月と樹と写輪眼 ─もう一人のうちは─   作:琴葉つきね

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第十二章に突入しました。
いつもありがとうございます!
仲間、友情、そして憎しみ。
ミズノとサスケが再会、ミズノは正体を表し、ここからミズノの物語は大きく動き出します!



第十二章 交差する思い、真実を背に

再び交わろうとしているかつての仲間たち。

 

涙で揺れる瞳、憎悪に染まり狂気へと堕ちていく瞳。

 

友を思い走る光、迷いを捨てた影。

 

──光と闇がぶつかり合うとき、絆が試されることになる。

 

 

 

 

カカシの指示通り、サクラは傷ついた香燐を回復させていた。

 

「…お…お前……」

 

「今はまだ喋らないで…!もう少しだから…」

 

香燐は弱々しい瞳でサクラに視線を送っている。

 

(敵の、お前の気持ちなんか…わかりたくもねーんだ……

だから…ウチの前でそんな“悲しい顔”で泣くんじゃねーよ…!……ちくしょう……)

 

彼女達の頬には同じ想いが含まれた涙が伝い続けていたのだった。

 

 

 

 

── 峡谷の橋下

 

 

かつての師弟が対峙している。

 

 

「写輪眼ってのはな…うちはの証だ…うちは一族でもねぇ低俗な忍がその目を見せびらかすな!!」

 

サスケは怒りに満ちた眼で睨みつけた。

攻撃を仕掛けるも、カカシの万華鏡写輪眼で攻撃は消し飛ばされる。

 

「まさか、うちはでもないあんたが万華鏡を開眼してるとはな…

 

助かったのはどうやらその眼の能力らしいな。

うちはの力に感謝するんだな」

 

 

「サスケ…お前の中にあるのは一族だけじゃないはずだ。

憎しみだけじゃないはずだ。

 

もう一度、自分の心の奥底を見つめてみろ…。

お前は本当はわかっているはずだ」

 

 

「………」

 

 

サスケの脳裏に、かつての里の情景がよぎる。

笑い合う仲間。温かな日常。

 

「全員…笑ってやがる…」

 

サスケの顔に強い憎悪が滲んだ。

 

「イタチの命と引き換えに、何も知らずヘラヘラ笑ってやがる!!」

 

「今の俺にとってお前らの笑い声は軽蔑と嘲笑に聞こえる!!

その笑いを悲鳴とうめきに変えてやる!!」

 

周りの空気がうねる。大地が震え、水飛沫が上がる。

さらに須佐能乎が進化し、咆哮した。

 

 

(これはまずい…!)

 

 

カカシの頬に一筋の汗が伝う。

 

その大きな力が渦巻く場所に息を切らしたランがたどり着いた。

急いで橋の上から身を乗り出す。

 

 

──ランはサスケの姿に息を呑んだ。

 

 

瞳は狂気に濁り、かつての面影を完全に覆い隠している。

 

(そんな…あれがサスケ?…)

 

須佐能乎は黒炎を纏い攻撃を仕掛けようとしていた。

しかし、大きな力の代償は彼の眼に確実に現れる。

 

「くっ…!…くそっ!!」

 

サスケは血走った目を強く擦る。焦点が合わず、視界が滲んでいる。

 

 

 

(瞳力を使いすぎて、目が見えなくなってきているんだ…!)

 

 

 

そのとき、背後から忍び寄る陰。

サクラが震える手にクナイを握り、サスケの背へと迫っていた。

 

カカシは彼女に気がつき、止めようと動き出す。

 

(カカシ先生に重荷は背負わせない!!私が全部やらなきゃ…)

 

だが寸前で刃先が震え、どうしてもその背を刺すことができなかった。

 

(…覚悟…したはずなのに…!!)

 

堪えきれず、涙が滲む。

 

その気配をサスケは見逃さなかった。

 

鋭く振り返り、サクラの首を掴み上げる。

喉が締まり、苦悶の声が漏れる。

 

 

サスケの瞳が冷たくサクラを射抜き、奪ったクナイを逆手に構え、刃先が彼女の首筋へ迫る。

 

 

 

「やめろサスケ!!」

 

 

 

カカシは万華鏡写輪眼の影響で足元がふらつく。

 

ランは印を結ぼうとするも、薬の影響でまだチャクラをうまく練ることができない。

 

「サクラちゃん!!」

 

直接助けようと、地面を蹴り上げて橋から飛び降りた。

 

 

その刹那──

 

 

素早く風を切る光が間一髪、サクラを抱き抱えて救い出した。

 

「ナルト……!」 「ナルト君…!」

 

