月と樹と写輪眼 ─もう一人のうちは─   作:琴葉つきね

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三連休なので……連投します!


第二十六章 繋ぐ者達

──飛雷神斬り

 

 

二代目火影・千手扉間の神速の一撃がマダラの死角を突く。

 

しかし、その刃が届くよりも早く、マダラの冷酷な反撃が扉間の身体を貫いていた。

 

鈍い音と共に、扉間の四肢が数本の“黒き杭”によって地へと縫い付けられる。

 

チャクラを乱され、穢土転生の身体であっても指先一つ動かすことができない。

 

「忍一の速さを誇っていたお前が、この様とはな」

 

マダラは無造作に扉間を見下ろすと、さらに激しく杭を打ち付けていく。

 

「正直な……ずっとお前にはこうしてやりたいと思っていた。

お前は……イズナを殺めた男だ。

動く死体にやっても虚しいだけだがな」

 

最後の杭を扉間の頭へと差し込み、マダラは興味を失ったように踵を返した。

 

その視線の先には胸を貫かれて倒れ伏すサスケ、その傍らで視力を奪われ、力なく座り込むミズノの姿がある。

 

すると──白ゼツが、再び地より現れた。

 

「マダラ様、トドメは刺さないんですか?」

 

「死にかけに構う時間は無い。オビトの左眼を回収しに行く」

 

マダラが地を蹴る音が響く。

 

圧迫感が、突風と共に戦場から遠ざかっていった。

 

残されたのは──灰色の世界と静寂。

 

「サスケ……」

 

ミズノは震える手を伸ばし、サスケの身体を探り当てた。

 

視界は深い霧に包まれたように白く濁り、光と影の境目すら曖昧になっている。

 

今の彼女の世界にあるのは、手のひらから伝わる残酷な現実だけだった。

 

先程まで確かにあった鼓動が、今はひどく弱々しい。

 

指先にまとわりつく生温かい血の感触に、ミズノからヒュッと引きつった呼吸が漏れた。

 

「……娘、まだ……小僧の息はあるか」

 

少し離れた場所から、扉間の苦しげな声が届く。

 

答えようと口を開きかけたミズノの耳が、不意に別の音を拾った。

 

 

ヒタ、ヒタ、ヒタ──

 

 

ぬれた石の上を歩くような、しめった足音。

 

視界が奪われているせいで、聴覚だけが異常なほど鋭敏になっている。

 

「誰……!?」

 

ミズノは咄嗟にサスケの身体を背に庇い、音のする方へ顔を向ける。

 

「……このチャクラは大蛇丸か? いや、違う……」

 

扉間の声。

ミズノの表情に明確な警戒の色が浮ぶ。

 

──冷たい足音が、自分とサスケのすぐ目の前で立ち止まった。

 

「……近寄らないで!」

 

枯渇した身体に鞭を打ち、ミズノは震える両手でクナイを握る

 

ピントの合わない瞳で敵を睨みつけ、威嚇するように切っ先を突きつけた。

 

(チャクラはもうない……腕も、鉛のように重い。

……それでも、絶対にサスケには指一本触れさせない!)

 

侵入者は、そんなミズノの痛々しい姿を見下ろして静かに口を開く。

 

「……無理はしない方がいい」

 

鼓膜を打ったのは、優しい青年の声。

 

「あなたは……?」

 

ミズノが呆然と呟いた瞬間、彼女の握るクナイの刃先が優しく退けられる。

 

「僕は薬師カブト。安心していい……僕は君たちを助けに来たんだ」

 

薬師カブト──イザナミのループより抜け出し、その声はどこか憑き物が落ちたように穏やかだった。

 

カブトはサスケのそばへ膝をつく。

温かいチャクラが、サスケを包み込んでいった。

 

色を失ったミズノの瞳では、はっきりと彼の姿は見えない。

 

 

(この人は……なぜサスケを助けるの……)

 

 

ミズノの内に疑問が走る。

しかし、印を結ぶ力すら残っていない。

 

ただ、祈るようにサスケの冷え切った手を握りしめることしかできなかった。

 

すると、カブトが静かに語りかける。

 

