練矢side
ロードキバへと変身した俺は、生徒会の面々と静かに向かい合っていた。
夜風が校庭を吹き抜け、互いの視線が交錯する。
蒼那達も戦闘態勢を整え、一切の油断なくこちらを見据えていた。
「……始めようか」
俺が静かに告げると、蒼那は小さく頷く。
「ええ。私達も全力でいかせてもらいます」
「そうか。なら俺も、それに応えよう」
俺は腰へ手を伸ばした。
取り出したのは四色のフエッスル。
青。
緑。
紫。
そして白。
一本ずつキバットへ咥えさせ、顎を二度押す。
『ガルル、召喚だっ!』
『バッシャー、召喚だっ!』
『ドッガ、召喚だっ!』
『レイ、召喚だっ!』
四つの光球が夜空を駆け抜け、それぞれ俺の前へと降り立つ。
青き光は剣士へ。
緑の光は銃士へ。
紫の光は豪腕の戦士へ。
白き光は細身の剣士へと姿を変えていく。
現れたのは、ガルル、バッシャー、ドッガ、そしてレイ。
四人は静かに俺の左右へ並び、生徒会の面々を見据えた。
突然現れた戦士達を目の当たりにし、生徒会の全員が息を呑む。
「こ、この人達が……」
蒼那が驚きを隠せないまま呟く。
俺は四人を一瞥すると、生徒会へ向き直った。
「コイツらが、リアス達と戦った相手だ。それと、コイツらは眷属だが駒は使っていないからな」
その言葉に、生徒会の面々はさらに驚いた表情を浮かべる。
蒼那は一歩前へ出ると、真剣な眼差しで俺を見つめた。
「それは……どういう事ですか?」
「簡単に言えば、コイツらはキバの鎧と共に在るために集められた戦士だ。俺自身へ忠誠を誓っているわけじゃない」
そう言って、俺は白い外套を羽織るレイへ視線を向ける。
「それに、白い奴は一度俺達を裏切った前科持ちだからな」
「おい、その言い方は誤解を招くだろう」
レイが肩を竦めながら苦笑する。
「確かに一度は敵対した。だが今は違う」
「まぁ、今は信用しているから、こうして一緒にいるんだけどな」
俺がそう言うと、レイは小さく笑みを浮かべた。
そのやり取りを見ていた蒼那達も、少しだけ緊張を解く。
「事情は分かりました」
「なら話は早い」
俺はゆっくりと一歩前へ出る。
「それじゃあ、皆様の実力を見せてもらおうか」
その一言を合図に、ガルル達が一斉に前へ飛び出した。
ガルルは匙へ。
バッシャーは真羅へ。
ドッガは元浜と巡へ。
レイは蒼那と椿姫へ。
そして俺は全体を見渡しながら、一切手を出さずに戦況を見守る。
生徒会も決して弱くはない。
連携も取れている。
だが、戦いの経験が違い過ぎた。
幾百年、幾千年と戦場を駆け抜けてきた四人に対し、生徒会は徐々に押され始める。
ガルルの剣が匙の防御を弾き飛ばす。
バッシャーの精密な射撃が真羅の死角を突く。
ドッガの一撃は地面を砕き、その圧倒的な膂力だけで元浜達を吹き飛ばした。
そしてレイは、蒼那と椿姫の攻撃を最小限の動きだけで受け流していく。
「まだ甘い」
レイが静かに呟いた次の瞬間。
木剣の一閃が蒼那の手元を弾き、体勢を崩させた。
椿姫も援護へ入ろうとしたが、その剣先は既に首元へと突きつけられていた。
「勝負ありだ」
静かな宣言と共に、戦いは終わる。
数分後。
生徒会の面々は校庭へ倒れ込み、荒い息を繰り返していた。
俺はゆっくりとロードキバの姿のまま近づく。
「大丈夫か?」
蒼那は苦笑しながら、小さく頷いた。
「ええ……何とか」
俺は周囲を見渡す。
「無理そうなら、一応ガルル達と一緒の場所になるが、俺の拠点まで運ぶぞ。治療もできる」
蒼那は仲間達の様子を見てから、俺へ視線を向けた。
「……悪いけど、お願い出来るかしら」
俺は静かに頷いた。
「分かった」
そう言うと、俺は腰から金色のゲートフエッスルを取り出し、キバットへ咥えさせる。
顎を二度押す。
『ゲートアップ・ツー』
キバットの声と同時に、俺達の目の前へ白い両開きの巨大な門がゆっくりと姿を現した。
門の表面には幾重もの魔法陣が浮かび上がり、静かな光を放っている。
