月と樹と写輪眼 ─もう一人のうちは─   作:琴葉つきね

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サスケとミズノが“同じ月の下で再び再開します。
マダラとサスケの対話、川辺での二人のすれ違い、仲間。
静かに、確実に戦争へ向かっていきます!
原作改変・独自設定あり。



第十六章 月下の決別、切れぬ絆

真実を知りながらも守ろうとする者と、その真実に焼かれた者。

 

留まる者と、歩き出す者。

 

月下の決別は、戦いの前章に過ぎなかった──。

 

 

 

 

──暗闇の奥、岩壁に沿って無数の蝋燭の影が揺れている。

 

冷えた空気が肌にまとわりつき、聴こえるのは風のすれ違う音だけ。

サスケは身を起こし、ゆっくりと眼を開いた。

 

移植したイタチの眼が馴染んでいる感覚。その奥が僅かに熱を持ち、脈打っていた。

 

暗闇の奥から足音が近づいてくる。

 

マダラが闇の中から姿を現した。

 

「……だいぶ眼が馴染んできたようだな」

 

サスケは無言で視線だけを向けた。

 

「サスケ……お前はうちはミズノの事をどこまで知っている」

 

「……どういう意味だ」

 

「奴はイタチの真実を知っていた」

 

サスケの視線が一瞬、マダラから逸れる。

 

「ミズノはイタチの月読を受けたが生き延び、ヒルゼンが姿と名を偽らせて保護していたのだ。更に……禁術とされる木遁を使う」

 

サスケは鋭く目を細めた。

 

「……なぜわかる」

 

「ゼツに探らせた。木遁が使えるのは初代火影・千手柱間の血縁者だからだ。まさか……お前が最も恨んでいる里の創設者の血を引いているとはな」

 

 

──沈黙。

 

 

蝋燭の炎だけが静かに揺らめいている。

 

「……その様子だと、知らなかったようだな。

里の上層部はこの事実を知り、ミズノの力とイタチの情報が漏れる事を恐れている。……表向きは受け入れているようにみせかけてな」

 

マダラは、哀れみとも嘲りともつかぬ声色で続けた。

 

「そして今、裏で動きだそうとしている。ミズノを……処分するために」

 

サスケは微動だにせず、ただ一点を見つめている。

 

しかし、彼の指先に入ったわずかな力をマダラは見逃さなかった。

 

さらに一歩、闇を踏み込む。

 

「奴がうちはの生き残りだとわかった時、緊急五影会談が開かれた。その隙に音隠れの残党がミズノの眼を狙い、木ノ葉を襲撃したのだ」

 

「………」

 

「そしてミズノは、一人で百人を超える忍達を止めた。

里と仲間を守るため、うちはの名を守るため……そしてイタチの想いを守るためにな」

 

 

突如、暗闇の中に大きな風音が吹き込んでくる。

 

蝋燭の炎が激しく揺れた。

 

「それでも信用しきれない者達がいる。

……皮肉なものだな。己を犠牲にしても報われない。お前の兄と同じように……」

 

殺気を孕んだ冷たい視線が、マダラへ突き刺さる。

 

「……黙れ。それ以上……喋るな」

 

一瞬、音が吸い込まれるように消えた。

 

沈黙の中で、マダラの目がサスケを探るように動く。

 

「……ミズノをこちらに引き込め。奴がしたことが無駄だったと“証明”される前にな」

 

サスケの声が冷たく沈む。

 

「俺を……操れると思うな」

 

「ならば、情を捨てろ」

 

その低い声は、空気をさらに重くした。

 

「奴を切り捨てろ。他に渡らぬよう、身体ごと持ち帰れ」

 

サスケの眼に怒りとも悲しみともつかぬ色が揺らぎ、深い暗闇の中へ沈んでいった。

 

言葉なく立ち上がり、マダラの横をすり抜けて行く。

 

「やはり……”あれ”は特別か……」

 

マダラの声が仮面の内側で、怪しく響き渡っていた。

 

 

 

 

──洞窟の外。

 

冷たい風が吹き抜けていく。薄雲の隙間から光る月をサスケは仰ぎ見た。

 

──今この瞬間、同じ月の下に彼女がいる。

 

胸の奥に言葉にならない何かが疼いていた。

 

 

 

 

──木ノ葉の里・深夜

 

