顔は平均以上だろうか。しかし、龍司自身の性格のせいで恋愛対象とは見られない。
「……zzz」
学校に登校してきて教材などを机にしまう前にカバンを枕にして寝てしまっている。
このように、龍司は枕か枕代わりになる物があればどこでも寝れてしまう。
要するに、自堕落な人間なのだ。
しかし、そんな龍司は起きている時は頼りになる事もあり、男子女子共に信用は得ている。
そんな龍司を妬んでか男子からはいじめの対象にもなっている。そんな事さえも龍司にとってはどうでもいい事なのかいじめを受けている間もうとうとし始める程だ。
「龍司、起きないと先生来るよ」
そんな寝ている龍司に話しかける女子。
小学校の一年の頃からなぜか一緒のクラスばっかりになる龍司の腐れ縁である幼なじみ、
日本人とは思えない程の鮮やかな赤い髪を伸ばして後ろで結んでポニーテールにしており、はつらつとした目が特徴的である。
やや男勝りではあるが、クラスでも可愛い部類に入る。
そんな幼なじみの好意を龍司は平気で無下にし、寝続ける。
「……zzz」
「はぁ……龍司、起きろ!」
香織はそう言って龍司が枕代わりにしているカバンを取り上げる。
と、龍司の頭は机に真っ逆さま。
ドカッ!
そんな音を立てると
「……ん、ふわぁ……あ?」
と、何でもなかったかのように痛がる事もなく起きる。
「あ、香織じゃん。おはよう……そのカバンを返せ」
「ダメよ。あんた、また枕代わりにして寝るでしょ?」
「何を言っている、そんなの……当たり前だろ?」
なぜかドヤ顔でそう言う龍司。
「……それを当たり前にしちゃダメでしょうが……」
そうツッコミを入れて龍司のカバンを龍司の机のカバン掛けに掛ける。
「なぜ俺の枕を掛ける」
「あんたの枕じゃないから、あんたのカバンだから……ねぇ、何でそんなにいつも眠そうにしてるの?」
「んあ?」
どうやら枕がなくてもうとうとしていたらしい。どう見ても今の話を聞いているようには見えなかった。
「だから……何で、そんなにいつも眠そうにしてるの?睡眠はちゃんと取ってるんでしょ?」
「あ?ああ……まあ、取りきれなかった分を今のうちに回収しておこうかと……」
「ごめん、龍司が何を言ってるのかがさっぱりわかんないんだけど……」
「いいさ。どうせ言ってもわかんないと思うから」
「何かバカにされたような気がする……ちゃんと起きてるのよ」
そう言って自身の席に戻る香織。
─────余計なお世話だっての……。
そう思いながら渋々と準備を続ける龍司。
と、先ほどからずっと自分に視線を送り続ける人物の方を見る。
香織と入れ替わりにそいつらが龍司の元にやってくる。
リーダーと思われる男子は制服を着崩して派手な恰好をしている。
「よぅ、いつも通りマヌケそうな顔をしてんな、遠坂」
「マヌケそうな顔をしている遠坂ですが、何か?大木君」
目の前のリーダーの男の名前は
「おめぇのマヌケ面が気に食わねぇんだよ。俺の視界からさっさと消え失せろ」
「残念ながら俺がお前の視界に入ってるんじゃなくて、お前が勝手に俺を視界に捉えてるだけだろ?俺は悪くないぞ」
「んだと、根暗の分際で!」
大木は挑発されてさらに激情しているのか、今にも殴りかかりそうだ。大木の周りの奴等もそんな雰囲気である。
「根暗でお前に何か迷惑を掛けてるなら謝るけど、お前には何ら関係ないだろ?」
そんな中でも龍司は余裕そうな表情を崩さない。
「てめ『キーンコーンカーンコーン』ちっ!また後で来るからな!逃げんなよ!」
そう言って取り巻きを連れて自身の席に座る大木。
まあ、何て事はない。この大木、クラス全員の総意というか分かりきっている事で香織に気があるのだ。
しかし、香織自身にはそんな気は毛頭ない。
実のところ、大木が龍司の事を嫌い、いじめ等をしている事をクラス全員知っている。
しかし、龍司自身が皆に口止めをしているのだ。
こんな面倒くさい事に皆を巻き込む気はない、見てみぬ振りをしてくれ、と……。
そんな龍司の言葉に皆、反対したがそれでも龍司は引かずに、とうとうクラスメイトの方が折れてしまった。
ちなみに香織にはこの事は話していない。
自分の所為で幼なじみが傷ついているという事を知ってほしくないのだ。
と、そこまで考えた所で龍司はある疑問を抱いた。
────あれ?先生遅くないか?