突然現れた門に、生徒会の面々は再び驚きの表情を浮かべた。
「……空間転移?」
蒼那が思わず呟く。
「まぁ、そんなところだ」
俺は軽く答えると、ガルル達へ視線を向ける。
「とりあえず、コイツらを運んでくれ。咲夜、客室は使えるか?」
咲夜は一歩前へ出ると、優雅に一礼した。
「はい。旦那様がお戻りになられた時のため、いつでもお客様をお迎えできるよう整えております」
「さすがだな」
俺は小さく笑みを浮かべる。
「なら、客間へ案内してくれ」
「畏まりました」
咲夜は静かに頭を下げた。
俺はガルル達へ向き直る。
「悪いが、運ぶのを手伝ってくれ」
「承知した」
ガルルは短く答え、匙を軽々と肩へ担ぐ。
バッシャーは真羅へ歩み寄り、負担を掛けないよう慎重に抱き上げた。
ドッガは元浜と巡を両脇へ抱える。
「相変わらず軽い仕事だな」
そう言いながらも、その動きは驚くほど丁寧だった。
最後にレイが蒼那と椿姫へ近づく。
「失礼する」
そう一言断ると、二人を支えながら立ち上がらせた。
その様子を見届けた俺は、モードレッドへ視線を向ける。
「モードレッド、お前も手伝ってくれ。ありがとな」
するとモードレッドは腕を組み、大きく鼻を鳴らした。
「ふんっ! 俺はマスターの眷属だからな! 主人に従うのは当然だ!」
自信満々に言い放つ姿に、思わず苦笑する。
その時だった。
蒼那が驚いたような表情で口を開く。
「……あの、今……モードレッドって言いましたか?」
「あぁ、言ったけど」
俺が何気なく答えると、生徒会の面々がざわつき始める。
「モ、モードレッドって……あのアーサー・ペンドラゴンの息子の?」
「でも……女性ですよ?」
「伝承では男性だったはずでは……」
「それに……すごく可愛い……」
それぞれが戸惑いを隠せないまま声を漏らす。
俺は肩を竦めながら答えた。
「コイツは、そのモードレッド本人だ」
その一言で場が静まり返る。
「伝承で男になっている理由も単純だ。戦場では常に全身鎧を身に着けていたから顔は見えない。声も鎧越しで男か女か判別できない。口調も今みたいだったからな」
俺は苦笑しながらモードレッドを見る。
「その結果、後世では『アーサー王の息子』として伝わった。それだけの話だ」
それを聞いたモードレッドは頭を掻きながら笑う。
「まぁ、あの頃は結構荒れてたからなぁ」
どこか懐かしそうに呟く。
すると俺は間髪入れずに返した。
「いや、今も十分荒れてるぞ」
その言葉に、隣の咲夜も静かに頷く。
「ええ。私も旦那様と同意見です」
モードレッドの額へ青筋が浮かぶ。
「あぁ!? それはどういう意味だ!」
俺は苦笑しながら肩を竦めた。
「言葉通りだよ。今はいないが、シオンとめだかの二人としょっちゅう喧嘩してるだろ」
図星だったらしい。
モードレッドは一瞬だけ視線を逸らした。
「そ、それは……あいつらが先に突っかかって来るんだ。俺は仕方なく……」
段々と声が小さくなっていく。
その様子に思わず笑みがこぼれた。
「まぁ、そんなお前達だからこそ、俺は好きなんだけどな」
その瞬間。
「ふぇっ!?」
モードレッドの顔が一気に真っ赤になった。
生徒会の面々はそのやり取りを見て、揃って苦笑する。
(……この人、普段からこんなことを言ってるのね)
そんな視線に気付いたモードレッドは、慌てて咳払いをした。
「そ、そんなことより!」
無理やり話題を変えるように声を上げる。
「早くコイツらを運んでやろうぜ! 疲れてるんだからよ!」
完全な照れ隠しだった。
俺は苦笑しながら頷く。
「そうだな」
そして咲夜へ視線を向ける。
「咲夜」
「はい」
「ラムとレムにも手伝わせて、蒼那達の面倒を見てやってくれ」
「畏まりました」
咲夜は一礼すると、門の向こうへ向かう。
俺達もその後へ続いた。
ガルル、バッシャー、ドッガ、レイが蒼那達を運びながら白い門をくぐる。
そして俺も最後に門を抜けた。
次の瞬間。
視界が白い光に包まれる。
光が収まると、そこに広がっていたのは巨大な城の内部だった。
