龍司はゆっくりと意識を覚醒させていく。
そして、龍司は体の節々に痛みを感じる。
──────ああ、そっか……ソファで寝たから……じゃ、仕方ないか。
そう、結論づけて起き上がろうとすると
ギュッ
自身の体の上に重さを感じる。
その重さを感じさせる何かは龍司の服を摘んでいる。
ちなみに、今の龍司の服装は学生服である。
「何だ……って、お前か……」
龍司は目を開けて乗っかっているものを見つける。
龍司の上に乗っていたのは、イリアだった。
その瞳は閉じられており呼吸が安定している為、寝ていると思われた。
「んぅ……龍司……」
寝言を言いながらも、さらに頬を寄せるイリア。
その顔からは安心感が感じ取れた。
「ま、いっか…………ん?待てよ、確かこんなシチュエーション、前にも……」
龍司はこのままでも大丈夫か、と考えた所で考えるのを止めた。
なぜなら、こんなシチュエーションに覚えがあるからだ。
「魔王様、起床の時間ですよ」
と、嫌な予感は的中し扉の外からはスレイブの声が聞こえてくる。
「や、ヤバい……早く、離れねぇと……」
「魔王様?開けますよ?」
龍司は慌てて離れようとするが、時既に遅し。
スレイブは合鍵を使い──ちなみに、将軍全員合鍵を持っている──室内に入る。
「魔王さ……ま……?」
スレイブは目の前の現状を冷静に分析する。
目の前には龍司がおり、龍司の上にイリアが乗っている
↓
龍司はこの部屋のソファの上で寝たと思われる
↓
そしてその上でイリアは寝ており、寝間着は着崩れている。
結論。
「昨夜はお楽しみだったようだね……ごめんね、リュージ。もうちょっと余韻に浸っててもいいよ」
全てを悟りましたよと言わんばかりの早さでドアから出て行き
『みんなぁ~!!リュージと魔王様が同衾してたよ~~~!!!!昨夜はお楽しみだったみたいだよ~~~~!!!!』
「ちょ、待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
龍司はイリアを無理やり起き上がらせて、自身は立ち上がりイリアが怪我をしないようにソファに寝かせる。
そして、全速力でホラを吹きながら魔王城の中を走っているスレイブを追いかける。
「待てや、こらあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
龍司は、寝起き早々全速力で走るハメになった。
「うぅぅぅぅぅ…………」
「ふん、変な事を言った罰だ」
「だからって、これはひどくないかい?それにリュージが魔王様と一緒に寝てたのは事実でしょ?」
「はい、一枚追加~」
「ぎゃああぁぁぁぁぁ!!!???」
城の中庭で龍司は正座するスレイブの太股に石を一枚置いた。ちなみに今ので石は4枚目。
古い拷問方法である。
「りゅ、龍司……ごめんね?多分寝惚けて龍司の上に乗っかっちゃったんだと思う……///」
顔を赤くしながら龍司に謝るイリア。
どうやら、故意ではなく寝惚けていってしまったらしい。
「いや、イリアが謝る事じゃねぇよ。謝るべきなのはむしろこいつだ」
「何でさっ!?僕は面白おかしくしたいだけなのに!」
「はい、さらに追加~」
「もう、止めてくれぇぇぇぇぇぇぇ!!!??」
止めさせたければその口を閉じればいいというのに、それでも口を開くスレイブ。
結局石は六枚程まで乗っけた所で龍司の気が済み、スレイブは拷問から開放された。
「い、痛い……感覚が無くなってるんだけど……」
「そりゃそうさ。六枚も積んだんだからな」
「だから、その枚数が異常なんでしょ!?たかが、魔王様と噂が流れるだけじゃないか……魔王様とただならない関係という噂が!」
スレイブは未だに反省していないようだ。証拠にその顔には笑顔があった。
「スレイブ、お前にはアイアンクローをプレゼントしようか?」
「すいませんでした」
先ほどまでの笑顔を一変させて土下座を繰り出すスレイブ。
おそらく過去にも龍司のアイアンクローを喰らった事があるのだろう。
そして、その時の痛みを思い出したのだろう。その早さには目を見張る物があった。
「スレイブよ、もうちょっと抑えようと思わんのか?」
さすがに呆れているのかダンがスレイブに注意する。
「ダン、僕から人を弄る性格を無くしたら何が残るというんだい?」
しごくまともな事を言っているようで、全然まともな事を言っていない。
「お前から、それを取ったら何も残らんだろうな」
ダンとスレイブはそう言った人物の方向を向くと同時に膝をつく。
彼らが膝をついているのは……茶髪をぼさぼさにしながらもどこか高潔さを漂わせる男性だった。
彼の名前はアスラ・クルスニク。将軍達の最高位である大将軍の称号を持っている人物だ。
二つ名は豪剣のアスラ。彼の持つ最高の魔剣、魔剣・
「アスラ様、来ておられましたか」
「ああ、先ほど帰還した……さて」
さて、と切り上げた所でアスラは龍司の所までやってくる。
「ん?アスラか」
龍司もアスラの存在に気づいたのか、アスラが来るのを待つ。
「久しぶりだな、リュージよ」
「ああ、久しぶりアスラ……どっか、行ってたのか?」
「ああ。ちょっとした野暮用でな……そっちこそ、いつ帰ってきたのだ?」
「ついこの間だ。その野暮用ってのは……過激派魔族の事か?」
「察しがいいな、その通りだ。といっても直前で逃げられたがな」
アスラはそう言って腰に下げている魔剣の柄に手を置く。
「最近魔物共の動きも活発化している」
「やっぱりな……」
龍司はこの魔国に来るまでに遭遇した異常な程の魔物の数に疑問を抱いていた。
それも過激派魔族の所為だとすれば説明がつく。
「とにかく、話を聞かせてくれ」
「ああ……はは、もう昔のような顔に戻っているぞ?」
「うるせぇ」
そうって二人は城の中へと向かっていく。
「ちょ、ちょっと待て!私を置いていくんじゃない!」
置いていかれたイリアは慌てた様子で龍司達の後を追って城の中に入っていった。
「くそ……くそ…………何で俺が悪いって感じになんだよ……俺は悪くねぇんだぞ……」
「やぁ」
「……何だよ、てめぇ?」
「君に力を与えようと思うんだよ……君の欲しい物が手に入るよ?」
「俺の欲しい物が……」
「ああ、さあこの手を取ってご覧?」
「ああ、力が漲る……これで、これで…………香織は俺の物……はは、ははははははは!!!!」
ある場所である男が高笑いを上げていた……狂気じみた瞳をしており、その手には不気味な光が握られていた……。
最後の高笑いした人物ってイッタイダレナンダー?(棒読み)