絶対不敗の大英雄   作:レゾナ

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誰も待っていないとは思うけど、更新。


17話 帰還する英雄

恵は皆と離れて行動する大木とそれについて行く何人かのクラスメイトの後を追っていた。

 

自分一人で追跡するのも少し気が引けたのだが、周りにいた他のクラスメイトや魔族の人達はそれぞれで手一杯であったため、単独で追跡している。

 

また、恵は最近の大木やその取り巻き達の変化にいやな予感を抱いていた。故に、こうやって後をつけているのだ。

 

そして、大木達に見つからないように、その後をつけていたのだが、大木達が止まった事により、恵も足を止めた。

 

「…………だろ?もう少ししたら…………」

 

「わかってる…………。誘導す………」

 

「ああ、それで俺たちが…………」

 

「やべぇな、大木さん…………」

 

(何?誰と会話してるの?声が小さすぎて断片しか聞き取れない……)

 

耳を澄まして必死に声を聞き取ろうとする恵。

 

そして恵は衝撃の事実を知る。

 

「では、手筈通りに。このままいけば、お前たちの欲しいものが手に入るだろう」

 

「おお、ありがとうな。()()()()()さん」

 

「っ!!??」

 

大木達が話しているのは過激派魔族に属する者だったのだ。

 

(嘘?何で?だって過激派の魔族達を討伐する為に私達召還されたのに、その過激派魔族達と手を組んでた?)

 

そしてそこから恵は最悪の可能性を考え付いてしまった。

 

思えばおかしいのだ。この洞窟に入ってから。

 

恵は香織に渡された龍司の手紙の事を知っている。それ故に、恵は大木の事を監視していた。

 

だからこそ、気づいた。大木は何やら手でサインのようなものを作っていた。しかも暗い中でも見えやすいように小さな光を出す魔法まで使っていた。

 

しかし、大木の周りには取り巻き達がいて、こちらからはよく見えなかった。

 

しかし注意深く観察していた恵みだからこそわかったこと。

 

そして恵は気づいた。

 

(そうか。今回のこの作戦……何で過激派達が前からだけではなく、後ろからも襲撃をかけることができたのか……それは、大木たち今回の作戦の情報を流していたんだ)

 

そこまで考えた所で恵は戻る事にした。このままでは全滅もありえると感じたからだ。

 

しかし

 

カラッ

 

「?何か音しなかったか?」

 

「何?」

 

(しまった!?足元の石に気づかずに……!)

 

急いでしまったが故に足元の石に気づかず蹴ってしまい、石は音を立てて地面に落下する。

 

その時の小さな物音を大木達が聞き逃す筈もない。

 

「あんたはいってな。俺らが確かめる」

 

「いいだろう。まあ、どの道お前らとこうやって密会するのも今回が最後だったからな」

 

「そうだな、じゃあな」

 

そして恵の下に足音が近づいてくる。

 

(どうするどうする!?このままじゃ……)

 

考えても恵には何も考え付かなかった。

 

このまま終わるのか。そう考えた時、首からかけていたお守りに目がいく。

 

(……そうだ、あの時ももう終わりだって諦めてた。でも、私は今でも希望を持って生きてる。だから、諦めちゃだめだ!あの時とは違う!もう、守られるだけじゃない!)

 

恵が思い出すのは中学3年の時のある出来事。その時、恵は首にかけているお守りと共に勇気を貰った。

 

(お願い、もう一度勇気を貸して、遠坂君!)

 

意を決して、恵は走り出した。見つかるのはもう仕方ない。要は、捕まる前に皆の下に戻ればいいのだから。

 

「あっ!?あいつ、天羽じゃねぇか!?」

 

「聞かれてたのか!?」

 

「追うぞ!俺達の野望がここで潰えてたまるか!」

 

大木達が恵を追う。その顔は鬼気迫る顔をしていた。

 

「待ちやがれ!」

 

「待てって言われて待つ馬鹿はいない!!」

 

恵は走る。仲間の下に。

 

この洞窟は中は入り組んだ構造をしているが、恵は記憶力がいい。どこをどう通ればいいのかわかっている。

 

しかし、ここまで来て恵は初めて疑問を感じた。

 

(あれ?ちょっと待って……あいつらから逃げ始めた場所に来るまでに、この道を通って……ない?)

 

そう、それは小さな疑問。そして、それは確信へと変わった。それはなぜか。

 

「っ!?嘘、行き止まり!?」

 

恵の目の前には大きな岩壁がそびえ立っていた。

 

「へっへっへ……もう逃げらんねぇぜ?」

 

「まったく、無駄に走らせやがって……」

 

「っ、しまった……!?」

 

そして、唯一の脱出する道は大木達によって塞がれた。

 

「黙ってくれるんならば、手荒な真似はしねぇよ?」

 

「嘘でしょ?わかってるのよ。あんた達、過激派の魔族と手を組んで何をしようとしてるの!?」

 

「決まってんだろ?()()()()()()()()()

 

「は、はぁ?」

 

恵は大木の言った事が信じられなかった。この国を救う?どういう事となっていた。

 

「この国は腐りきってる。だからこそ、俺達がこの国を……延いてはこの世界を救ってやるんだよ」

 

「あ、あんた……まさか、他のあんたらも同じ考えなの?」

 

「ああ、そうだよ。正直大木から聞かされた時は信じられなかったが……」

 

「でも、大木さんは本気でこの世界の事を憂いてるんだ。そんな大木さんの邪魔をする魔族達や王族の奴らは邪魔者だろ?」

 

「だからって、こんなのおかしいでしょ!?クラスメイトもいるのよ!?」

 

「必要な犠牲だ。それにお前らだってわかってくれるって俺は信じてんだよ」

 

大木の声が恵の脳内に響く。そしてそれが次第に正しい事だと認識していく。

 

そして、恵はそんな自分に吐き気がした。

 

(っ、私は何を考えてるの!?少なくとも、王様達は本気でこの国の事を考えていつも行動しているのを知ってる!そんな王様を信じられない理由なんてないのに!)

