月と樹と写輪眼 ─もう一人のうちは─   作:琴葉つきね

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お読みいただきありがとうございます。
第四章は少し切なく、そして緊張感のある展開になりますが、どうぞ最後までお楽しみください。



第四章 潜入、そして夜空への誓い

深夜の木ノ葉隠れの里の暗部本部。

 

暗闇に包まれた部屋の奥にランの姿があった。

 

それは“うちはミズノ”が繕う仮の名と姿。

 

 

──彼女は情報書を握りしめていた。

薄暗い月明かりの中、思い詰めているような表情を浮かべている。

 

 

「ついに、見つけた……」

 

 

握りしめていた書類には暗部達が密かに調査し、発見した暁のアジトの位置を示す地図が記されていた。

 

ランが一歩を踏み出そうとした瞬間、背後から低く静かな声が響く。

 

 

「行ってはならん」

 

 

振り返ると、そこには三代目火影ヒルゼンの姿があった。

月光に照らされた彼の表情には、深い憂いが刻まれている。

 

重苦しい沈黙が二人を包み込む中、ランはヒルゼンを鋭い目つきで見つめながら口を開いた。

 

「なぜですか?ヒルゼン様は私を強くなったと認めてくれたはずです。里の中でも優秀な忍だと言ってくれた。猿鬼との口寄せの契約を結び、それからも修行を続けてきました」

 

「私には……チャクラを消す能力があります。誰にも気づかれずに潜入出来るのは私だけ。やっと、暁のアジトの場所がわかったんです!それなのに……何もせずにいろと?お兄様の様子を探り、暁の情報と目的を探ってきます。それなら“正当な理由”になりますよね?」

 

ヒルゼンはランから目を逸らすことなく、冷静な声で忠告する。

 

「私情で勝手に動くことは許さん。お前は“忍”なのじゃ。」

 

ヒルゼンの言葉にはっと息を呑む。しかし、ランは反抗的な瞳で更に語気を強めた。

 

「イタチお兄様は里の闇を一人で背負った。大切な人たちを手にかけて、その上犯罪者集団、暁のスパイまで。里の為に尽くしている彼が、今どんな状況にいるのか気にならないんですか?」

 

彼女は微かに声を震わせながらも、ヒルゼンを真っ直ぐ見つめている。

 

「忍である以上、私情で動いてはいけないことはわかっています。でもお兄様が無事でいるのか知りたいんです。任務としてなら問題ないはずです。火影として命じてください!」

 

ヒルゼンは大きくため息をつき、皺の刻まれた片手で目を瞑った。

 

しばらく黙していたが、ゆっくりと顔を上げる。

 

「確かにお前は優秀な忍じゃ。この五年間、お前は来る日も来る日も欠かさず修行をしていた。多くの術を習得し、万華鏡写輪眼も開眼している……」

 

「……それだけ強い意志があるのなら、お前に特別任務を命じる。暁のアジトに潜入し、奴らの情報を得てくるのじゃ」

 

 

「ヒルゼン様……!ありがとうございます!!」

 

ランは一礼し、一瞬で姿を消し去った。

 

 

ヒルゼンは物憂げな表情で、再び深く息をついたのだった。

 

 

 

──暁のアジト。

 

 

森の最奥、巨大な岩が折り重なっている洞窟があった。中は薄暗く、冷たい空気が身体にまとわりつきながら皮膚の奥まで染み込んでくる。そして、鼻をつく薄い血の匂い。

 

ランは自身のチャクラを完全に消し、物音を立てないよう慎重に進んでいく。

 

彼女が自分のチャクラを完全に制御できるのは、祖母譲りの特別な能力だった。

 

しかし、精神が安定していないと失敗する。

 

今、その身体は僅かに震え、呼吸が浅くなっていた。

 

(大丈夫。……落ち着けば上手くいく。もし見つかっても、今の私なら負けない)

 

自分にそう言い聞かせながら、足を進めていく。

 

得体の知れない犯罪者集団の中枢部に一人。見つかればどうなるかわからない。

 

しかし、この好機を絶対に逃したくない──。

 

自分自身を奮い立たせていたその時、暁のメンバーであろう二人がなにやら話している声が聞こえてきた。

 

素早く身を隠し、会話に耳を傾ける。

 

「おい!鬼鮫!イタチを見なかったか?」

 

