1:かわいい字幕の魔法少女
「――【戻った】、ということか……」
2:かわいい字幕の魔法少女
「それなら、はじめから、やり直さないと」
3:かわいい字幕の魔法少女
――私は天井を見上げたまま、そっと体に手を這わせた。
潰れていない。
当然だ。私は、死んだ日の朝に戻ったのだから。
4:かわいい字幕の魔法少女
――思い出せ。
あの無様な死を。
同じ過ちを繰り返さないために。
この死を必ず乗り越えるために。
5:かわいい字幕の魔法少女
エマに、もう一度会うために。
6:かわいい字幕の魔法少女
――新入生代表、二階堂ヒロさん。
7:かわいい字幕の魔法少女
名前が呼ばれる。大勢の視線が注がれる中、私の口は用意した文章をすらすらと淀みなく読み上げていた。
優秀。模範。理想のカタチ。型通りのシルエット。機械仕掛けのブリキ細工。そうあるべき姿をなぞる、無感情な単純作業。
私は穏やかな笑顔を貼り付けて一礼する。一斉に鳴る拍手の波が、私を糾弾する罵声に聞こえた。
8:かわいい字幕の魔法少女
……ユキが死に、エマが行方不明になってから、もう一年が経つ。
9:かわいい字幕の魔法少女
私が部屋に入った時、まだその場には首吊り輪が残されていた。
ユキは、自殺だった。
10:かわいい字幕の魔法少女
エマが消息を絶ったのもその頃だ。日々憔悴していく彼女の姿を大勢の生徒が目撃しており、ふざけたことに、エマがいなくなったことを誰も疑問に思わなかったらしい。
私が帰国する直前のことだった。
11:かわいい字幕の魔法少女
――私は、間に合わなかった。
12:かわいい字幕の魔法少女
その頃の記憶は曖昧だ。
ただ、自分でもどうかと思うほどに暴れまわったことだけは、ぼんやりと記憶の底にこびりついている。
13:かわいい字幕の魔法少女
正論は武器だ。
法律は武器だ。
世論は武器だ。
権威は武器だ。
私は手あたり次第に武器を手に取り、おぞましい悪魔どもに殴りかかったのだ。
14:かわいい字幕の魔法少女
何度も何度も。
熱した鉄板の歪みを叩いて直す鍛冶屋のように、叩き、火を入れ、叩き、叩いて、うっかり叩きすぎて穴をあけて。
そこでようやく正気に戻った。
15:かわいい字幕の魔法少女
……私は、正しい処置をした。
だが何も戻らなかった。
主犯の転校? 教師の処分? 学校の謝罪会見?
で、それに――いったい何の意味があるというんだ。
16:かわいい字幕の魔法少女
彼女たちがいなくなったあの日とっくに、私の正義は死んだのだ。
17:かわいい字幕の魔法少女
新しい教室では、さっそく少女たちが徒党を組み、雑談に花を咲かせている。
いまのトレンドは、近所で立て続けに起こる不審火らしい。よくもまぁ他人の不幸をそんな笑顔で語れるものだ。
18:かわいい字幕の魔法少女
同級生の少女が楽し気に、何かを話しかけてきた。私の顔は勝手に微笑みを形作り、にこやかに口を動かす。何を言ったのかは覚えていないが、黄色い声が上がったところを見ると、彼女たちのお気に召す返答をしたのだろう。
19:かわいい字幕の魔法少女
(心底、くだらない……)
20:かわいい字幕の魔法少女
とうに味のしなくなったガムを延々と噛み続ける日々。
真っ白な炭に燃え残ったわずかな熾火が、さび付いたブリキの体を辛うじて動かしている。