月と樹と写輪眼 ─もう一人のうちは─   作:琴葉つきね

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第二十二章「新しい風」

【※ご注意】
本話には、主人公が身体を乗っ取られている展開や、流血など少々痛々しい・残酷な描写が含まれます。
苦手な方はご注意ください。

いつもありがとうございます。
戦闘描写を含め少し長めにはなりますが、
キャラクターたちの想いなど、丁寧に描きました。
 
少し長いですが、もしお時間がありましたら、
ぜひ最後まで読んでいただけたら嬉しいです。



第二十二章 新しい風

長い、長い──忍の歴史

 

 

しかしそれは、彼の複雑に絡まった“わだかまり”を解きほどくには十分すぎるほどの時間だった。

 

 

 

 

 

──南賀ノ神社の地下

 

埃と湿気を帯びて淀んだ空気が、今は不思議と澄んでいるように感じる。

 

初代火影・千手柱間によって語られた、里の始まりと忍の在り方。

 

 

「里とは一族と一族をつなげるもの──忍とは耐え忍ぶ者。目標を叶えるために……」

 

 

それが兄・イタチが命を懸けて“守り抜こうとしたもの”の正体。

 

「俺の目標は里作りだった……だがマダラは別のものを見つけたようだ。マダラがこの世に復活し、何をしようとしているのかはわからんが……」

 

柱間の言葉にサスケは答えを突きつけた。

 

「無限月読(むげんつくよみ)……里も忍も国も民も関係ない。ただ全てを幻術にはめ、己の思い通りに操ることだ」

 

「……俺の兄が、マダラの弟が、そしてあんた達が守ろうとしてきた全てのものを……無にするものだ」

 

「……!!」

 

火影達の視線が交差する。

 

ヒルゼンはダンゾウに里の闇を委ねてしまった過去を、ミナトは九尾事件に倒れ、うちはの悲劇を止められなかった事実を──二人は静かに悔いていた。

 

 

大蛇丸がサスケに問う。

 

 

里を潰すのかそれとも──

 

 

全てを飲み込んだサスケは、静かに瞼を閉じた。

 

 

兄の言葉と彼が背負っていたものを思い返していく。

 

 

 

──そして、決意と共に瞼を上げた。

 

 

 

「俺は戦場に行く。

この里を、イタチを……無にはさせん!」

 

 

 

その声は鋼のような硬さを帯びている。

 

迷いは、もうない。

 

「……決まりだな!」

 

そう言って、柱間は唇の端を持ち上げた。

 

かつて、木ノ葉の頂点に君臨した四つの影。

彼らが発する圧倒的なチャクラが、狭い地下室を震わせた。

 

迷いを断ち切ったサスケの視線の先にあるのは“兄が守ったもの"だけではない。

 

瞳によぎるのは──もう一人。

 

イタチを救うため、そしてサスケを守るために影に身を潜め、己を犠牲にし続けてきた彼女。

 

兄が残した想いと共に、サスケにとって決して失いたくない存在だった。

 

「行くぞ!」

 

ヒルゼンの声を合図に、彼らはその場を後にする。

 

地下から地上へ。暗闇から、戦火の中心へ。

 

頭上に広がる空は高く、空気はどこまでも冷たかった。

 

サスケの瞳には新たな目的の炎が揺らめいている。

 

兄の犠牲も、彼女の覚悟も、すべて無駄にしないために。

 

 

──この戦いを、自分の手で終わらせる。

 

 

その決意を胸に、サスケは最終決戦の地へと向かった。

 

 

 

──戦場に黄色い閃光

 

空気の色が変わる。

 

彼の姿、そして次々に現れる歴代の火影。

 

忍達の胸に、大きな希望を満たしていった。

 

「遅かったか?」

 

「いや……ピッタリだぜ!父ちゃん!」

 

「穢土転生の目……あなたは……」

 

目の前に現れた金髪の青年にナルトは微笑み、サクラは困惑している。

 