「おや、デイダラさん。イタチさんは朝から見ていませんね。またあのいつもの丘の上で修行しているんじゃないですか?修行は日課のようですから……最近持病が悪化してあまり体調がよくないようなので、少し身体を休めるようにペインさんに言われているんですけどねぇ」

 

「そのペインがあいつを呼んでるんだよ。まぁいいや……オイラあいつの事なんてどーでもいいしな。うん」

 

その後、他愛もない会話をしながら二人の足音が遠ざかっていった。

 

ランは二人の会話を聞き、力無くその場に立ちすくんでいた。

 

(お兄様の持病……?そんな話聞いた事ない)

 

ランは眉を上げ、呼吸を整える。

 

(少しでも、イタチお兄様の姿を見ることができたら……)

 

彼女は素早く暁のアジトから外に出て、イタチの姿を探した。暁の二人が話していたであろう丘を見つけたが、そこに彼の姿は見当たらなかった。

 

「お兄様……」

 

ランはしばらく辺りの様子を見渡していたが、諦めて暁のアジトに再び戻る。

 

しばらく岩陰で息を潜めていると、鬼鮫とデイダラという人物が再び姿を現した。

 

どうやら彼らの会話の中で幾度となく現れる、“ペイン”いう人物が暁のリーダーのようだ。

 

「全ての尾獣を集めて禁術兵器をつくるなんて……すごいこと考えるよなぁ、ペインは。芸術といえば芸術だな、うん」

 

 

「そうですねぇ。世界中に痛みを知らしめる事で戦争を終わらせるなんて私には……ペインさんの考えはよくわかりませんが。まぁ、理由はなんでもいいんですけどね……」

 

 

(戦争を終わらせる為に尾獣を兵器に?そんな方法で……平和になると思ってるの?)

 

彼らの会話を聞きながら、ランの表情に小さな怒りが浮かぶ。

 

(うちの里にも九尾を封印されたサスケと同じ班の“うずまきナルト”がいる。彼が狙われる……?)

 

その後、しばらくすると鬼鮫とデイダラはアジトからでていった。

 

(今得られる情報はとりあえずこのくらいか……ヒルゼン様に報告しないと。急いで里に戻ろう)

 

ランはアジトから姿を消し、急いで木ノ葉の里へと戻っていった。

 

 

──火影室。

 

里へと戻ったランは、ヒルゼンへ暁のアジトで得た情報を報告していた。

 

ヒルゼンは静かに耳を傾けている。

 

「……よく無事に戻ってきた。暁の目的、暁を束ねている者の名がわかったことは大きな収穫じゃ。対策を考え手を打たねばならん」

 

「ヒルゼン様……一つ聞きたいことがあります。イタチお兄様が病気だと暁の者が話していました。何か……知っていますか?私は子供の頃から一緒にいましたが何も知らなくて…」

 

ヒルゼンは記憶を辿るように顎の髭を撫でた。

しばらくすると、小さく首をふる。

 

「いや、イタチが病気などという話は聞いたことがないな……」

 

「そうですか……」

 

(私もヒルゼン様も知らないということは、里を抜けてからお兄様の身体に何かが起こったんだ……一体なんの病気に?)

 

しばらく思考を巡らせていたが、ヒルゼンの視線を感じて顔を上げる。

 

「すみません……報告は以上です。失礼します」

 

一礼して火影室から出て行く。

 

「イタチ……」

 

ヒルゼンはランが出ていった扉をしばらく見つめ、小さくその名呟いた。

 

 

外へ出たランの足取りは重い。

 

(イタチお兄様……命に関わる病気なのかな。一体いつから……?助けたいのに、そばに居ないと何もできない)

 

目元が熱く滲み、視界が霞んでいく。しかしグッと唇を噛み締め、堪えた。

 

(泣くのは救えなかった時だけ。お兄様の方がずっと苦しいはずだから。どんな事があったとしても、私が必ず助ける。)

 

 

──夜空を見上げ、再び強い決意を胸に宿し、帰路につくのだった。




ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。
潜入の緊張感や、ミズノの葛藤、そしてサスケを見つけた時の心の揺れを感じていただけたなら嬉しいです。

次の章では、彼女の想いがさらに大きく揺れ動きます。
どうか見届けていただければ幸いです!
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