月と樹と写輪眼 ─もう一人のうちは─   作:琴葉つきね

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今回は、彼女が「仲間」と過ごす中で触れる小さな温もりを描きました。
戦いだけではない、少し穏やかな時間です。
読んでくださる皆さんにも、その暖かさを感じてもらえたら嬉しいです。


第八章 影にひとひらの温かさを

イタチが弟のサスケの前に倒れたその後、ナルト達の前に立ち塞がるトビのもとへ、ゼツが報告を持ち帰る。

 

「イタチは死亡。……だが、サスケも……」

 

その言葉に、ナルトも仲間達も胸の奥で騒めき立つ。しかし、サスケの行く末をただ案じるしかなかった。

 

そして、木ノ葉の里では別の動きが始まる。

ある者の運命は終わり、ある者の運命は動き始めるのであった──。

 

 

 

 

ある日、任務報告を終えた第三班は帰路についていた。

ネジとリーの隣で、テンテンはどこか沈んだ表情をしている。

 

「テンテン?今日は一日中浮かない顔をしていますが、何かあったんですか?」

 

「確かにな。動きもいつもよりキレがなかった」

 

テンテンは目を伏せ、小さく息をつく。

 

そして足を止め、二人を見つめた。

 

「ごめん……実はさ、少し前からお父さんの身体の具合が良くなくて。今お母さんがお父さんの看病しながらうちの忍具屋の事もやってるんだ。色々考えてたの……私、今は家族を支えたい。だから、一度忍をやめようと思う」

 

その声は微かに震えている。

 

リーとネジは思わぬ告白に、しばらく言葉を失っていた。

 

 

沈黙を破ったのはリーの声。

 

「テンテン……悩んでいた事に気がつかず、すみませんでした。

沢山悩んで決意したはずです。正直……寂しいですが、家族は……大切です!忍にはまた戻れます!いつでも三班に戻ってきて下さい。僕たちは待っています!!」

 

ネジは頷いた。

 

「俺もリーと同じだ。お前の判断、理解している」

 

テンテンは目に涙を溜めていた。

 

「2人共……ありがとう」

 

 

──こうして、第三班は大切な仲間が離脱し、空席を抱えることになる。

 

 

 

数日後の火影室。昼下がりの柔らかな日差しが窓から差し込んでいた。5代目火影・綱手は机に向かい、手元の書類に目を通している。

 

その表情にはどこか憂いが滲んでいた。隣に控えているシズネも表情が少し硬い。

 

──ドアをノックする音がした。

 

「……入れ」

 

「失礼します。何か急ぎの任務でしょうか」

 

“やかぜラン”が部屋に入ると綱手は手を止め、顔を上げる。

 

「……テンテンという忍が事情により、三班から離脱した。欠員が出ているのだ。やかぜラン、お前を第三班に配属する」

 

ランは表情を変えずに尋ねる。

 

「五代目の命令なら従います。でも、なぜ私を?」

 

綱手は机に肘をつき、瞳を細めた。

 

「……お前は“信用できる”そして、班の戦闘能力のバランスを考えた上での判断だ」

 

シズネが言葉を添える。

 

「火影側近の暗部。そして他の暗部の隊員から、実力も申し分なく、三代目からの信頼が厚かったと聞いています。そこで、あなたをと」

 

綱手は声を落とした。

 

「表向きは欠員補充。だが一つ裏がある……“監視”だ」

 

「監視?」

 

「そうだ。今七班には“根”出身のサイという忍が加わっている。根の創設者であるダンゾウの腹の内を読むのは容易ではない……疑っているわけではないが、もし動きに不審な点があれば、気づける者が必要だ」

 

静かに耳を傾けていたランは息を吐き、静かに頷いた。

 

「欠員補充と、影の任務……というわけですね」

 

「無理を言っているのは承知の上だ」

 

綱手は真っ直ぐランを見据える。

 

「だが、お前自身にとって、仲間と過ごすことは決して無駄にはならないはずだ……孤独の中で強さを得るものもいるが、仲間と過ごす事で得られる強さもある」

 

人との関わりを極力避けるようにしている彼女の事を綱手は知っているようだ。

 

ランは瞼を伏せる。胸の奥にしまい込んでいた孤独が少し、疼いた気がした。

 

「……わかりました」

 

その声音は冷静だったが、心の内では希望なのか恐れなのか、判別のつかない感情が揺れている。

 

「では急ぎ、お前には三班に加入してもらう。ガイ!」

 