「俺は波風ミナト。安心して、君たちの味方だよ。

友達もじきにくる……彼も味方だよ」

 

(あいつが……)

 

父・ミナトの言葉に、ナルトは期待と驚きを滲ませた。

 

 

 

そして──

 

 

 

遂に彼が、かつての仲間達の中心へと降り立つ。

 

 

 

「随分遅かったじゃねーのサスケ!」

 

「サ……サスケ君!?」

 

突然の再会に、サクラは思考が追いつかない。

 

いのが反射的に一歩踏み出す。

 

「え…サスケ君?」

 

「おい!いの、止まれ!こいつは敵だぞ!」

 

「いの……うかつに近づかないほうがいいよ!!」

 

シカマルの警戒の声、チョウジの制止。

 

それぞれの驚きと動揺が広がっていく。

 

 

「……相変わらずやかましい奴らだ……」

 

 

サスケは感情の読めない声色で告げた。

 

「てめぇ!何しにきやがった!」

 

「……なんでサスケ君がここに?」

 

キバの怒号と、戸惑いを隠しきれないサクラの声。

 

「色々あったが……俺は木の葉の里を守ることに決めた。

そして……俺が……」

 

 

 

「……火影になる」

 

 

 

──驚嘆と共にざわめきが消え、呆然とした静けさだけが残った。

 

 

 

 

「……火影になるのは俺だってばよ」

 

ナルトが沈黙を破り、サスケの隣へと歩み寄る。

 

その動きにサスケが視線を向けた。

 

 

──刹那

 

 

サスケの目が見開かれていく。

 

視界にその姿を捉えた瞬間、時の流れから切り離されたかのように、周りの音が失われた。

 

ナルトの遥か後方に佇んでいたのは、ミズノ。

 

しかしその瞳も、気配も──

彼の知る彼女とは、あまりにもかけ離れていた。

 

禍々しくて冷たい。

そして、底知れぬほど強大なチャクラ。

 

「……やはりか。マダラはあの娘の身体を依り代としている」

 

その姿に声を上げたのは、扉間だった。

 

彼は厳しい表情で、ミズノの姿を見つめている。

 

「マダラのチャクラを感知した時、奥にもう一つのチャクラを感じた。

……このままでは完全に混ざり合うのも時間の問題だ」

 

「……それはどういう意味ですか……二代目様」

 

ヒルゼンが問うが、扉間は苦々しげに顔をしかめるだけだった。

 

サスケの背後から重吾が一歩、前へ出る。

 

「サスケ……今の彼女は“うちはマダラ”に乗っ取られ、マダラが彼女を動かしている……」

 

その言葉がやけにはっきりとサスケの鼓膜を打った。

 

目の前の事実が意味することを理解した瞬間、サスケの中で何かが静かにひび割れていく。

 

 

その直後、ミズノの顔をしたその存在が彼らに気がつく。

 

彼女の唇が弧を描いて浮かべたのは、好戦的で傲慢な笑みだった。

 

「待っていたぞ、柱間ァ!!!」

 

ミズノの声で発せられたのは、聞き覚えのない叫び。

 

歓喜に震える声から、彼女を戦いの道具として使い潰そうとする意志を感じる。

 

 

「お前は後!!」

 

 

柱間はマダラに指を突きつけると、有無を言わせぬ調子で言い切った。

 

 

次の瞬間には、暴れ狂う十尾へと向き合う。

 

 

 

「………相変わらずな奴だ。やはりあいつとは噛み合わん」

 

柱間に後回しにされたことが面白くないのか、マダラはつまらなそうに鼻を鳴らした。

 

 

そして、彼の眼はサスケを捉える。

 

サスケの両目に宿る“永遠”が、かつてないほど鮮烈な赤光を放っている。

 

 

──視線が交差した。

 

 

「ほう……いい眼だ。俺と同じ直巴か」

 

品定めをするような響き。

彼女の声色でありながら完全に別のもの。

 

拭えない違和感が、サスケの内側で怒りを増幅させていく。

 

