Monster Hunter Duel Storm   作:アサシン・零

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現役時代の私が登場。byココット村の村長今まで私を鍛えてくれてありがとう。


第2話「影の狩人・導きの刃」

ココット村の朝は、鳥のさえずりと焚き火の煙で始まった。ミゲルは宿屋の粗末なベッドから身を起こし、窓の外を眺めた。広場では村人たちが朝市を準備し、鍛冶屋の煙突からは白い煙が立ち上っている。

 

昨夜の恐怖――深蒼色の飛竜に追われた記憶――はまだ胸に重く残っていたが、村の穏やかな空気がそれを少しずつ薄れさせた。ミゲルはアクセルアックスを手に取り、点検を始めた。武器の変形機構はスムーズで、レバーを引くたびにカチリと心地よい音が響く。故郷の鍛冶屋が「これで竜をぶちのめせ」と笑いながら渡してくれたこの武器は、ミゲルの未熟さを補う頼もしい相棒だ。刃にはまだモンスターの血痕一つない。

 

それが、ミゲルのハンターとしての未熟さを物語っていた。「よし、今日からだ」

彼は自分に言い聞かせ、革鎧を整えた。村長バルドの指示通り、ギルドの調査団が来るまでココット村に留まり、飛竜の件に協力する。

 

それが、ハンター見習いとしての第一歩だ。広場に出ると、調査員見習いのリナが手を振ってきた。彼女の隣には、屈強な体格の男が立っていた。革のコートに身を包み、腰には双剣が二本。鋭い目つきは、まるで獲物を値踏みするような雰囲気だ。

 

「ミゲル! こっちよ! 紹介するわ、ハンターのガルドよ。ココット村の自警団のリーダー格なの」

ガルドは無言でミゲルを一瞥し、軽く頷いた。「新入りか。飛竜に追われたって話、聞いたぞ。よく生きてたな」

「は、はは…ただ運が良かっただけで」ミゲルは頭をかいた。ガルドの威圧感に気圧されつつ、リナの明るさに助けられた。

 

「は、はは…ただ運が良かっただけで」ミゲルは頭をかいた。ガルドの威圧感に気圧されつつ、リナの明るさに助けられた。

 

「で、村長が呼んでるわ。ギルドから返信が来たみたい。行こ!」

 

リナに促され、ミゲルは再び村長の家に向かった。ガルドは黙って後ろをついてくる。

 

その足取りは、まるで影のように静かだった。村長バルドの家では、暖炉の火が昨日と同じようにパチパチと燃えていた。机の上には、ギルドからの羊皮紙の書簡が広げられている。バルドは眉を寄せ、書簡を手に持ったままミゲルを見た。

 

「ギルドの学者たちの見解だ。お前の見た飛竜、既存の記録に一致するものはない。新種の可能性が高いと結論づけた」

 

「新種…やっぱり」ミゲルは息を呑んだ。

 

「ただ、問題がある」バルドは書簡を机に置き、腕を組んだ。「この地域で新種の飛竜が現れるのは異常だ。しかも、お前を執拗に追ったという話は、ただの偶然とは思えん」

リナが口を挟んだ。

 

「ねえ、村長。もしかして、ギルドの誰かに詳しく聞くべきじゃない? ドンドルマにはモンスターの生態に詳しいハンターがいるはずよね?」

 

バルドは頷き、目を細めた。

 

「その通りだ。実は、すでに連絡を取った人物がいる。ココット村に来る途中でな」

 

「誰ですか?」ミゲルが尋ねると、バルドは一瞬言葉を切り、暖炉の火を見つめた。

 

「アサシン・零。ドンドルマのハンターズギルドに所属していた、伝説のハンターだ」 その名を聞いた瞬間、ガルドの表情がわずかに動いた。リナも目を丸くし、ミゲルに囁いた。

 

「アサシン・零って…マジで!? めっちゃ有名なハンターよ!」

 

「有名?」ミゲルは首を傾げた。ハンター見習いの彼にとって、ギルドの伝説はまだ遠い世界の話だ。

 

「双剣の達人で、まるで影みたいに動くからそのまま『アサシン(暗殺者)』って呼ばれてた。噂じゃ、単独で古龍を仕留めたこともあるって!」リナの声は興奮気味だった。

 