ナルトに気を取られているその隙に、カカシはサスケを殴り飛ばす。

 

「俺以上にいいタイミングだよナルト、助かったよ。

 

しかもランまで…目が覚めたのか」

 

「あ、ありがとナルト……ランさん、あの…サイやキバは?」

 

「まだ眠ってる。起きたのは…私だけ」

 

 

ランは静かに応え、すぐにサスケへと視線を戻した。

 

 

ナルトとサスケの視線がぶつかり合っている。

 

「サスケ、サクラちゃんは同じ第七班のメンバーだぞ」

 

「元…第七班だ…俺はな」

 

彼は冷たい笑みを浮かべていた。

 

ナルトは一歩前へ進む。

 

「サスケ…イタチの真実ってのを、トビってやつから聞いた!

 

嘘か本当かはよくわからねぇ。けど、どっちにしてもお前がやってることは……

 

わかるってばよ」

 

 

「!?」

 

 

その場にいた全員が驚きに言葉を失う。

 

サスケは僅かに眉を上げるが、視線は刺すように鋭い。

 

「ナルト…前に言ったはずだ。親も兄弟もいねぇてめーに俺の何がわかるってな…他人は黙ってろ!!」

 

 

「さっきだ…さっきやっと一人だけイタチの敵を討てた…

木ノ葉の上役をこの場で殺した。…ダンゾウって奴だ」

 

 

ランたちは驚きを隠せず、顔をこわばらせた。

 

 

(ダンゾウを…殺した…?)

 

 

サスケは恍惚とした表情で話し続けている。

 

 

「今までにない感覚だ。汚されたうちはが浄化されていく感覚…。

 

腐れ切った忍世界からうちはを決別させる感覚…。

 

 

ある意味、お前達木ノ葉がずっと望んできたことだ。

昔からうちはを否定し続けたお前達の望み通り、お前達の記憶からうちはを消してやる!」

 

 

「お前達を、木ノ葉の全てを殺すことでな!

繋がりを全て断ち切る事こそが浄化!

それこそが本当のうちは再興だ!」

 

 

悲しみ、憎しみ、怒り、幾つもの負の感情が彼を支配していた。

 

 

ランはそっと目を伏せた。

 

 

(サスケは、本来…とても優しい。

だからこそ憎しみに囚われてしまったんだ

復讐を終えたはずなのに、今度はイタチお兄様の真実を知ってしまって…)

 

迷って、苦しんで、傷ついて。

 

それでも突き進むしかない姿は悲しくて、目の前にいるのにこんなにも遠い。

 

(お兄様が願っていた道から、サスケはどんどん離れている。

…だけど、お兄様はこうなる事も覚悟していたかもしれない)

 

 

彼女は思考を重ねながら、己の正体を明かすその瞬間を見極めていた。

 

 

 

印を結ぶナルトを制止し、これは自分の役目だとカカシはナルト達にここから去るよう促す。

 

 

 

「ここにいれば見たくないものを見ることになる、今のうちに行け!」

 

 

 

サスケが左手に雷鳴を纏い、距離を詰めて行く。

 

 

「カカシ先生、それってば…サスケを殺すってことか?」

 

 

「……行け!」

 

 

その瞬間、ナルトは影分身でカカシを抑え込み、螺旋丸と共にサスケの元へと駆けていく。

 

 

 

「待てナルト!」 「ナルト!!」 

 

 

 

(もしかしたらサスケ…

お前と俺が…逆だったかもしれねぇ!)

 

 

 

──螺旋丸!!

 

──千鳥!!

 

 

二人の力がぶつかり合い、眩い光が弾ける。

 

その衝撃波に水が弾け飛び、地が激しく震えた。

 

 

ラン達は、両腕で衝撃から身を守る。

 

 

二人の技が押し合い、やがてその中心で精神が深く繋がっていった。

 

 

 

──精神世界

 

 

光の空間に、ナルトとサスケだけが向かい合って立っていた。

 

 

「お前も知ってんだろ…俺が昔、里の皆に嫌われてたこと。

その理由ってのが俺ん中の九尾だ。

 

俺も昔は里のみんなを恨んでた。

 

復讐してやろうと思ったこともあるし…一歩間違えばお前みたいに恐ろしい事まで考えたかもしれねぇ…」

 

「俺には誰とも繋がりなんてないと思ってた。

 

お前やイルカ先生に会うまでは…お前がいつも一人なのは知ってた。

 

同じような奴がいるって安心した。

すぐに話しかけたかった…なんだか嬉しくてよ!

 

けど、そりゃやめた…なんでもできるお前がうらやましくて、俺のライバルに決めた!

