目の前の人物……魔王、イリアス・グラン・サタンを見て龍司は警戒を解く。
「あ、今の今まで警戒してたでしょ?」
「ああ、済まない。相手が誰かわからなかったからな」
さすがは魔王という所だろう、龍司の警戒心にも気づいていたようだ。
「ま、しょうがないけどね。にしても本当に驚いたのよ?この世界にいる筈のない龍司が上から落ちてくるんだもん」
まあ、私とか勇者パーティだったら余裕で助けられたからよかったけどね、とイリアは付け加える。
「それで?龍司が何でこの世界にいるのかと、どうして上から落ちてきたのか……教えてくれる?」
「ああ」
そうして龍司は自身がこの世界の行った異世界人召喚の対象となったクラスのクラスメイトだった事。それでこの世界にまた召喚されたこと。
自分の職業が違う職業
そして……クラスメイトである仲間に魔法を使って落とされたこと……。
全部を説明し終えた所で、龍司はイリアの顔を見てみる。
「…………」
ゴゴゴゴゴゴ……といった感じの効果音が聞こえそうな顔をしていた。
結論、めっちゃ怖いという事だ。
「ねぇ、龍司……そいつ、殺っちゃっていい……?」
右手に魔力を宿してそれを力強く握りこんでいる。
「待った待った!ストップストップ!お前、そんなの俺たちのLvの奴が喰らったら即死もんだぞ!」
ちなみにイリアこと姫夜のステータスはこんな感じ。
名前:
異世界名:イリアス・グラン・サタン
Lv:248
職業:魔王
MP:11978/11978
ATK 9689
DEF 10498
STR 5723
INT 12980
RES 10020
DEX 9872
AGI 4074
LUK 598
こんな感じである。
龍司達のLvは最大でも50とか60いかない位かのLvなので瞬殺されるのは目に見えている。
ちなみにこの異世界名というのはこの世界での特別な職業を持つ者に与えられる名前の事でこちらか自身の名前を主に使う事になる。
ちなみに龍司は特別ではない職業だったため、普通に自分の名前を言っていた。
しかしそれでもイントネーションは違うらしく、皆「リュージ」と呼ぶようになってしまった。
「どうせ、今頃国に帰って謹慎処分でも喰らってるよ」
「いや、そんな奴には死刑が基本でしょ」
────おかしいな……死刑が基本なのはおかしいぞ……。
龍司は今までも頭が痛くなってきたことはあるがまたしても頭が痛くなってきたようだ。
頭を抱えている。
「何でそんなにして……」
「だって……龍司をこんな風にした奴だから……」
ん?と龍司は怪訝な顔をする。
自分をこんな風にしたからとはどういう事だろうか。
「龍司はもう十分に苦しんだのに……一人で背負わなくてもいいものまで背負い込んで……」
「……………………」
そうだった、イリア……いや、姫夜には言ったんだったなと龍司は改めて思い出す。
「それなのに……私がいなかったら龍司、また一人になってた……」
「そうだな。ありがとう……感謝している」
未だに上半身しか動かせないため、ぎこちないながらも礼をする龍司。
「い、いいよ!いいよ!当然の事をしただけだし!」
姫夜は慌てたように龍司に背を向ける。
その理由は……顔を見ればわかるだろう、その証拠に姫夜の顔は真っ赤になっている。
─────うぅぅぅぅぅ~~~!!龍司はもう、龍司はもう~~!!!
「……?」
龍司はいきなり背を向けた姫夜に疑問を抱きながらこれからどうしようかと思考を巡らせる。
─────このまま帰る事だって出来る……でも、自分が生きているという事が大木にバレたら今度は自分がしようとした事を隠すために俺を殺しにくるだろう。
そうなってしまったら今度は他の生徒にまで……とそこまで思考を巡らせた所でそもそも大木は何でこんな事をしたのかを考える。
まあ、考えなくても分かりきっている。香織が原因だろう。
そう考えると……まだ、帰るには早いかもしれない。
しかし、大木達以外には自分は生きていると言っておきたい。
そうなると方法は二つある……一つは直接城に夜中に忍び込んで香織達やマーベラスに伝える方法。
もう一つは……魔法で自分は生きていると教える。
魔法で生きていると伝えた方が自分だとバレる可能性は低い。
「そうだな……そうするか……」
そしてステータスプレートを取り出すと自身のステータスを
「……うん?いきなりどうしたんだ?」
「ああ、ちょっと皆心配してるだろうし……魔法で自分は生きているぞと伝えようかと……」
「……毎回思うけど龍司の職業すごいよね。オリジナル魔法を作れるし」
「伊達に科学者を名乗ってないって事だよ」
そう、龍司の元の職業である
それは…………《既存魔法の使用が出来ない》という事である。
これは圧倒的なデメリットでこれのせいで龍司はこの世界に来た当初は役立たずであった。
しかし、そんな中でも龍司は諦めずに戦う方法を見つけた……そして見つけたのである。
それは……この世界にない新たなる魔法の構築という物だった。
それにより龍司は戦う力を手に入れたのだ。
龍司は頭の中に魔法の構築式を作り出していく。
その構築式の中を少しずつ変えていき、これから使える条件に合うように変更していくのだ。
相手を攻撃するのではなく、何かを運んでいく魔法……それは小物に限定する……空を飛んでいった方がいい……。
そこまで龍司が魔法を構築していく中で、一つの完成形が見えてきた。
それは伝書鳩のような魔法に見えた。
─────よし、これでいいか。
そして、龍司は詠唱を唱える。
「運べ運べ運べ、彼の者達に我が意志を宿し物を送り届けよ……
そう言うと……龍司の手のひらに小さな小鳥が出てくる。
「それが新しい魔法?可愛い系ね」
「まあ、戦闘能力は皆無だしな……さて、これでいいかな」
伝々手紙の背中には手紙がある。
これは自身の中で考えた文章が自動的に書かれるような仕様になっている。
「それじゃ、行ってこい」
そう言うと小鳥は勢いよく空へと飛び立っていく。
「ところで、行き先はどうしたの?」
「ああ、マーベラスの所にしようかなと思ったんだけど……一応関係があるであろう香織の所に送っといた」
香織、といった所で姫夜から不機嫌です、といった感じの雰囲気が出てくる。
「?どうしたイリア?」
「その香織って……前々から言ってた幼なじみの?」
「あ?ああ。一緒に召喚されてな……で、とりあえず生存報告ってね」
「ふぅん……」
─────な、何だ?何でこんなに不機嫌なんだ?
もちろん、その理由に龍司が気づくことはなかった。
全然進んでないですけど、今回はここまで。