名を呼ぶと勢いよく火影室のドアが開かれ、上忍のマイト・ガイが姿を現した。

 

「お前がやかぜランか!!俺は三班の担当上忍、木ノ葉の碧い猛獣マイト・ガイだ!歓迎するぞ!お前も青春の一員だ!!」

 

ガイはニカっと笑って親指を立てている。

 

 

「………」

 

 

三人は押し黙り、ガイをただ見つめていた。

 

彼はその勢いのまま、ランを三班の二人に紹介すると言い、火影室から連れ出していった。

 

 

──里の修練場

 

 

「さぁ!新しい仲間を連れてきたぞ!!」

 

「話は聞いている……」

 

沈着な声。木ノ葉の名門、日向一族の日向ネジ。

 

その隣で、熱気を帯びた声がはねる。

 

「青春の風がまた一つ!ですね!」

 

体術のロック・リー。トレーニングをしていたのか滝のような汗を流していた。

 

ガイは両手を腰に当て、三人の顔を見回す。

 

「では自己紹介をするぞ!まずはランから頼む!」

 

ランは落ち着いた声で淡々と話し始めた。

 

「私はやかぜラン。私の事は色々と聞いていると思うけど……昔、故郷を襲われて両親をなくし、三代目に助けられた。アカデミー卒業後は火影側近の暗部に配属。五代目の命令で、欠員が出たこの班に加入することになった。年齢はあなた達より一つ上の17歳。よろしく」

 

ネジは鋭い目で彼女を見つめながら、自身も口を開く。

 

「日向ネジだ。お前がどの程度の実力なのかはわからないが……よろしく頼む」

 

続けて、興奮気味にリーが自己紹介を始めた。

 

「僕はロック・リーといいます!体術なら誰にも負けません!あなたの話はボクも聞いています。お互いを知るためにも、ぜひ一度手合わせしてください!」

 

リーは構えをとる。

 

「落ち着け……リー」

 

ネジがため息をつく。

 

「おお!いい考えだ。任務をこなす上でお互いの戦法がわかっていた方が連携がとりやすい!ランの事は話を聞いていただけだからな!よし、今から手合わせを行う!」

 

ガイの親指が、快晴の空へ向かってまっすぐ伸びた。

 

「………」

 

リーとガイの熱のこもった声に、ランは圧倒される。

 

(リー君とガイ先生、いつもこんな感じなのかな。

ネジ君大変そう……)

 

「……わかりました。やります」

 

ランの返答を合図にするように、リーが力強く一歩踏み出した。

 

「では、ボクからいきます!」

 

彼が構えた瞬間、空気が変わる。ランも静かに構えをとった。

 

「よし!始めっ!!」

 

ガイの掛け声と同時に、リーが疾風のごとく突進していく。

 

(速い……そして鋭い。でも速さなら、私だって負けない)

 

次の瞬間──ランの姿がふっと掻き消え、リーが振り返ったときには、もう背後に彼女がいた。

 

蹴りが頭部へ届く寸前で止まる。

 

風が頬をかすめると、リーの瞳が大きく見開かれる。

 

「……っ!速い…!」

 

すぐに正面へと向き直り、リーは深く頭を下げた。

 

「速さには自信がありましたが……まだまだ修行あるのみですね。ランさん、手合わせありがとうございました!」

 

その声には悔しさよりも、むしろ感動が滲んでいた。そしてすぐに彼は、当然のようにスクワットを始めている。

 

ランはその彼の姿に、思わず微かに口元を緩めた。

 

(真っ直ぐで、眩しい人……)

 

 

──すると、静かな拍手が場の空気を切り替えた。

 

 

「次は、俺だ」

 

低い声とともに、ネジが一歩前に進み出る。白い瞳がランを鋭く射抜いていた。

 

(……日向ネジ、白眼の使い手。リー君とはまた違う手強そうな相手)

 

彼女は表情を引き締め、構える。ネジの瞳がわずかに細められた。

 

「始めっ!!」

 

リーの熱気とは対照的な、冷たい緊張感が二人を包み込んでいる。ネジは白眼を開き、冷静に彼女を分析していた。

 

(この感じ、只者ではないな……)

 

ランは息を整え、地を強く蹴り上げると低く身を滑らせる。瞬間、ネジがすかさず迎撃に出る。

 

「八卦空掌!」

 

「……!」

 

掌が鋭く迫り、巨大な衝撃波がランを襲う。だが彼女は遅れずそれを避けた。素早くクナイを取り出し、攻め込んで行く。

 

空気が裂け、柔拳とクナイを持った手が互いの急所に迫る。

 

(読まれている?)

