東方瞑想録   作:+ドライバー

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行方不明

「…で、何の用よ。」

 

夜も更けた博麗神社に人影が二つ。

神妙な表情で返答を待つ博麗霊夢。

そして対に座るのは八雲紫。

 

紫が何の話をしに神社を訪れたのか。

それについて何となく察しが付いていた霊夢は、急かすように相手に詰め寄った。

片や紫はと言えば普段と比べていっとう歯切れが悪く、どう言ったものかと思考しているようだった。

 

「昨今人里で噂になっていることに関して、貴女はどこまで知っている?」

 

「またそれの話?」

「やれ森の方から助けてだの何だの、声が聞こえるって話でしょ。」

「アンタが言ってた通り、異界の方でも少し問題になってるらしいわね。」

 

「そう。そうね。」

 

「ただ、今のところ実害があるかって言われると…そうでもないのよね。」

「アンタから言われた通り私や魔理沙も森に行って調べたけど、これと言えるものも手掛かりも…何も無かったわ。」

 

自分たちの調子に間違いは無く、直ちに何かに影響することはないだろう。

そう豪語する霊夢に対して紫の様子は変わらなかった。

まるで"間違っている"とでも言いたげな彼女の表情に、少し機嫌を崩した霊夢は更に詰め寄る。

 

「見てほしい物があるの。」

 

そう言って、紫は一枚の紙切れを出した。

 

『行方不明者、捜索中』

とだけ書かれた紙。何てこと無いただの手配書だ。

しかしそれを見た霊夢は、目を丸くした。

 

その文字の下、印刷されていた人物は久世大寛その人に違いなかったからであった。

 

「行方不明…って。」

「まだ見つかってないって事?」

 

「そう。でも、それだけでは無いわ。」

「つい先日、私と藍で彼が亡くなったとされる現場にまで向かったの。」

「本来であれば彼の遺体が見つかるのでは。と思ってね。」

 

「でも、この紙があるってことは、アイツはそこに居て発見されてないって事でしょ?」

 

そう問う霊夢に、紫は静かに首を横に振った。

大寛の遺体。それは本来であれば自死したままの山中に置き去りのままか、既に発見されて遺族たちに弔われている筈だ。

 

しかし、遺体はそこに無かった。

更にこの張り紙がある。と言う事は、遺族の元に帰ってもいないと言うことになる。

 

「霊夢。噂について聞き込みをしたのはいつ?」

 

「…は?」

「でも、アイツは白玉楼に居るんでしょ?」

 

「そうね。」

「つい昨日も藍が彼の修行に付き合っているし、幽々子もあの従者も、彼が外に出て行くところは見ていない。と言っているわ。」

 

「どういうこと…?」

「何が起きてるって言うの?」

 

「分からない。でも、確かな事は一つだけ。」

「何か異変が起き始めている。」

「そしてそのカギを握っている者が彼と言うことよ。」

 

。。。

 

「彼の遺体が…幻想郷に…?」

 

大寛が疲労によって気を失ったように寝ている頃、幽々子と妖夢は別室で話をしていた。

彼の遺体が現代に無いこと。また、彼の遺族の元にも帰っていないことを聞いた妖夢は、混乱した様子で主人の話を聞いていた。

 

「確定した事実ではないわ。あくまで、私個人がそう考えているということ。」

「彼の魂と遺品。それらが流れ着いて、肉体が流れ着か内筈がないもの。」

 

「であれば…彼の遺体は今どこに?」

 

「それが分からないわ。」

「でも、件の噂と何か関係があるのでは…と考えられる。」

 

「貴女も調査を行うのならば止めはしないけれど、くれぐれも気を付けるように。」

「この異常。先の異変の時とは訳が違うように感じるわ。」

 

「はっ。肝に銘じておきます。」

 

この話は他言無用。

そう念を押され部屋から出て行く妖夢は、自室に向かう途中で大寛の部屋を見た。

 

まさか彼が?

本当に噂の正体だとでも言うのか?

 

疑念は尽きなかった。

だが、彼の日頃の行い。そして先の言葉を聞いて、彼女は到底そうだとは思えなかった。

目線の先にある彼の部屋はいつにも増してシンと静まり返っている。

きっと今はぐっすりと眠っているのだろうことは、先の疲労具合からして明白だ。

そうして踵を返し、妖夢も自室に向かうのだった。

[newpage]

 

 

 

いや、静かすぎる。

確かに普段も同じように静かではあるが、今日は明らかに。何かが違う。

 

まるで、そこに誰も居ないかのように――――

 

 

 

 

「っ!」

 

駆け足で部屋の襖を開ける。

どうかこの違和感が勘違いであってほしい。そう願いながら。

 

しかし、目に入ったものはそれを無下にした。

其処にはもう、彼の姿は無かったのだ。

 

「――――ッ!!」

「幽々子様!」

 

妖夢の声が響く。

 

その声を一瞬で飲み込んでしまうほどに

夜は更に深く、暗く澱んでいた。

 

 

 

 

 

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