「だが、10年前に突然引退した」バルドが補足した。「理由は誰も知らん。今はココット村の近くで隠居してるらしい。ギルドに頼まれて、今回の件で動いてくれるそうだ」

 

ミゲルは胸が高鳴るのを感じた。伝説のハンターとの出会い――それだけで、ハンターとしての道が少し近づいた気がした。

 

その日の昼、ミゲルはガルドに連れられ、村の外れにある森の小道を歩いていた。目的は、アサシン・零の住む小屋を訪ねることだ。リナはギルドへの報告書をまとめると言って村に残り、ミゲルとガルドの二人だけでの行動となった。

 

「零さんは…どんな人なんですか?」ミゲルはガルドに尋ねた。

 

「さあな。会ったことねえ」ガルドの答えはそっけなかった。「ただ、昔の噂じゃ、近づくだけで背筋が凍るって話だ。気をつけろよ、新入り」

ミゲルはゴクリと唾を飲み、アクセルアックスを握り直した。

 

森の奥、小川のほとりに木造の小屋が現れた。屋根には苔が生え、煙突からは細い煙が上がっている。扉の前には、磨き上げられた片手剣が立てかけられていた。その刃は、まるで今にも血を吸うかのように鋭く輝いている。

 

「ここだ」ガルドが立ち止まり、ミゲルに目で合図した。

ミゲルがノックしようとした瞬間、扉がゆっくりと開いた。そこに立っていたのは、瘦せた体躯の老人だった。

 

森の奥、川辺の小屋の前で、ミゲルはアサシン・零と対峙していた。52歳の元ハンターは、黒い革のマントを翻し、双剣を手に持つ。

 

白髪交じりの髪は短く切り揃えられ、

 

鋭い瞳はまるでモンスターの動きを予測するようにミゲルを観察していた。だが、その声は驚くほど落ち着いており、感情の揺れをほとんど感じさせない。

 

「飛竜の話、詳しく聞かせてもらった。深蒼色の鱗、赤い目、執拗な追跡…興味深い」零はノートを手に、淡々と続けた。「10年前、ドンドルマの奥地で似たような目撃情報があった。ギルドは『観測ミス』と処理したが、私はそうは思わん。現実的に考えて、未知のモンスターが現れるには理由がある」

 

ミゲルは息を呑んだ。零の言葉には、まるで森の空気を切り裂くような確信があった。ドンドルマ大学狩人科を卒業し、ハンターズギルドで数々の伝説を築いた男――アサシン・零。ミゲルは故郷でその名を耳にしたことがあった。単独で古龍を仕留めた逸話、片手剣でモンスターの急所を的確に突く戦い方。見習いハンターの少年にとって、零は憧れそのものだった。

 

「あなた…本当にアサシン・零なんですよね? ドンドルマで最強って呼ばれた…」ミゲルは思わず口にし、アクセルアックスを握る手に力が入った。

 

零は一瞬目を細め、軽く笑った。「最強、か。昔の話だ。今はただの隠居だよ」彼の声には自嘲が混じるが、その目は依然として鋭い。「だが、お前の見た飛竜は放っておけん。お前、ハンターを目指すんだろ? なら、俺が少し鍛えてやる」

 

「え!?」ミゲルは目を丸くした。「俺を…!?」

 

「現実的に言えば、見習いが新種の飛竜に絡むのは危険だ。だが、お前がその飛竜を引き寄せたとなれば、放置するわけにもいかん」零は双剣を鞘に収め、ミゲルを見据えた。

 

「俺が直々に教育する。お前、準備はできてるか?」ミゲルの胸が熱くなった。憧れのハンターに認められ、指導を受ける――それは、ドンドルマのギルドで証明されるよりも大きな一歩に思えた。

 

「はい! 絶対に頑張ります!」彼はアクセルアックスを掲げ、力強く頷いた。

 

その時、ガルドが口を挟んだ。「零さん、そいつはまだ見習いだぞ。いきなり鍛えるってのは無茶じゃ…」

 

「無茶かどうかは、俺が決める」零は冷静に遮った。「ハンターに必要なのは、技術より覚悟だ。こいつにはそれがある。

 

少なくとも、逃げずにここに立ってる」ガルドは肩をすくめ、ミゲルに苦笑いを向けた。「ま、頑張れよ、新入り」

 

