絶対不敗の大英雄   作:レゾナ

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16話 戦闘開始

洞窟の中に入っていく魔族と異世界人の連合軍。

 

「薄暗いね……」

 

「何か、出そうな雰囲気だな」

 

「ちょ、ちょっと!?不穏な事言わないでよ!?」

 

異世界組達は緊張を無くそうとしているのか陽気な声でそれぞれ話している。

 

「おい、少しは緊張感を持て!!これから殺し合いが始まるかもしれないんだぞ!」

 

と、異世界組と一緒に行動していた魔族の一人が注意をする。

 

「す、すいません……」

 

「本当に分かってるのか?」

 

魔族の人はどうにも不満なのか詰め寄る。

 

「まあまあ、あんまりぴりぴりすんのも疲れるでしょ?」

 

「魔将軍様!魔将軍様ももう少し緊張感をですね!」

 

「リラックスも必要だよぉ。ほら、リラックスリラックス!」

 

そう言って皆を和ませようとするスレイブ。

 

しかしこの時、一番緊張して不安だったのが当の本人スレイブだ。

 

(もしも、彼らに相手を殺すという選択肢が出てきたら……僕は躊躇いもなく彼らの代わりに相手を殺そう。そんな事がないように皆のコンディションを最高に保っておかないと)

 

スレイブ他、他の将軍達もだが彼らに殺しをさせようなどと考えてはいない。

 

この世界の人間は殺しという事に対して一定の覚悟は持っている。

 

しかし、目の前の彼らは異世界からきた一般人。

 

もし仮に殺しをしてしまえば精神が参ってしまい、今後の生活に影響が出るかもしれないからだ。

 

そんな事にはさせたくはない。龍司のような思いをさせたくはないのだ。

 

(あの時、初めて僕らと出会ったリュージの目は全てを覚悟した目だった。それでも、僕は覚えている。リュージは夜な夜な、誰にも悟られる事なくひっそりと泣いていた事を)

 

スレイブの脳内に浮かぶのは過去の映像。

 

龍司が魔国へと亡命してきた日。彼に与えられた部屋の見張りを担当していたスレイブは聞いた。

 

部屋の中からすすり泣く声がするのだ。

 

昼間はあんなにも無関心なような、とても勇者を殺したとは思えないほど冷徹な人間だと思っていた。

 

しかし、彼も人間なのだ。人を一人殺してしまった殺人者なのだ。

 

その胸中は誰にも理解は出来ないだろう。少なくとも自分には理解は出来ない。

 

自分は殺しをしても仕方がないと思っている。なぜならば殺さなければ自分が殺されてしまうからだ。

 

しかし、龍司を初め異世界の人達は違う。

 

今の魔王であるイリアスも元は異世界人。彼女も実際、人間を殺すのを躊躇っていた。

 

龍司も一緒なのだ。彼女と同様にずっと苦悩してきた。

 

だからこそ、久しぶりに会った龍司の顔を見てスレイブは決心したのだ。

 

これ以上、龍司のような犠牲者を出さないようにしよう、と。

 

「ほらほら、進もう!」

 

スレイブは一見おちゃらけた人物ではあるが、このように人一倍責任感が強いのだ。

 

そしてそれを知っていたからこそ、イリアはスレイブを異世界組の者達と一緒に行動させている。

 

「イリア様。スレイブをあそこにやった理由がわかりましたよ」

 

イリアの隣で黒色の騎士甲冑を着込んだアスラがイリアに耳打ちする。

 

「だろう?皆面倒見はいいが、中でもスレイブは人一倍それが大きいからな。スレイブならば彼らを守ってくれると確信していたんだ。それよりも、私語は慎むように」

 

「これは失礼。では最後に一言だけ」

 

アスラはそう言うと顔を険しくする。

 

「前と後ろ、囲まれております」

 

「わかっている。察知は出来ていた。しかし疑問が残るな」

 

「はい、後ろから来ているという事はあいつら、この合同作戦を知っていた事になります」

 

「信じたくはないが……内通者がいる可能性がある。警戒しておけ」

 

「はっ」

 

そう言って少しだけ離れ、警戒するアスラ。

 

その後ろではダンが腕を振り回したりして、準備をしている。

 

いつ敵が襲ってきてもいいようにだろう。

 

すると

 

ゴォ!

 

イリアの目の前に火球が飛んできた。

 

イリアは慌てる事無く、それを消滅魔法で相殺する。

 

「え、何!?」

 

「今の、フレアボムだ!」

 

「って事は、敵襲!?」

 

異世界組もようやく敵が攻めてきたのだと理解し、それぞれの獲物を手にする。

 

「皆、後ろにも敵は来ている!それぞれ背中を守りあいながら戦ってくれ!」

 

「了解!」

 

「え?、え!?う、後ろにも来てるの!?」

 

「い、いつ周り込んだんだ!?」

 

「皆、落ち着くんだ。冷静さをかいちゃいけないよ」

 

混乱していた異世界組にスレイブ落ち着くようにと助言する。

 

「そ、そうですよね……」

 

「よ、よし、それぞれ頑張ろうっ」

 

オォォォォォォォォ!!!!」

 

「低俗なる魔族に死を!」

 

「異世界の魔王など認めるか!!」

 

「魔族が人間と手を取り合うなど言語道断だ!」

 

過激派魔族達はそう叫びながら前から後ろから迫ってくる。

 

「皆、ここが正念場だ!乗り切って、この拠点を壊滅させるぞ!!」

 

「「「「「「おおおおおおおお!!!!!」」」」」」

 

今ここに、魔族・人間連合軍VS過激派魔族軍の戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

恵SIDE

 

あたしは僧侶という職業なので、光属性の魔法が得意だ。

 

この世界では回復魔法などは貴重で私や香織達は皆の傷などを治す役目だ。

 

時折、私は光魔法であるレイという魔法を使って皆の援護をしている。

 

そんな中

 

「あれ?あれって……大木?」

 

周りにいつもの取り巻きの何人かを連れてどこかに向かっている。

 

洞窟の中に出来ていたもう一つの道を進んでいく。

 

もしかして、単身行こうとか考えてるのかな?

 

でも、危険だし……。

 

「ちょっと、先行ってくるね」

 

「おう、気をつけてな!!」

 

近くにいたクラスメイトにちょっと行って来ると言ってから私は大木達の後を追った。

 

この後、ある過去を思い出す事に今の私は気づく事はなかった。 

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