アニポケ世界で全国図鑑完成の旅(全1025)(ただしパッチールのフォルム違いは除く) 作:ビビリダマ
旅に出て6日目。
同行者にコハルさんが増えたが、それはそれ。やる事自体は変わらない。
……変わらなさすぎて怖いまである。彼女、当たり前のように私の生活ルーティンに自然に溶け込んできだのだ。なんかほら、もっと色々あるかと思った。
兎に角だ、やる事を極限まで大きく分けると3つ。
捕獲、育成、研究。
基本的にはこの三つをくるくると回していくだけなのだが、当面の問題はこの三つの内の二つ目、育成の段階にあった。
一言で言うならば、レベリングペースが全く追いついていない。
基本的にサトシ君たちの旅路は遅いが、ポケモンの数はそのペースに引けを取らない位多い。
加えて、蒐集という行為における最序盤は、目につく全ては集めるべきものとなるのは当然の摂理。
結局の所、いまの育成効率ではその内破綻するのは目に見えている。
であるのならば、まずはその対策をするのが先決であろう。加えてコハルさんにも一応、チュートリアル的なことをさせてあげたい。
幸い、この街には、ブリーダー志望のジムリーダーだとかいうあまりにも都合の良い人物が存在するではないか。
そう、我らがヒロイン、タケシさんである。
ともあれば、善は急げ。問い合わせて、そのように依頼してみる。
まぁ、相手も自分の興味分野だった為か、これをあっさり了承。……原作知識を使って要求を通すと、少し人の心の内をカンニングしているようで嫌な気分になるがここはぐっと抑える。
という訳で、サトシ君たちより一足先にタケシさんと会う流れと相なった。
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ニビジムを訪れると、中は暗く、彼は座禅を組んでいた。
「何者だ」
ゆっくりとした、しかし僅かに圧を感じる声でこちらに語りかけて来た。
……私の知っているタケシと随分違う、否、これはジムリーダーをする上でのロールプレイであるのだろうか?
「今朝連絡させて頂いた、ポケモン育成に関して相談の依頼をしたゴウです!よろしくお願いします」
まぁこのように、ロールプレイはお互い様だ。
「く、クチバシティのコハルです!今日はよろしくお願いします!」
コハルさんは、それなりに気圧されて緊張した様子を見せた。
「あぁそうか、ならば気を楽にするといい。新人トレーナーのコーチングも、ジムの役割の一つであるからな。君たちのような謙虚なトレーナーはこの春先の時期には珍しくてなぁ、さっきまでの怖い感じは、謂わば雰囲気作りだ」
そう言うと、ガチッ、と電気が点き、それと共にタケシさんの表情もふっ、と緩む。
成る程、確かにこの新人トレーナーが多い季節には、雨後の筍のように傲慢なトレーナーや大言壮語を吐くトレーナーがわんさか湧く。そういう人たちの鼻っ柱をへし折るのもジムリーダーの仕事なのだろう。
「それでポケモン育成についてだったか。……つかぬ事を聞くが、そもそも君たちは何のために、ポケモントレーナーをやっているんだい?」
「俺は、伝説のポケモン・ミュウに辿り着くべく、ミュウが全てのポケモンの遺伝子を持つっていう謂れから、様々なポケモンの捕獲、育成、研究が目的です!」
「私は、その願いの手伝いたい、って気持ちで旅に出ました」
「ほうほう、最初から研究者志望のトレーナーとは、珍しいなぁ。それに、───あぁ、青春だなぁ。……おっほん、で、何故ポケモンの育て方を?」
「……あまり、良い言い方では無いかもしれないんですけど、一匹当たりの育成にそこまで時間をかけられないんです。その、普通のトレーナーの方って2〜3体くらいしかポケモンを捕まえないから、1地方の旅を終える位に彼らの育成が終わりますし、その大多数のトレーナーに合わせて色々な情報誌は発信されています」
「成る程、それで効率の良い育成方法か。……よし、いいだろう、キチンと自分の夢とその課題について考えている。その姿勢に天晴れだ!このタケシ、一肌脱ごうじゃないか!」
「「ありがとうございます!」」
かくして、交渉成立。タケシによるポケモン育成講義が幕をあけるのだった。
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先ずは現状把握から始まった。
現在の我々の手持ち・所有ポケモンは。
私は、
コラッタ、ポッポ、マーシャドー、バタフリー、スピアー、ニドラン♂
コハルさんは、
カミッチュ(色違い)、ニドラン♀
諸々の観点から、ニドラン♀を譲渡した事を追記しておく。というか、まぁやろうとしている事的に、ポケモンはほぼコハルさんと共用になるだろう。