(速い!)

 

二人の攻撃は寸前で交差し、ピタリと止まった。

ランのクナイはネジの首元へ。ネジの掌はランの肩口へ。

 

「……」

 

 

──沈黙の数秒。風の音だけが流れている。

 

 

やがて二人は同時に構えを解き、距離を取った。

 

ネジは表情を崩さず、白眼を閉じる。

 

「……やはり只者ではないな」

 

ランもまた表情を崩さぬまま、彼と視線を合わせた。

 

「あなたも……一瞬の隙すらない」

 

(冷静さ、速さ、技の正確さ……本当に強い)

 

 

相打ち──。

 

 

二人の間には、お互いを認め合う静かな信頼が芽生えていた。

 

その空気を切り裂くように、ガイの声が響き渡る。

 

「おおおおっ!!!互いに一歩も譲らぬ熱き激突!!」

 

耳をつく急な大声に、ランはビクリと肩を揺らした。

 

(声が大きすぎる……!)

 

大袈裟な身振りと共に、ガイは親指を突き上げ、目尻に涙まで光らせている。

 

「これぞ仲間!!これぞ青春!!」

 

リーも隣で拳を握りしめ、感極まった表情で叫ぶ。

 

「二人共すごいです……!!まさに青春の輝き!!」

 

彼らは地面に伏せ、片腕で勢いよく腕立て伏せを始める。

 

「うおおお!感動の鍛練です!!!一、二……」

 

 

「………」

 

 

ランの額から小さな汗が伝う。

 

(本当に元気な二人。毎回これやるのかな……)

 

ネジは深いため息をつきながら、腕を組んでいる。

 

「全く……」

 

しかし、その声はどこか柔らかかった。

 

ランは一つ咳払いをし、腕立て伏せをしながら満面の笑みを浮かべているガイに話しかけた。

 

「あの、ガイ先生……?私は医療忍術も少し使えるからサポートにまわることもできます。それも踏まえて、任務時は連携を……」

 

ガイは鍛練を続けながら、ランに視線を向ける。

 

「おお!それは頼もしいな!!お前の実力しっかり見せてもらった!だが、日々精進を忘れるな!努力の数だけ強くなる!!」

 

汗を光らせ、白い歯を見せながらニカっと笑った。ランはつられて、うっすらと微笑み返す。

 

 

長い間、夜の闇に隠れて彷徨っていた自分。

 

 

夜が明け、明るい太陽が照りつける──そんな眩しさと暖かさを感じさせてくれる時間だった。

 

 

 

──次の日、里の大通りから少し離れた静かな住宅地。昼前の陽光が穏やかに降り注いでいる。その静けさの中で乾いた打撃音が響いていた。

 

ランは綱手への報告を終え、帰り道にその音を耳にする。

 

ふと気になり、音のする方へ足を進めていく。

高い塀と整然とした瓦屋根、敷き詰められた石畳は光を受けて白く輝き、門前の木々も美しく手入れされている大きな屋敷の前にたどり着いた。

 

生活の匂いよりも、張り詰めた規律と伝統が漂う場所。

ミズノの視線の先で、日向の二人が互いに向かい合っていた。

 

「もう一度いきますよ、ヒナタ様!」

 

「くっ……はい!ネジ兄さん!」

 

「八卦三十二掌!!」

 

ネジの攻撃をヒナタは必死に受け止めていた。

 

だが次の瞬間、避けきれず衝撃に弾き飛ばされ、体が後方へと流れる。

 

(ぶつかる!!)

 

咄嗟に地を蹴ったランが腕を伸ばし、壁に叩きつけられそうになったヒナタの身体を背後から支えた。

 

「危なかった……。厳しいね、ネジ君」

 

落ち着いた声がそっとヒナタの耳に届く。

振り返ると、フードを深くかぶった金髪の少女が自分を支えてくれていた。

 

ヒナタは驚きと戸惑いの表情で彼女を見つめる。

 

「あ、ありがとうございます。えっと、あなたは……」

 

するとネジが白眼を解き、二人に向かい合った。

 

「ヒナタ様、彼女がテンテンの代わりに新しく三班に配属された、やかぜランです」

 

「あなたがネジ兄さんの言っていた……」

 