ココット村に戻ると、零は村長バルドの家に向かい、ミゲルを連れて行った。暖炉の火が部屋を照らし、バルドとリナが待っていた。零の登場に、バルドの目がわずかに揺れた。

 

「零、久しぶりだな」バルドの声には、懐かしさと複雑な感情が混じっていた。

 

「バルド。あの頃から変わらんな」零は淡々と答え、椅子に腰を下ろした。 ミゲルは二人のやり取りに気づいた。バルドと零は同世代――おそらく、若い頃に同じ戦場を駆け抜けた仲間なのだろう。だが、その空気にはどこか重いものが漂っていた。

 

「さて、飛竜の件だ」零が話を切り出した。「ギルドの学者たちは新種の可能性を認めているが、証拠が足りん。ミゲルの情報だけじゃ、調査団の派遣は遅れるだろう。俺が動く」バルドは頷き、書簡を手に取った。

 

「ギルドも同じ意見だ。だが、零、お前が動くなら話は別だ。ココット村で協力できることはする」「なら、まずこいつを鍛える」零はミゲルを指した。

 

「見習いとはいえ、飛竜に狙われたのは事実。ハンターとして最低限の力をつけさせる必要がある」リナが目を輝かせ、口を挟んだ。「え、ミゲルを直々に!? いいなー、めっちゃ羨ましい!」

 

「リナ、お前もだ」零の言葉に、リナが固まった。「お前をミゲルの編纂者に任命する。クエストの記録、モンスターの観察、ギルドへの報告――お前が責任持ってやれ」「え、え、私!?」リナはノートを握りしめ、慌てた。「でも、私、調査員見習いで…」

 

「え、え、私!?」リナはノートを握りしめ、慌てた。「でも、私、調査員見習いで…」

 

「現実的に考えて、記録係が必要だ。お前はモンスターの生態に詳しい。適任だ。ハンターズギルドアサシン・零が任命する。編纂者に任命だ。」零の声は揺るがなかった。ミゲルはリナと顔を見合わせ、苦笑した。彼女の慌てぶりが、どこか心強かった。

 

その日の夕方、零はミゲルとリナを連れてココット村のクエストボードの前に立った。木製のボードには、ギルドからの依頼が羊皮紙に書かれて貼られている。零は一枚を手に取り、淡々と読み上げた。

 

「最初のクエストだ。森丘での納品クエスト。鉄鉱石10個、マカライト鉱石10個。期限は3日後」「鉱石採取!?」ミゲルは拍子抜けした。「あの、飛竜の調査じゃなくて…?」「現実的に考えろ」零は冷静に答えた。

 

「お前はまだ見習いだ。いきなり飛竜を追うのは無謀だ。まずは基本を叩き込む。採取クエストはハンターの基礎だ。モンスターの縄張りを避け、環境を利用し、効率的に動く。それが出来なきゃ、飛竜どころか雑魚モンスターにも食われる」

 

ミゲルは頷き、アクセルアックスを握り直した。「分かりました。やってみせます!」リナがノートを開き、ペンを走らせた。「よし、ミゲルの初クエスト! 森丘の地形とモンスターの分布、チェック済みよ。ブルファンゴとか小型の草食種が出るけど、気をつければ大丈夫!」零は二人を見やり、かすかに笑った。「なら、明朝出発だ。準備を怠るな」

 

その夜、零は村の外れにある小高い丘に一人立っていた。月明かりの下、ココット村の灯りが遠くに見える。彼の視線は、かつての記憶を辿るように空をさまよっていた。バルドと同世代の零にとって、ココット村はただの隠居の地ではない。

 

20年前、この村を拠点に活動していた竜人族の前村長――ハンターとして初めて数多の竜を討伐した伝説の人物――の言葉が、零の胸に蘇る。「零よ、ハンターの刃はモンスターを倒すためだけではない。世界のバランスを守るためにある。だが、ギルドがいつも正しいとは限らん。

 

己の目で真実を見極めろ」竜人族の村長は、零がまだ若かった頃の師だった。彼の死後、零はギルドへの不信感を胸に秘め、隠居を選んだ。だが、ミゲルの話す飛竜は、かつて村長が語った「世界の異変」の兆しに似ていた。「新種の飛竜…か」零は双剣を手に、月光に刃を映した。「お前の言う真実、確かめてやる」

 

 

 

 

 

 

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