それからオレ達は武器の新調や新装備の慣らしなどに一日を費やした。
「ほら、。よ ……ハジメ。お前ノ。、 新しい[[腕]]ダ」
オレはハジメに、黒く塗り直し、腕のなくなったハジメでも使えるようにアレンジしたBIGショットと渡した。
「ん、ありがとな」
そう言ってハジメは左腕にBIGショットをはめ込んだ。
「…どう、。だ?」
「ん、すごいまるで元からあったみたい」
言いながらハジメは左腕をブンブンと振るった。
「そりゃ ヨかった」
オレはそう言うと、ハジメがあっと声を上げて、着ていたパーカーを脱ぎ出した。
「サンズ、今まで着てたけどやっぱり本人が持ってるべきだよね」
ハジメはそう言うと、パーカーをオレに差し出した。
「 オU」
オレはハジメからパーカーを受け取ると、そのまま羽織る。
「やっぱ、。[[コレ]]がいいナ」
そう言うと、オレは空洞の出入り口に顔を向けた。
「行ク …ぞ」
オレの言葉に。
「ん」
「……ん」
と。返事が返ってきた。
それからオレ達は迷宮攻略に乗り出した。
だが、ハッキリ言って、楽勝だった。
自分で言うのもなんだが、まずオレが強すぎた。
魔物を喰らいまくり、上がりに上がったステータスは(これからもまだ上がるだろうが)カンスト状態。
まじで迷宮の魔物なんか相手にならない。
固有魔法も全てバグとしか言えない代物ばかり…控えめに言っても無双。
チートという言葉が荒んで見える程優れた能力達。迷宮の魔物の本気の攻撃なんて遊戯みたいなもんだ。
そして、道中の戦闘があまりにも一方的過ぎて途中から二人でオイラの後ろで控えてもらう事にした。
楽ができる事にハジメもユエも異論はないらしいが、いくらなんでもこれでは寄生すぎて情けなさすぎると言われた。
なので、オレにもしものことが起こった時のための備えとなってもらうことになり、それで二人とも納得したようだったが、渋々。という感じだった。オレにもしもの事なんて無いと思っているんだろう。
そんなこんなで3人で迷宮攻略に勤しんでいた。
そして遂に、次の階層でハジメとオレが最初にいた階層から百階層目になるところまで来ていた。
その一歩手前の階層で、ハジメは装備の確認と補充にあたっていた。
ユエは作業するハジメを飽きもせずに見つめており、オレは現在進行形で外の警戒にあたっている。
オレが見張りをしているときはユエは必ずと言っていいほどハジメに密着している。まあ、横になる時はハジメがオレの腕に抱きついて眠っているのだが、オレと合流するまでは、抱き合って眠っていたらしい。
なんでそこまで仲がいいのか聞いたところ、ユエは少し恥じらいながら答えた。
なんでも、最近までハジメはオレのことを完全に割りきれていなかったらしく、寝る時など、どんな状況であっても気が緩んでしまうと、すぐに泣き出してしまっていたらしい。
だから、ユエは年長者として、全力でハジメを慰めたり落ち着かせたりしたらしい。
本当に感謝しかないのだが、オレはその後に続いた言葉に思わず半眼を作った。
その話の細部を全部ばっさり切り取って、重要なところだけ話すと、ユエはハジメと…経験したらしい。何がとは言わない。OK?いいから察せ。全てを。
慰めの延長線上で落ち着かせる為にヤったそうだ。さっきもいったがオレは半眼を作った。何してんだ…と。
だが、オレとの仲が悪いかと言われるとそうでもない。
オレが休憩しているときはよく話をしている。
内容はほとんどハジメの事なのだが、オレの今生や前世の事も話題に上がる。
肉体的接触はないが、それでも仲は良好といっていいと思う。
ハジメは今、入念に弾や装備を補充している。
「ハジメ……いつもより慎重……」
「ん?うん。次で百階層だからね。もしかしたら何かあるかもしれないと思って…。サンズがいるとはいえ、準備しておくに越したことはないし」
確かにオレは現時点で1階層で負った傷を除けば無傷だ。
だが、オレは自分が無敵ではないと言う事を知っている。
ここはオレの元居た世界や地球よりも圧倒的に格下の世界かもしれないが、もしかしたら、自分でも苦戦する何かがいてもおかしくはないというオレの見解だ。
