Monster Hunter Duel Storm 作:アサシン・零
ココット村の広場は、ギルドの調査団の活動で活気づいていた。約20名のハンターと編纂者が馬車から降り、装備を整え、森丘への調査準備を進めている。ミゲルはアクセルアックスを背負い、調査団リーダーのセリアと、彼女の隣に立つ若い男性に目をやった。男性は眼鏡をかけた瘦身の学者で、革のローブに無数のノートとペンを携えている。
「ミゲル、こちらはエル。調査団の学者で、モンスターの生態に詳しい」セリアが紹介した。「今回の調査の概要を説明してもらうわ」
エルは22歳の若さで、熱意に満ちた目をミゲルとアサシン・零に向けた。「初めまして、ミゲルさん、零さん。ギルドから派遣された調査団は、総勢20名。ハンター10名、編纂者と学者10名で構成されています。目的は、ミゲルさんが遭遇した飛竜――ゼルレウスらしきモンスターの痕跡調査です」
その時、ミゲルの足元で小さな唸り声が響いた。「ニャ!」傷だらけのオトモアイルーが、零の横に堂々と立っていた。灰色の毛皮に無数の傷跡、鋭い目つきは歴戦のハンターを思わせる。ミゲルは驚き、リナがノートを手に叫んだ。「うわ、ベイル! 零さんのオトモアイルー! めっちゃカッコいい!」
「ベイル、落ち着け」零が静かに言い、アイルーの頭を軽く叩いた。「こいつは俺の相棒だ。20年のハンター歴を共にしてきた」
ミゲルはベイルの傷だらけの姿に目を奪われた。まるで零そのものを映すような、歴戦の風格。ベイルはミゲルを一瞥し、鼻を鳴らしてそっぽを向いた。「ニャ、若造ニャ」
エルが咳払いし、説明を続けた。「森丘で鱗の欠片が見つかりました。ミゲルさんの証言――深蒼色の鱗、赤い目――と一致します。ゼルレウスとの関連が疑われますが、確証はありません。今日、皆で森丘に手分けして痕跡を探します」
零が目を細めた。「ゼルレウス…その名は約34年前、俺の故郷を壊した飛竜だ。だが、ギルドは記録を隠した。エル、何か知ってるか?」
エルは少し緊張した様子で答えた。「ゼルレウスの記録は、ギルドの機密文書にわずかに残っています。深蒼色の飛竜、単独行動、知的な動き…ですが、羽毛の記述はありません。ミゲルさんの証言には羽毛があったと?」
「確かに、羽毛みたいなものを見た気が…」ミゲルは記憶をたどった。あの夜、月光に映えた飛竜の翼に、鱗とは異なる柔らかな輝きがあった。
「なら、森丘で確認だ」セリアが太刀を叩き、指示を出した。「ハンターは3人一組で行動。ミゲル、零、リナは一組ね。エルは私と学者チームで痕跡分析を行う」
森丘のエリア5、岩場と密林が交錯する場所。ミゲルはアクセルアックスを手に、零とリナと共に痕跡を探した。ベイルが先行し、地面の匂いを嗅ぎながら「ニャ!」と合図を送る。零は静かに周囲を警戒し、双剣を握っている。
「ミゲル、地面と木々をよく見ろ。飛竜の痕跡は爪痕、鱗、糞、羽毛…どんな些細なものでも見逃すな」零の声は冷静だった。
リナが木の根元でしゃがみ、叫んだ。「ミゲル、こっち! 何かある!」彼女が指したのは、岩に引っかかった深青色の羽毛だった。長さはミゲルの腕ほど、金属のような光沢を持ち、鱗とは異なる柔らかさがある。
「これ…あの飛竜の!」ミゲルは興奮を抑え、羽毛を手に取った。
その時、エルとセリアが駆けつけた。エルは羽毛を手に取り、ルーペで観察した。「…これは確かに飛竜種のもの。だが、ゼルレウスではない。ゼルレウスに羽毛はないんです」
「何!?」ミゲルとリナが同時に声を上げた。
「ゼルレウスの記録では、翼は純粋な鱗と膜で構成されています。羽毛は一切記述がない。新種の飛竜…間違いありません」エルは断言し、ノートにスケッチを始めた。「ただ、これだけの痕跡では生態が分からない。さらなる調査が必要です」
零は羽毛を見やり、呟いた。「新種か…だが、なぜこの時期に、こんな場所で…」
調査の合間、ミゲルはエリア3の草地で野生のドスランポスと遭遇した。赤いトサカが揺れ、鋭い牙が唸りを上げる。ミゲルは訓練クエストのドスランポス戦を思い出した。「動きを読み、タイミングを合わせる…!」
アクセルアックスを剣モードで構え、突進を回避。ドスランポスの横をすり抜け、連撃を繰り出す。リナが叫んだ。「ミゲル、ナイス! 訓練の成果出てきてるよ!」
ミゲルは斧モードに切り替え、火薬機構を起動。ボンッ! 爆発突撃でドスランポスの側頭部を直撃し、モンスターを倒した。汗だくで息を整えながら、ミゲルは笑顔を浮かべた。「訓練のおかげだ…!」
零が近づき、頷いた。「動きが良くなってる。剥ぎ取りも忘れるな」
ミゲルはナイフでドスランポスの鱗と牙を剥ぎ取り、近くの骨塚から竜骨【小】を採取した。リナが素材を記録し、「これでアクセルアックスの強化できそうね!」と笑った。
一方、零はベイルと岩陰で話していた。オトモアイルーが低く唸る。「ニャ、零、森丘の空気が変わってるニャ。昔と違う」
「分かってる」零は目を細めた。「20年のハンター歴で、環境が様変わりしてる。モンスターの分布、生態系の変化…何か大きな力が働いてる」
エルが近くで聞き、口を挟んだ。「それは…温暖化ですか? ギルドでも、近年の気候変動がモンスターの異常行動に関係してるって説が」
「断言はできん」零は冷静に答えた。「だが、新種の飛竜が現れるのは偶然じゃない。さらなる調査が必要だ」
ベイルが「ニャ!」と頷き、零の足元に擦り寄った。ミゲルが素材を背囊に詰め、戻ってきた。「零さん、次の調査は?」
「村に戻って仕切り直しだ」零は羽毛を手に、森丘を見渡した。「この飛竜…俺たちの過去と繋がってるかもしれない」
ココット村に戻った調査団は、羽毛の分析を進め、ギルドへの報告書をまとめた。ミゲルはアクセルアックスを磨きながら、零の言葉を思い返した。新種の飛竜、ゼルレウス、環境の変化…ハンターとしての道は、予想以上に複雑な試練に満ちている。