Monster Hunter Duel Storm   作:アサシン・零

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第3話「鉱石と過去の傷」

ココット村の朝霧が森丘の入口を覆っていた。ミゲルはアクセルアックスを背負い、隣を歩くアサシン・零の背中を見つめた。52歳の元ハンターは、軽やかな足取りで森の小道を進む。双剣を腰に下げ、黒い革のマントが朝風に揺れる姿は、まるでモンスターの気配を探す獣のようだ。リナは後ろからノートを抱えてついてくるが、すでに地形のスケッチを始めている。

 

「ミゲル、クエストの基本を教える」零が歩きながら口を開いた。声は冷静で、まるで授業のように淡々としていた。「ハンターズギルドのクエストには、受注金と報酬金がある。受注金はクエストを受ける際にギルドに預ける保証金だ。失敗すれば没収、成功すれば返還される。今回の採取クエストは低ランクだから、受注金は50Zだ」

 

 

ミゲルは頷き、ポーチの中の僅かなゼニーを思い出した。見習いハンターの懐は心許ない。「報酬金は?」

 

 

「報酬金はクエスト達成で得られる金だ。今回の鉄鉱石とマカライト鉱石の納品で、300Z。だが、採取中にモンスターに襲われれば装備の修理費や回復薬の費用がかかる。現実的に考えて、常に利益を計算しろ。ハンターは冒険者じゃない。生き残って稼ぐのが仕事だ」

 

 

ミゲルはアクセルアックスを握り直した。零の現実主義的な言葉は、夢見がちな少年の心に重く響いた。

 

「鉄鉱石とマカライト鉱石って、何に使うんですか?」

 

「鉄鉱石は基本的な武器や防具の素材だ。丈夫だが重い。お前のアクセルアックスも鉄鉱石が基盤になってる。マカライト鉱石はそれより軽量で、鋭い刃物や変形機構に適してる。ギルドや鍛冶屋が喉から手が出るほど欲しがる素材だ。森丘の鉱床は質が良いから、採取ポイントを覚えておけ」

 

 

リナが横から口を挟んだ。「森丘の鉱床はエリア3と5に多いよ! でも、ブルファンゴがうろついてるから注意ね!」

 

零はリナを一瞥し、頷いた。「その通り。リナ、モンスターの動向を記録しろ。ミゲル、採取中は周囲の気配を切らすな。モンスターは隙を狙う」

 

森丘のエリア3に到着すると、ミゲルは目の前の岩壁に広がる鉱床に目を奪われた。青みがかったマカライト鉱石が朝日を反射し、鉄鉱石の鈍い輝きがその横に並ぶ。零は岩陰に立ち、片手剣を手に周囲を警戒している。ミゲルはツルハシを取り出し、鉱床に打ち込んだ。カンカンと音が響き、鉱石がポロリと落ちる。

 

「いいぞ、その調子だ」零が言った。「だが、動きが雑だ。力を均等にしろ。鉱石は丁寧に掘らんと欠ける」

 

ミゲルは頷き、力を調整して掘り続けた。汗が額を伝い、アクセルアックスの重みが肩に食い込む。リナは鉱石の数を数え、ノートに記録していく。

 

「鉄鉱石5個、マカライト3個! いいペースよ、ミゲル!」

 

 

採取の合間、零がミゲルに視線を向けた。「ミゲル、なぜハンターになろうと思った? 見習いには珍しく、アクセルアックスなんぞ振り回してる。お前の覚悟、聞かせろ」

 

ミゲルはツルハシを止め、過去の記憶を掘り起こした。胸の奥に沈む、熱い痛みが蘇る。「俺の故郷…小さな集落だったんですけど、2年前、ティガレックスに襲われたんです。村は壊され、みんな散り散りに…俺も逃げて、なんとか生き延びた。でも、あの咆哮、爪の音…忘れられない。ハンターになって、いつかティガレックスを倒して、故郷を取り戻したいんです」

 

零の目が一瞬揺れた。彼は静かに頷き、遠くを見るように呟いた。「…似たようなものだな、俺も」

 

「え?」ミゲルは驚いて零を見た。

 

「俺の故郷も、飛竜に襲われた。名前はゼルレウス。深蒼色の鱗、赤い目…お前の見た飛竜に似てる」零の声は冷静だったが、どこか重い。「ドンドルマ大学狩人科で学び、ギルドに加入した後も、俺はゼルレウスの痕跡を追い続けた。だが、ギルドは『観測ミス』と切り捨てた。俺は諦めず、旅を続けて流れ着いたのがこのココット村だ」

 

ミゲルは息を呑んだ。憧れのハンターが、自分と同じ傷を抱えていることに衝撃を受けた。「ゼルレウス…それって、俺の見た飛竜と…」

 

「分からん。だが、偶然とは思えん」零は双剣の柄を握り、目を細めた。「ココット村には、かつて特別な人物がいた。このハンターという職業を始めた竜人族の村長だ。俺はドンドルマに留学するまで、彼の元で学んだ。彼の教えがなければ、俺はハンターになれなかった」

 

「竜人族の村長…」ミゲルは初めて聞く話に目を輝かせた。

 

「彼は世界のバランスを説いた。モンスターと人間が共存する道を模索していた。だが、2年前、俺がココット村に戻る前に死んだ」零の声に、かすかな悔恨が混じる。「バルドはあの頃の兄弟子だ。あいつも元ハンターで、村長の教え子だった。俺より先に引退したがな」

 

ミゲルはバルドと零の繋がりに驚きつつ、零の言葉を胸に刻んだ。ハンターの道は、ただモンスターを倒すだけではない。そこには、深い信念と過去の傷が絡み合っている。

 

「零さん…俺、絶対にハンターになります。あなたみたいに、強く、冷静に…そして、ゼルレウスやティガレックスを倒して、故郷の仇を討ちます!」

 

零は小さく笑い、ミゲルの肩を叩いた。「いい覚悟だ。だが、まずは目の前の鉱石を掘り終えろ。ハンターは一歩ずつだ」

 

夕暮れ時、ミゲルは鉄鉱石10個とマカライト鉱石10個を背囊に詰め、満足げに息をついた。リナがノートを閉じ、「完璧! これでクエストクリアよ!」と笑顔を見せた。零は周囲を警戒しつつ、二人に帰路を指示した。

 

森丘のエリア2を抜ける帰り道、ミゲルはアクセルアックスを手に持ち、木々のざわめきに耳を澄ませた。零の教え通り、モンスターの気配を見逃さないよう意識する。だが、その瞬間――

 

「グルルッ!」

 

藪から甲高い鳴き声が響き、ランポスの群れが飛び出してきた。青色の鱗が夕陽に輝き、鋭い牙がミゲルを狙う。5頭のランポスが、唸りながら突進してきた。

 

「ミゲル、構えろ!」零が双剣を抜き、低く叫んだ。リナは後退し、ノートを握りながら叫んだ。

 

「ランポス! 小型だけど群れで襲うよ! 気をつけて!」

 

ミゲルはアクセルアックスを構え、初めての戦闘に心臓が跳ねた。ハンターとしての試練が、今、始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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