ランは小さく頷き、ヒナタの手元に視線を移す。

白い袖口から覗いた腕に傷があり、血が滲んでいた。

 

「血が出てる。ちょっと見せて」

 

ヒナタが躊躇しながら腕を出すと、ランは手をかざして淡い緑の光を灯す。傷がみるみる塞がっていった。

 

「申し訳ありませんヒナタ様。少し力を入れ過ぎてしまいました……ラン、助かった。感謝する」

 

ネジが低く呟く。

 

「修行は大事だけど、怪我には気をつけて」

 

ヒナタは小さく息をのむ。

 

「すみませんでした……やかぜランさん……」

 

「謝らないで。あと、私の事はランでいいよ」

 

静かにそう言った直後だった。

 

 

──ぐぅぅぅ。

 

 

穏やかな昼の空気に、不意に鳴り響いた音。ランの表情が強張る。

 

「……っ」

 

(なんでこんな時に!)

 

ランは頬をうっすらと染めて視線を逸らした。ヒナタは目を瞬かせたあと、柔らかく微笑む。

 

「……あの、ちょうどお昼にネジ兄さんと食べようと思って、おにぎりを作っておいたんです。よければ一緒に食べませんか?」

 

「あ、大丈夫……!もう、家に帰るところだか……」

 

 

──ぐうううう。

 

 

先程より大きな音を立てる腹の虫。

 

 

「…………」

 

 

ネジは顔を背け、静かに肩を震わせる。ヒナタは口に手を当てて小さく笑いながら再びランを誘った。

 

「遠慮しないで下さい。沢山作ってあるんです」

 

ランはしばらく考え込んでいたが、朝食も食べておらず、確かに空腹だった。

 

「……ありがとう。じゃあ、頂こうかな……」

 

 

 

──ヒナタに導かれ、縁側に腰を下ろす。庭の緑が優しく目にうつり込んだ。

 

しばらくすると、淡い桃色の皿の上に並べられたおにぎりと湯気のたったお茶が差し出される。

 

「どうぞ……海苔が付いているのが鮭で、何も付いていないのは昆布とおかかです。ランさんもネジ兄さんもたくさん食べてくださいね」

 

ふわりと海苔と米の匂いがたちのぼっている。

 

「ありがとう……」

 

「いただきます」

 

ネジとヒナタはおにぎりを手に取り食べ始めた。

 

ランは遠慮がちに、一つ手に取る。

 

 

 

胸の奥に遠い記憶がよぎった。

幼い頃、修行の合間にイタチとサスケ、イズミと並んでおにぎりを食べた昼下がりの光景。温かい声と笑顔。

 

 

それは二度と訪れることのない時間──。

 

 

「ランさん?」

 

ヒナタの声で我に返る。

 

「!!ごめん、いただきます……」

 

一口頬張ると、ほのかな塩気と甘さが広がった。

 

「……美味しい。ありがとう、ヒナタちゃん」

 

ランは表情を緩め、柔らかい笑みを浮かべる。

 

ネジは彼女の表情が和らぐのを見ると、僅かに眉を上げた。

 

(……ヒナタ様の優しさのおかげか)

 

 

 

三人が食べ終える頃には、心地よい風が庭を吹き抜けていた。遠くで鳥の声が響く。

 

「ご馳走様。こうして誰かと一緒に食事をするのは久しぶりで……嬉しかった」

 

ヒナタは目を見開く。そして控えめに微笑んだ。

 

「喜んでもらえて…よかったです」

 

ランはしばらく目線を落としていたが、何かを思い出したように顔を上げた。

 

「今度お礼に、何か甘いものを作ってくる……」

 

「甘いもの?」

 

ヒナタが首を傾げる。

 

「うん……最近作ってないから腕が鈍ってるかもしれないけど、和菓子作るの得意なんだ……お団子とか」

 

ランの瞳は遠くを見つめていた。

 

ヒナタは目を輝かせて嬉しそうに頷く。

 

「ぜひ、食べてみたいです!」

 

ネジが眉を寄せる。

 

「料理ができるのか。それはかなり意外だな……」

 

「ちょっと失礼だね、ネジ君……」

 

縁側に座る三人の笑みを、昼下がりの光が緩やかに包み込む。

 

彼女の胸に灯った温もりはまだ小さい。けれど、確かに存在していて彼女をそっと暖めてくれた。

 

 

 

──二週間後。

 