ハジメとて、オレがいるからと言って油断はしていない。
だからこそ入念に準備する。
「よし、こんなところかな…。サンズ、行こう」
「ん?そうか。次で地上に戻る手掛かりが見つかればいいが……」
オイラの呟きに二人で同意しながら階下に続く階段を進んでいく。
その階層は、無数の強大な柱に支えられた広大な空間だった。
柱の一本一本が直径五メートルはあり、一つ一つに見事な彫刻が彫られている。
柱の並びは規則正しく一定間隔で並んでいる。
天井までは400メートル以上はありそうだ。
地面も荒れたところはなく綺麗なもので、どこか荘厳さを感じさせる空間だった。
だが、その空間に入った瞬間、オレは背筋がぴりつくような感覚を覚え、眉を顰める。
そんなオレに気づかずにハジメ達が、しばしその光景に見惚れつつ足を踏み入れる。すると、全ての柱が淡く輝き始めた。
ハッと我を取り戻し警戒する。
柱はハジメ達を起点に奥の方へ順次輝いていく。
オレ達はしばらく警戒していたが特に何も起こらないので先へ進むことにした。
ハジメとオレがが感知系の固有魔法をフル活用しながら歩みを進める。四百メートルも進んだ頃、前方に巨大な扉を見つけた。
全長十メートルはある巨大な両開きの扉が有り、これまた美しい彫刻が彫られている。特に、七角形の頂点に描かれた何らかの文様が印象的だ。
「……これはまた凄い……。もしかして……」
「……反逆者の住処?」
「[[ここ]]が 、。…[[最終到達点]] か……」
反逆者とは神代の時代に神に逆らい世界を滅ぼそうとした者たちの事。
ユエはこの迷宮は反逆者の一人が作った物と聞いた事があるらしい。オレ達はその住処に地上に戻る手掛かりがあると考えている。
そんな中、オレは明らかに険しい表情で門を睨みつける。
「サンズ、どうした?」
「………なんダ…?、個の[[空間]]……妙にピリツクとイウか……」
オレは難し気な表情で門を睨む。
合流してからオレのこんな顔は見たことがなかったのか、ハジメも警戒心を露わにする。
だが、ハジメは小さく笑みを浮かべる。
「上等。何が来ようと薙ぎ払う……!」
「……ん!」
その言葉にユエも同じように頷く。
オレは小さく息を吐くと、
「……くれ…ぐれ、。も[[油断]]する なよ」
その言葉と共にオレ達は歩き出す。
その瞬間、扉とオレ達の間に巨大な魔法陣が現れた。赤黒い光を放ち、脈打つようにドクンドクンと音を響かせる。
ハジメとオレは、その魔法陣に見覚えがあった。
あの日、奈落へと落ちた日に見た自分達を窮地に追い込んだトラップと同じものだ。
だが、ベヒモスの魔法陣が直径十メートル位だったのに対して、眼前の魔法陣は三倍の大きさがある上に構築された式もより複雑で精密なものとなっている。
「なにこの大きさ?ホントにラスボス?」
「……大丈夫……私達、負けない……」
「………」
ハジメが顔を引きつらせるも、ユエは決然とした表情でハジメの裾を握る。
それに対し、オレは険しい表情を浮かべながら魔法陣を睨む。妙だ。どこか妙で仕方が無い。ここに来てから、どこか無視できない感覚を感じる。
だが、その出所が分からない。それでも分かるのは、目の前のこいつではない。ということだ。
魔法陣はより一層輝くと遂に弾けるように光を放った。咄嗟に腕をかざし目を潰されないようにするハジメとユエ。光が収まった時、そこに現れたのは体長三十メートル、4足歩行に六つの頭と長い首、鋭い牙と赤黒い眼の化け物。例えるなら、神話の怪物ヒュドラだった。
「「「「「「クルゥァァアアン!!」」」」」」
奇怪な音色の絶叫をあげながら六対の眼光がオレ達を射貫く。
その瞬間、常人ならそれだけで心臓を止めてしまうかもしれない壮絶な殺気がハジメ達に叩きつけられるがはオレ達は臆さない。
赤い紋様が刻まれた頭部が口を開くと、火炎放射を放つ。それはもはや炎の壁と言うにふさわしい質量だ。
だが、ハジメとユエが飛びのいて回避したのに対し、オレはそのまま真っ向から炎の壁に突っ込み、そのまま飲み込まれる。