「……そんなに警戒しなくていいよ、ミズノさん。

君のことは色々しらべさせてもらったから知っている。

僕は、彼をどうこうしようとは思っていないから大丈夫だよ」

 

淡々としていた。

しかし悪意や毒気は微塵も感じない、透き通った声音。

 

「どうして、あなたがサスケを……?」

 

掠れた声でミズノが問うと、カブトはふっと自嘲するように息をついた。

 

「イタチ君には……返すことのできない大きな借りがあるからね」

 

その名前を聞いたミズノの目が大きく見開かれる。

 

「イタチお兄様に……借り……?」

 

「そう。僕は抜け出せない無限のループの中で、ずっと迷子になっていたんだ。うちは一族の禁術……イタチ君の『イザナミ』の中でね」

 

カブトの声には、深い悔恨──しかしそれ以上に感謝の色が滲んでいた。

 

「僕は自分が何者なのか分からなくなっていた。

己を失い、利用され、最後には他人の力をかき集めていた僕に……イタチ君は本当の自分を見つめ直すチャンスをくれた。 

だからこれは、僕を救ってくれた彼へのせめてもの恩返しさ」

 

その瞬間──ミズノの視界を塞いでいた霧の奥で、ふわりと温かい風が吹く。

 

(お兄様……)

 

イタチが残した愛は不器用で、残酷だった。

 

けれど、彼が残した想いは決して消えてなどいない。

 

イタチが救った敵が、巡り巡って今──サスケの命を救おうとしている。

 

彼が一人で背負ってきたものが、彼の知らぬ場所で実を結ぶ。

 

(イタチお兄様の想いは……繋がってる)

 

ミズノの瞳から、ポロポロと大粒の涙がこぼれ落ちていった。

 

その様子を横目で見やりながら、カブトは鋭く指摘した。

 

「ミズノさん……君、その目ほとんど見えていないね?」

 

「え……」

 

「君の目は、永遠の万華鏡写輪眼。

本来ならどれほど瞳力を使おうと、失明するリスクはないはずだ……でも、今の君の視神経はひどく消耗している」

 

カブトは極めて冷静に言葉を続ける。

 

「君がどれほど無茶な戦いをしていたか……見れば分かる。

その結果が今の状態だ」

 

 

マダラの憑依、救いの千鳥、怒りの猛攻──

 

 

全てがミズノの瞳を蝕んでいた。

 

 

ミズノはただ静かに唇を噛み締め、俯く。

 

「でも、絶望することはない。君の目は“永遠”だ。

そして千手の生命力もある……完全な闇に落ちることはない」

 

カブトの言葉に、ミズノは顔を上げた。

 

「神経のダメージが回復すれば、いずれ視力は戻るはずだ。

ただそれが明日なのか、それとも何年も先なのか……僕にも分からない。それほどまでに、君の目は限界を超えている」

 

「……」

 

(……もう、この戦争では役に立てないかもしれないんだ。

全てをこの目で見届けるって決めたのに……)

 

ミズノはサスケの手を強く握りしめた。

 

(でも、サスケの命が繋がるなら……私は……)

 

彼女の心の揺らぎを感じ取ったのか──カブトはそれ以上何も語らなかった。

 

 

「カブト……といったか。お前、その身体に兄者の細胞を使っているな……今からワシがいう通りに小僧を治療しろ」

 

 

二人の会話が途切れたと同時に、扉間がカブトへと助言し始める。

カブトは彼に言われた通りに黙々とサスケを治療していった。

 

しばらくすると、ミズノが握っていたサスケの手に温もりが戻り始める。

 

 

──その時

 

 

「サスケェ!!」

 

遠くから、切迫した叫び声。

そして、荒い足音が近づいてくる。

 

「サスケ!! サスケェ!!」

 

砂塵を巻き上げて飛び込んできた赤い髪の少女──香燐は、サスケの傍らにいるカブトを見た瞬間、鬼のような形相で歯を剥いた。

 

「──お前ッ!! サスケに何してやがる!! サスケから離れろ!!」

 

「見ての通りだよ。治療中だ」

 

カブトは手を止めず、静かに答える。

 

香燐の背後から、大蛇丸、水月、重吾の影が追いつく。

 

