アニポケ世界で全国図鑑完成の旅(全1025)(ただしパッチールのフォルム違いは除く) 作:ビビリダマ
相棒、エース、主力
強いトレーナーや何かしらに秀でているトレーナーには大抵そういったポケモンがいるものである。
たとえそうでなくとも、常人はポケモンを一、二匹しか手持ちに持たないため結果的にはその人を象徴するポケモンがいる事に変わりはない。
私もそういった枠を最初に作るべきかとボールを片手に再び思案する。直感的には私に相棒なんて想像も出来ないが故に、どうも思考が上手く纏まらない。
一番どうろ。いるのは精々、コラッタ、ポッポ、オニスズメ。……きちんと探せば他のポケモンもいるにはいるのだろうが、今の私の能力で捕まえられるのは精々この3種が限度だろう。
正直言って、相棒にするにはかなり心許ない面子だ。
……良い感じの出会いがあるまでポケモン無しで過ごすという選択肢も十分以上に考慮の余地があるだろう。
その後もう少し検討したのち、私は結局コラッタにボールを投げた。
転生後二、三ヶ月の投擲練習の成果のお陰か、モンスターボールは真っ直ぐに紫の小さな体に当たる。コラッタの体が赤い光に変換されボールに吸収され、4、5回の揺らぎの後ボールは動きを止めた。
なんとも印象の薄い初ゲットだ。だが、まぁ人生こんなもの。誰しもが運命的な出会いの機会を持っている訳では無い。
図鑑にコラッタの正確なデータが登録されていく。
1/1025、先はあまりにも長いが、歩み始めたという事実を大切にしてマイナスな思考をぐっと抑える。
「こんにちは、コラッタ。私は……まぁ、ゴウって言うものです。多分、トキワシティについた辺りでキャラが変わるから驚かないように。……うん、よろしくね」
Lvと技編成を確認。Lv2、たいあたり……くらいか。まぁ、最低限の自衛程度に考えておくとしよう。意思疎通も概ね問題なし、モンスターボールの機能の軽度の傀儡化が程よく効いているみたいだ。……この機能を初めて知った時には少しどうかと思ったが、トレーナーの安全性や利便性を考慮してやむなしという結論が下されているらしいので深く突っ込まないようにする。
ここで少し余談だが、トレーナーがポケモンに指示を通す為には様々なパラメータが絡んでいることが分かっている。ポケモンの種それぞれの気質、Lv、進化段階、トレーナーの練度や資質、ボールの質、育ての親など様々だが世の中の人は大体この条件を総括すると、単タイプ、もしくは単独系列のLv20前後、所有限界一、二体位に収束するらしい。それ故に、様々なタイプのポケモンでフルパーティを組めるだけでもトレーナーとしては上澄み中の上澄みらしく、そういった適性があると判断された者にだけ研究所からの援助、謂わゆる「御三家」というポケモンが贈与される仕組みらしい。
さて、次だ次。オレンの実の種を撒いてポッポを集める。……ポッポくらいなら弱らせなくとも捕まえられそうな気はするが、念には念を。
コラッタにたいあたりを指示……よし、言うことを聞いてくれたな。
素人目に見ても稚拙なたいあたりはしかし、油断していたポッポにヒットし、ダメージが入る。相手の攻撃への回避指示も練習したくはあるが、ポケモンセンターへの距離間はアニメ1話で大体認知しているため、ダメージリスク避ける判断を下す。
二投目、空を飛んでいたらかなり厄介だったが餌とたいあたりの二手を持ってしてそれを封じ、ポッポの捕獲に成功する。
図鑑データ、意思疎通、技・ステータスの確認終了。
……一番どうろでの捕獲はこれくらいで打ち止めだな。
捕獲して研究所にブチ込むだけなら見た事の無いポケモンに対して即モンボという指針で良いのだが、そうもいかない事情がある。
進化。
それはポケモンにとっての成長であり、名、姿、能力、その全てが別のものに置き換わる。
それ故に、私は悩んでいた。
果たして進化段階別で全てのポケモンを揃えるべきかを。
原作のゴウくんはケースバイケースであまり気にせずやっていたが、少し神経質なきらいがある私には気になってしまう点がいくつかあった。
進化段階別で捕まえたポケモンが捕獲後に進化したら何というか蒐集としては点数が低いのではないか?変わらずの石という手もあるが、むしポケモンが永遠に幼虫や蛹のままというのは結構惨いような気もする。
かといって、一最終進化1匹というレギュレーションにし、全てのポケモンを育成するのもまたとんでもない労力が掛かる。それこそ、そんな事が出来たらタケシを差し置いて世界一のポケモンブリーダーになるだろう。
……結局、私は後者の修羅の道を選んだのだ。理由はやはり、コレクションの都合で進化を堰き止める事の悍ましさが勝ったからだ。
という訳で、これからの方針としては、進化しないポケモンは即研究所、進化するポケモンは育成、分岐進化は未進化から育成しても分岐先を直接捕獲しても良い、最終進化後は研究所、と言った感じになるだろうか?