熱さなど微塵も感じない。やはり、エラー系の固有魔法は有能のようだ。
ハジメもユエも気にしない。
オレなら大丈夫だからと信じているからだろう。
ハジメは即座にドンナーを抜いてレールガンを放つ。
放たれた弾は赤い頭を吹き飛ばし、脳汁を撒き散らさせる。
まず一つとハジメがガッツポーズをとっていると、白頭が咆哮を上げる。
すると、吹き飛んだ赤頭が見る見るうちに再生し、復活する。それと同時にオイラは炎の壁を突き破って飛び出す。
「サンズ!白が回復役!」
ハジメの言葉にオレはすぐに頷いて白頭に向かって跳ぶ。
そうはさせないと緑頭が攻撃しようとするが、オレが重力操作で左側の壁に叩きつけ、壁と頭を玉砕する。
白頭がすぐに再生させようとするが、咆哮を上げる前にオレが前に飛び出し、ブラスターを10体程配列した。その間に黄頭が割り込み、頭を一瞬で肥大化させ、淡く黄色に輝く。
だが、オレはショートカットでその場から一瞬で黄頭の頭上に移動すると、トッと少しジャンプし、ズドン!と踵落としを決め、黄頭を地面に叩きつけてから、左腕を前に突き出し、ギュッと手を握った。もしかしたら、黄頭は盾役だったのかもしれないが、それはもう誰にも分からない。オレの攻撃は、黄頭を玉砕し、圧殺し、見るも無惨な形に変貌させた。
そのまま重力に従って地面に落下したオレは、ぐちゃぐちゃになった黄頭を踏み台にして飛び上がりながら、先程設置した10体のブラスターを発射し、白頭を体内まで真っ黒に焦がした。
その事実に残った頭は茫然としたが、その隙にハジメは焼夷手榴弾を取り出し、放り投げ、オレはヒュドラの背中に重力操作を行い、ベッコリと凹ませ、ショートカットで離脱する。
と、そのタイミングでユエの魔法というカードが切られた。
「嵐帝」
オレが離脱した直後。巨大な竜巻を発生させる風魔法が辺りを蹂躙した。
残った頭部が絶叫を上げ、胴体ごとバラバラに粉砕されていく。
その光景を見ながらオレは、ん?と首を傾げながら死体を見やる。
何だ?と睨んでいると、竜巻が消失した。
そこに残っていたのは全身のほとんどが粉々になり、未だ血を雨のように降らすヒュドラだった。
頭部は全て同じようにどれがどの頭か判別がつかなくなっている。
「………やった……?」
「……ん、恐らく………」
ハジメとユエが恐る恐ると言うように呟く。
オレもまた油断なく睨みつけていたが、ヒュドラはピクリともしない。やったのだ。
そう判断すると同時にユエは満足げに息を吐き、ハジメもユエにサムズアップをしてユエの元に歩き出した瞬間、
「ハジメ!」
ユエが叫び、ハジメが思わずと言うようにユエの視線を追うと、音もなく七つ目の頭が胴体部分からせり上がり、そのまま口を開き、二人を飲み込むように極光を放……
「ド阿呆。オレが許すと思ってんのか?馬鹿野郎」
とうとしたが、その前にオレが割り込むと、背中からどろけた黒い触手を生やし、それを巨大な手のように変形させ、ハジメとユエを守る。
その光景にヒュドラが驚いたように叫んだ瞬間、オレは飛び出し、銀頭を赫い糸で拘束した。
直後、ヒュドラをグリッチが包み込み、体をバラバラのコードに変えて行く。
オレはそれを回収する為に糸を伸ばし、全てかき集めると、アンチヴォイドの入口を開き、コード全てに糸を巻きつけると、糸を引き、アンチヴォイドの中の、重要保管欄に保存すると、アンチヴォイドへの入口を閉じた。
それと同時にハジメとユエはようやく状況を把握し、慌てた様子でオレに走り寄ってきた
「サンズ!大丈夫!?」
「heh…heh、。[[大丈夫]]ダ」
「……ごめんなさい。油断したばっかりに……」
ユエがしょぼんとした様子で謝り、ハジメもバツが悪そうに頭を掻いている。
「気…にするな、。だが、今度……は気をつけろ。確実に[[息の根を止める]]ま… で油断、。するな」
オレの言葉に二人は小さく頷き、周囲を見渡す。
「とりあえず、今度こそ倒したけど……どうして何も起きないの…?」
「……ん。扉が開く気配もない」