 

「そんなの信じられない!私は、私を信じる!」

 

「っち……おい、やるぞ」

 

「おおっ!」

 

と、取り巻き達は恵が動けないように腕をとる。

 

「っ、離して!離してよ!!」

 

「離すかよ……それよりも、忘れられない思い出を作ってやるぜ」

 

そう言って大木が近づいてくる。

 

「お前を喰った後は、香織だ……そしていづれはクラス中の女共を俺達の手にしてやるよ」

 

「そ、それがあんたの本音ね?」

 

「ああ、そうさ。なぁに、すぐに気持ちよくなるさ」

 

この時、恵の脳内には龍司と出会う切っ掛けとなった時の状況が映し出されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恵は中学3年の頃、あまり他者と関係を持っていなかった。そんな中でも交友を持っていたのが香織だ。

 

そんな性格が災いしてか恵は他のクラスの生徒からいじめを受けていた。

 

そして、ついにその時が来た。

 

『何?こんな所に呼び出して』

 

恵はいじめの首謀者であろう男子から呼び出しを受けた。それを受ける権利はない。しかし、その手紙にはこう書かれてたのだ。

 

[この呼び出しを受けなければ、お前の大切なお友達にまで被害が拡大する事を覚悟しておくんだな]

 

こんな風に書かれれば恵も受けざるをえないのだ。そしてそれを恵の前に男子生徒は知っていた。

 

『いやな……そろそろ、このいじめも終わりにしようと思ってな……』

 

『……何か、代償が必要って事?』

 

『わかってんじゃねぇか……あの女、乾を呼べ。あいつを俺の女にしてやる』

 

『…………は?』

 

当時の恵にとっての大切な親友。要は香織を売れと言ったのだ、目の前の男子は。

 

『ふざけないで!そんな事出来るわけない!!』

 

『じゃあ、お前が犠牲になれよ』

 

その男はそう言った瞬間、恵の服に手をかけ、力任せに破った。

 

『きゃああっ!!??』

 

『今更、だよなぁ。さあ、お楽しみタイムといこうぜ』

 

『嫌、来ないで、来ない、で…………だ、誰か、助けて……』

 

そうは言ってみたとしても、誰も助けには来てくれない。そんなのは恵自身が一番わかっていた。

 

『無駄無駄。お前がわかってんだろ?誰も来ちゃくれないよ。ましてや、ここは体育館裏。放課後の時間にここに来る変わり者なんかなぁ、いねぇよ!!!』

 

そして、男の手が恵の腕を掴もうとした瞬間

 

ガシッ!!!

 

『あ?』

 

『え?』

 

男の手を恵ではない、誰かが掴んだ。

 

『止めろ』

 

『遠坂……君?』

 

『誰だ、てめぇ』

 

『止めろって……言ってる!!』

 

龍司は掴んでいた男子生徒の腕を思いっきり後方に投げ飛ばす。

 

『うおっ!?』

 

男子生徒はそのまま後ろまで投げ飛ばされる。

 

『大丈夫か?』

 

『う、うん……』

 

龍司は声をかけながら、自身の着ていたブレザーを恵にかける。

 

『荒事になっちまうな。そうだ』

 

龍司はそう言うと、ポケットからお守りを取り出した。そして、それを恵の手に握らせた。

 

『これをもってちょっと待ってろ。すぐに終わらせる』

 

そう言うと、龍司は遠ざけた男子に近づいていき、そこから乱闘が始まった。

 

結果的に言えば、龍司の勝利だ。というか、龍司は当時既に異世界での戦いの経験があったためとも言えるだろう。

 

『ふぅ……ああいう輩ってどこにでもいるよな……』

 

『なんで……』

 

『ん?』

 

だからこそ、恵は聞きたかった。

 

『何で、助けてくれたの?』

 

なんで、あまり関係を持っていない自分を助けてくれたのか、と。

 

『?助けるのにどうしても理由が必要だっていうんなら……あんたが香織の親友だからって事にしといてくれ』

 

龍司はそう言った。つまり、助けたのに特に理由はない、強いて言えば幼馴染の悲しむ顔が見たくなかっただけ、と言ったのだ。そこに自分の欲望などなかった。

 

ただ、純粋に助けたいという気持ちが見て取れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………けて……」

 

「?小せぇ声で何言ってんだ?」

 

あの時とは違う。それでも、呼べば来てくれるのではないか。恵はそんな淡い期待も込めて、叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「助けてっ!!!!!!!龍司っ!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドガッドガッドガッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

「なっ!?」

 

「がっ!?」

 

「ぎっ!?」

 

恵が叫んだ、まさにその時、大木と恵を捕らえていた男子二人が恵の傍から離れる。

 

いや、離されたと言うべきだろう。

 

恵は瞑っていた目を開き、目の前の人物の背中を見る。

 

蒼いローブを羽織っており、冒険者の人間が着るようなラフな格好をしている。

 

しかし、恵にはそれが誰なのか、瞬時にわかった。

 

それに応えるように、首下で()()()()()()()()()()がゆっくりとその光を消していく。

 

恵の前にいた人物がゆっくりと、振り向く。

 

「呼ばれたから、来たぜ。天羽。今度は間に合って……よかった」

 

そこに現れたのはまぎれもなく……天羽恵が恋した、遠坂龍司だった。

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