無論、ポケモン全種捕縛には研究、学術的な意味が大きく含まれる為、レポートや論文を書く為に育成はしないポケモンとの交流も欠かさないつもりだ。
さて、そうと決まれば後はレべリングだが、ゲームのように野生のポケモンを無差別に鏖殺出来ない以上、やはりトレーナーとバトルしなくてはな。しかし一番どうろに人がいる気配は全く無い。マサラタウンはやはり田舎すぎるな。
しょうがないので早いところトキワシティに向かうとしよう。そこでちゃっちゃとバトル狂いのサトシ君と合流して経験値を稼ぐか。
そう思い歩み始めると、顔に水滴が当たる感触を感じる。どうやら、サトシ君とピカチュウを結ぶ、あの雨が降り始めたようだ。
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予め用意しておいたレインコートに身を包み、泥濘んだ地面を慎重に進む。……正直、尋常じゃないレベルの雨だ。考えるにホウオウ接近の影響だろうか?雨が上がったからホウオウが現れるのではなくホウオウが現れるから上空の空気が温められ上昇気流の発生によりホウオウ近辺で雨が降り、ホウオウ近辺はほのおタイプ兼おそらく司っているであろう虹関連の力で晴れるという考察が出来る。
……きちんとした科学的論証をしていないためただの推論になってしまうか。ううむ、やはり実際に捕まえるのが一番早いな。
ふと、周りの気温が急速に下が、いや、これは私自身が悪寒を感じているだけだ。
───ホウオウには、注意すべき特筆事項がもう一つある。……ポケモン映画を見ていたなら当然考えて然るべき可能性であったが、私は愚かにも、その可能性を失念していた。
私の周りを殺気立った気配が囲む。
……やはり、こんな異物は見逃しては貰えないか
他人の自我を塗りつぶすような邪悪、この世界の外の精神を感知して、その幻のポケモンは迫り来る。
───ホウオウの番人、マーシャドー
私がそう思考すると同時に、陰から何者かが浮上する。その顔を見てすぐ理解した。間違いなく、私の旅をここで終わらせるつもりなのだと。
マーシャドーに呼応して野生のポケモンが私に殺気を向ける。
……逃げる間も無く完全に囲まれた。見ただけでもスピアーの群れにアーボック、ゴースとゴーストの集団やオニドリル、パラセクト、クサイハナ、カイリューなど10歳の少年の体を死に至らしめるのには十分過ぎる程のポケモンが集結している。
精神攻撃を行われていない事だけが幸いか。察するに私の精神が"外"から来たものであるが故にやらないのではなく出来ないのではないだろうか。私にポケモンのいない世界を見せても特に意味は無いからな。
兎に角、今はこの窮地を脱しなければ。正直、私という存在は断罪されて然るべきであるという気もしなくはないが、一応は自分で定めた贖罪の道。やれるだけはやってみよう。
───ふと、近くで大きな雷が落ちた、今しかない。
空のモンスターボールを複数取り出して、マーシャドーに連続投擲。
隙をついたとは言え幻のポケモン、ほぼ全てがその拳で打ち砕かれ、ボールに入る事すらない。
しかし、そこまでは織り込み済み。その緩急をついてマーシャドーの間合いまで入り、モンスターボールで殴り飛ばす。
ここまで確実に当てれば、さしものマーシャドーも一時的にボールに封じられる。マーシャドーの気配が消えたことにより周りのポケモンの殺気が掻き消えた。