高い天井。
広大な空間。
壁には長い年月を感じさせる装飾が刻まれている。
ここはキャッスルドラン。
俺にとって家族が集まる場所。
そして、俺をずっと見守ってきた大切な場所だ。
蒼那達は周囲を見渡し、驚きを隠せない。
「……これは」
「ここが、練矢君の拠点……」
蒼那が呟く。
「あぁ」
俺は頷く。
「ここがキャッスルドランだ」
その時。
「お帰りなさいませ、お館様」
声が響いた。
振り返る。
そこには二人の少女が立っていた。
桃色の髪をした少女。
青色の髪をした少女。
二人は同時に頭を下げる。
「「お帰りなさいませ、お館様」」
俺は笑う。
「ただいま、ラム、レム」
そして二人の頭を撫でる。
「や、やめてください。レムは恥ずかしいです」
青髪の少女、レムが顔を赤くして言う。
その隣で桃髪の少女、ラムは胸を張る。
「ふんっ。ラムは分かっていたわ。お館様が帰ってくることくらい」
「お前達も変わらないな」
俺がそう言うと、二人は嬉しそうに表情を緩めた。
そのやり取りを見ていた蒼那が、不思議そうに尋ねてくる。
「練矢君、彼女達は一体……?」
「あぁ、まだ紹介してなかったな」
俺は二人へ視線を向ける。
「この二人は咲夜の部下であり、俺の眷属でもある」
そして順番に紹介する。
「青い髪の方が妹のレム。桃色の髪の方が姉のラムだ」
「二人には、このキャッスルドランの管理を任せている」
俺の言葉に、レムは静かに頭を下げた。
「はい。練矢様のお役に立てることは、レムにとって何よりの喜びです」
ラムも胸を張る。
「当然よ。お館様の住む場所を守るのは、ラムの役目ですもの」
その様子を見ていた匙が、レムへ近づく。
「へぇ、メイドなんだ。ねぇねぇ、レムちゃん」
軽い調子で声を掛ける。
「これからしばらくよろしくねぇ」
そう言いながら、手を伸ばした。
その瞬間。
空気が変わる。
ラムの視線が鋭くなった。
「……やめなさい」
たった一言。
しかし、その声には明確な殺気が込められていた。
「レムに触れるというのなら……その命を狩らなければいけないわ」
「……え?」
匙の動きが止まる。
冗談ではない。
ラムは本気で言っている。
レムはそんな姉の様子を見て、感心したように頷いた。
「さすが姉様です。お客様であっても容赦がありませんね」
「いや、そこ褒めるところじゃないだろ」
俺は思わずツッコミを入れる。
「客に対して殺そうとするなよ」
そして匙を見る。
「それにお前もだ」
「え?」
俺は冷たい目を向ける。
「次、同じことをしたら……本当に許さないからな」
その言葉に、匙の表情が引きつる。
俺が冗談で言っていないことは、全員が理解していた。
すると蒼那がすぐに前へ出る。
「ごめんなさい」
蒼那はラムとレムへ頭を下げた。
「ウチの匙が迷惑をかけたわ」
そして真剣な表情で続ける。
「この件については、私達の方できちんと注意しておくから」
ラムはレムを見る。
「レムはどうする?」
レムは少し考えた後、頷いた。
「蒼那様がそこまで仰るのなら、レムは許します」
それを聞いたラムも頷く。
「レムがそう言うなら、ラムも許すわ」
どうにか、その場は収まった。
俺は小さく息を吐く。
「……まったく」
するとモードレッドが肩をすくめた。
「相変わらずだな、マスターの周りは」
「お前もその一人だろ」
「……」
モードレッドは少し黙る。
「……まぁ、否定はしねぇけどよ」
そんな会話をしながら、俺達はキャッスルドランの中を進んでいく。
その後、ラムとレムに案内を任せ、蒼那達には客室へ向かってもらった。
ガルル、バッシャー、ドッガ、レイもそれぞれ休むために別の場所へ向かう。
そして俺は自室へ戻った。
こうして長い一日は終わりを迎えた。
翌朝。
ベッドから起き上がると、ちょうどそのタイミングで扉がノックされた。
「旦那様」
聞き慣れた声。
「御朝食の準備が出来ました。お着替えを終えられましたら、食堂までお越しください」
