月と樹と写輪眼 ─もう一人のうちは─   作:琴葉つきね

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ここから物語は、大きな転換点を迎えます。
仲間と過ごした日々が音を立てて崩れ去り、サスケは自らの道を選ぶことに――。
それを見つめるミズノは、止めたい気持ちと、どうしようもない運命の狭間で揺れ動きます。

最後まで見届けていただけると嬉しいです。



第五章 木の葉散り、闇おちる

暁のアジトへの潜入後、ランの日々は表面上穏やかなものだった。

 

里では中忍試験の予選が行われ、サスケ達は見事に予選を通過していた。

 

(よかったねサスケ、きっとあなたなら本選も勝ち抜ける)

 

 

だが、静寂は長くは続かなかった。

 

 

──中忍試験本選•当日

 

サスケと砂隠れの我愛羅が対戦中、突如会場に紛れ込んでいた音隠れの忍が場内全体に幻術をかける。

 

さらに”風影”を装っていた男が正体を現す。

 

 

──伝説の三忍の一人、抜け忍の大蛇丸だった。

 

音隠れと砂隠れの連合部隊が木ノ葉の壊滅を狙って襲来する。

 

木ノ葉の忍達は応戦し、必死の戦いを繰り広げた。

 

 

そして三代目火影•ヒルゼンは里を守る為、かつての弟子、大蛇丸と相対する。

 

 

激闘の末、ヒルゼンはその命と引き換えに、彼の両手を封印した。

 

 

 

──三代目火影、猿飛ヒルゼンの葬儀の日、空からはまるで弔いの涙のように、大粒の雨が降り続いていた。

 

葬儀が終わり、ヒルゼンの墓前に静かに佇むラン。

 

その頬を冷たい雨粒が静かにつたう。

 

 

「ヒルゼン様…」

 

 

ランは墓石を見つめながら、彼に託された最期の言葉を思い返す。

 

 

 

「幼いお前に、辛く苦しい思いをさせてしまい、すまなかった。

今、わしは火影として、そしてかつての師として、大蛇丸と戦わねばならん。

 

わしに万が一のことがあれば、今まで目を瞑っていた里の上層部が動き出し、サスケに危険がおよぶかもしれぬ。

 

イタチとの約束を守る為にも、サスケをお前に託す。

わしの最後の弟子であり、木ノ葉の“火の意思”をつぐ

うちはミズノよ」

 

 

「………」

 

(どうして争い続けるの?

同じ忍同士なのに、なぜ傷つけあうの…)

 

ランはそっと空を仰いだ。

 

降りそそぐ雨がまつ毛を濡らす。

 

(イタチお兄様も同じ気持ちだった…?

ヒルゼン様無き今、サスケを守る後ろ盾がなくなってしまった。もうすでに里の上層部が動き出そうとしているかもしれない。

 

でも…私がサスケを守る。必ず)

 

ランは何度目かの決意を胸に、静かに手を合わせ、墓前を後にした。

 

 

 

 

──やがて里が少しずつ落ち着きを取り戻し始めた頃

 

 

木の葉の里の静かな茶屋。店の奥に二人の影が佇んでいた。

 

長い黒髪の男”うちはイタチ”、そして鮫のような容貌を持つ“干柿鬼鮫”

 

その場にただよう空気には、なんとも言えぬ冷え冷えとした緊張感が張り詰めている。

 

茶屋の外にはサスケとはたけカカシの姿。

 

弟の姿を見つめイタチはかすかに目を細めた。

 

店内に漂う茶の香りが、静かに揺らめく。

やがて目配せ一つで、二人は茶屋を後にした。

 

 

──九尾の人柱力を捕らえるという新たな任務を遂行する為に。

 

 

 

ランは暗部としての復興任務についていたが、今日は束の間の休日。

買い物の途中、ふと懐かしい気配を感じてぴたりと足を止める。

 

(このチャクラ…!まさかイタチお兄様!?

ヒルゼン様の死を知って、サスケの無事を確かめに?

でも、暁の目的は尾獣…まさかナルト君を?)