川辺を撫でる夜風が、水面をそっと揺らしている。

真実を語り終えたミズノは、思い出の川辺で月を見上げていた。

淡い光と静かな色が、瞳に染み込んでいく。

 

監視が始まる前に与えられた、ほんのひとときの自由。

ここには、幼い頃の笑い声が残っている気がする。

あの日々はもう戻らない。

 

それでもこの場所へ立つと、あの暖かさを感じるのだった。

 

 

──夜風がふいに向きを変える。

 

 

湿った土と草の匂いが、昔と変わらぬまま鼻先をかすめた。

 

胸の奥がきゅっと疼く。

 

「………」

 

抑えきれず、ミズノは思わず振り返る。

 

 

──そこに、ひとつの影が立っていた。

 

 

月明かりがその姿を映し出すと、ミズノの瞳がゆっくりと見開かれていく。

 

「サスケ……!?どうして……」

 

彼は答えない。

 

ただ淡々と、静かな声で語り始めた。

 

「うちはと千手の血を引き、イタチの真実を知るお前を里の上層部は警戒している。近いうちに始末されるだろう」

 

「……なんで、それを……」

 

ミズノはかすかに息を呑む。

 

「来るか、切り捨てられるか……選べ」

 

 

──風がミズノの髪を揺らす。しかし、彼女の瞳は揺るがなかった。

 

 

「……いかない」

 

その言葉と共に、ミズノは一歩近づく。

 

視線が絡み合うと、サスケの肩がほんのわずかに強張った。

 

「私は、イタチお兄様が守った里を裏切らない。そしてイズミお姉様から託された想いがある。それを……必ず果たしたいの」

 

「………」

 

サスケは何も返さない。

 

「……たとえ命を狙われていても、私は倒れない。絶対に」

 

月の光に照らされた瞳は、どこまでも澄んでいた。

 

迷うことも波立つこともなく、ただ静かな決意を浮かべている。

 

 

──あらゆる激情すら包み込むような瞳。

 

 

サスケは、その瞳から視線を逸らせなかった。

 

 

「サスケの思い、全部はわからない……。でも、痛みと苦しみがどれほど深いかは……伝わってくる」

 

ミズノは小さく息を吸い、そっと言葉を紡いでいく。

 

「……あなたを大切に思う人たちがいて、今とは違う道がある。本当は……気づいてるはず」

 

「………」

 

「サスケの居場所は……ここにある」

 

感情の影が、一瞬サスケの表情をかすめたような気がした。

 

しかし、彼は黙したまま。

 

 

──長い沈黙。

 

 

風さえ息を潜め、川音も遠くに霞んでいく。

 

その静けさを裂くように、サスケの左手に音が走った。

青い雷光がじわりと形を成し始める。

 

ほとばしる光が、ミズノの頬を照らした。

 

けれど、彼女は動かない。

怯えも怒りもない。あるのは幼い頃から変わらぬ、信頼の眼差し──。

 

「………」

 

 

──次の瞬間、雷光は握りつぶされたかのように一気に弾け、掻き消えた。

 

 

静寂が再び二人を包み込む。

 

サスケはそっと視線を逸らした。

 

「……俺の居場所はここではない」

 

その声は小さくて、冷たくて、どこか苦しかった。

彼は背を向け、歩き出す。

遠ざかる足音を聞きながら、ミズノは目を伏せた。

 

「サスケ……」

 

その声は、届くことなく夜空へと吸い込まれていく。

 

苦しさと悲しみを残し、彼女の足音もまた、草を揺らす音に紛れながら遠ざかっていった。

 

 

──サスケはふと、歩みを止めた。

 

 

左手に落とした視線が揺れ、胸の奥でざわめくものを食いしばるように押し込める。

 

あの瞳が頭にこびりついて離れない。

 

まっすぐで優しくて──あの頃が一瞬だけ戻ってきたようだった。

 

「………」

 

サスケは左手を強く握りしめ、その感触で現実を確かめる。

再び闇の中へ踏み出したその足取りは、わずかな迷いを引きずっているようにも見えた。

 

夜の風が音もなく背中を撫でていく。

 

頭上の月だけが、離れていく二人の影を静かに見つめていた。

 

 

 

──空が白みはじめ、里に淡い光が落ちてくる。

 

アパートの一室。

 

カーテン越しの光が薄く部屋の中を照らす。

 

ミズノは椅子に座り込み、眠れぬまま朝を迎えていた。

 

瞳の奥に、サスケの冷たく悲しい背中が焼き付いている。

 

息をゆっくり吐くと、胸の奥の痛みが少しずつ朝の冷気に溶けていった。

 

 

──その時、部屋にドアを叩く音が響く。

 

 

「ミズノ!起きているか!」

 

聞き慣れた声に、ミズノは顔を上げた。

 

(……ガイ先生?)