マダラは右手を目の前に掲げ、まるで玩具の具合を確かめるかのようにゆっくりと握っては開いた。

 

「この娘……脆さはあるが、上等な器だ。柱間の治癒力と木遁、うちはの力……そしてこの俺の魂を受け入れても尚、砕け散らぬ精神力がある」

 

喉の奥で卑劣に笑う。

 

「だが、少々うるさくてな」

 

「………」

 

サスケは鋭い眼光をマダラへと向けていた。

 

「仲間に手を出すなと喚き、お前を見た瞬間から名を呼び続け──

『自分ごと討て』と繰り返し叫んでいる。……耳障りなほどにな」

 

その言葉は、その場にいる仲間たちの耳にも否応なく届く。

 

誰もすぐには言葉を発せなかった。

 

彼女の忍としての覚悟が、全員の胸に重く突き刺さる。

 

「くそっ……ミズノ……!!」

 

ナルトが奥歯を軋ませた。

湧き上がるチャクラが、主の激情に呼応して陽炎のごとく揺らめく。

 

ミズノの意識はまだ残っている。しかし求めているのは助けではない。

 

ただひたすらに彼らの身を案じ、自分ごと終わらせてほしいと望んでいるのだ。

 

(ミズノさん……) 

 

その献身的な想いと、それを嘲笑うようなマダラの卑劣さにサクラとヒナタは胸を痛め、拳を震わせる。

 

彼女を人質を取られているに等しいこの状況──

 

絶望的な盤面に、彼らの表情が重く沈んでいく。

 

「……余計な情で動けぬようだな。ならばこちらから動くまでだ」

 

マダラが言葉を紡ぎ終えたと同時に、サスケから紫色のチャクラが爆発的に噴き上がった。

 

須佐能乎の骨格が形成され、激しい風が吹き荒れる。

 

誰の目にも明らかな怒り──それでも、サスケの声は静かだった。

 

 

「その口で……」

 

 

万華鏡がマダラを射抜き、低い声が張り詰めた空気を切り裂く。

 

 

「ベラベラと喋るな」

 

 

その殺気に、ナルトが思わず声を張り上げた。

 

「サスケ! まさか攻撃するつもりか!?

そんなことしたらミズノの身体を傷つけちまうぞ!!」

 

「わかっている」

 

サスケは一切視線を逸らさず、短く言い切る。

 

「まだ完全に乗っ取られているわけではない。

必ず、方法はある。

……致命傷は避ける。

多少傷つけてでも……あいつからマダラを引きずりだす」

 

 

サスケは兄の声と、彼女の揺るぎない信念を思い出していた。

 

 

サスケの言葉を聞き、ナルトは静かに彼を見つめている。

 

 

──どんな術にも、必ず“弱点となる穴がある”

 

 

以前ナルトも耳にした言葉。

 

 

ナルトは小さく微笑み、拳を強く握り締める。

 

サスケの横顔に、かつて自分の前に立ち塞がった少年の背中が重なる。

 

「サスケ……やっぱお前ってば変わってねーな!!」

 

ぐっと拳を打ち鳴らし、歯を見せて笑う。

 

「上等だ!

マダラをミズノから引きずり出して、ぶっ飛ばす!!」

 

しかし、二人とは対照的にサクラは不安そうな表情で、唇を噛み締める。

 

それはあまりにも無謀で、危うい賭けに思えたからだ。

 

──同時に、サクラは感じ取っていた。

 

彼が誰よりも必死に“彼女を救う”ことを考えていると。

 

「サスケ君……」

 

思わず零れた声には、隠しきれない小さな痛みが覗いていた。

 

 

それでも──

 

 

「……大丈夫」

 

サクラは二人の元へと歩み出る。

 

「何があっても、ミズノさんは私が必ず回復させる!!」

 

その眼差しには悲しみを越え、前に進もうとする覚悟が静かに込められていた。

 

サスケが一瞬だけ視線を動かすと、サクラと目が合う。

 

言葉はない。

 

サスケは再びマダラへと向き直った。

 

ナルトは、にっと口角を上げる。

 

「……頼もしいってばよ!」

 

 

そんな三人の背中を見つめながら、ミナトはかつて語り継がれてきた伝説の姿を重ねていた。

 

何も語らず、ただ静かに微笑む。

 

 

次の瞬間──

 

 

その表情は、“火影”のものへと切り替わる。

 

ミナトは羽織を翻した。

 

「初代様。十尾の足止めは、俺たちが引き受けましょう!」

 

「うむ!若者たちの未来を、摘ませはせん!!

