Monster Hunter Duel Storm   作:アサシン・零

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第5話「闘技場の試練」

ココット村の広場は、ギルドの調査団の到着でざわめいていた。馬車の荷台から降りたハンターたちと学者たちが、村人たちと挨拶を交わす中、ミゲルはアクセルアックスを背負い、アサシン・零と調査団リーダーのセリアを見つめていた。セリアの驚きの声――「ドンドルマのギルドナイトが、こんな村で隠居!?」――がまだ耳に残る。零の過去が明らかになった衝撃に、ミゲルは頭を整理するのに必死だった。

 

村長バルドが広場に現れ、セリアに笑いかけた。「やぁ、セリア。まだハンターやってるのか」

 

セリアは太刀の柄に手をやり、苦笑した。「バルドさん、失礼なこと言わないでよ。まだ34歳、働き盛りよ」

 

「当たり前だろう。まだ34歳だからな」零が冷静に続ける。その声に、ミゲルはポカンと口を開けた。情報量が多すぎる。零がギルドナイトだったこと、バルドとセリアの軽妙なやり取り、そして34歳というセリアの年齢が、17歳の少年には眩しすぎる現実だった。

 

零はミゲルの表情に気づき、淡々と説明した。「ミゲル、頭を整理しろ。俺の過去は単純だ。故郷がゼルレウスという飛竜に壊滅させられ、ココット村に流れ着いた。そこで竜人族の前村長に学び、ドンドルマ大学狩人科に留学。卒業後、ギルドでハンターになり、ギルドナイトまで上り詰めた。10年前に引退し、ここで隠居してる。それだけだ」

 

ミゲルは頷きつつ、胸の内で零の言葉を反芻した。ゼルレウス――ミゲルが遭遇した飛竜と似た特徴を持つモンスター。零の過去と自分の過去が、どこかで繋がっている気がした。

 

「ミゲル、こちらはセリア。俺の後輩だ。ギルドナイトではないが、優秀なハンターだ」零がセリアを指した。

 

「は、初めまして!」ミゲルは慌てて手を握り返した。セリアの手は、太刀を握り続けたハンターの硬い感触だった。

 

バルドが咳払いし、話を進めた。「さて、調査団の目的は例の飛竜だ。ミゲルの情報をもとに、森丘周辺を調査する。零、協力してくれるな?」

 

「もちろんだ」零は頷き、セリアに視線を移した。「ギルドの現状はどうだ? ファビウスやアドルフ、ラーナはどうしてる?」

 

セリアは肩をすくめ、答えた。「ファビウスは禁足地で調査団を率いてる。危険なエリアだから、いつもピリピリしてるよ。アドルフは新大陸に渡ったらしい。今頃、未知のモンスターと戦ってるんじゃない? ラーナはロックラックのギルド支部に出向中。交易路の護衛クエストで忙しいって」

 

「慌ただしいな、ドンドルマは」零は静かに呟いた。その声には、ギルドへの複雑な感情が滲んでいるようだった。「ゼルレウスの件はどうだ? ギルドはまだ『観測ミス』で片付ける気か?」

 

セリアの顔が一瞬曇った。「…その話は、ギルド上層部でもタブーよ。零、あなたが辞めた理由と関係あるんじゃない?」

 

「詮索は無用だ」零は冷静に遮った。「今は、このガキを鍛えるのが優先だ」

 

ミゲルは二人の会話に圧倒されつつ、アクセルアックスを握り直した。ハンターの世界は、モンスターだけでなく、ギルドの裏側にも複雑な事情があるらしい。

 

零はミゲルとリナを連れ、村のクエストボードに向かった。「ミゲル、次のクエストだ。訓練クエストだ。目的はドスランポスの討伐。場所はココット村の外れにある闘技場だ」

 

「ドスランポス!?」ミゲルは目を丸くした。ランポスの群れを倒したばかりだが、リーダー格のドスランポスは一回り大きく、攻撃力も高い。「闘技場って…あの、モンスターと直接戦う場所ですよね?」

 

「その通り」零が頷いた。「闘技場はハンターの技術を磨く場だ。装備やアイテムは制限されるが、今回はお前のアクセルアックスを使える。現実的に考えて、昨日のランポス戦を活かせ。動きを思い出せ」

 

リナがノートを開き、補足した。「ドスランポスはランポスより大きくて、トサカも赤いよ! 突進力は強いけど、群れを率いてないときは単独行動だから、動きを読みやすいはず!」

 

ミゲルは深呼吸し、決意を固めた。「分かりました。やってみます!」

 

バルドが広場で見送りながら、笑顔で言った。「零の指導なら、すぐに一人前になるさ。頑張れよ、ミゲル」

 

セリアも太刀を軽く叩き、激励した。「ドスランポスくらい、アクセルアックスなら楽勝よ。見せてみなさい、ミゲル」

 

ココット村の闘技場は、村の外れに設けられた円形の石造りの施設だった。観客席は空っぽだが、壁には過去のハンターたちの戦いの傷跡が刻まれている。ミゲルはアクセルアックスを手に、闘技場の中央に立った。零とリナは観客席から見守る。鉄の門がガシャンと開き、ドスランポスが姿を現した。青い鱗に赤いトサカ、鋭い牙が唸りを上げる。

 

「グルオオッ!」

 

ミゲルはアクセルアックスを剣モードで構えた。零の教えを思い出す――「タイミングを見極め、爆発突撃を活用しろ」。ドスランポスが突進してくる。ミゲルは横に跳び、剣モードで素早い連撃を繰り出した。刃が鱗を削り、ドスランポスが怒りの咆哮を上げる。

 

「いいぞ、ミゲル! 動きを読め!」リナが観客席で叫び、ノートに記録を走らせる。

 

ミゲルはドスランポスの突進パターンを観察し、斧モードに切り替えた。レバーを引き、火薬機構を起動。ボンッ! 爆発の勢いで突進し、斧の強烈な一撃をドスランポスの側頭部に叩き込んだ。モンスターがよろめき、地面に倒れる。

 

「まだだ!」零の声が響いた。「急所を狙え!」

 

ミゲルは再び剣モードで追い打ちをかけ、ドスランポスの首筋を斬りつけた。数分の激戦の末、モンスターは動かなくなった。ミゲルは息を弾ませ、汗だくでアクセルアックスを下ろした。闘技場の静寂が、勝利の余韻を強調する。

 

「やった…!」ミゲルは拳を握り、観客席を見上げた。

 

「上出来だ」零が闘技場に降りてきた。「だが、動きに無駄が多い。爆発突撃の火薬を2回使ったな。1回で仕留められるよう鍛えろ」

 

ミゲルは笑顔で頷いた。「はい! 次はもっと上手くやります!」

 

闘技場から戻ったミゲルは、村の広場でセリアと調査団に報告した。セリアは感心したように笑い、「見習いとは思えない動きだったよ。零の指導、さすがね」と零に視線を向けた。

 

零は静かに答えた。「ガキの覚悟がいいだけだ。セリア、飛竜の調査はどうだ?」

 

セリアの表情が引き締まった。「森丘で鱗の欠片を見つけた。ミゲルの話と一致する。…ゼルレウスかもしれない」

 

ミゲルは胸が高鳴った。自分の遭遇した飛竜が、零の過去と繋がっている。ハンターとしての道が、大きな試練へと進もうとしていた。

 

 

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