Monster Hunter Duel Storm   作:アサシン・零

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序章

夜の森は、まるで生き物のようにざわめいていた。風が木々の間を抜け、低い唸り声を上げる。ミゲルは肩に担いだ粗末な鉄製の大剣を握り直し、足元の泥濘を踏みしめた。17歳の少年にとって、この旅は初めての大きな一歩だった。ドンドルマのハンターギルド――そこで正式なハンターとして認められるため、彼は故郷の小さな集落を後にしたのだ。

 

「まだ遠いのか…?」

 

ミゲルは独り言を呟き、首に巻いた革のマフラーを引き上げた。冷たい夜気は肌を刺し、空には厚い雲が月を隠していた。背囊には干し肉と簡易テント、そしていくつかの回復薬。ハンター見習いとしての装備は心許なかったが、ミゲルの瞳には決意が宿っていた。

 

その時、森の奥から異様な咆哮が響いた。

 

「――!?」

 

空気が震え、鳥たちが一斉に飛び立つ。ミゲルは反射的に身を低くし、周囲を見回した。音は遠く、だが確実に近づいてくる。地面が微かに震え、木々の枝が不自然に揺れた。

 

「モンスター…?」

 

彼の知識では、この地域に大型モンスターは滅多に出ないはずだった。だが、背筋を這うような感覚が、危険が迫っていることを告げていた。ミゲルは大剣を構え、ゆっくりと後退しようとしたその瞬間――ゴオオオオ!

 

夜空を裂くような咆哮とともに、巨大な影が雲の切れ間から現れた。翼を広げたその姿は、まるで夜そのものを切り取ったかのようだった。鱗は深蒼色に輝き、鋭い爪と尾が月光に映える。ミゲルは見たことのない飛竜種だと直感した。その目は赤く燃え、獲物を探すように森を見下ろしていた。

 

「やばい…!」

 

ミゲルは踵を返し、全力で走り出した。背後で木々が折れる音、地面を抉るような衝撃音が追いかけてくる。飛竜の翼が空を叩き、風圧がミゲルの背を押した。彼は必死に走りながら、頭の中で状況を整理しようとした。

 

「なんでこんなところに!? ドンドルマの手前でこんなモンスターが出るなんて…!」

 

飛竜の咆哮が再び響き、ミゲルは地面に飛び込むようにして岩陰に隠れた。心臓がバクバクと鳴り、冷や汗が額を伝う。飛竜は上空を旋回し、まるでミゲルを捜しているかのようだった。その動きは、通常のモンスターとはどこか異なる――まるで明確な目的を持っているかのような、知的な動き。

 

「落ち着け…落ち着け、ミゲル」彼は自分に言い聞かせ、腰のポーチから回復薬を握り潰さないよう慎重に手に持った。「逃げ切るしかない。戦うなんて…まだ無理だ」

 

飛竜が一瞬視界から消えた瞬間、ミゲルは岩陰から飛び出し、森の奥へと突き進んだ。枝が顔を擦り、足が泥に沈む。それでも彼は走り続けた。どれだけ時間が経ったか分からない。息が切れ、膝が笑い始めた頃、遠くに灯りが見えた。

 

「村…?」

 

木々の隙間から、小さな集落の明かりが漏れていた。ココット村――ドンドルマへ向かう中継地点として知られる小さな村だ。ミゲルは最後の力を振り絞り、村の入り口へと駆け込んだ。

 

「助けて…! モンスターが…!」

 

村の門番が驚いた顔でミゲルを迎えた。粗末な鎧を着た中年男が、松明を掲げながら叫ぶ。

 

「おい、ガキ! 何があった!?」

 

 

「飛竜…見たことないやつ…! 追いかけてきて…」

 

門番の顔が強張った。「飛竜だと? この辺でそんな話は…」彼は言葉を切り、空を見上げた。だが、森は静まり返り、飛竜の気配は消えていた。

 

「…逃げ切ったのか、坊主。とりあえず中に入れ。話は後だ」

 

ミゲルはよろめきながら村の中へ導かれた。ココット村の広場には、暖かな焚き火が灯り、幾人かの村人やハンターたちが集まっていた。彼らの視線が、泥だらけの少年に集まる。

 

「お前、どこから来たんだ?」門番が尋ねた。

 

「故郷…ドンドルマにあるハンターズギルドでハンターになるために…」ミゲルは息を整えながら答えた。

 

「ハンター見習いか。無茶しやがって」門番は苦笑し、ミゲルの肩を叩いた。「まあ、生きてるだけマシだ。今夜はここで休め。明日の朝、村長に話を通しておくよ」

 

ミゲルは頷き、焚き火のそばに腰を下ろした。体は震え、頭の中ではあの飛竜の姿が焼き付いて離れなかった。あのモンスターは何だったのか? なぜ自分を追いかけてきたのか? 疑問が渦巻く中、ミゲルは一つだけ確信していた。

 

「ハンターとして…ここから始まるんだ」

 

ココット村での一夜が、ミゲルの運命を大きく動かし始めていた。

 

 

 

 

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