 

お前は俺の目標になった。

 

何にもなかった俺が繋がりをもてた。お前みたいになりたくてずっと後を追いかけてた」

 

 

サスケは何も語らず、ただナルトの声に耳を傾けている。

 

 

「俺はお前と会えてほんとによかった」

 

 

ナルトは満面の笑みでそう伝えた。

 

 

「ナルト…お前が今さら俺に何を言おうと俺は変わらねぇ!

俺はお前も、里の奴らも一人残らず全員殺す!」

 

 

サスケの声は低く、燃えるような憎悪を帯びていた。

彼は吐き捨てるように続ける。

 

 

「お前の選択は俺を殺して里の英雄になるか、俺に殺されて

ただの負け犬になるかだ!!」

 

 

ナルトは真っ直ぐサスケを見つめた。

 

 

「負け犬になんかならねーし、お前を殺した英雄なんかにもならねぇ!そのどっちでもねーよ!!」

 

 

──ガッ!!!!

 

 

轟音と共に余波が渦巻き、ナルトとサスケが衝撃で吹き飛ばされる。

 

カカシがナルトを庇い、サスケについていたゼツが彼を守った。

 

 

 

「これではっきりした」

 

 

 

ナルトの声が響く。サスケは膝をつき激しく肩を上下させながら、揺るがぬ視線だけをまっすぐナルトに注いでいた。

 

 

二人の視線が再び交わった瞬間、闇を裂くように声が降りてきた。

 

 

「帰って休めと言ったはずだが」

 

 

空間が渦を巻いて揺らぎ、仮面の男“うちはマダラ”が姿を現した。

 

 

 

「九尾か…」

 

 

 

 

緊張が走る。カカシの表情が引き締まり、ランの視線が鋭く光る。

 

 

(マダラ……!)

 

 

「こいつらとはちゃんとした場をもうけてやる…今は退くぞ」

 

 

すると、ナルトが前へと歩み出す。

 

 

「サスケに…ちゃんと言葉で言っときてー事がある」

 

 

「……行くぞサスケ」

 

 

「待て…」

 

 

サスケは立ち上がった。

 

 

 

ナルトは自分とサスケが戦えば二人とも死ぬ。

 

サスケが里に攻めてくれば戦わなければならない。

憎しみは全て自分にぶつけろ、サスケの憎しみを受ける役目は自分しかできないと訴えた。

 

 

そして──

 

 

「俺もお前の憎しみ背負って一緒に死んでやる!」

 

 

まっすぐ、偽りのない瞳でナルトは宣言した。

 

 

サスケはなぜ自分にこだわるのか、一体何がしたいのかと問う。

 

 

ナルトの答えは昔から何も変わらない。

 

 

 

“友達だから“

 

 

 

行き着くところまで行き、何も背負わなくなればあの世で本当に分かり合える。

 

仲間一人救えないやつが火影にはなれない。サスケとは自分がやる。

 

 

ナルトの答えを聞いたサスケは、何かを否定したいかのように、お前を一番に殺してやると苛立ちを滲ませた。

 

 

その二人の姿をランは見届け、静かに瞳を閉じる。

 

 

(ナルト君…ありがとう)

 

 

「わかった…サスケはお前に任せるナルト。だか…マダラはここで俺が処理する!」

 

 

「やめておけカカシ。そんな術は俺にはきかない。

行くぞサスケ」

 

 

マダラがサスケの肩を掴む。

 

 

闇に引き込もうとしたその時──

 

 

 

「待て!!!」

 

 

 

ランの鋭い声が響き渡る。

 

 

決意、覚悟と共に顔を上げた。

 

 

ゆっくりと開いた瞳には赤い光を放つ瞳が浮かび上がり、両手で素早く印を結ぶ。

 

 

「火遁、豪火球の術!!!」

 

 

轟音と共に、巨大な炎がマダラに向かっていくが彼の身体をすり抜けていった。

 

 

仮面の奥から動揺を含んだ声が漏れ出す。

 

 

「その術…その瞳…」

 

 

カカシ、ナルトやサクラ、サスケさえも驚愕に目を見張った。

 

 

「ラン…お前…」 「ランさん…?」

 

 

視線が一斉に彼女に吸い寄せられる。

 

 

ランは視線を受け止めながら、毅然とした表情で口を開いた。

 

 

「マダラ…あなたの行為はうちは一族を侮辱している」

 

 

彼はその言葉に皮肉めいた声を発した。

 

 

「侮辱だと?うちはを侮辱していたのは里の方だろう」

 

 

じっと彼女を見つめ、マダラは低い声で問う。

 

 

