなくなったらすぐ言ってくれ。ピジョンとゴルバットに指示して街道を見つけて貰って、サトシ達から離脱する。……彼ら、呪われているレベルで道に迷うからな」
私は、そうはならない事を知っている。おそらくこのままサトシ君達についていくと、絶対通る筈の街道を見落とす事になり、クチバまではヒトカゲ回・ゼニガメ回の2回のみしかポケモンセンターに行く事が出来ない。
覚えている限りの描写では、物語の冒頭でカスミさんがよくもう一歩も歩けない的な事を言っていた気もするし、クチバについた時には2、3日何も食べられない非常に危機的状況であった。
この道行きで私が確実に得られるものは、無い。
道中に現れるカントー御三家は、全てサトシ君の手に渡るべきであるからだ。
離脱による影響は少ないだろうと推測されるので、ここは同行者のストレスや負荷の軽減を優先して良い局面だ。
「ううん、もう少しだけ、頑張ろっかな。ゴウがサトシに目をかけているのって、きっとこういう迷いやその中での出会いを引き寄せる力が強いからなんだって、一緒に過ごして私も分かった。心配してくれて、ありがとね」
それにゴウの言葉に乗せられたら、クチバから逃げられちゃうし……とコハルさんは遠慮気味に呟いた。……ばれていたか。
そんなこんなでn回目の帰宅拒否作戦が失敗していると、サトシ君とカスミさんがナゾノクサ捕獲に乗り出していた。カスミさん、水辺に居たからギリギリ守備範囲は、流石にどうかと思います。
で、スターミーが順調に攻撃を浴びせていくが、後一歩の所で不意打ちの『つるのむち』が飛び、何者かが間に入る。
サトシ君のフシギダネ(予定)だ。
無論、当のサトシ君は大興奮でバタフリーを使い『ねむりこな』を仕掛けるが、粉技は草タイプのフシギダネには無効である。むしろ吐息で粉自体を吹き返されて、バタフリーが眠らされる始末。
コハルさんが、サトシ君が完全にやられた事を確認した後、ゴルバットのボールに手をかけるが、その数瞬の隙をつかれフシギダネには逃げられてしまった。
危ない、危うく原作崩壊する所だった。私はその一連の出来事をやる気なさげに眺めていると、ある事が頭によぎった。
「あっ、そうだ。ナゾノクサ、もう1匹いるんだった」
ラフレシアとキレイハナへの分岐進化。まぁ、レポート書く為にどっちも未進化から同時並行育成をし、進化時の分化の様子を観察・比較したい事を反射的に思い出し、手癖でボールを投げる。
一応、私はトレーナーとしては捕獲専門なので、草むらに入った後はフシギダネの背後に回ってしまっていたナゾノクサの逃げる背中を捕える事など、造作も無い。あっさり捕獲してしまった。
「ちょっとー!ゴウ、その子あたしが弱らせたんですけど!」
「いや、俺が先に見つけたんだ!」
「……すまん、つい手癖で」
当然、カスミさんとサトシ君はこのようにご立腹。いや、だからすまんて。
「まぁまぁ、あのままじゃどのみち逃げられていただけだし、いいじゃないか。しかもここ、どうやらフシギダネが野生でいるみたいだぞ。これは珍しいなんてレベルじゃない」
「確かに!夢にまで見たフシギダネ!絶対ゲットしてやるぜ!」
サトシ君はそれを聞き、すっかり気を取り直して、意気揚々と進み始めた。なんだかんだいい感じに話が流れてホッとした、……タケシさんのフォロー力が高すぎる。
そんな感じで進んでいると次に現れたるは、如何にも私落ちますといった感じのボロボロの吊り橋。下は崖と急流の川。わ、渡りたくねぇ。
しかし正気の沙汰ではないからこそ、サトシ君ご一行。
意気揚々と渡り始めて、案の定橋が落ちた。
……私だけはチキってダブルナゾノクサとマダツボミを両肩と腰に乗せて『つるのむち』を用いた擬似ロッククライミングで踏破しようとしていた為巻き込まれずに済んだ。
状況としては吊り橋の主索の片側が切れ、足場が垂直に。まず哀れにもタケシさんが、真っ先に崖下に消えていった。
次にマズいのはコハルさん。もう片側のバンカーをなんとか掴んでいるが今にも手を離しそうである。
自分の為に使う筈だったダブルナゾノクサ、マダツボミ、ピジョンに頼みコハルさんのボールからゴルバットも出して貰い、救助に入る。
何とか垂直になった足場まで彼女を持ち上げ、後は命綱付きの綱渡りの要領で対岸に送る。