普通、HRの鐘がなると早くて数秒、遅くても5分すれば先生は必ずやってくる。
しかし、今は鐘が鳴って10分。既に到着していてもおかしくはないのだ。
と、その時────────────教室の床に巨大な魔方陣が展開された。
「えっ!?」「ちょっと、何だよ!?」「何がどうなってんだ!?」
クラスメイト全員が慌てる。あの大木ですらもだ。
しかし、そんな中にあって龍司は冷静だった。
────この魔方陣……まさか、
と、そこまで考えた所で教室を強烈な光が襲う。
誰もが視界をホワイトアウトさせる程の強烈な光だ。
「きゃあっ!?」
「うわっ!」
クラスメイトが悲鳴を上げた。
激しい光はクラス全体を包み、目を開けていられないほど強くなり意識が飛んでいく。
机に座っていたはずなのに、自分が今どこに立っているのかどういう体勢でいるのかすら分からない。
重力が消えてしまったかのような感覚になった。
しばらくのあいだそんな浮遊感が続いた。
そうして閃光の中で景色がぐるんと周った気がした。
そして目の前に……以前にも出会った絶世の美女がいた。
「あら?また来たの?」
「ああ、どうやら
「そっかぁ……まあ、今回は特別な召喚だから仕方ないのかもしれないわね」
「特別な召喚?召喚にも何か種類とかあんのか?」
こんな自体になっても龍司は冷静になっている。また、と言っているからには以前にも体験した事があるようだ。
「ええ、まずは勇者召喚。これは勇者とその仲間達を召喚する召喚術よ。そして、今回貴方が巻き込まれたのは異世界人召喚」
「?何が違うんだ?」
「つまり、勇者としてではなく魔力を持ったただの人間を自分達の世界に呼び寄せる召喚なのよ」
「なるほどなぁ……」
「さて、私の仕事はあなたにチート能力を与える事なんだけど……正直言って、あなたにあげられるチートは限られてるのよね」
「まあな。既に持ってるし」
「それで、あなたが持っていたチートと相性がいいチートをこっちで選んでみたの。それを見てみてそれでそれが気に入ったならそれを貰う。気に入らなかったら他のを選んでもいいよ」
「わかった。で?どんなチートなんだ?」
「ふふ、これ」
そう言って彼女は宙に文字を書き始めた。
職業:
使用武器:
習得可能スキル:加護付与.攻撃力付与.防御力付与.属性付与...etc
職業解説
使用武器の中にある小剣はあくまで自衛用であってあまり攻撃力の高い物を持つ事は出来ない。
「なるほど、付与魔法か……ん?それって俺が元々持ってる職業と矛盾してないか?」
「大丈夫よ。そこは私の神様パワーで何とか出来るから」
「何とか出きるんだな……」
「それで?この職業も兼任する?」
龍司は少し考えた後
「ああ、わかった。兼任させてもらおう」
そう答えた。龍司自身、どんな事になるか面白そうだからである。
「おお、さすがは
「……………………は?」
目の前の女性が言った一言に思わず耳を疑ってしまう龍司。
今、目の前の女性は何と言ったか、
「ああ、そうか。全てが終わった後に無理やり送還されたんだったね。キミはあの世界では大英雄と呼ばれているんだよ。それを神様間で流行らせて
「………………………おい」
抑揚のない声で喋る龍司。
「………………………………………すいませんでした」
彼女は冷や汗を流しながら即座に土下座した。
「はぁ……いいよ。自分の身分隠し通せばいいんだし」
「……そんな事出来ないと思うけどなぁ……」
「ん?何か言ったか?」
「いや、何でも……さて、それじゃ……私はいつでも、キミを見守っているよ」
そう言われた所で龍司の意識は刈り取られていった。
次に気づいた時には龍司は広い部屋の中にいた。
見渡してみるとクラスメイト全員がまだ昏倒している。
恐らくは落ちる際に頭を打ち付けたりでもしたのだろう。
そして龍司は天井を見上げる。そこには見覚えのある魔方陣が描かれていた。
─────なるほど、この文様はやっぱり……。
と、そこまで考えた所で龍司は自分の胸ポケットに入れているあるカードを取り出す。
龍司はそれを自身の目の前にまで持ち上げると宙に文字が浮かぶ。
名前:
Lv5
職業:
MP:200/200
ATX 58
DEF 105
STR 95
INT 198
RES 40
DEX 49
AGI 39
LUK 5
「いや、幸運値低すぎだろ……」
確か、前回の職業の時もどれだけLvを上げても幸運値にはあまり変動はなかった。
「……どうやって、前のステータスを確認するんだろ……?」
と、そこまで考えた所で目の前に表示されたステータスが一回転して裏側が表示された。
名前:
Lv:298
職業:
MP:13989/13989
ATK 3206
DEF 10498
STR 5723
INT 56798
RES 4098
DEX 9806
AGI 6989
LUK 34
このステータスを見てもわかる通り、どう考えてもLUKの値が際立って低い。それだけ不幸という事だろう。
と、その時
ガシャンッ
と、ドアが勢いよく開かれる音が聞こえた。
龍司はドアのある方向を見てみると……そこには見覚えのある女性が息を切らしていた。
鮮やかな金髪を腰の部分にまで伸ばしており頭の頭頂の部分には青いリボンが巻かれている。瞳の色は綺麗な青色。まず、日本人とは思えない容姿をしていた。
そしてその容姿に龍司は心当たりがあった。
「お前……ティアか?」
「リュージ様……ですよね?」
ティアライア・アルテミス・クーデルベン。今回龍司達を召喚した王国、クーデルベン王国の第二王女である。
「リュージさまぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ティアは全力で走ってきて龍司に思いっきり抱きつく。
こうして遠坂龍司は……異世界『サリア』に再び、召喚された。