所変わって……こちらはクーデルベン王国の王城、その一室。
「それでさそれでさ!」
「えぇ!?そうだったの?」
そこは香織の部屋だった。今現在、クラスの女子で埋め尽くされている。
何でも今日は女子会を開きたいという事で香織は自分の部屋を快く貸したのだ。
「………………(ポリポリ)」
普段から物静かな佐々木アリスも参加しており、持ってきていたお菓子をポリポリと食べている。
「それじゃあ、女子会の定番。コイバナとでも行こうか!」
恵が腕を突き上げてそう宣言する。コイバナというのは名前の通り、恋の話をする事である。
「まあ、一番わかりやすいのはかおりんね」
「ふえっ!?ななな、何で私が最初なの!?」
いきなり話を振られて戸惑う香織。
「何を仰いますかかおりん。全員気づいてるんですよ?かおりんが遠坂君の事を大好き大好きって事は」
「そ、そうだ!あの時は聞かなかったけど、皆そう思ってたの!?」
「「「「「「「「あれで気づかない方が珍しい」」」」」」」」
「珍しいんだ……」
香織はベッドに手をつく。まさかクラス全員からそんな認識になっているとは香織も気づかなかったのだ。
「それにしてもよかったね。遠坂君が無事だってわかって」
恵はその言葉だけは小声で香織に囁くように言う。
このメンバーの中で話しているのは今の所恵だけ。いや、それを言っては語弊がある。
香織はアリスにも龍司が生きていると教えている。
アリスは普段から無口であり、それでいて口も堅い。隠し事は得意なのである。
「そうだね…ホント、龍司が無事でよかったって思ってる……」
その様子から察するに本当に龍司の事が心配だったのだろう。
香織は今にも泣きそうである。
「何々?香織、どうしたの?」
「い、いやぁ何でもないよ。多分欠伸したからだから」
「あ、そういえばさ」
と、クラスの女子が指を立ててその指をアリスに向ける。
「アリスさん!」
「……?」
お菓子を口に頬張ったままの状態で首を傾げるアリス。
人形みたいで可愛いと思ってしまったのは、クラス女子全員の心の中で止めておいた。
「アリスさんのコイバナとか私聞いたことないんだけど!」
「私の、恋の話……?」
その疑問を言った女子だけでなく、その疑問はクラスの女子全員が思っていた事だ。
香織がわかりやすい女なら、アリスはその逆、話しかければきちんと返答はしてくれる。
しかし、アリスのその無表情からはあまり感情が読み取れないのである。
「…………」
アリスは少しだけ考えた後
「それじゃあ……少しだけ」
と、切り出した。
「私の初恋は、保育園で一緒に遊んだ男の子……」
「へぇ~そんな小さい頃に初恋を経験してたんだ~」
「うん、当時の私って今よりも無口で……誰とも遊ばなくって……でも、その男の子だけは私を遊びに誘ってくれたの」
「珍しいわねぇ、というか当時からそれって今となっては女の子誑しにでもなってそうな感じだね」
「その時にね、聞いてみたんだ、何で誘ってくれたの?って…そしたら、「お前が一人で寂しそうにしてたから、それ以外の理由なんてあるのか?」って、常識みたいに説かれちゃった……」
「おおぅ、もの凄く誑しになりそうな感じだね……」
アリスの初恋という話を聞きながらどんどん勢いはヒートアップしていく。
「まあ、相手の方はもう私の事なんて忘れてるみたいだけど……」
「……ん?」
と、そこで香織はアリスの呟いた一言にある疑問を持った。
─────相手の方は忘れてるって……保育園でじゃなくって、その後で会った事があるって事だよね……?
香織は隣にいる恵の横顔を盗み見る。
その顔には疑問が浮かべられており、おそらく香織と同じ疑問に行き着いたのだろう。
「ねぇ、アリスっち」
「ん?」
意を決して恵がアリスに質問する。
「相手の方は忘れてるみたいって言ってたけど、保育園の後で再会したの?」
「うん、再会したよ。向こうは私の事を忘れてるみたいだったけど……」
と、そこまで言うとアリスは香織を見つめる。
「な、何?アリス」
「うぅん、何でもない」
そこまで言ってからアリスはお菓子を頬張る。
─────う~ん、アリスっちはかおりんに何か思う所がある……?でも、かおりんとアリスっちは初対面だって言うし……。
そうして、夜は更けていった。
アリスSIDE
私は自分にあてがわれた部屋のベッドの中で考え事をする。
「何で、自分の事を喋ったんだろ……」
それは自分の部屋に戻ってまず思ったこと。
彼に迷惑はかけられないと思ったから、今まで黙ってたけど……異世界に来たからかな。
さっきの女子会で私が話した事は全部真実。
ただ、私は相手の名前を一言も喋ってはいない。
言ったら……彼に迷惑がかけてしまうと思ったから。
それに、彼は私にだけ優しいんじゃなくて全員に優しいという事も高校に入ってから彼の姿を目で追う事でわかった。
「でも、初恋は実らせたいし……そうなると、私があの時の子だっていうのも説明しないといけないし……」
あの時の私は今よりも無口で誰とも関わらなかった。
それも仕方がないと思う。あの時は色々な所を転々としていた為、友達を作っている暇などなかったのだ。
その保育園でもいつも通りにいこうと思ってた。
でも、彼が来てくれた。私を誘ってくれた。一緒に遊んでくれた。
彼は忘れてるみたいだけど……あの時の言葉で私はここまで変われた。
「君はもうちょっとお話するといいと思うよ。その方が友達は作りやすいし……可愛いんだしさ」
…………自分で思い出して、恥ずかしくなってきた。
思えば、あれも自然に言える事から彼は誑しになっている可能性は十分にあった。
でも、本当に誑しになるとは思わなかった。
「でも……」
私がもし、過去に出会った事があるって聞いたら驚いてくれるかな?
「ふふ……」
その時の事を思うと笑みを浮かべてしまう。
彼の少し驚く顔が目に浮かぶからだ。
「彼は絶対に帰ってくる……」
その時になったら言ってみよう
驚いた顔を見せてね、リュウ君。
SIDE OUT
はい、という訳でモブキャラだと思われていたアリスさんがヒロインにログイン致しました。
ちなみに、これは当初から考えられていた設定なのですが……龍司は小さい頃にアリスに出会った事に本当に気づいていません。
幼い頃に一度であったヒロインって鉄板でしょ?