軽い恐慌状態に陥ったコハルさんに、カミッチュの特性『かんろなみつ』の軽い向精神作用で宥める指示を飛ばしつつ、サトシ君とカスミさんの救援へ。
状況は、バンカーを掴んでいるサトシ君の足にカスミさんがぶら下がっているといった具合で、スーパーマサラ人じゃ無かったら20秒も持たないレベルのとんでも状況。
サトシ君がその持ち前の馬鹿力で垂直になった足場の端を掴んで移動できるといった具合だったので基本的にはカスミさんへ支援を入れつつ、サトシ君をナビゲート。なんとか渡しきり、ミッションコンプリート。同時に橋が完全に落ちて、私が対岸に向かう事は叶わなくなった。
私の手持ちも大体対岸に渡してしまった。現状の手持ちはコイキングとマーシャドだけである。襲われたら死ぬか自爆の二択しかないな。
残りの手持ちをコハルさんに託し(ひこうタイプはタケシさん捜索にあてた)、私は一人別の道を探すと伝えた。
本当に久方ぶりの一人道中である。
という訳で少し回ってみた感じ、この森、人為的に手入れがされている里山のような様相を呈していることが分かった。ところどころにある吊りトラップや落とし穴がその証左でもある。
罠を避けていると、日も暮れてきて、今晩は合流を諦めて一人で野宿する判断を下す。
静まり返った森、誰もいない物寂しさ、夜空は木々の隙間から星明かりを覗かせている。
「……」
パチパチとなる焚き木の音、無味乾燥な携帯食料。
一人で始まったこの無謀な旅も、我ながら、随分と周りに人が増え、出来るようになった事も増えたのだと一人に戻ってから改めて気付かされた。
それ故に、私の未熟さから多くの人に迷惑をかけてしまっている事も同時に想起され、何とも言えない悶絶したくなるような感情が湧き出てくる。
思い出し悶絶など、一人の時以外しようが無い。言葉は変だが、思う存分、悶絶しておく事にした。
そんな旅の一夜である。
▲
「───ゴウ、ゴウ、起きて」
微睡みの縁で、とても心地の良い、優しい声が聞こえてくる。
「コハル……か」
目が覚めたら、最初に映り込んだのは、彼女の顔。贅沢なモーニングコールである。
しかし危ない。危うく「さん」をつける所だった。もう少し、ロールを徹底せねば。
「……起きた瞬間から、考え事をしてるんだね、ゴウは」
「うっせ、止めたくて止められるもんじゃ無いし」
「とにかく、おはよ、ゴウ。色々あったけど君のお陰でみんな無事だよ。下流の方に施設があるんだ。先ずはそこに移動しよっか」
了承の旨を伝え、ちゃっちゃとキャンプを撤収。移動しながら、情報共有を受ける。
曰く、この一帯は個人経営のポケモン保護区らしく、山に張り巡らされた罠は全てポケモントレーナー避けであるらしい。
やりすぎだ、と怒りたい所だが、現にポケモン蒐集をしている私を撃退しているので、自ら効果を証明してしまった形だ。やはりこれからも、保護区との戦いは続きそうだ。
オーナーはミドリとかいうこれまたアニポケ単発ゲストキャラで、無資格の民間療法でトレーナーに捨てられたポケモンのケアを行っているらしい。
罠の事といい、胡散臭いこと極まりないが、サトシ君ご一行とコハルさんはすっかり絆されているので、野暮な事はしないようにした。
合流すると、ロケット団がトンデモ技術の空中要塞を用いて襲ってきたのでまともな再会の挨拶もままならないまま、戦闘に突入。
今回のは、ポケモンを吸い取る形式のバキューム機構。故に、コハルさんのカミッチュの『みずあめボム』をタイミングよく吸わせるだけで事足りた。
かくして、外敵排除に助力した事により、一定の信頼を得られた私は、ここのポケモンだったらしいナゾノクサを連れていく事をなんとか許容されたのだった。まぁロケット団のお陰でお縄にならずに済んだのだから、吹っ飛ばされていった彼らにも感謝しておこう。
フシギダネ関連のイベントは、私が居ぬ間にサトシ君が全て済ませていたようでキチンとミドリさんとやらから、フシギダネを託されている。
……御三家って入手方法が、こんな感じの横取りしたく無いタイプの特殊イベントか研究所しか無いから私は新無印編のヒバニーまで入手する機会が無いかもしれない。
我ながら、なんと華のないことである。