アルジェントを救うためにと言われ、兵藤に呼ばれた俺は廃教会へ向かっていた。
そして向かいながら、俺は変身を済ませる。
廃教会へ到着し、中へ入ると、そこにははぐれ聖職者や堕天使達が待ち構えていた。
その光景を見た木場が、兵藤へ向かって言う。
「イッセー君、君はアーシアさんを助けに行ってくれっ!」
すると塔城も続ける。
「……此処は私たちでなんとかします」
二人の言葉を聞いた俺は、呆れながら口を開いた。
「んなこと言ってないで、お前らで地下に行けよ」
「えっ? 地下ってどういうことだ?」
兵藤が疑問の声を上げる。
俺は廃教会の奥にある祭壇を指差した。
「あの祭壇の場所、あれの下に地下へ続く階段があるから、さっさと向かえ。アルジェントを救うんだろ」
それを聞いた兵藤達は、すぐに祭壇へ向かって走り出す。
だが、それを黙って見ている敵ではなかった。
兵藤達を止めようとはぐれ聖職者や堕天使達が動き出す。
俺はそいつらの前に立ちはだかり、ドッガハンマーを引き摺りながら近づいていく。
「おいっ!」
俺の声に、奴らの動きが止まる。
「お前らの相手は俺だっ!」
すると、はぐれ聖職者の一人が俺の持つドッガハンマーを見て笑う。
「そんな重い武器を持っていては、素早くは動けまい」
そう言うと、複数人で一斉に襲い掛かってきた。
俺はドッガハンマーを握り締め、向かってくる敵へ向かって振り回す。
巨大なハンマーの一撃を受けた奴らは、廃教会の床、壁、天井へと次々に叩き付けられていく。
その威力によって、一部の者は血を吐き、残った者達もまともに動けない状態になっていた。
それを見た俺は呟く。
「これだけいれば、猫猫の薬の成果も出るだろ」
その時だった。
「馬鹿め、油断したなぁっ!」
後ろから声が響く。
まだ残っていた奴らが、俺の隙を突いて襲い掛かってきた。
だが。
俺はドッガハンマーをハンマー投げの要領で振り回し、襲ってきた敵へ向けて放つ。
そして、吹き飛ばされた堕天使へ向かいながら、ドッガハンマーをキバットに咥えさせた。
『ドッカ、バイト』
キバットの声が響く。
すると、外に見える月が赤く染まった。
俺はドッガハンマーの柄頭を床へ付け、レバーを引く。
すると叩く部分が開き、その内部から目が現れた。
その目に見られたはぐれ聖職者や堕天使達は、まるで身体が固まったように動きを止める。
俺はそのままドッガハンマーを振り回し、空へ逃げようとした堕天使を砕く。
そして、残ったはぐれ聖職者へ向かってドッガハンマーを振り下ろした。
必殺技を受けた堕天使やはぐれ聖職者達は、魔力だけを残して砕け散った。
だが、その強烈な一撃によって廃教会の床には大きな穴が開いてしまう。
それを見た俺は、下を確認する。
[ヤッベ……兵藤達に当たってしまったか? ]
そう思いながら、俺は開いた穴から地下へ降りていった。
穴から地下へ降りた俺が見たのは、神器を発動した兵藤と、剣を構えた木場。
そして、長椅子を持った塔城と、何人かの堕天使達だった。
全員が突然現れた俺を見上げている。
俺は周囲を確認しながら、内心で呟いた。
[よしっ! とりあえず全員に当たってないからいいな]
すると、そこにいた堕天使の一人が驚いた表情で声を上げる。
「な、何故っ! お前が此処にいるんだっ!」
俺はそいつを見る。
「そんなの、お前らが人の縄張りで好き勝手やっているからだろう」
そう答えると、今度は一人のはぐれ聖職者が前へ出てきた。
その男は、どこか不気味な笑みを浮かべながら、妙に高いテンションで話しかけてくる。
「あっなぁーたがっ、伝説に伺うロードキバの鎧を着たものですかぁ」
「いやぁ〜、こんな所で相見えるとはぁ……これほど幸運なことはなぁ〜いと思うのですがぁ」
その独特な話し方を聞きながら、俺はドッガハンマーを構える。
「そうか、俺の鎧を知っているものがいたとはな」
ロードキバの存在を知っている奴がいるとは思わなかった。