行くぞ!」

 

柱間の号令に応え、扉間、ヒルゼン、ミナトが、それぞれの方向へと散っていく。

 

「忍法……!」

 

四方に散った歴代火影たちが、同時に印を結ぶ。

 

「四赤陽陣(しせきようじん)!!」

 

彼らの足元から立ち昇ったのは、巨大な赤いチャクラの壁だった。

 

結界が暴れる十尾とマダラを完全に隔絶する。

 

「まだまだいくぞ!!」

 

柱間が印を結ぶと、幾つもの強靭な鳥居が十尾を押さえ込んだ。

 

常識を逸脱した力を持つ十尾さえも封じ込める、最強の牢獄が完成した。

 

「すげぇ……!!」

 

ナルトが感嘆の声を上げる中、サスケは冷静に戦場を見据えている。

 

 

──舞台は整った。

 

 

 

「……今度は、間違えない」

 

その呟きは、カカシの内側から静かに零れ落ちた。

 

視線はマダラを捉えたまま。

胸の奥では、怒りだけが確かに息づいている。

 

カカシはふと、サスケの背中を見る。

 

その姿に過去の自分を重ねた。

 

胸の奥がわずかに締め付けられる。

 

──あの時自分は判断を誤り、友を危険に晒した。

 

そして守れなかった少女──己の手で貫いたリンの最期がよぎる。

 

(こいつらを……同じにはさせない)

 

その時──

 

「カカシ!」

 

張りのある声が、思考を断ち切った。

 

「ぼーっとしている暇はないぞ!」

 

振り向くと、ガイが険しい表情でカカシを見ている。

 

「若葉たちは、青春を燃やして友を救おうとしている!」

 

ガイは親指で戦場を指し示す。

 

その先には、静かにこちらを見下ろしているオビト。

 

「今、俺たちがすべきことは一つだ!」

 

ガイの声がまっすぐにカカシの胸を打つ。

 

「“過去”は俺たちが引き受ける!」

 

カカシは小さく頷いた。

 

額当てをずらし、露わになった写輪眼が闇を映す。

 

「……ああ、そうだな」

 

その声に迷いはなかった。

 

「お前達、ミズノは任せたぞ……!」

 

部下達へ信頼の言葉をかけ、カカシとガイは並び立つ。

 

そして未来を背に、闇の中でもがく友の元へと二人は駆け出して行った。

 

 

 

──そのすべてに、冷ややかな視線を向けるうちはオビト。

 

そして、すぐにその視線は側に立つ“共犯者”へと向けられた。

 

オビトの胸中に、言葉にならぬ不快感が広がっている。

 

絶望の中にあっても仲間を案じ、自らを犠牲にしようとするミズノに──かつて自分が失ったリンの面影が重なるからだろうか。

 

それとも、マダラのやり方が自身の掲げる理念とかけ離れた“悪意”に見えたからだろうか。

 

 

あるいは──

 

 

失われた“自分たちの未来”がそこに重なったのか。

 

「……くだらん」

 

オビトは興味を失ったように視線を逸らす。

しかし、その心に生じた小さな”歪み”は消えることなく燻り続けていた。

 

 

 

 

 

── 一方、戦場から僅かに離れた場所

 

そこには、激戦の爪痕が生々しく残されていた。

 

無惨に倒れ伏す五影たち。

 

中でも火影・綱手の状態は凄惨を極めている。

 

