練矢side
リアス達との戦闘を終えた俺は、シュードランへ戻ると自宅のソファーに腰を下ろした。
戦闘自体は終わった。
だが、リアス達が抱えている問題はまだ終わっていない。
そんなことを考えていると、奥から銀髪のメイドが姿を現した。
「お帰りなさいませ。旦那様」
いつも通り丁寧な声で出迎えてくれたのは咲夜だった。
「あぁ、ただいま。咲夜、悪いけど今晩の晩御飯を作ってくれ」
「はい、かしこまりました」
咲夜は一礼すると、そのままキッチンへ向かっていった。
すると、その直後。
「おぉう! 帰ったぞ、マスター!」
玄関から聞き覚えのある声が響く。
「おぉ、おかえり」
返事をすると、モードレッドがリビングへ入ってきた。
そして咲夜の姿を見ると、表情を歪める。
「ゲェッ! 何でお前がいるんだよ!」
その言葉に咲夜は冷静な表情のまま答えた。
「私は旦那様に呼ばれて来ただけです。貴女のように、特に用もないのに旦那様の家に居座る方とは違いますので」
「んだとぉ?」
モードレッドの額に青筋が浮かぶ。
二人が睨み合った瞬間。
「喧嘩をするなら、我も混ざろう」
俺の肩に止まっていたキバットが声を出した。
その瞬間、咲夜とモードレッドの動きが止まる。
「……貴方様が参加しては、勝負になりませんね」
「まぁ、キバットの旦那には敵わねぇからな」
二人の言葉にキバットは鼻を鳴らした。
「ふん、つまらんな」
そう言ってキバットは、俺が作った専用の揺籠へと戻っていった。
それからしばらくして。
「旦那様、お夕食の準備が整いました」
咲夜に呼ばれてダイニングへ向かう。
テーブルに並んでいた料理を見て、俺は少し驚いた。
「今日はフランス料理なんだな」
「旦那様には、いつまでも美味しいものを召し上がっていただきたいと思っておりますので」
咲夜はそう言いながら、俺の前にナイフとフォークを置く。
意外だったのは、モードレッドだった。
普段は荒々しい性格なのに、食事の時だけはしっかりとした作法で食べている。
俺も料理を口に運びながら、その日の疲れを癒していた。
そして夜。
風呂に入ろうと脱衣所へ向かった時だった。
「ん? マスター」
モードレッドが声をかけてくる。
「今は、あの銀髪メイドが入っているから、少し待った方がいいぞ」
「おっ、そうか。教えてくれてありがとな」
「良いってことよ」
そう言うとモードレッドは冷蔵庫から酒を取り出し、自分の部屋へ向かった。
しばらくリビングで待っていると。
「ただいま、上がりました。旦那様」
咲夜が戻ってくる。
「じゃあ次は俺が入るから、咲夜はもう休んでて」
「かしこまりました」
俺は浴室へ向かった。
そして扉を開けた瞬間。
固まった。
「……」
そこには、酒を飲みながら風呂に入っているモードレッドがいた。
向こうも俺に気づく。
「な、な、な、何でマスターがここにいるんだぁ!?」
「俺は咲夜が上がったって言ったから……」
そこまで言った瞬間。
「そんなことより、出てけぇ!」
風呂桶が飛んできた。
俺は慌てて避け、そのまま外へ出る。
すると脱衣所の扉が叩かれた。
「旦那様、大丈夫ですか? 先ほど大きな音がしましたが」
「あ、あぁ! 大丈夫だ!」
誤魔化そうとした瞬間。
「おい! 銀髪メイド!」
モードレッドが浴室から出てくる。
「何で俺が入っているって言わなかったんだ!」
咲夜は微笑んだ。
「そんなの、貴女に機会を与えるためです」
「なっ……!」
モードレッドの顔が赤くなる。
「バ、バカッ! こんなことされなくても、自分でやれるわ!」
「それってどういう……」
