アニポケ世界で全国図鑑完成の旅(全1025)(ただしパッチールのフォルム違いは除く)   作:ビビリダマ

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15.執行者 29/1025

 

 

 ───過ちを犯さない人間はいない。

 

 

 何人たりとも、一度たりとも悪い事をせず、清廉潔白にいい事だけをして生きていける人間はいない。特に、幼い頃に犯す過ちは、無知から来るもの。それ故に避けようが無い。

 

 じゃあ後は、その人その人の天運だけ。 

 

 人生に於いてたまたま犯す逃れようの無い悪事が、許されることか、許されざるものか。

 

 ただそれだけなのだから。

 

 

 ▲

 

 

 

「24番どうろ!?正気ですかタケシさん。クチバと真逆に行ってますよ」

 

 今日も今日とて迷いの旅路。やっとこさ地図に該当地形を見つけたらしいので、このキツい連日野宿旅でどのくらい進んだのかを道案内担当のタケシさんに聞いてみると、そこはなんと24番どうろ。ハナダシティから北上した所にあるクチバとは正反対の方向に伸びている道である。何をどうやったら、5番どうろから、こちらに辿り着けるのだろう。

 

「いやー、地図を逆さまに読んでいたみたいでな、済まない、済まない。この峠を越えたらポケモンセンターがあるみたいだから、一旦、そこで態勢を立て直そう」

 

「もう、無理、足が棒になっちゃう」

 

「お風呂、おふとん、ワンパチ、三つ編み、お家に帰りたい」

 

「情けないなぁ、カスミとコハルは。ほら、ゴウもなんか言ってやれよ」

 

「サトシ、なんか言うべきなのは、タケシさんにだよ。……流石に道案内担当は降板だな、こりゃ。女性陣が発狂しかねん」

 

「そ、そんなぁ!?」

 

 カントー御三家合流イベントの都合で口出し一つせずついて行っていたが、流石にストレス値と見合ってなさ過ぎる。どうでもいい一般回(伝説のポケモンや御三家や重要キャラが出る回以外)は、別行動なり、ナビを私がやったりして対策するべきか?

 

 しかし、彼らが迷う事によって様々な人の不幸や問題が解決する事は間違い無いし、そもそも、どの辺りに映画回の街が挿入されているかも分かったもんじゃない。機会喪失のリスクを避けるなら、やはりこのスーパー迷子についていくべきなのだろうか。

 

 ……焦る事は無い、そんな事はゆっくり考えて決めれば良いのだ。まだ、旅は序盤も序盤なのだから。

 

 そんなこんなでポケモンセンターまでへの最後の峠に差し掛かると、そこの岩の上に、一匹のヒトカゲがいた。

 

 間違いない、無印アニポケを一度でも全て見た人間なら忘れようが無い。

 

 サトシ君のリザードンになる、あのヒトカゲだ。

 

 ……私だって、リザードンが欲しい、という気持ちが無いと言えば嘘になる。

 

 王道、それは男子なら一度は夢見るドラゴン使い。私だってポケモンで育ったポケモンキッズの一人だ。御三家のエースを使ってカッコよくライバルを倒したいという欲は、人一倍ある。加えてメガシンカにダイマックス、リザードンというポケモンにはロマンが詰まっているのだ。

 

 ただ、そんな邪な気持ちは、サトシ君らと、ヒトカゲが相対した瞬間、消えてしまった。

 

 見た瞬間、出会った瞬間、ここから始まるサトシ君とヒトカゲの物語が幻視されたのだ。

 

 そうだ、私はサトシ君とヒトカゲの出会い、育ち、すれ違い、和解し、離別する。

 

 その炎のような情熱的な物語に、心を育てて貰ったのだ。

 

 物語に敬意を払い、私は改めて陰に、彼らの仲間の役に徹する事にした。

 

 

 先ず、野生と勘違いしたサトシ君が挑みかかり、捕獲に失敗。

 

 ピカチュウがヒトカゲの事情を聞き出して、ヒトカゲが誰かを待っている旨を理解。

 

 私達はこの場を立ち去る事になる。……この後、ヒトカゲが苦しむ事を知っている身からすれば、心が引き裂かれる思いだが、訳の分からない前世の知識から来る善意で助けられても、ヒトカゲも困るし、正しく元のクズトレーナーから離れられないだろう。

 

 ───雨が、降ってきた。

 

 サトシ君が、大切なポケモンと出会う時は、いつも雨が降っている。

 

 後は、ポケモンセンターでヒトカゲを捨てたクズトレーナー・ダイスケから事情を聞き出し、ヒトカゲを保護する。

 

 それだけの、筈だった。

 

 

 

 

 

 "───なにかが怒り狂っている気配がする"

 

 

 

 

「───そりゃ良い。この雨で尻尾の火が消えちまえば、あの峠も通れるようになる。俺があんな奴のためにコソコソするのも、アホ臭いってもんだからな」

 