その身体は上下に両断され、カツユが必死に繋ぎ止めている。

百豪の術が解けたその肌からは若々しさが失われ、深く刻まれた皺が死の淵にいることを物語っていた。

 

 

──そこへ三つの影が降り立つ。

 

 

「あれ……火影ってババアだったっけ?」

 

途中で合流した香燐が、眼鏡の位置を直しながら眉をひそめる。

 

「うげぇ……これって胴長じゃないもんね……やっぱ……」

 

隣の水月が気味悪そうに肩を竦めた。

 

そして、その中心に立つ大蛇丸は、かつての盟友の無惨な姿を冷ややかに見下ろしている。

 

「……随分と無茶をしたようね綱手」

 

「……大蛇丸……?」

 

意識に霞がかかる中、綱手がかすれた声で名を呼んだ。

 

 

敵か、味方か──

 

 

警戒し、威嚇するカツユを片手で制す。

 

大蛇丸はゆっくりと綱手の傍らに立った。

 

「私は処置をしにここへ来た。敵じゃないわ」

 

その声に憐れみはなく、ただ事実だけを述べる。

 

大蛇丸が香燐と水月に目で合図を送った。

 

「水月……綱手の下半身を持って上半身と繋げなさい。香燐、あなたは噛ませて回復させてあげなさい」

 

「えぇー!!バラすほうが得意なんっすけどぉ……」

 

「えぇ……サスケ以外に噛まれるのやだなぁ……ウチ」

 

水月はぶつぶつと文句を言いながら、綱手の切断された身体を繋ぎ合わせ、香燐はしぶしぶ自身の腕を差し出した。

 

(吸い取られすぎてウチが老けそう……)

 

香燐のチャクラと水月の力が組み合わさり、綱手の身体が驚異的な速度で修復されていく。

 

力が戻った綱手は上体を起こす。

 

そして、問わずにはいられなかった。

かつて木ノ葉を潰そうとした彼がなぜ今、自分を助けるのか。

 

「里を裏切ったお前が今さら……なぜだ」

 

大蛇丸は回復した綱手を見つめ、目を細めた。

 

「昔は自ら風となることを望んでいた……

でも今は“新しい風”がどう吹くのかをみてみたいのよ」

 

遠くの空──サスケたちがいる戦場の方角を見やる。

 

「興味の幅が広がってね……“新しい風”を楽しむ前にこの世界を密封されたくはないからね」

 

綱手は眉を寄せた。

 

「相変わらずわけのわからんことを……だが少し変わったか」

 

大蛇丸は不敵な笑みを浮かべる。

 

「人は変わるものよ……それかその前に死ぬかの二つ。

とにかくあなたはさっさと他の影達を回復なさい。

私達は行くわ。もう一人のうちはが待っているからね……」

 

「!!」

 

綱手の瞳に鋭い光が宿る。

 

「大蛇丸……お前、戦争のことは知ってるのか?もう一人のうちはとはミズノのことか?」

 

「ええ、もちろん。そして今、彼女に何が起きているかも知っているわ。

……だからこうしてあなたを回復し、協力しているのよ」

 

「……何をするつもりだ」

 

「言う必要があるかしら?……私にしかできないことよ」

 

意味深な言葉を残し、大蛇丸達は地を蹴った。

 

その背中を見送り、綱手は強く拳を握りしめて動き出す。

 

「急ぐぞ……カツユ!」

 

復活した火影の声が、その場に響き渡っていった。

 

 

 

 

──再び戦場

 

 

「くそっ……闇雲に突っ込んでも、ただミズノを傷つけるだけだ!

どうすりゃいい!?」

 

ナルトが焦りを滲ませて叫ぶ。

 

マダラはミズノの身体を盾にしながら、容赦なく攻撃を仕掛けてくる。

 

仲間達はその攻撃を避けることしかできなかった。

 

 

 

あまりに悪辣な戦法──

 

 

 

すると、シカマルの声が響く。

 

「ナルト! サスケ! お前らが一瞬だけあいつの視界を塞げ!」

 

彼は額に汗を浮かべながらも、脳内で冷静に勝機を計算していた。

 

「影を縛って動きを止める。その隙にマダラの意識を抑え込む!