俺が振り向いた瞬間。
そこにはモードレッドの姿があり。
「……」
数秒後。
「え、あ……」
モードレッドはその場で倒れた。
咲夜は小さく笑う。
「あらあら……」
そして倒れたモードレッドを連れて浴室を後にした。
残された俺は顔を赤くする。
「ウワァァァッ! 見られた!」
その後、俺は何とか落ち着きを取り戻し、風呂に入り直した。
そして翌日。
学校へ向かった俺は、兵藤と会った。
「あ、練矢先輩。おはようございます」
だが、いつもの明るさがない。
「おう、おはよう。どうした? そんな顔して」
「昨日のことを思い出してまして……」
「あぁ、そんなこと気にするな」
俺は兵藤を見る。
「お前は俺と争いたくなかった。それだけだろ?」
「……はい」
兵藤は少しだけ笑った。
「そうですね」
そして教室へ向かっていった。
俺も教室へ入り、いつものように授業を受ける。
そして昼休み。
蒼那が俺の席へ来た。
「おはよう、練矢君」
「おはよう、蒼那」
すると蒼那は少し真剣な顔になる。
「ところで練矢君。リアスの機嫌について何か知っているかしら?」
「あぁ、一つある」
俺は続ける。
「ただ、これは俺が悪いって話じゃない」
「そう。なら昼休みに生徒会室へ来てもらえるかしら」
「分かった」
そして昼休み。
俺は蒼那に連れられて、生徒会室へ向かった。
そこには生徒会のメンバーが全員揃っていた。
蒼那が俺を見る。
「それで……貴方は何者なのかしら?」
俺は答える。
「俺は白鉄練矢。魔人だ」
そこから俺は、自分の種族について説明を始めた。
「魔人とは、悪魔、天使、堕天使、人間。その四つの種族の血が交わって生まれる種族のことだ」
俺は生徒会室にいる全員へ向けて説明を続ける。
「俺の場合は悪魔と人間の血が濃い。そのおかげで太陽光にも耐性があるし、翼を生やすこともできる」
すると椿姫が興味深そうに尋ねてきた。
「魔人族……そのような種族が存在していたのですね」
「あぁ」
俺は頷く。
「だが、魔人は全ての種族から禁忌とされていた。存在するだけで迫害されるような種族だった」
少し間を置く。
「そして俺は、その最後の生き残りだ」
その言葉を聞いた蒼那は、静かに目を伏せた。
「魔人族……」
蒼那は昔の記憶を探るように呟く。
「確か、かなり昔に存在したとされる種族。私達の価値観によって迫害され、絶滅したとされる存在ですよね」
「あぁ、そういうことだ」
俺が肯定すると、蒼那は俺へ向かって頭を下げた。
「ごめんなさい」
「……」
「私達の身勝手な考えによって、貴方達は孤独になり、苦しんできたのかもしれません」
その言葉に俺は少し驚いた。
だが、すぐに首を振る。
「確かに、最初の頃の俺は孤独だった」
俺は窓の外を見る。
「自分と同じ存在なんていなかったからな」
そして笑う。
「でも、今は違う」
「……」
「今の俺には仲間がいる。眷属もいる。だからもう孤独じゃない」
その言葉に、生徒会のメンバーは驚いた顔をする。
「貴方にも眷属がいるのですか?」
蒼那が尋ねる。
「あぁ」
「悪魔の駒で?」
「いや」
俺は首を横に振る。
「俺が持っているのは悪魔の駒じゃない」
そして告げる。
「皇帝の駒だ」
「皇帝の駒!?」
蒼那が驚きの声を上げる。
「まさか……私達が使っている悪魔の駒、その原点となったものを……?」
「あぁ」
その瞬間、金髪の男が前へ出た。
「ちょっと待て!」
匙だった。
「会長に何をした!」
「……何を言っている?」
突然の反応に俺が困惑すると、匙は俺へ向かってくる。
俺が構えた瞬間。