マーシャドーは、どちらかというと私を裁く番人であり、監視者であるため、戦力から除外すると、軽いレクチャー兼バトルの結果、なんとも悲しい事に最高戦力はコハルさんのカミッチュという事になってしまった。ご、5タテされて、負けた……。
「……」
タケシさんが情けないバトルをした私をじっくり無言で見ている。最初期タケシさん、普通に怖いっす。
因みに、マーシャドに関しては、初日に起こった事(ポケモン支配やモンスターボール無力化)などを伝え、かなり危険である事などから、現状、オーキド博士管轄、私管理での暫定的な封印処置で留めていると、周りには説明しているし、実際にそういう事になっている。
「ふむふむ、そうだな、成長速度を伸ばしたいなら先ずは食事からだ。ポケモンはタイプや種によって適正な栄養が異なる、市販のポケモンフーズでも少し資金を奮発すればタイプ別くらいまでは売っているが、正直値段の割に細やかなポケモンの差に対応出来ない。フーズの調合を覚えるべきだ」
現状を把握したタケシは厳かにそう講義を始めた。
曰く、基本的にはきのみからの特定成分の抽出、野草・漢方に関する知識などが記された書籍を紹介され、直接的な知識というよりは、どのようにして学んでいけば良いかの道を示された形だ。
……分かってはいた事だが、かなり厳しいな。
有機化学から始まり、薬学、生理学、栄養学、植物学、最低限の医学
頭に入れなければいけない学問の量が半端ではない。ゴウくんの知識にもそれなりに学問はあるが、彼はどちらかと言うと両親の影響からか、機械工学や統計学、数学的論理に基づいた観測や予想に特化していた。
私も前世では、大学まで卒業した身の上。多少の基本知識はあるが、この世界ではだいぶ物理法則が異なっているためどこまで役に立つのかは、未知数である。
しかし、まぁ、やろうか。なんやかんや義務教育レベルの学問+αくらいまでしかやってないコハルさんには、このフェーズは無理がある。それに食事以外にも応用が利きそうだし、どのみちレポート書く為に勉強はするのだ。
その旨を、タケシさんとコハルさんに伝えて、次へ進む。
「次は、最低限以上のポケモンバトルのスキルだ。これが無いと、30Lv以降に進化があるポケモンの育成は無理だからな。公認ポケモントレーナー資格を持つ人にもこれが出来ない人は大勢居るんだ。……本当に、これはあまり大きな声では言えないし、俺個人としては断じて認めていない事だが、……ジムリーダーとしての経験から言わせて貰うと、現実に、やはり素養というものの差があると言わざるを得ない」
タケシさんは、敢えてそう、残酷な現実を突きつける。
どんなポケモンでも、強くなれるが
どんな人の元でも、ポケモンが強くなれるとは限らない。
タケシさんは私の夢が本気だからこそ、続けてこう言葉を紡ぐ。
「俺は、それを覆してくれると信じているから敢えて言うが、ゴウ。君にポケモンバトルの素養は無い。先程のバトルを見た俺の嘘偽り無い正直な所感だ」
言われた瞬間は、そうか、くらいの所感だった。
ロケット団に完膚なきまでに負けたり、コハルさんのカミッチュに5タテされたり、気付ける場面は多くあったが、敢えて直視していなかったこと。
自分の限界に向き合うときが、少し早めに来ただけの話である。
「ちょっと、流石にそんな言い方は!」
コハルさんが、そう割って入る。彼女の目的からしても、私の心が折れてくれた方が良い筈なのに、それでも割って入ってくれる辺り本当にいい子である。
「ポケモンリーグを勝ち上がる事を夢見ている子には、こんな事は頭を過っても断じて言わない。俺も、ゴウの、彼だけの夢に魅せられているからこそ、本気でアドバイスしているんだ。ヒトカゲに無理やりみずてっぽうを覚えさせようとするような事は良くないだろ。人間もポケモンも一緒さ、その人に合った事、道があるんだ。要は、役割分担だ」
「えっ?な、何で私を見ているんですか」
タケシさんは少し思うところがあるような視線をコハルさんに向けた。
「……少し、ジム戦をしようか。コハル。なに、心配はいらない」
岩のバトルフィールドが用意されて、コハルが言われるがままにトレーナーサイドに立たされる。
……何だか話がとんでもない方向にすっ飛んでるな。
「え、えぇ?!わた、私まだバトルとかさっきのゴウとの基礎レクチャーくらいしかやった事なくて、いきなりジムリーダー相手だとか、流石に無茶というか」
「使用ポケモンは一匹。使用可能技は4つ。先攻はチャレンジャーのコハル。どちらかのポケモンが戦闘不能、もしくはトレーナーの
小石を篩にかける事と同じく、才能の原石を掘り当てるのも、また、岩タイプ使いの宿命なのだろう。