「その写輪眼……お前は一体何者だ」

 

 

ランは静かに手を上げ、頭のフードを外す。金色の髪がさらりと揺れた。

 

一瞬、迷いの色が瞳をかすめる。

 

しかし、彼女はそれを振り払うように静かに印を結び、白煙と共に偽りの姿を解放した。

 

 

 

「……!?」

 

 

 

サスケの顔色が変わり、瞳が大きく見開かれる。

 

 

 

長く伸びた深い茶色の髪、見覚えのある眼差し。

 

そこに立っていたのは幼い頃の面影が残る、かつての幼馴染の姿。

 

 

張りつめた空気の中、記憶の扉が軋みをあげて開く。

彼の心に波紋が広がっていった。

 

 

「サスケ、あなたがこれ以上憎しみに飲み込まれていくのを見たくない。

それに…イタチお兄様は”それ“を望んでいない」

 

 

その様子を見つめているナルト、サクラ、カカシは困惑し、言葉を発することができない。

 

 

マダラはミズノの言葉を聞き、肩を揺らして低く笑った。

 

 

「まさか…まだ“うちは”の生き残りがいたとはな」

 

 

喜びとも侮蔑ともつかぬ声が漏れる。

 

 

ミズノは凛とした眼差しで、彼を真正面から捉えた。

 

 

「復讐なんて何も生まない。残るのは憎しみと絶望だけ」

 

 

「フッ……綺麗事だな。

お前はうちはでも、我らと思想が違うようだな。

ならば…その瞳、もらっていく…」

 

 

すると、ゼツがにやにやと笑いながら前に出る。

 

 

「俺がやろうか?すぐに済ませるよ」

 

 

その声が合図のように、無数のゼツが地面から立ち現れた。

 

 

警戒を強めたナルト、サクラ、カカシは即座に構えをとる。

 

 

だが、ミズノが静かに歩み出した。

三人の前に手を伸ばし、制止の意思を告げる。

 

 

「動かないで……」

 

 

短く静かな一言に、自然と従わせるだけの気配が漂い、三人の動きが止まった。

 

 

彼女の赤い瞳が、万華鏡の紋様へと変化する。

 

 

地が波打ち、圧が走る。

 

 

「寂滅陣!」

 

 

低く放たれた言葉と同時に、黒い円陣が地面に滲み広がる。

 

底の見えない奈落のごとき闇が、抗う間もなく一瞬で何体ものゼツを闇に飲み込んでいった。

 

 

「なっ……!?」

 

 

サクラとナルトが目を見開き、カカシの視線は闇の中心に向けられた。

 

(この術…一瞬でこれだけの数を…)

 

瞳の奥に静かな驚きを湛えていた。

 

 

残されたゼツ一体だけが素早く後ろに後退し、ぎりぎり地に踏みとどまっている。

 

「万華鏡を開眼してるのか…もう少しで飲み込まれるところだった…」

 

ゼツも驚きに苛まれていた。

 

 

しかし次の瞬間──彼女は足元から力が抜け、水音と共に崩れ落ちる。

 

 

「っ……」

 

 

右目からは鮮血が流れ落ち、肩で荒く息をついている。

 

 

その姿を見たマダラは、仮面の中で目を細めた。

 

 

「お前の万華鏡に宿るその術…良い能力だが、チャクラの消費が激しいようだな。

 

万華鏡写輪眼を開眼しているとなると、少々厄介だ。

ここで始末しておくか…」

 

 

マダラが距離を瞬時に距離を縮め、拳を突き出す。

 

その軌道は殺気に満ち、寸分の迷いもなかった。

 

 

 

──誰よりも早くミズノの前に立ち、拳を受け止めたのはサスケだった。

 

 

ミズノは眉を曇らせながら、彼の背を見上げる 

 

 

彼は自分でも説明できない衝動に、身体が突き動かされているように見えた。

 

彼女の胸の奥が、熱く締め付けられる。

 

けれどそれは、喜びではない。

 

むしろ、どうしようもなく悲しかった。

 

 

その光景を見たサクラの心が大きく揺らぐ。

 

 

自分を迷いなく切り捨てようとした彼が、今は彼女を庇っている。

 

(サスケ君は…私を…)

 

複雑な感情が溢れそうになった。

 

 

 

ミズノに背を向けたまま、サスケの瞳はマダラを射抜いている。

 

 

「お前に話がある…早くしろ」

 

 

マダラは殺気に満ちた拳を静かに下ろし、仮面の奥で低く呟いた。

 

 

「……まさか…木ノ葉の奴を庇うとはな」

 

 

一拍置き、静かに言い添える。

 

 

「…まだお前の中には“情”が残っているようだ」

 

 

「へぇ…さっきは迷わず切り捨てようとしたのに、今度は庇うなんて…同じ“うちは”だから?