「止まりなさい、匙」
蒼那の声が響いた。
「貴方では勝てる相手ではありません」
「ですが会長!」
「違います」
蒼那は首を振る。
「練矢君は何もしていません」
そして俺を見る。
「私が驚いていたのは、彼が背負っているものについてです」
匙は黙り込んだ。
その後、蒼那は改めて俺へ尋ねる。
「それで……リアスが落ち込んでいる理由を教えてもらえるかしら」
「あぁ」
俺は昨日の出来事を全て話した。
リアス達との戦い。
彼女達が抱えていた問題。
そして俺が伝えたこと。
全てを聞いた蒼那は額に手を当てた。
「なるほど……」
そして小さく息を吐く。
「姉様が言っていたことは、この事だったのですね」
蒼那は納得したように頷く。
「この件は、姉様とリアスのお兄様へ伝えておきます」
「頼む」
すると蒼那は俺へ近づいてくる。
「それと……」
「?」
「貴方の実力を見せてください」
俺は少し笑う。
「お望みとあらば、その身に刻み込んでやる」
その言葉に匙が反応する。
「お前っ! また会長にそんな態度を!」
だが俺は気にせず立ち上がった。
「準備ができたら連絡してくれ」
そう言って生徒会室を後にした。
放課後。
靴を履き替えて帰ろうとした時、塔城が声をかけてきた。
「……あの、白鉄先輩」
「ん?」
「今日は部活に来ないのですね」
「あぁ、今日は用事があってな」
そう答え、俺は学校を後にした。
その日の夜。
俺の携帯へ連絡が入る。
確認すると、蒼那からだった。
俺は家へ戻ると声をかける。
「おーい、咲夜、モードレッド」
二人がこちらを見る。
「知り合いが俺の力を見たいって言っているから、俺の学校に行くぞ」
「学校へ、ですか?」
俺の言った言葉に咲夜が首を傾げる。
「確かに、観客としてなら俺が行く必要はないんじゃないか?」
モードレッドも同意する。
俺は少し考える。
「確かにそうだな」
そして。
「なら、メダカは置いていって、三人で行くか」
「かしこまりました、旦那様」
咲夜が一礼する。
モードレッドも笑った。
「まぁ、マスターの戦いなら見届けてやるよ」
俺は二人と共に指定された場所へ向かった。
そして、俺の肩にはキバットが止まっている。
到着すると、金髪の男が出迎えた。
「ようやく来たなぁ!」
俺は周囲を見る。
すると。
「何やっているの、匙」
蒼那が現れた。
「うちの匙が失礼したわね」
そして咲夜とモードレッドを見る。
「それで……後ろの方達は?」
「あぁ、俺の眷属だ」
俺は紹介する。
「兵士の咲夜」
「騎士のモードレッドだ」
二人は軽く頭を下げる。
その時。
「ふん」
キバットが蒼那達を見下ろした。
「これが現代の悪魔か」
その声には興味よりも評価するような響きがあった。
「随分と弱く見えるものだな」
「なっ……!」
匙が反応する。
「貴様、誰に向かって──」
「黙れ」
キバットは冷たい声で遮る。
「己の力も理解していない者が、我に意見するか」
俺はキバットを見る。
「キバット」
「……分かっている、練矢」
キバットはそれ以上言わなかった。
そして俺は左手を差し出す。
「行くぞ」
「あぁ、練矢。ガブリッ!」
キバットが俺の手に噛みつく。
すると腰にベルトが現れる。
キバットを装着すると、俺の身体が変化していく。
光が走り、身体がステンドグラスのように砕ける。
そして。
俺はロードキバとなった。
その姿を見た蒼那は驚愕する。
「……まさか」
俺は構える。
「始めよう」
キバットが静かに告げる。
「練矢、油断するな」
「あぁ」
俺は前を見る。
蒼那との戦いが始まる。