無論、私のパンチで減ったHP程度で捕まえられるとは思っていないため、今にもはち切れそうなモンスターボールごと川に投擲。そのまま全力疾走でトキワシティを目指す。
時間にして20秒程で、背後からシャドーボールが飛んできた。やはりそう簡単には逃して貰えないか。
今の手持ちのコラッタとポッポでは勝ち目など無いし、普通に操られて反旗を翻されるのがオチ。モンスターボールの中に留めておくのが賢明だろう。というかマーシャドーの力で出す事すら出来ない可能性がある。
ともすれは、やはり使うべきは空のモンスターボールだろう。当てれば問答無用でどんなポケモンであれ一時的に拘束する装置。そう考えると、ある種の危うさを孕んでいると思ったりもする。
ゴーストが前方に立ち塞がる。
モンスターボールを投げる。
カイリューがドラゴンクローを放とうと横から迫ってくる。
モンスターボールを投げる。
サワムラーがとびひざげりを放ってくる。
モンスターボールで受ける。
ふむ、きちんと当てればHPが満タンであってもボールには入るな。野生のポケモンからの緊急時の自衛手段としてはこれ以上無い。
さて、相手は正攻法ではダメだと戦法を切り替えてきたようだ。
バタフリーやモルフォンが出てきて粉技を使ってくる。
───チャンスはここしか無い。
レインコートを脱ぎ、脱いだそれを使ってバタフリーやモルフォンに覆い被さり粉を大量に採取、そのままマーシャドーに向けて走り出す。
マーシャドーはここに来て、私の目的を察知し陰に逃れようとするが、もう遅い。レインコートを脱いだ時点で投げたモンスターボールが着弾し陰沈みをキャンセルさせる。
ゆらゆらと揺れているモンスターボールを、しびれごなやねむりこながたっぷり入ったレインコートに投げ入れて、懐から虎の子を取り出す。
「いけっ、ハイパーボール!」
アニメでは何故か殆ど使われないモンスターボールの上位互換。拘束力もモンスターボールのそれとは桁違いだ。資金繰り的に一つしか買う余裕の無かったそれをここぞとばかりに投入し、後は逃げ……、
くそっ、粉を少し食らって、立てな、い。雨だから多少は大丈夫だと考えたが、そん、な事は全くなかった。こ、れは、反省、しなくては。
………済まない、ゴウ君。私が転生したばっかりに、こんなところで君の冒険が。
▲
微睡の淵で、誰かと話した夢を見た。
酷く穏やかな風が肌を撫でる感触と共に目が覚める。
はて、とても大切な話だった気もするのだが。
……そもそも私は生きているのか?
重い瞼を開くと、視界に入るのは美しい黄金色の空。
雨上がりの空に、虹の翼が羽ばたいていた。
「───ホウオウ」
ひらひらと、虹のカケラ、即ちホウオウの翼が私の胸元に落ちた。
……きっと今ここで、私は真の意味でこのポケモンの世界にやってきたのだろう。
そう思える程には、この光景はこれからの冒険を思わせる美しい代物であり、罪悪感で荒んだ私の心のナニカを少し取り戻すようなものであった。
ふと、視界の端に見覚えのある何かが映る。
それは破損して"いない"ハイパーボール。
「マジか……」
いつかやらねばならぬ事であったとは言え、やるのであれば主人公補正マシマシのサトシと共にであると、考えていた。
自分の人生の主人公はいつだって自分自身である。他者への義務感でなく、他者の運に頼るものでなく、ただ自分で意思を持って路を開くべき。
サトシの物語でも、ゴウの物語でもない、私の力で手にした