「香燐、落ち着きなさい。

カブトが言っているのは本当のことよ。

サスケ君のチャクラが戻ってきているでしょう」

 

香燐が感知すると、確かにサスケのチャクラを感じた。

 

「サスケ……」

 

香燐は安堵し、サスケの側へ手をつく。

 

血の気の失せた顔──こんなサスケを見たのは初めてだった。

 

香燐から、押し殺した嗚咽が漏れる。

 

「お前が一緒にいて、なんでこーなるんだよ……!」

 

香燐の瞳がミズノを捉えた。

 

「ごめんなさい……サスケを守れなくて……」

 

ミズノの掠れた声が落ちる。

 

香燐はしばらくミズノを睨んでいたが、やがて小さく舌打ちして視線を逸らした。

 

 

そこにいる皆が、サスケを見つめていたその時──

 

 

「ミズノさん!! 」

 

「ミズノ!!」

 

沈黙を切り裂いて、聞き慣れた大きな声が飛び込んできた。

 

力強く凄まじい足音。

 

冷え切った空気を押し退けるように、灼熱の太陽のような真っ直ぐな気配が間近に迫る。

 

「リー君?……ガイ先生?」

 

土煙を上げて二人がミズノに駆け寄った。

 

「大丈夫ですか……ッ!」

 

ドサリと膝をつく音。

 

冷え切ってボロボロになっていたミズノの手を、分厚い掌が包み込んだ。

 

日々の血を吐くような修練を物語るように硬く、そして温かい手。

 

直後、ミズノの手の甲に熱い雫が落ちる。

 

「リー君、泣いてるの……?」

 

掠れた声で紡ぐミズノの手を、リーは痛いほどに強く握りしめた。

 

「ミズノさん!目が見えてないんですか……!?」

 

リーの嗚咽が漏れたその時、彼の肩をポンと叩くもう一つの気配。

 

「……泣いている暇はないぞ、リー!我々が今、成すべきことは一つだ」

 

低く、落ち着き払った声。

 

「ミズノ……奴はどこへいった?」

 

いつもの声音とは違う、深い凄みがそこにはあった。

 

「オビトの左目を回収しに行くと……言っていました」

 

見えなくとも、ミズノは肌で感じる。

 

ガイの奥底で、恐ろしくも神々しい気配が圧縮され始めているのを。

 

ガイは静かに、けれど鋼のような強さで宣言した。

 

「マダラは、俺たちが必ず止める。

ミズノはここで生きることだけを考えていろ」

 

「ガイ先生……」

 

ミズノの手を包んでいた温もりが離れ、リーが立ち上がる気配がした。

 

鼻をすする音と共に、決意に満ちたリーの強い声が降ってくる。

 

「ミズノさん、今度は僕たちが守る番です!!」

 

直後、鼓膜を劈(つんざ)くような突風が吹き荒れた。

 

二人の体術使いが、音を置き去りにして死地へと飛び立つ。

 

 

あとに残されたのは、肌を焼くような彼らの熱の余韻──

 

 

見えない瞳の奥で、ミズノは遠ざかる二つの気配に向かって、無事を祈ることしかできなかった。

 

 

 

 

──その頃

 

 

ミズノたちがいる場所から離れた戦場では、かつてないほどの濃密な絶望が満ちていた。

 

「ナルト……! 絶対に死なせない!!」

 

サクラの悲痛な叫び。

必死に心臓マッサージを続けている。

 

瀕死のナルトを救うための唯一の希望──四代目火影・ミナトの内に封じられていた九喇嘛の半身は、今まさに最悪の形で奪われていた。

 

「ヒヒ……助カッタヨ。ワザワザ九尾ヲプレゼントシテクレルトハネ」

 

オビトの半身を黒く侵食した“黒ゼツ”が、気味の悪い笑い声を漏らす。

 

カカシは血走った目で、かつての友の身体を乗っ取ったゼツを睨みつけた。

 

「オビトの身体から……離れろ!」

 

「ソウハイカナイ。

コノ左目ハ、大切ナ供物ダカラナ」

 

 

不意に──カカシとミナト、サクラの肌に死を突きつけられたような“悪寒”が撫で上げた。

 

空気が重圧で軋み、戦場の土が巨大な力の渦によって吹き飛ばされていく。

 