 ヒトカゲのトレーナーの言は、ソレの怒りに触れるには十分過ぎた。

 

 私だって、あまりのカスっぷりに怒りが湧き上がり、どうにかしてやりたい気持ちは確かにあった。

 

 "ハイパーボールが揺れる"

 

 しかし、思えば、彼らは子供。10才の子供なのだ。

 

 "ハイパーボールが揺れる"

 

 自分の弱さを、自分の責任として受け入れなければならない事を知らなかっただけなのかも知れない。

 

 "ハイパーボールがユレル"

 

 だから、ただ、もうこう言うしか無い。

 

 "ハ1パーぼール縺梧昭繧後k"

 

 本当に、運が無かったと。

 

 "⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎"

 

 

 

 

 

 "ダイスケのレポートが、削除されました“

 

 

 

 

 

「サトシ君!コハルさん!急いでここから離れろ!」

 

 私は"私"として、最後にそう愛すべき彼ら彼女らにそう警句を飛ばした。

 

 

 

 

 ───影が伸びた。

 

 全てを、飲み込む、一片の光も無い、真っ暗な陰が。

 

 愚かだが、愚かなだけだった少年。

 

 失敗が、たまたま取り返しのつかないものだった少年。

 

 彼の旅は、人生という名の旅は、ここで終わる。

 

 最初から、無かった事になる。

 

 

「消える消える消えるキエルキエルキエルキエルキエル」

 

 ダ⬛︎スケは絶叫しながら、己が存在を叫び続ける。

 

「大丈夫か!ゴウ!」「ゴウ、あんた!」

 

「見るな!タケシさん、カスミさん!声に耳を貸してもいけない、今すぐにヒトカゲを助けにいくんだ!それで全て解決する!」

 

 先に年少組を引き離し、信頼に足る二人に予後を託す。

 

 これは、私の責任だ。私という存在が、このような事態を招いた。

 

 異物は、異物。結局、この世界にとって良い方向になり得ない。

 

「マーシャドー、私を消せ」

 

「私という、異物を消せ」

 

「人を、一人ならず二人も殺した私に、最早、執行猶予の余地は無い」

 

 陰に落ちた、全てが褪せたポケモンセンターで、私は執行者と相対する。

 

 マーシャドー、全てを閉ざすもの、全てを正すもの。

 

 ただ、殺そうとしたから罰として殺された。

 

 ポケモンも人間も同じ命である以上、これはそれだけの事。

 

 しかし、私さえいなければ、ヒトカゲは助かり、ダ⬛︎⬛︎ケだってこの過ちから何かを学んだり学ばなかったりしながら生きていた筈であった。

 

 やはり、私のせいだろう。

 

「……」

 

 マーシャドーは、私をただじっと見た後、陰からダイスケを吐き出した。

 

 

 

 ────瞬きする間に、世界に光が戻っており、手にはハイパーボールが握られている。

 

「────ッ」

 

 私は立っていられなくなり、大きくへたり込む。

 

 私は、罪人を助けた。善意ではなく、ただ一度の不運の過ちで殺されることがあまりに哀れであったから、私が殺したという罪悪感に耐えられそうになかったから。

 

「なんだよ、お前。突っかかってきた奴らも皆俺様に恐れをなしてどっか行ったみたいだし、お前も痛い目に遭いたく無かったらとっとと失せろ」

 

 ダイスケは、記憶が無いのか全く反省していなかった。

 

 皆、このような言葉、彼のような露悪的な人物を見ると、罰したい欲求に駆られる。

 

 前世だって、ネットでの実質的な私刑が横行して、法の上では人生を終わらせられる程の罪ではないのに、トドメを刺された人物は数えられない程いる。

 

 だから、その前に、怒りの前に、一度考えてみてほしい。

 

 人に手を下すというのは、どういう事なのかを。

 

 

 

 

 ▲

 

 

 

「ゴウ、ゴウ!良かった、ほんとによかった」

 

 コハルさんには、毎回心配をかけてばかりだ。

 

 あの事件は、結局、私達以外の誰にも認知されていない。

 

 皆には、私のゴーストポケモンの暴走だと説明し、誠心誠意お詫びをする。

 

 兎に角、私の蛇足でヒトカゲがどうにかなってないかだけが気がかりだったが、そこはそれ。

 

 私が信頼した彼らは、きっちりポケモンを守り通していたのだ。

 

 後は、ヒトカゲがサトシ君を選び、彼らの物語の第一幕はハッピーエンドで終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 余談だが、ヒトカゲを捨てた少年には、ある奇病が発症した。

 

 ───モンスターボール無反応症候群

 

 ポケモンが彼を感知しなくなり、モンスターボールを何をしても使用出来なくなる奇病だ。

 

 この奇病は、生涯治る事が無かったという。

 

 

 

 

 

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