絶対不敗の大英雄   作:レゾナ

6 / 18
5話 悪意

龍司は走りながらもしもボスと出会ってしまったら……と想像する。

 

「間違いなく、大木達は死ぬ……」

 

大木達のLvは聞いた事はないが高い事は高いだろう。

 

しかし、ボスは文字通り強さの次元が違う。

 

いくらLvの上で勝っていたとしても負けて死ぬ事だってありえるのだ。

 

そんな事を考えながら走っていると前を走るエリオットを見つけた。

 

「エリオット!」

 

「リュージ殿!?何故こられたのですか!?」

 

エリオットは龍司が来た事に驚いている。それでも走る速度を緩めないのはさすがという事だろう。それに合わせられる龍司も凄い。

 

「何故って……嫌な予感がするんだよ」

 

「リュージ殿の勘は洒落になりませんもんね……急ぎましょう!」

 

「ああ」

 

そう言って龍司とエリオットは大木達が向かったであろう奥へと走っていく。

 

大木達を追っていく中で龍司はある疑問をエリオットにぶつける。

 

「なあ、エリオット」

 

「何ですか?」

 

「さっきから……魔物が現れてないと思わないか?」

 

「そう言われれば……」

 

そう、先ほどから道中出てくる筈の魔物達が出てこないのだ。

 

「もしかしてだが……この先にボスがいるんじゃないか?」

 

「だとしたら、急がないと!」

 

エリオットと龍司は走る速度を上げる。

 

そして少しずつだが……悲鳴のような物が、聞こえてきた。

 

「エリオット!先行してくれ!」

 

「了解しました!」

 

そう言ってエリオットは速度を早める。

 

エリオットに少し遅れる形で龍司は現場に到着する。

 

大木達が対峙しているのは……大きな骸骨の戦士だった。

 

スケルトンウォーリアーといった感じだろう。

 

問題は大木達にあった。

 

「大木、何してる!態勢を立て直すんだ!」

 

龍司がそう言うが

 

「うるせぇ!根暗の分際で俺に指図すんな!」

 

大木はそれを拒絶する。

 

しかし、龍司以外の人が見てもこれは散々な状況だった。

 

大木やその取り巻き達は連携など完全に無視。思い思いに攻撃している。

 

それによって確かにスケルトンウォーリアーのターゲットを絞らせてはいないがそれでもボスは巨大だ。思うように攻撃が与えられていない。

 

このままでは、少なからず瓦解するだろう。

 

しかも、取り巻き達の中には片手だけで武器を振るっている者すら見受けられる。

 

おそらくもう片方の腕は怪我などで動けないのだろう。

 

「エリオット!ここは退いた方がよさそうだ!」

 

「はい、わかっています!皆さん、退避します!ボスは自分の陣地から出てくる事は決してありません!急いで退避するんです!」

 

エリオットがそう言って指示を出す。

 

「う、うわぁぁぁぁ!!!??」

 

「死にたくねぇ!死にたくねぇよ!」

 

そう言って数人は退いていくが、それでも大木は退かない。

 

「オーキ!何してる!早く下がれ!」

 

「うるせぇ!俺が最強なんだ!」

 

そう言って大木は下がらずにそれどころか、突進していく。

 

「くそがっ!エリオット、他の奴を連れていけ!俺は大木を強引に連れていく!」

 

「わかりました!」

 

そう言ってエリオットは下がってくる大木の取り巻き達が安全圏に入るまでその道中を護衛する。

 

龍司は

 

付与(エンチャント)─────スピード、加護」

 

そう呟く。

 

すると、龍司の体を緑色の光と赤色の光が覆う。

 

そして、大木の首根っこを掴む。

 

「何しやがる!」

 

「つべこべ言わずに逃げるぞ!お前、死にたいのか!?」

 

「うるせぇ!邪魔すんなって言ってんだろうが!」

 

そう言ってあろうことか……大木は龍司に攻撃を仕掛け始める。

 

龍司はそれを間一髪で回避する。

 

「お前っ、何をするんだ!?」

 

「うるせぇうるせぇうるせぇ!お前さえいなければ、お前さえいなければぁ!!!」

 

そう叫びながら大木は自身の武器である剣を振るってくる。

 

龍司はそれを間一髪で避け続ける。

 

そんな一方的な攻撃を仕掛けられながらも、龍司はボスにも警戒を怠らない。

 

─────くそっ、こんな事してる場合じゃないってのに!

 

ボスであるスケルトンウォーリアーはそんな二人の諍いにも関係なくその手に持つ巨大な斧を振り下ろす。

 

しかし、龍司はそんなスケルトンウォーリアーにも警戒をしていたので大木を押し飛ばして二人共、何とか斧から回避する。

 

「くそ、まずはボスを止めるのが先か!マインドボルト!」

 

龍司がそう言って杖の先をボスに向けると、杖の先から小さな稲妻みたいな物がボスを搦め捕る。

 

マインドボルト……付与術師(エンチャンター)特有の魔法で稲妻で相手を拘束する魔法。稲妻で拘束する為、相手は麻痺しながらその拘束から抜け出さなければいけないため、中々抜け出す事が出来ない魔法だ。

 

ボスはマインドボルトを喰らい、動けなくなる。

 

「大木、今のうちだ!逃げるぞ!」

 

「指図すんじゃねぇって言ってんだろうが!」

 

大木はそう喚きながら尚も龍司に攻撃を仕掛けてくる。

 

「リュージ殿!避難は完了しました!」

 

「エリオット!こいつをちょっと黙らせてくれ!」

 

「オーキ!何をしているんだ!」

 

そう言ってエリオットは大木を後ろから羽交い締めにして止める。

 

「離しやがれ!」

 

「龍司!私がオーキを連れていくから、龍司も早く!」

 

「ダメだ!ボスを止めておく人が必要だ!俺が殿軍を務めるから、頼む!」

 

「わかりました!リュージ殿も急いで!」

 

その時、スケルトンウォーリアーがマインドボルトから抜け出した。

 

「させるかっ。マインドボルト・5連続!」

 

龍司がそう叫ぶとマインドボルトが五つ同時にスケルトンウォーリアーを縛る。

 

グオオオオォォオォォォォォ!