 

もう一度、先ほどより強い力でドアが叩かれる。

 

「綱手様が呼んでいる!朝早くから悪いが、一緒に来てくれ!」

 

ミズノはゆっくりと立ち上がった。

 

鏡の前に立つと、夜の疲れが目元に色濃く残っている。

 

目を閉じて深く呼吸を整え、しっかりと目を開く。

 

(行こう……)

 

ドアを開けると、ガイと目が合う。彼の表情には気遣いと責任の色が混じっていた。

 

「……大丈夫か?」

 

「大丈夫です……行きましょう、ガイ先生」

 

「よし!」

 

ガイは大きく頷きながらも、歩調はミズノに合わせて静かだ。

 

監視役でありながら、守るような距離で寄り添うその姿に暖かさを感じる。

 

二人はまだ静かな朝の通りを、一歩ずつ進んでいった。

 

夜明けの光は、少しずつ里を明るくしていく。 

 

しかし、その光の先には避けられない戦いの影が広がっているのだった。

 

 

 

 

──木ノ葉・会議室

 

卓上には地図と資料、そして積み上がった報告書。

戦争が近いことを告げる空気が、部屋中に漂っている。

ミズノとガイが一歩足を踏み入れると、綱手は顔を上げた。

 

「来たか」

 

その声は低く、眠らぬ夜の余韻を感じさせる。

ミズノは小さく頷く。背後のガイは無言のまま後ろに控えていた。

綱手は腕を組み、言葉を選ぶように息を吐いた。

 

「……手短に話す。しっかり聞け」

 

ミズノは姿勢を正す。 

夜の川辺で割れた胸の奥を、そっと押し隠しながら。

 

綱手は資料に目を落とし、指を滑らせた。

 

ミズノもその動きを追うように視線を落とした。

 

「第四次忍界大戦が始まる。ミズノ、お前は第三部隊に配属する。部隊長はカカシ。リーとネジも同じ部隊にいる」

 

そこで一度、綱手の目がミズノを捉えた。

 

「副隊長はガイだ。……そしてお前の監視役も担う」

 

胸の奥がわずかに痛む。顔をあげ、綱手と真正面から目を合わせた。

 

「だが、それ以上にお前の盾でもある。……全員が納得して受け入れているわけではないからな」

 

後ろでガイが静かに息を整え、短く言葉を添えた。

 

「ミズノ、絶対に俺から離れるな」

 

ガイにしては珍しく、冷静で落ち着いた声。ミズノは彼の方へ振り返った。ガイの表情には“守る意志”が宿っている。

 

「……ありがとうございます。ガイ先生」

 

綱手はそのやり取りを見つめ、わずかに目元を緩めた。

 

再び言葉を続けていく。

 

「そして、この戦争でお前に託したい事がある。……サスケだ」

 

ミズノの心臓が強く跳ねた。呼吸が浅くなるのを自覚しながら、ミズノは綱手へ向き直った。

 

「サスケを止めなければならない……」

 

綱手の声は冷酷ではない。

 

しかし、決して見逃しはしないという確かな硬さがあった。

 

「……わかっています。……これ以上、サスケに……」

 

言葉にすると、喉の奥が締め付けられる。痛みを飲み込むように、ミズノの喉がわずかに上下した。

 

綱手は資料の端に指を置き、静かに言葉を添える。

 

「……お前の能力なら奴の拘束も可能だと、そう判断している」

 

その声は事務的ではなく、どこか綱手自身も苦しんでいるような気がする。

 

(サスケには、もう私の声は届かない。でも、きっと……)

 

ミズノは、ナルトの覚悟とあの言葉を思い出していた。

 

 

そして──ゆっくりと首を振りながら告げる。

 

 

「綱手様……サスケのことはナルト君に任せたいんです」

 

綱手の眉が、わずかに動く。

 