「分かった」
俺が返事をすると、咲夜は一礼してその場を離れていった。
俺は着替えを済ませ、食堂へ向かう。
扉を開けると、そこにはすでに蒼那達の姿があった。
「おはよう」
俺が声を掛ける。
「昨日の怪我は治ったか?」
全員がこちらを見る。
「もしまだ痛むなら、うちの僧侶に薬を作らせるけど」
そう言うと蒼那は少し申し訳なさそうに首を振った。
「いえ、ここまでしていただいただけでも十分ありがたいです」
俺は苦笑する。
「そんな遠慮するなよ」
そして続ける。
「怪我したまま学校に行ったら、逆に怪しまれるだろ」
その言葉に蒼那は少し考えた後、頷いた。
「……分かりました。それではお願いできますか?」
「あぁ」
俺は咲夜を見る。
「悪いけど、猫猫を呼んできてくれ」
「畏まりました」
咲夜が一礼した瞬間。
次の瞬間には、その姿が消えていた。
それを見た蒼那達は、またしても驚く。
「え?」
「い、今……」
「どこへ……?」
蒼那が恐る恐る尋ねる。
「練矢君……彼女は一体どこへ?」
俺は朝食を食べながら答えた。
「秘密だ」
そう言って、俺は誤魔化した。
しばらくすると。
「旦那様、猫猫を呼んで参りました」
咲夜の声が食堂へ響いた。
そして咲夜の隣には、小柄な少女が立っていた。
無表情。
しかし、その目だけは何かを観察するように鋭い。
「……」
その姿を見た蒼那達は、一瞬固まる。
(……小さい女の子?)
そして次の瞬間。
生徒会の面々は、何とも言えない視線を俺へ向けてきた。
(この人……もしかして……)
その考えが伝わってくる。
俺はため息を吐いた。
「……お前ら、何か変なこと考えてないか?」
図星だったらしい。
全員が視線を逸らす。
「いや、その……」
蒼那が言葉を濁す。
俺は猫猫を見る。
「猫猫」
「はい」
「コイツらの怪我を治す薬を作ってくれ」
すると猫猫の表情が変わった。
普段ほとんど変化を見せない顔に、珍しく満面の笑みが浮かぶ。
「……本当に?」
そして少し身を乗り出す。
「本当に、薬の調合をしていいんですか?」
目が輝いている。
いや、輝いているというより、研究対象を見つけた時の目だった。
「……」
蒼那達は少し後ずさる。
俺は続けた。
「それと……」
生徒会の皆を見る。
「俺のことを変に思った奴は、薬の実験台にするからな」
その瞬間。
生徒会全員が一斉に頭を下げた。
「「「「「「「大変失礼なことを考えてしまい、申し訳ありませんでした!」」」」」」」
その勢いに、俺は思わず呆れる。
「……はぁ」
そして猫猫を見る。
「しゃあねぇな」
俺は肩を竦める。
「猫猫、今度適当な奴を捕まえてくるから、そいつで実験してくれ」
猫猫の表情が少しだけ明るくなる。
「約束ですよ?」
「あぁ」
俺は頷く。
「だから今は、コイツらの怪我を治す薬を作ってくれ」
「分かりました」
猫猫は小さく頷いた。
しかし、その目はまだ少し期待している。
「その約束……忘れないでくださいね」
「分かってる」
俺は苦笑する。
「それに、近いうちにサンプルが手に入りそうだしな」
その言葉に蒼那が反応する。
「サンプル?」
不思議そうに尋ねてくる。
「それはどういう意味ですか?」
俺は少し間を置いた。
「知らなくていいことっていうのは、世の中には五万とある」
そして続ける。
「だから、あまり聞かないでくれ」
蒼那は少し気になる様子だったが、それ以上は追及しなかった。
その後、猫猫は薬の調合へ向かい、俺達は朝食を続ける。
食事が終わった後。
「それじゃあ、学校へ向かうぞ」
俺が言うと、生徒会の皆は慌てて残りの料理を食べ始めた。
その様子を見て、俺は少し笑う。
「食べ終わったら、咲夜に言え」
「そうすれば近くまでゲートを開いてくれる」
「……本当に便利ね」
蒼那が呟く。
「まぁな」
俺は軽く答えた。
そして俺は一足先にキャッスルドランを出る。
学校へ向かいながら、俺はこれから起こることを考えていた。
その日の夜。