それとも……その女と何か訳あり?」

 

ゼツはからかうような口調で愉快そうにしている。

 

 

サスケは二人を睨みつけると、鋭く吐き捨てた。

 

 

「無駄口を叩くな。……殺すぞ」

 

 

彼らの皮肉を切り捨て、そのまま振り返る事なく歩み出す。

 

 

「サスケ……!!」

 

 

ミズノの声は彼には届かず、マダラ達と共に時空の渦に呑まれて消えていった。

 

 

残されたのは、水のせせらぎと静寂──。

 

 

しばし誰も声を発さない。

 

 

ただ風が吹き抜け、戦いの残滓を運んでいく。

 

 

サクラは胸に手を当て、俯いていた。

 

自分の決心の弱さ、サスケを救えなかった悔しさを噛み締めると同時に、彼が彼女を庇ったその光景が頭から離れない。

 

 

しかし思いを振り払い、膝をついているミズノの元へ駆け寄った。

 

 

「大丈夫ですか…?」

 

 

ミズノはサクラに支えられて立ち上がる。

 

 

「大丈夫…ありがとう、サクラちゃん…」

 

 

カカシはその姿を真剣に見据えていた。

 

 

「……ラン……で合っているのか?

とりあえず、一度里に戻る。そこでゆっくり話しを聞こうか…」

 

 

ミズノは小さく頷く。

 

 

胸の奥で覚悟した。

 

 

「はい……わかりました……」

 

 

 

──バシャン!!

 

 

「!?」  「ぎゃー!ナルト!!」

 

 

突然の水音と共に、ナルトが仰向けに倒れた。泡を吹き、白目をむいている。

 

 

カカシが急いで駆け寄り、彼の様子を確認した。

 

 

「頬の傷、これだな…サクラ、すぐ解毒してくれ」

 

「これって…あの時、私の毒付きクナイで?」

 

サクラはあたふたしながらも、瞬時に解毒する。

 

 

やがて──

 

 

「うー……なんかまだ……気持ち悪いってばよ……」

 

 

ふらりと身を起こしたナルトが、ぼんやりとした目で唸った。

 

「ナルト…だ、大丈夫?」

 

サクラは気まずそうにナルトを支えている。

 

 

「さて…みんな戻るぞ。その子も連れて…まずはキバとサイのところへ」

 

 

カカシは香燐を背に担ぎ、戦いの余韻が残るその場を後にした。

 

 

 

 

キバとサイのもとへ戻ると、二人はすでに目を覚ましていた。

 

キバは不満げに腕を組み、少しふてくされた表情をしている。

 

「フン!望み聞いてやって、サスケまで見つけてやったのによ。

一人でカッコつけてんじゃねーってんだよ!

 

サイはナルトにベラベラ喋っちまってるし、サスケには逃げられてんじゃねーかよ…ってかランはどこだよ!!

それに、そいつら誰なんだよ!?」

 

 

キバは苛立ちをあらわにし、腕を振り上げながらミズノと香燐を勢いよく指差した。

 

表情には怒りだけでなく、状況を飲み込めない困惑の色も滲んでいる。

 

 

「里に戻ってからゆっくり話……」

 

 

カカシが言い終わる前に、ナルトがさえぎるように叫んだ。

 

 

「キバ!でかい声で、だらだらぐちぐちうるせーってばよ!!!」

 

 

「あ!?

ずっとぐちぐちしてたのはてめーの方だろナルト!!」

 

 

「あ!…それは言えてますね、単純で頭が悪いわりに考えすぎてましたからね」

 

サイは、ハハッと声を出して笑っている。

 

「サイ!!

てめー随分といい顔で笑うようになったじゃねーか!!あ!?」

 

「ありがとう」

 

「褒めてねぇー!!!」

 

 

 

ミズノは彼らのやりとりを見て、口元を緩めた。

 

重苦しかった空気がどんどん和やかになっていく。

 

 

 

ふと空を見上げると、まるで何事もなかったかのように青く澄んだ空が広がっていた。

 

 

彼女はあの日から隠してきた全てを背負って、里へと帰っていく。

 

 

──物語は次なる幕を上げようとしていた。

 

 




第十二章、最後までお読みいただきありがとうございます!
隠してきた正体を明かすこと、それを仲間たちがどう受け止めるのか。
サスケとの関係性や、ミズノの変化をここから書いていけたらと思ってます!
まだまだ続きます!
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