「…[[アンチヴォイド]]二 取りKOnだのガ、…町がいだッタか……?」
オレ達が首を傾げていると、何処からか声が響いた。
『規定時間内の撃破を確認。上位世界モンスター召喚。厄災編を開始します』
(3人称視点)
そんな機械的なアナウンスと同時に空間の中央付近に再び魔法陣が出現する。
3人はすぐに振り返って構えるが、ハジメとユエはあんぐりと口を開ける。
魔法陣の大きさは先ほどのヒュドラよりも何割。いや、ヒュドラに。いや、ベヒモスにさえ及ばないほど小さい。
だが、そこに書かれている構築式はもはや何と書いてあるか分からないほどに複雑で精緻であり、ユエですら意味が分からない。
「な、なにこれ……さっきのはラスボスじゃないってこと……!?」
「コイツ、。は…………」
ハジメとユエが驚愕している中、サンズは魔法陣をジッと見つめていた。
「………!」
そして魔法陣が光り輝いた瞬間、ずん、と鈍い音と共に光の中から現れたのは黒塗りの長い前足。そして光が収まったそこにいたのはベヒモスよりも小柄な体躯に漆黒の鱗に包まれた四足歩行の魔物。
黒い鱗で覆われた体だが、所々光の反射で虹色の6角形のモノが映り出ている。
頭部に飾られた赤い目玉がギョロッギョロッと動き、サンズ達を確認する。
そして周囲に全てを粉砕するかのごとき圧が放たれる。それを受けた瞬間、ハジメとユエは理解した。してしまった。自分たちがいかに身の程知らずだったかを。
今まで自分たちは何が来ようと負けない。薙ぎ払って進む。自分たちならどんな困難も乗り越えられると思っていた。だが、目の前のこれを見た瞬間、理解した。自分たちはこの奈落と言う水たまりの中で調子に乗っていただけ。その水たまりの外で生きている本当の化け物を。捕食者を。”厄災“を知らなかっただけの虫けらだと。
これまで経験してきた絶望すら超える圧に二人は完全に呑まれていた。
そんな二人に対し、サンズは虚空に手を滑らせてから言う。
「よう、久々に“骨”のありそうな奴が来たじゃねぇか」
「ギァアアアアアァオォォォオオオオオオオオオオォオオオォオォォォォォ!!!!!!!!!!!!!!!」
空間全体を揺るがすような凄まじい咆哮を上げ………真なる厄災。全てを壊す存在。全てを殺す存在。最恐の壊し屋にして殺し屋であるジャガーノートは3人を睨みつけた。
ジャガーノートが生誕の叫びを上げた頃。
トータスの大陸のどこかの洞窟。鬱蒼と生い茂る緑の中、頭上から光が差し込むその広間の中央にそれは有った。
そこに何故か有った焚き火に、紅い蝶が群がっていた。
蝶は、叫びを聞くと、嬉しそうに空へパタパタとその空間を飛んでいた。
トータスの大陸のどこかの山。巨大な槍を持ち、黄金の鎧を纏った人物がいた。
彼は突然はにかむようにふっと笑うと、静かに一つの方向に視線を向けた。
トータスの大陸のどこかの洞窟。辺り一面が水で埋まった洞窟の最奥の陸になっているところに、魔力で生成された白い槍を持ち、左目からビームを迸らせる漆黒の鎧を来た人物が鎧をガシャンガシャンと言わせながら洞窟内を巡回している。だが、急にピクリ、と体を揺らすと、口をニィっと裂いた。
トータスの大陸のどこかの洞窟。巨大なテレビを中心に、触手や何らかの機材を大量に生やした植物がいた。
ソレは隣に居る巨大ゴーレムと顔を見合わせると、HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!
と歪で奇怪な笑い声を上げた。
トータスの大陸のどこかの洞窟。辺り一面溶岩で満たされた空間の中を黒い鱗と巨大な体躯を持ち合わせて、二足歩行をする巨大な怪獣はその溶岩の中で眠っていた。だが、いきなり目を開けると、急浮上し、溶岩の海から顔を出すと、空に向け、ォオオオオオオオオオオオオオオオン!!と声を上げた。
トータスの大陸のどこかの洞窟。氷に囲まれた洞窟の奥底で、紅いナイフを持つ人影が一心不乱にチョコレートを食べていた。だが、その人影は突然体をぴくっと揺らすと、口を耳元まで裂き、目から滝の様に墨汁の様な何かを零して大笑いを始めた。