 

スケルトンウォーリアーは必死にマインドボルトから抜け出そうとするがそれでもやはり5本は難しいのか時間が掛かっている。

 

「くっ……」

 

龍司も精神を集中してエリオット達が安全圏にまで退避するまで何とか耐えようとする。

 

その額には既に汗が吹き出ていた。

 

昔ならいざしらず、今の龍司のステータスではどうにか抑える程度で精一杯なのだ。

 

「はぁ、はぁ……っ!」

 

と、龍司は今更ながらに気づいた。自身が崖際まで追い詰められている事に。

 

────エリオット、急いでくれ……!

 

その時

 

「リュージ殿!避難は完了しました!お早く!」

 

エリオットの待ち望んでいた声が聞こえた。

 

「わかっ!?」

 

その時、龍司の体は確かに浮いていた。

 

龍司は訳がわからなかった。なぜ……自身の足元に地面がないのか。

 

なぜ、浮遊している感覚があるのか。

 

そして、龍司は確かに見た。

 

大木の……大きく歪んだ笑みを。

 

─────大木、お前はどこまで……!

 

そんな声は口から発せられる事なく……龍司は崖へと落ちていった。

 

エリオットSIDE

 

……何が起こっている……?

 

なぜ……リュージ殿の姿が消えた……?

 

なぜ………………オーキの手から、魔力の残滓が出ている……?しかも、あの翠色は風属性の魔力残滓……。

 

考えられる事はただ一つ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オーキは……風属性の魔法を……リュージ殿に当てた……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ!オーキ!何をしている!」

 

安全圏に既に入っていた為、私はオーキを問いただす。

 

「何をしたって……俺は何もしてねぇじゃねぇか?」

 

白々しい……!

 

「貴様……リュージ殿に風属性の魔法を当てただろう!?」

 

「だから何もしてねぇって言ってんだろうが!俺に罪を擦り付けようとしてんのか!?そりゃそうだよな!あんたの失態であの根暗は死んだんだ!」

 

そう、自分は悪くないといった風で宣った。

 

こいつは……!

 

「……王様にこの事は進言させてもらう……!」

 

「おう、言ってみろよ!あんな根暗いなくなっても損失はねぇんだからむしろいなくなって万々歳だろうよ!」

 

本当に自身は悪くないと思っているらしい。

 

それを城に戻ったら後悔させてやる……!

 

「おい、さっさと行くぞ。こんな辛気くせぇ所、さっさとずらかるぞ」

 

「お、おう……」

 

「あ、危なかった……」

 

オーキとその周りにいた男達はそう言ってぞろぞろと道を戻っていく。

 

私はリュージ殿の落ちた場所を見つめる。

 

─────リュージ殿、必ず救援部隊を派遣致しますのでどうか……それまで無事を祈っています……!

 

私には残っている人たちを城まで送り届ける義務がある。

 

リュージ殿、こんな不甲斐ない私を許してくれ……!

 

そう、心の中で懺悔して私はその場を後にした。

 

SIDE OUT

 

水の流れる音だけが聞こえる。

 

冷えきった体を冷たい風が這っていき、龍司は目を覚ます。

 

目の前では明らかに人が起こしたであろう、焚き火があった。

 

そして、自身の体には毛布が掛けられている。

 

────誰かが、助けてくれたのか?

 

「痛っ~……」

 

龍司は痛む体に鞭打ちながら何とか上半身を起こす。

 

「ここは……」

 

龍司は上を見上げる。そこには小さいが青空が見えていた。

 

「なるほど、峡谷の正に谷底か……」

 

しかし、誰が一体……?とそこまで龍司がそこまで思考を巡らせた所で

 

「あ、起きた?」

 

と、暗闇の先から声が聞こえてくる。

 

龍司は警戒する。といっても自身の為に焚き火を焚いてくれてあまつさえ毛布まで掛けてくれた相手だ。

 

礼儀を失してはいけないと思い、最低限の警戒だけに止める。

 

そして焚き火によってその姿が見えてきて、龍司は驚く。

 

「お前……何でここにいるんだ……?」

 

黒髪黒目と日本人と同じような容姿をしており、その漆黒の髪を腰元まで伸ばしている。深窓の令嬢といった感じの女性だ。

 

龍司はこの人物を知っていた。

 

「私だって驚いたわよ……いきなり上の方から気絶した龍司が落ちてきたのよ?」

 

彼女の名前は……

 

「ま、出会ったのが私でよかったわね。過激派魔族でも、私には迂闊に手出しは出来ない筈だしね……何しろ、私

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“魔王”だから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イリアス・グラン・サタン……日本での名前は黒木姫夜(くろきひめよ)。今代の魔王である。そして龍司達の世界とは違う平行世界の地球から先代魔王によって召喚された正真正銘、日本人である。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。