……やれるか、いの!」

 

「やれるかじゃない!やるのよ!!」

 

いのが覚悟を決めて構える。

 

ナルトとサスケが即座に動いた。

 

ナルトは影分身で撹乱し、サスケが須佐能乎を部分的に展開し、マダラの退路を遮断する。

 

二人が作ったほんの僅かな隙。

 

シカマルの術が地を這い、マダラへと伸びていく。

 

 

──しかし彼女の身体はまるで全てわかっているかのように、逃げようともしなかった。

 

 

「……いの!!」

 

「わかってる!!」

 

動きが止まったマダラに向け、いのが精神を飛ばす。

 

 

術は正確にミズノの身体へと吸い込まれた──はずだった。

 

 

いのが悲鳴をあげ、そのまま身体が弾き飛ばされる。

 

チョウジが慌てて、いのを受け止めた。

 

「いの!大丈夫!?」

 

彼女は荒い呼吸で震える声を絞り出す。

 

「入れない……!!近づいただけで弾かれた……」

 

伝説の忍の精神は、山中一族の秘伝をもってしても干渉すら許さない鉄壁だった。

 

 

「私が……チャクラの流れを止めます!」

 

声を上げたのはヒナタだった。

 

彼女の白眼が、ミズノの体内のチャクラを捉えている。

 

「ヒナタ!大丈夫なのか!?」

 

「大丈夫……! 絶対に、ミズノさんを助けたいの!」

 

キバの案ずる声に、彼女ははっきりと答えた。

 

ナルトとサスケが作り続けている僅かな隙を見逃さず、ヒナタが力強く足を踏み込んだ。

 

神速の打突がミズノの身体へと迫るその瞬間──

 

ヒナタの眼前に突如として立ちはだかったのは、隙間なく張り巡らされた大木の壁。

 

「!!」

 

ヒナタの身体が宙に舞った。

 

「ヒナタ!!」

 

壁に弾き飛ばされたヒナタを、ナルトがチャクラの手を伸ばして受け止める。

 

 

「……もう遊びは終わりか?」

 

 

マダラはニヤリと笑うと、再びチャクラを練り始めた。

 

繋がっていた影を通してシカマルを襲ったのは、山脈そのものに押し潰されるような圧。

 

伸びていた影が弾け飛び、シカマルはその場に膝をついた。

 

 

──鼻から鮮血が流れ落ちる。

 

 

小手先の術など、彼の前では児戯に等しい。

 

「シカマル!!大丈夫か!!」

 

「くそっ……手詰まりか……」

 

ナルトの声にシカマルは血を拭いながら答え、口元を歪めた。

 

 

絶望的な空気が流れたその時── 大気が熱で歪む。

 

 

「火遁・豪火滅却(ごうかめっきゃく)!!」

 

 

マダラから吐き出されたのは、地獄の業火。

 

熱波だけで肌が焼けるほどの力が、ナルト達を飲み込もうとしていた。

 

 

ナルトが皆を守ろうとしたその瞬間──

  

 

「三重羅生門(さんじゅうらしょうもん)!」

 

大地が大きく隆起し、土煙を巻き上げた。

 

地底からせり上がってきたのは巨大な三重の障壁。

 

鬼の顔を模した絶対的な防御が、迫り来る業火の前に立ちはだかった。

 

 

そこに、場違いな声が響き渡る。

 

 

「……随分と手こずっているようね、サスケくん」

 

 

──大蛇丸。

 

 

 

彼はこの絶望的な戦場で、愉しげな笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

その存在は、破滅を止める“唯一”ではない。

 

だが──

避けては通れない存在だった。

 




ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
第二十二章「新しい風」は気づけば想定よりもずっと長い章になっていました。

次章はどう彼らが動き、彼女を救うのか……

引き続き、お付き合いいただけたら嬉しいです!!
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