だが、だからと言って見逃す理由にはならない。
「まぁ、何を言おうと、この場で死んでもらうがな」
俺は変なテンションのはぐれ聖職者へ向かって、ドッガハンマーを振り下ろした。
しかし。
奴は紙一重でそれを避ける。
「……」
そして、そのまま俺が開けた穴を利用して逃げていった。
それを見た俺は、兵藤達へ向き直る。
「すまん、逃した」
「次に会った時は、確実に消すから」
そう言うと、兵藤、木場、塔城の三人は顔を見合わせる。
そして。
「「「あ、お構いなく」」」
三人の息の合った返事が返ってきた。
その後、俺達は拘束されていたアルジェントを救出することに成功した。
だが、そこで一人の堕天使が怒りの声を上げる。
「よくもやってくれたわね」
声の主はレイナーレ。
彼女は俺達を睨みながら続ける。
「せっかく傷を癒す神器が手に入ると思ったのにっ!」
その言葉を聞いた兵藤の表情が険しくなる。
「何ふざけたこと、言ってんだっ!」
怒りを込めた声で、兵藤は叫ぶ。
「アーシアはお前達の道具じゃないんだぞっ!」
その言葉に木場と塔城も頷く。
「うん」
「……」
二人とも兵藤の言葉に同意していた。
そして俺は、レイナーレを睨みながら言う。
「お前は、自分の野望のために無垢なる者の命を取ろうとした」
俺は腰から赤いフエッスルを取り出す。
「その命と魔力、この俺に寄越せ」
そう言って、俺はフエッスルをキバットに咥えさせる。
そして、顎を二度押した。
すると。
『ウェイクアップ2』
キバットの声が響く。
次の瞬間。
俺の背後に青黒いキバの紋様が浮かび上がる。
その紋様はレイナーレ達の頭上と足元へ移動した。
すると。
まるで突然、何倍もの重力が掛かったかのように、レイナーレ達の身体が床へ押し付けられる。
「な、なんだぁ?」
兵藤が驚きの声を上げる。
「紋様が現れたかと思ったら……」
木場も目の前の光景に驚いていた。
「敵対者が全員、床にひれ伏して……」
塔城も呟く。
「……かなり強そうです」
アルジェントも、その力に言葉を失っていた。
そして。
レイナーレ達の身体に変化が起き始める。
少しずつ。
少しずつ。
身体がスタンドグラスのような模様へと変わっていく。
その変化による苦痛から、レイナーレ達は叫び声を上げた。
「グゥゥアァァァッ!」
その光景を見たアルジェントが、俺へ向かって叫ぶ。
「ら、練矢さん、辞めてください。苦しんでいます」
俺はアルジェントを見る。
「敵に情け容赦は不要だ」
そしてレイナーレ達へ視線を戻す。
「それに、こいつらがやろうとしていたことだぞ」
アルジェントは何か言いたそうな表情を浮かべる。
だが。
俺の眼を見ると、それ以上は何も言えずにいた。
俺は再びレイナーレ達へ視線を戻す。
そして、出力を上げると、レイナーレ達の身体を覆っていたガラスのような模様は、さらに広がっていく。
そして。
「グッ……ガァァァァッ!」
苦痛に耐えきれないような叫び声を上げながら、レイナーレ達の身体は完全に変化していった。
次の瞬間。
レイナーレ達の姿は砕け散り、その場に残ったのは光の玉だけだった。
それを見た兵藤達は、言葉を失う。
しばらく沈黙が続いた後、兵藤が恐る恐る俺へ尋ねてきた。
「あ、あの……練矢先輩」
兵藤は光の玉を指差す。
「あの光の玉って何ですか?」
俺は残された光の玉を見る。
「あれは魔力だ」
そして続ける。
「あいつらの魔力だ」
その答えを聞いた兵藤達は、驚いた表情で光の玉を見つめる。
すると、その時だった。
『キャオォォォォンッ──────!!』
どこからか、巨大な鳴き声が響き渡る。
「今度は何だ?」
兵藤が周囲を見回しながら言う。
俺はその声の主を知っていた。
「これは、キャッスルドランの鳴き声だ」
そして、上を見上げる。
「魔力を喰いに来たんだよ」
その言葉を聞いた瞬間。
兵藤、木場、塔城、アルジェントが一斉に俺を見る。
「ま、魔力ってまさか……」