「……遅いぞ、黒ゼツ。

こちらから出向いてやったわ」

 

空から舞い降りたのは、もはや忍の域を超えた“神” の存在。

 

十尾をその身に宿し、六道の力を得たうちはマダラ。

 

錫杖(しゃくじょう)を手にして悠然と降り立った瞬間──

 

その場にいる全員が、呼吸をすることすら忘れるほどの圧倒的な恐怖に縛り付けられた。

 

カカシは額に汗を滲ませながら、写輪眼を構える。

 

ミナトは息子を守るためにマダラの前に立ちはだかった。

 

「……マダラ様」

 

「いつまでオビトにへばりついている」

 

「スミマセン……デスガコイツラカラ九尾ノ半身モ、ウバッテオキマシタ」

 

「よし、左目と合わせて持ってこい」

 

すると、黒ゼツがズルズルと音を立てながらオビトから離れていく──しかし離れられず、再びオビトの半身へと戻っていった。

 

「貴様!マダ……」

 

執念で黒ゼツを引き戻したオビトは、マダラへ問う。

マダラにとって自分はなんだったのかと。

 

 

 

──お前は、マダラだ。

 

 

 

彼がそう答えた瞬間、ゆっくりとオビトは歩を進めていく。

 

 

 

ミナトとカカシ、我愛羅が連携をとり螺旋丸を六道マダラへと打ち込んだ。

 

しかし──ミナトの左手は六道マダラの錫杖によって切断される。

 

更に、打ち込まれた攻撃により身体が塵のように吹き飛ばされた。

 

「先生!」

 

叫ぶカカシへ、交わされた螺旋丸が飛んでくる。

 

「ぐっ!!」

 

吹き飛ぶカカシを我愛羅が庇った。

 

 

「そんな……」

 

 

一部始終を見つめていたサクラが、絶望を嘆いた。

 

マダラの冷酷な視線がオビトを射抜き、手を差し出す。

 

「さぁ……」

 

 

──ズボッ

 

 

オビトの腕が六道マダラへと差し込まれた。

 

「なんの真似だ……」

 

 

「俺は……あんたじゃない。

今の俺は火影を語りたかった……うちはオビトだ!」

 

 

(オビト……お前、やっと自分を……)

 

荒い息を整えながら、カカシはオビトの背中を見つめる。

冷え切っていたカカシの胸の奥で、かつて散ったはずの親友が確かな熱を帯びて蘇っていた。

 

自身に差し込まれた腕を見つめたマダラは、オビトに仙人の力を吸収され尾獣を抜かれていると気がつき、左目を奪おうとする。

 

しかし、マダラの手は彼の身体をすり抜けた。

 

「カカシ!ナルトを時空間へ運べ!」

 

その言葉と共に、ナルトとサクラは時空間へと消える。

 

「ナルトは運んだ!あとは向こうへお前が飛べばナルトは助かるってことだな!?」

 

カカシがオビトの隣へと並ぶ。

 

「ああ、任せろ。

そして今回は俺がメイン……お前はバックアップだカカシ。

覚悟はいいか」

 

「久かたぶりのツーマンセルだな。

しくじるなよオビト……最後の作戦がお前とでよかったよ」

 

瞬間──六道マダラの背後に浮かぶ二つの黒い球体が、命を刈り取ろうと放たれる。

 

 

── 神威!!

 

 

二人は同時に術を発動させ、その勢いでオビトはナルトのいる時空間へと消えていった。

 

 

もう一方の黒い球体は、カカシの神威によって飛ばされていく。

 

 

 

──刹那

 

 

 

空気を引き裂く轟音と共に、木ノ葉の旋風がマダラの顔面に叩き込まれた。

 

「ぐはッ!?」

 

六道の力により、絶対的な防御を誇るはずのマダラの身体が凄まじい物理的な衝撃によって吹き飛ばされていった。

 

巻き上がる土煙。

 

カカシ達の前に降り立ったのは、限界までチャクラを練り上げ、全身から青い汗を蒸発させている友の背中だった。

 

「木ノ葉の気高き碧い猛獣、見参!!」

 

「ガイ……! 」

 

「大丈夫か、カカシ!」

 