今日は三班と八班合同の夜間任務。集合場所の広場には、西に傾いた太陽が長い影を地面に落としていた。

 

集合時刻は十五時。三班と八班の面々が揃い、後はガイの到着を待つのみとなっていた。

 

「腹減ったなぁー」

 

キバは両手を腹に当てている。

 

「この時間はどうしてもお腹が空きますね……これも修行です」

 

そうは言ったものの、リーは空腹なのかうずうずしている。

 

今日は、夜のうちに沢山の荷物を運びたいという商人からの依頼。そこまで重くない任務。漂う空気は穏やかだった。

 

(今なら……)

 

ランは少しためらいがちに、手に持っていた袋から二つの包みを取り出した。

 

全員の視線が自然と集まる。

 

「……これ」

 

彼女は静かに包みを広げた。

 

一つは、串に刺さったつやつやのみたらし団子、もう一つには、同じく串に刺さった淡い色合いのあんこ入り三色団子が整然と並んでいる。

 

一つひとつ丁寧に作られており、ほんのり漂う甘い香りが空気にやわらかく混じる。

 

ヒナタが目を瞬かせ、思わず息を呑んだ。

 

「えっ、これ……ランさんが?」

 

ランは節目がちに小さく頷く。

 

「この間のお礼。それと、ちょうどお腹空く時間だし……任務の前にみんなにも食べてもらおうかと思って」

 

短く抑えられた言葉だったけれど、その裏にある気持ちは十分に伝わった。

 

リーはぱっと顔を輝かせ、勢いよく前に出る。

 

「おおっ!!まるでお店の売り物の様なお団子です!!

ありがとうございます!」

 

早速ひとつ手に取って、一口頬張った。

 

「!!美味しすぎて……涙が……」

 

キバがニヤリと笑う。

 

「大袈裟だなぁ……でも、本当にうまそうだな!赤丸にも一つもらうぜ!」

 

キバと赤丸が勢いよく口の中に放り込んだ。

 

「!?うまっ!!」

 

シノは相変わらず寡黙なまま、静かに手を伸ばす。

 

「いただく……」

 

ゆっくりと一口。

 

「俺は感動している……なぜなら想像以上に美味すぎたからだ」

 

ヒナタは両手で大事そうにお団子を受け取り、にっこりと微笑む。

 

「ランさん、ありがとう。とっても嬉しいです」

 

その微笑みはとても柔らかい。ランの心を温かくほぐしてくれた。

 

その隣で、ネジは黙々と食べ進めている。

 

「本当に美味いな……」

 

仲間達の笑顔の中で、彼女は失っていた何かを取り戻すような感覚に包まれていた。

 

「……懐かしい」

 

ぽつりと落ちた小さな声は、誰の耳にも届くことはない。

 

孤独の中で戦ってきた彼女にとって、暖かすぎるひととき。冷え切っていた胸にともった灯りが、また少し大きくなるのを感じていた。

 

 

──その時。

 

「ギリギリになってしまった!!すまん!!今日は少しトレーニングのメニューを増やしすぎてしまった!!」

 

ようやくガイが姿を現す。額に汗を光らせ、逆立ちをしながらにこやかに笑っている。

 

(忘れてた……)

 

空っぽになった包みを見て、皆同時に同じことを思っていた。

 

「ガイ先生……あの、ランさんがとても美味しいお団子を作ってきてくれたんですが、全部食べてしまって……先生の分を取っておくのを忘れてしまいました……」

 

リーが申し訳なさそうに伝える。

 

「な、なんだと……!団子……!?俺も……俺も仲間達と一緒に青春を味わいたかったぁぁぁ!!」

 

ガイは天を仰ぎ、地面に両膝をついて嘆いていた。

 

 

ガイの嘆く様子を見て、皆が吹き出す。

仲間たちの笑い声に包まれ、ランも思わず口元に笑みを浮かべた。

 

「……ガイ先生、今度また作ってきますね」

 

 

 

──ずっと遠ざけていたものに、久しぶりに触れた気がした。

 

それは大きくはない。

 

けれど確かに彼女を支える絆の始まりだった。




読んでいただきありがとうございました!
今回はちょっとほっこりな回でした。

次もぜひ覗きに来てくださると嬉しいです!

※今回の章、テンテン好きな人ごめんなさい!

決して彼女を否定しているわけではないです!

上手くかけなくて申し訳ないですが、彼女なりの選択をした!というように書かせていただきましたのでご理解いただければ幸いです!
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