木場が恐る恐る口にする。
すると、光の玉は俺が開けた穴を通り、上へと浮かび上がっていく。
俺達はそれを追うように、地下から廃教会の外へ向かった。
そして空を見上げる。
そこには。
浮かび上がった魔力の玉を喰らう、巨大な存在がいた。
キャッスルドラン。
そして、その隣にはシュードランの姿もあった。
その光景を見たアルジェントが、不安そうな表情で俺へ尋ねる。
「あのっ!」
アルジェントは空を見上げたまま続ける。
「あの魔力を食べさせることを、やめさせることって出来ませんか?」
その言葉を聞いた俺は、少し呆れながら返す。
「それはアイツらに飯を食うなって言うことか?」
「ち、違いますっ!」
アルジェントは慌てて首を振る。
「ただ、他のものを食べればよろしいなと思いまして……」
それを聞いた俺は、キャッスルドラン達を見る。
「アイツらは、身体が建物になっているんだ」
そして説明する。
「だから、固形物を食べたとしても消化できずに城の中で腐るだけなんだよ」
さらに続ける。
「それに、この世は弱肉強食だ」
俺の説明を聞いても、アルジェントはまだ何か代替え案がないかと言いたそうな顔をしていた。
その様子を見て、俺は少し声を低くする。
「それ以上、しつこいようなら……」
俺はアルジェントを見る。
「アイツらの飯として、お前の魔力を永遠に捧げてもらうぞ」
「……」
その言葉を聞いたアルジェントは、大人しくなった。
それを見た兵藤が、俺へ苦言を呈する。
「先輩、そんな言い方は無いんじゃないんですか?」
俺はため息を吐く。
「はぁ……これで俺の用が終わったんだよなぁ?」
すると塔城が答える。
「はい、お疲れ様でした」
それを聞いた俺は、腰からゲートフエッスルを取り出す。
そしてキバットに咥えさせた。
キバットがゲートを開く。
俺はその中へ入る前に、兵藤達へ背を向けた。
「じゃあな」
そうして俺は帰っていった。
次の日。
いつも通り高校へ向かった俺は、教室へ入る。
そこで俺は、昨日助け出したはずの人物を見つけた。
アルジェント。
俺は思わず眉をひそめる。
[……なんか朝にも同じことがあったな]
そして俺は、近くにいたリアスへ声を掛けた。
「なぁリアス」
俺はアルジェントを見ながら尋ねる。
「何故彼女が此処にいるんだ?」
リアスは少し笑みを浮かべる。
「今日の放課後に教えるわ」
そう言って、詳しい説明を避けた。
そして朝のホームルームが始まる。
俺は特に何も気にせず、いつも通り授業を受けていた。
すると、どこからか。
『うぉぉぉぉ────っ!』
という声が聞こえてきた。
だが。
俺は特に気にすることなく、そのまま授業を受け続ける。
そして何事もなく時間は過ぎ、放課後になった。
俺はオカルト研究部の部室へ向かう。
部室へ入ると、そこには朝見た時と同じようにアルジェントがいた。
[なんか、朝にも同じこと有ったな]
そんなことを思いながら、俺はリアスへ尋ねる。
「それで、何故アルジェントが此処にいるんだ?」
そして、もう一つ気になっていたことを聞く。
「それに、悪魔になっているし」
俺の問いにリアスは答える。
「彼女には、私の眷属になってもらったの」
「そうか」
俺はアルジェントを見る。
「それで、アルジェントはどうなんだ?」
すると、アルジェントは笑顔で答えた。
「はいっ! 拾ってくれた部長さんには感謝しかありませんっ!」
その言葉を聞いて、俺は頷く。
「そうか。お前が良いなら、それで良い」
するとリアスが手を叩きながら言う。
「それじゃあイッセー、アーシア、練矢君」
そして楽しそうに続ける。
「あなた達の使い魔を選びに行きましょうっ♪」
「使い魔?」
兵藤が首を傾げる。
「ですか?」
アルジェントも疑問の声を上げる。
そんな二人へリアスが説明する。
「使い魔は、悪魔の基本で尾行や追跡、駒使いなどをする存在よ」
そして続ける。
「悪魔になって日の浅い貴方達には必要ね」