いつものようにニカッと歯を見せて笑うガイ。

 

「ここからは、俺の出番だ!!」

 

六道の力をもつマダラに対し、ただ己の肉体のみを極めた体術使いが今──立ちはだかった。

 

 

 

 

現実世界で碧き猛獣と、神の如き力を持つ怪物が激突しているその裏側──

 

 

 

生死の境を彷徨う二人の若き忍の意識は、深く、静かな“精神の狭間”へと沈み込んでいた。

 

『ここは……』

 

暗闇の中で、サスケはゆっくりと瞼を開けた。

先程までの胸を貫かれていた痛みも、冷たい土の感触もない。

 

そこは足元には水鏡のような波紋が広がり、どこまでも澄み切った冷たい空気が肌を撫でる──

果てのない静寂が支配する不思議な空間だった。

 

 

『……ようやく目覚めたか。インドラの転生者よ』

 

 

唐突に、荘厳な声が落ちてきた。

 

サスケが鋭く視線を向けた先──

 

薄明かりの中に浮かび上がったのは、宙に浮く異形の老人の姿だった。

 

輪廻眼が静かにサスケを見据えている。

 

『お前は……』

 

『我が名はハゴロモ。

忍宗の開祖にして、六道仙人とも言う』

 

老人の言葉に、サスケは小さく息を呑んだ。

 

 

──伝説上の存在、忍宗の開祖。

 

 

ハゴロモは、“うちは(インドラ)”と“千手(アシュラ)”の長きにわたる因縁、そのすべての始まりについて静かに語り出した。

 

 

『……インドラの転生者よ。

お前はこの戦いの果てに何を望む?』

 

 

 

六道仙人・ハゴロモの静かな問いかけに、サスケは無言のまま伏せていた視線を上げる。

 

脳裏によぎるのは、兄とミズノの姿。

 

うちはの業、忍の宿命という呪いに縛られ、暗闇の中で他人のために己を犠牲にした──

 

(俺は……)

 

サスケの瞳の奥で、新たな炎が灯る。

 

『兄は、里のためにすべてを背負って死んだ。

そして今……身をすり減らし、兄の残したものを守ろうとしている奴がいる』

 

ぽつりと溢したサスケの言葉に、ハゴロモがわずかに眉を動かす。

 

サスケは真っ直ぐに、伝説の瞳を睨み返した。

 

『兄の生き様も、あいつの痛みも……これまでの忍が作ってきた負の遺産は、俺がすべて背負って切り捨てる』

 

サスケは無言のまま、己の左手を見つめる。

 

サスケの瞳に、かつてないほど強靭な光が宿っていた。

 

それは復讐ではない。

 

守り抜くという揺るぎない覚悟の輝き。

 

その淀みない眼差しに、ハゴロモは小さな希望を見出した。

 

 

(インドラの転生者が……他者への“愛”のためにすべてを背負うと言うか)

 

 

 

──同じ頃

 

 

別の精神空間でもナルトがハゴロモと対峙し、ナルトの中に眠る“アシュラ”の魂と、これからの未来について真っ直ぐな言葉をぶつけ合っていた。

 

 

 

『お前達がどうするか……どうなるかはお前達次第だ』

 

 

 

長い、長い兄弟の争いを──今代で終わらせるか否か。

 

 

サスケ、そして別空間で同じように覚悟を語ったナルトに向け、ハゴロモはゆっくりと両手を差し出した。

 

『さあ、利き腕を出せ。

我が力をお前たちに託そう』

 

差し出されたハゴロモの右手にナルトが、左手にサスケが──

 

それぞれ力強く、己の利き腕を重ねる。

 

二人の掌に世界を創造し、そして破壊をも内包する陰と陽のチャクラが流れ込んできた。

 

全身の細胞が粟立つほどの、圧倒的で神聖な力──

 

サスケの左手に現れた『三日月』の印。

 

ナルトの右手に現れた『太陽』の印。

 

 

 

 

──現実世界で二人の心臓が、再び力強い鼓動を取り戻そうとしていた。

 




読んでくださりありがとうございました。
それぞれのキャラクターの”想い”が繋がっていく章を書きたかったので、伝わっていたら嬉しいです。
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