 

正体を知られてはならない自分。

 

けれども迷ってはいられない。サスケにも危険が及ぶかもしれない。

 

ランは意を決してチャクラを消し、彼の気配を感じる方向へと走りだした。

 

 

 

──その頃

 

まさにイタチと鬼鮫がナルトと対峙している現場へ、

サスケが駆けつける。

 

復讐対象を見つけたサスケは、感情が高ぶりイタチへ千鳥を放つ。

だが、力の差は歴然だった。

 

イタチは“月読“をかけ、あの日の斬撃を繰り返し見せ続けた。

 

 

一族を切り伏せる自身の姿を。

 

 

「お前は弱い。何故弱いか。…足りないからだ、憎しみが」

 

 

サスケの心により深い闇を植えつけたイタチは鬼鮫と共に、その場を去る。

 

彼らを見つけ、遠くからその一部始終を見届けていたラン。

 

イタチの行動に身体の震えが止まらない。

 

(お兄様がサスケをあそこまで傷つけるなんて…

憎しみなんかで強くなるわけない。

どうしてサスケに本当の事を言わないの…)

 

ランは自身の震える身体と、乱れる感情を必死に抑えこんでいた。

 

 

──その後

 

イタチと鬼鮫はカカシ達と交戦。

イタチはカカシに”月読“を行使。そして里から立ち去っていった。

 

 

 

 

夜、サスケが入院する病室の窓辺にランの影がそっと現れた。

窓の外から、ベッドへ横たわるサスケの顔を見つめる。

 

(サスケはあの日からずっと、お兄様を憎み続けている。私は知っているのに…側にいてもサスケに真実を伝えることもできない)

 

 

悔しさを噛み締めながら、ふと夜空に浮かぶ月を見上げた。

 

 

「イズミお姉様、お兄様は一体何を考えているの?

このままじゃサスケは本当の事を知らないまま、お兄様をただ憎み続けるだけ…」

 

──月は静かに照り続けている。

 

ランの髪が夜風にそっと揺れていた。

 

 

 

サスケとカカシを救う為、ナルトと自来也は綱手を見つけ出し、木の葉の里へと連れ戻す。

そしてサスケとカカシは意識を取り戻し、5代目火影に綱手が就任。

 

ナルトは一段と強くなっていた。

サスケはナルトの急成長に焦りを募らせていく。

 

その心の隙に音の四人衆が入り込んだ。

仲間を思い、迷うサスケ。

 

──しかし”力”を選び、木の葉を去る決断を下す。

 

 

サクラは涙ながらにサスケを引き止めようとするが、届かない。

 

ナルト達はサスケの追跡を開始。

 

ナルトは一人、サスケと終末の谷で対峙する。激闘の果て、千鳥と螺旋丸が衝突した。

 

サスケは勝利するが、ナルトの命を奪うことはせず、自らのやり方で”力“を手に入れることを決意し、傷ついた木ノ葉の額当てを残して去って行った。

 

 

 

──サスケの里抜けの報に、ランは打ちのめされていた。

 

(私は…サスケを守ることができなかった)

 

悲しみと不甲斐なさが胸の奥に込み上げてくる。

 

自分が許せなかった。

 

(追いかけてきた仲間を振り切って里を抜けた。

サスケはそこまで追い詰められていたんだ)

 

心が軋むように痛む。

直接追うことも出来ない歯痒さに、ただ耐えるしかなかった。

 

 

──その後ナルトは自来也と修行の旅へ、サクラは綱手に師事する。

 

 

それぞれが強さを求め、歩み出していく。

 

 

(みんな強くなろうとしている。私も、もっと強くなりたい)

 

 

 

 

──そして約2年半の月日が流れた。

 

 

大蛇丸の元で修行に励んでいたサスケは、その師をも凌ぐ力を得る。

“不屍転生”の器として飲み込まれるも、精神世界で写輪眼を使用。術を跳ね返し、逆に大蛇丸を吸収した。

 

 

再生能力を手に入れたサスケは鬼灯水月・香燐・重吾へ声をかけ、小隊 ”蛇” を結成。

 

 

 

「いくぞ。あいつを……必ず抹殺する」

 

 

 

真実を知らぬまま、復讐の炎だけが彼を突き動かしていた。

 

 

 

 

──元うちは居住区近く。

 

思い出の川辺に彼女はいた。

 

朝露に濡れた木々が木漏れ日に照らされてきらめいている。川のせせらぎが風に乗って響いていく。

 

その中で静かに呼吸を整える、うちはミズノの仮の姿

 

━━“やかぜラン”

 

 

髪をなびかせながら、凛とした気配を纏っていた。

 

 

(もう一度、あの二人と向き合う時が来るまで私は…)

 

翡翠の光を宿した瞳で川の流れを見つめ、静かに拳を握りしめる。

 

 

──その背には強い覚悟と”火の意思”が宿っていた。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
サスケの選んだ道は、もう誰にも止められないものでした。
ミズノにとっても、この瞬間は心を引き裂かれるような別れとなります。

それでも、物語はまだ続きます。
彼女がどんな想いを胸に抱き、これからどう動いていくのか――ぜひ見守っていただければ嬉しいです。

お読みいただきありがとうございました!
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