俺の携帯が鳴った。
画面を見る。
表示されていた名前は兵藤だった。
「兵藤か」
電話に出る。
『練矢先輩……今、大丈夫ですか?』
いつもの明るさとは違う。
声に焦りが混じっている。
「あぁ。どうした?」
少しの沈黙。
そして。
『お願いがあります』
『アーシアを救うのを手伝ってください』
その言葉に、俺は表情を変える。
「……どうしてだ?」
兵藤の声が震える。
『アーシアが……死にそうだからです』
その瞬間。
俺はすぐに立ち上がった。
「分かった。すぐ向かう」
そして確認する。
「場所は……あの廃教会だな?」
『はい!』
『待っています!』
電話が切れる。
俺はすぐに準備を始めた。
電話が切れた後、俺はすぐにキャッスルドランへ戻った。
玄関を開けると、そこには咲夜とモードレッドがいた。
「旦那様、お帰りなさいませ」
「あぁ、ただいま」
俺は二人を見る。
「悪い、少し頼みがある」
その言葉に、咲夜はすぐ姿勢を正す。
「何なりと」
モードレッドも腕を組みながらこちらを見る。
「何かあったのか、マスター?」
「あぁ」
俺は頷く。
「これから堕天使達のところへ行ってくる」
その言葉に二人の表情が変わる。
「堕天使……ですか」
咲夜が静かに呟く。
「それと、何人か捕まえてくる」
「捕まえる?」
モードレッドが首を傾げる。
「情報を吐かせるためだ」
俺は続ける。
「終わったら猫猫に渡してくれ」
「……なるほど」
咲夜はすぐに理解したように頷いた。
「承知しました」
モードレッドはニヤリと笑う。
「つまり、マスターが暴れてくるってことだな」
「まぁ、そういうことだ」
俺は苦笑する。
「じゃあ行ってくる」
そう言って俺はキャッスルドランを後にした。
目的地へ向かうと、そこには古びた廃教会があった。
かつてアーシアを届けた場所。
そして今、彼女を救うために向かう場所。
教会の前には、兵藤が立っていた。
「練矢先輩!」
「あぁ」
俺が近づくと、兵藤の表情が少しだけ和らぐ。
「来てくれたんですね……」
「当たり前だ」
俺は答える。
「助けを求められたなら、手を伸ばす」
その言葉に兵藤は少し驚いた顔をした。
そして。
「ありがとうございます」
小さく頭を下げた。
周囲を見ると、そこには兵藤だけではなかった。
木場。
そして塔城もいる。
「部長が堕天使を完全に敵と判断したんだ」
木場が説明する。
「だから今回は増援って感じかな」
俺は塔城を見る。
「お前は?」
「……私も木場先輩と同じです」
塔城は静かに答える。
「少しでも人数がいた方がいいです」
「そうか」
俺は頷く。
そして廃教会へ向かって歩き出す。
すると三人が慌てて声を掛けてきた。
「お、おい! 何してるんだ?」
「まさか、そのまま入るつもり?」
「……危険です。一緒に行きましょう」
しかし俺は足を止めない。
「俺は適当に何人か潰しておく」
そして振り返る。
「お前達は、あの子を救え」
兵藤達は驚いた表情を浮かべる。
「でも……!」
「大丈夫だ」
俺は笑う。
「俺を誰だと思ってる」
そして肩に止まっていた存在へ声を掛ける。
「キバット」
「任せろ」
キバットが俺の前へ飛ぶ。
そして夜空を見上げる。
「今宵は良き月が出ているな」
静かな声が響く。
「此処で暴れたのだ。その代償……その身を持って償え」
俺は左手を差し出す。
「ガブリッ!」
キバットが俺の手に噛み付く。
腰へ鎖が集まり、キバットベルトが現れる。
俺はキバットを逆さにして装填した。
そして腰から一本のフエッスルを取り出す。
紫色のフエッスル。
それをキバットへ咥えさせ、顎を一度押す。
『ドッガ、ハンマー!』
その瞬間。
重厚なコントラバスの音が夜の廃教会前に響き渡る。
次の瞬間。
空から巨大な光の球体が飛来する。
大地が揺れる。
兵藤達は目を見開く。
「な、何だ……あれは……」
光の中から現れる巨大な影。
俺は静かに前を見る。
「さて……」
俺は拳を握る。
「始めるか」