「今のサスケには、誰の声も届かない。でも……ナルト君だけは、届くと思うんです」

 

しばらく綱手は何も言わなかった。

 

やがて目を伏せ、静かに口を開く。

 

「……ナルトには戦争のことは知らせていない。マダラの狙いは尾獣だ。ビーと共に……保護している」

 

その声には迷いの色があった。それをミズノは確かに感じ取る。

 

「……私は、ナルト君の覚悟を……諦めたくありません」

 

綱手の瞳が、大きく見開かれた。

 

 

──数秒の静寂。

 

 

「……そうだな。考えておこう」

 

その声の奥には、ナルトへの“信頼”が滲んでいた。

 

ミズノは小さく微笑む。

 

「綱手様……ありがとうございます」

 

「話は終わりだ。準備を急ぐ。……お前達も備えておけ」

 

ミズノとガイは一礼し、その場を後にした。

 

会議室を出た瞬間、ガイが隣でニカっと笑う。

 

「さあ行くぞ、ミズノ!あいつらが待っている!」

 

「……!」

 

ミズノの胸に淡く暖かい光が灯った。

 

 

 

──木ノ葉・訓練場

 

朝靄の残る訓練場に、よく通る声が響き渡った。

 

「ミズノさん!!」

 

全身で嬉しさを表すように、リーが大きく手を振って駆け寄ってくる。その後ろを、静かに歩幅を整えたネジが続く。

ミズノは、思わず表情が綻んだ。

 

「二人とも……元気そうでよかった」

 

リーは潤んだ瞳を腕でぐいっと拭いながら、息を弾ませる。

 

「ミズノさんこそ……無事で、本当に……本当によかったです!!」

 

ネジは落ち着いた表情のまま、口を開いた。

 

「……ミズノ、無事に戻ってきてくれてよかった」

 

その声は、柔らかな安堵をにじませている。

 

ミズノは二人の目の前に歩み寄った。

 

「リー君とネジ君に……言わなきゃいけないことがある」

 

二人は同時に首をかしげた。

 

ミズノは大きく息を吸い、身体の前で手を重ね、深く頭を下げた。

 

「……五影会談で、私のために直談判してくれたって聞いた……。ありがとう。二人が私を信じてくれたこと、庇ってくれたこと……本当に嬉しい」

 

リーはその言葉にさらに瞳を潤ませ、身体の前で拳をぎゅっと握る。

 

「当然です! ミズノさんは大切な仲間で、青春の同志ですから!!僕達は、当たり前のことをしたまでです!!」

 

言い回しは相変わらず熱く、気持ちはむき出しで真っ直ぐ。

 

一方ネジは、穏やかな微笑みを浮かべている。

 

「あれくらい、たいしたことじゃない。お前がどんな人間か……俺たちはよく知っている。それだけだ」

 

ミズノは胸の奥がじんと温かくなるのを感じた。

 

「……二人とも本当にありがとう。私にとってもあなた達は大切な仲間だよ」

 

揺れる瞳を静かに細める。

 

そんな三人を見ながらガイは満足そうに腕を組み、大きな声で宣言する。

 

「よし!!これで再び“ガイ班”がそろったな!!

この戦い、皆で越えるぞ!」

 

リー、ネジ、ミズノの三人は、力強く頷いた。

 

 

太陽の光が、四人の強い絆の輪郭をくっきりと映し出していた。

 

 

 

 

──地の底に広がる巨大な空間。

 

土気色の壁に光が揺れ、湿った空気が呼吸するように震えている。

 

その中央に、仮面の男──うちはマダラが無言のまま、佇んでいた。

 

彼の存在だけで、辺りの温度がひときわ低く感じられる。

やがて、乾いた足音が近づいてきた。

 

「まずは挨拶からだ……トビ」

 

蛇と共に姿を見せたのは、薬師カブト。

眼鏡のレンズに怪しい光が反射し、一瞬、あざ笑っているかのように見えた。

 

「……いや……今はマダラと名乗っているとか」

 

マダラは一歩前に出て、距離を詰める。

 

「ここがよくわかったな……」

 

カブトは口角を持ち上げた。

 

「スパイとして国から国へ渡り歩き、”暁“の一員でもあった僕の情報量をなめない方がいい」

 

「サソリの……スパイの一員だったな……お前は”暁”の裏切り者だ」

 