リアスが説明を終えると、俺達はそれぞれ自分の使い魔を呼び出すことになった。
最初にリアスが出したのは、紅い蝙蝠。
朱乃は小鬼。
塔城から現れたのは、白い猫だった。
「……シロです」
塔城が紹介する。
俺はその白猫へ近づき、頭を撫でた。
すると、白猫は気持ちよさそうに喉を鳴らす。
続いて木場が出したのは、小鳥だった。
それを見た兵藤が驚いたように声を上げる。
「うわぁーっ! すごいですね」
そしてリアスへ尋ねる。
「それで、何処で手に入るんですか?」
リアスは笑顔で答える。
「安心してイッセー。今から行きましょう」
そう言うと、リアスは魔法陣を展開する。
赤い魔法陣の光に包まれ、俺達はその場から移動した。
到着した場所は、森の中だった。
すると突然。
「ゲットだぜっ!」
後ろから声が響く。
俺は反射的に振り返り。
そして。
咄嗟に蹴りを放っていた。
蹴られた人物は勢いよく吹き飛び、何本もの木を薙ぎ倒しながら、ようやく止まる。
その光景を見たリアスが慌てて叫ぶ。
「ちょ、ちょっと練矢君! いきなり何やったのよっ!」
俺は自分でも少し驚きながら答える。
「すまん。びっくりしたら、つい蹴ってしまった」
俺は蹴ってしまった相手へ近づく。
「すまん、つい驚いて」
すると相手は、豪快に笑った。
「はっはっはっは! 気にするな!」
そして立ち上がりながら続ける。
「俺の方こそすまない。驚かせる気は無かった」
その様子を見て、俺は少し安心する。
するとリアスが口を開いた。
「仲直りした所で紹介するわ」
その男は胸を張る。
「よぉ、俺はマダラタウンのザトゥージ!」
そして拳を握りながら言う。
「夢は使い魔マスターを目指すために修行中の悪魔だぜっ!」
俺達は顔を見合わせる。
「「「へぇ──」」」
するとザトゥージは懐から一冊の本を取り出し、俺達へ差し出した。
「君たちには、この中から使い魔を選んでもらうぜ」
その本の一番上に書かれていた名前。
それを見た兵藤の目が止まる。
それを見た兵藤が、不思議そうにザトゥージへ尋ねる。
「この一番上に書かれているのって何ですか?」
するとザトゥージは、待っていたと言わんばかりに説明を始める。
「それは俺のおすすめの、龍王の一角!」
そして、本に書かれた名前を指差す。
「天魔の業竜、ティアマット!」
ザトゥージは興奮した様子で続けた。
「伝説のドラゴンだぜ!」
さらに声を大きくする。
「龍王唯一のメスで! 今まででコイツをゲットした悪魔は誰一人としていない!」
その説明を聞いた兵藤は、すぐにツッコミを入れる。
「そりゃそうさ!」
ザトゥージは胸を張る。
「だって魔王並みの力を持つんだからなっ!」
それを聞いた兵藤は呆れた表情を浮かべた。
「あんた、おすすめの意味知っているか?」
そして本へ視線を戻す。
「何ちゅう奴を最初に紹介したんだよっ!」
そんな兵藤達のやり取りを見ていたリアスが、ふと俺を見る。
「でも……練矢君なら出来そうじゃない」
「……」
その言葉の直後。
リアス以外のオカ研メンバーの視線が、一斉に俺へ向いた。
俺は嫌な予感を覚える。
「何だよ」
そして、思ったことをそのまま口にする。
「もしかして行けってことか? えっ?」
するとリアスは笑顔で頷いた。
「そうね」
そして、さらりと言う。
「貴方なら出来ると信じるわ」
続けて。
「さぁ、逝きなさい」
「お前、文字が違くないか⁉︎」
思わずツッコむ。
だが、リアスは気にした様子もない。
すると兵藤とアルジェント以外のオカ研メンバーが、俺へ声を掛ける。
「無事に戻って来て下さいね」
「信じているよ」
「頑張って下さい」
それぞれの言葉を聞きながら、俺はため息を吐く。
[こうなったら、絶対に使い魔にしてアイツらにお仕置きしてやる]
そう決意しながら、俺はティアマットがいる場所へ向かうため、その場を後にした。
少し遅れましたが、次の回は早めに出します。次は短編ですがね