マダラが地面を蹴り上げた瞬間、カブトは素早く後方へと飛び退き、両手を打ち鳴らす。

 

地から音を立て、次々と棺が現れた。

 

「これは……!!」

 

軋みをあげて棺が開かれると、冷気が砂を巻き上げる。

 

五体の忍が姿を現し、マダラの視線を縫い止めた。

 

「穢土転生(えどてんせい)……」

 

その言葉を噛み締めるように、カブトは笑みを深める。

 

「二代目火影と大蛇丸様しか使えなかった禁術……しかし僕で三人目。そして今はその二名をも超えている」

 

その声音は、蛇の舌先のように冷たく湿っていた。さらに、煽るように言葉を重ねる。

 

「これは君へのパフォーマンス。僕の力を信用してもらうためのね……安心していい。僕はここへ戦いにきたんじゃない」

 

「……何が目的だ?」

 

カブトは棺の一つに手を添え、怪しく笑った。

 

「君と手を組みたい」

 

マダラの赤い眼が、仄暗く光る。

 

「……手を組みたいだと?お前と組んで俺になんの得がある」

 

「近々戦争を起こすそうだね。その戦略を提供できる……ここにあるイタチ、サソリ、デイダラ、角都、そして──長門」

 

カブトの瞳がにゅるりと形を変えた。

 

「どれも強者揃いだ……それに僕の持っている駒はこれだけじゃない」

 

「見返りは……」

 

マダラが呟く。

 

「……うちはサスケ。

でも、まだ足りないよ。真理の探求の為にはね……」

 

マダラの片目が鋭さを増す。

 

「………言いたいことがあるなら、早く言え」

 

その反応に、カブトはますます口元を歪めた。

 

「うちはミズノ……君の計画にも練り込まれているんだろう?彼女は特別だ。僕にとっても、まさに相応しい人材だよ」

 

「………断ると言ったら?」

 

 

──空気が一気に凍りつく。

 

 

カブトは小さく笑い、両手を再び打ち合わせた。

 

地が震え、新たな棺がせり上がる。

 

棺が軋みを上げて開いた瞬間、マダラが驚異に目を見開いた。

 

「……!?こ……これは!!」

 

「僕がなんの手札もなく君に会いに来るとでも?……そう……君は断れない!!」

 

「キサマ……それをどこで手に入れた!?」

 

マダラの圧が、その場の空気を震わせる。

 

「色々とね……安心していいよ。これは誰にも喋ってない」

 

「………フッ……フフフ」

 

仮面の隙間から乾いた笑い声が漏れた。

 

「何かおかしい事でも?」

 

「薬師カブト。お前がここまでの器になるとはな……思ってもみなかった……今お前と揉めてもこちらの戦力が低下するだけ……。この機を狙ってここへ来るとは……用意周到な奴だ」

 

「という事は?」

 

「いいだろう。手を組んでやる……ただしサスケを渡すのは戦争での成果を上げてからだ……それまでサスケには会わせない。それから監視もつけさせてもらう」

 

「ものわかりのいい方だ。さすがはうちはマダラ……器が違う」

 

声は静かだったが、その底には確かな欲と期待が滲んでいた。

 

その期待にマダラが釘を刺すように忠告する。

 

「……だが、うちはミズノの使い方は俺が決める」

 

カブトは、その返事を予想していたかのように肩をすくめる。

 

「……柱間の血、うちはの血……その二つが交わり、秘められた能力は計り知れない。君の器としても、切り札としても申し分ないからね……それにサスケ君より扱いやすそうだ」

 

ねっとりとした声が、マダラの耳にまとわりつく。

 

「……彼女に関しては“からっぽ”でも構わないよ。手に入りさえすればね」

 

「生意気な奴だ……」

 

「……僕の駒と同じように、君の駒にも”最適な使い所“があるだろうからね」

 

「……お前の持つ戦力を確認してから作戦を練り直す……ついてこい」

 

マダラは警戒を解かぬまま歩き始める。

その背後をまるで舌舐めずりするかのような足取りでカブトがついていく。

 

二人の姿は、暗い地下へと消えていった。

 

 

 

 

──戦いの幕が、いま静かに上がろうとしている。




お読みいただきありがとうございます!!

第十六章は、次の戦いへ向けて静かに加速していく章として書いてみました!
いつも読んでくださりありがとうございます。
次章もよろしくお願いします!
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