まのさば少女の掲示板   作:宝石梟

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法の悪魔 5(FIN)

177:かわいい字幕の魔法少女

――まあ、ヒロ。なんて顔をしているんですか。

 

 

178:かわいい字幕の魔法少女

――まるで主人に捨てられて途方にくれる飼い犬のよう。

――とっても素敵ですね

 

179:かわいい字幕の魔法少女

……ユキ。

私を笑いに来たのか。

 

180:かわいい字幕の魔法少女

私は君を守れなかった。親友の君を救えなかった。

だから、せめてエマだけは、何があろうと私が守らなければならないのに……。

 

181:かわいい字幕の魔法少女

――何があっても?

 

182:かわいい字幕の魔法少女

何があっても。

 

183:かわいい字幕の魔法少女

――……ねえヒロ。私はエマの笑顔が好きです。

――あの心がぽかぽかとするような、陽だまりのような笑顔が好きです。

 

184:かわいい字幕の魔法少女

――そしてあなたの泣き顔が好き。

 

185:かわいい字幕の魔法少女

――必死に虚勢を張って背筋を伸ばして、自分の中の勝手な基準で正しくあろうと意地を張る。

――そんな偽りの仮面を剥がされて。

――どうしようもない現実に打ちひしがれて、泣きじゃくるあなたが好き。

 

186:かわいい字幕の魔法少女

君は、私に興味がないと思っていたよ。

 

187:かわいい字幕の魔法少女

――いいえ。大好きですよ、ヒロ。いつも私を守ってくれる、私たちのヒロ。

――とっても強くて、意地っ張りで。意地を張らないと立つことすらままならない、弱虫のヒロ。

 

188:かわいい字幕の魔法少女

――だから、力をあげますね。

――その窮屈な体を脱ぎ捨てて、

――新たな自分になりましょう?

 

189:かわいい字幕の魔法少女

――ねえヒロ。

 

190:かわいい字幕の魔法少女

――堕ちてくれますか?

 

191:かわいい字幕の魔法少女

――私と一緒に、地の底まで。

 

 

 

 

 

192:かわいい字幕の魔法少女

 * * *

 

 

 

 

193:かわいい字幕の魔法少女

ふいに走った悪寒に、その場の全員が動きを止めた。

暴虐たる化け牛も、懸命に抗う魔法少女二人も、場違いな微笑みを浮かべていたシスター服の少女すらも。

 

 

194:かわいい字幕の魔法少女

誰もが感じ取ったのだ。

なにか、酷くおぞましいものの到来を。

 

195:かわいい字幕の魔法少女

石塀にもたれかかり、よろりと血だらけの少女が立ち上がる。

ヒロは、喉元をかきむしるように押さえ、短く言った。

 

196:かわいい字幕の魔法少女

「……変身」

 

197:かわいい字幕の魔法少女

崩れたアスファルトの隙間から、赤黒い血が湧き上がる。

 

198:かわいい字幕の魔法少女

ごぼり、ごぼり。

血だまりは渦を巻き、路面を這い、ヒロの足に絡みつくように這い上って――瞬く間に彼女の身体を覆い隠した。

 

199:かわいい字幕の魔法少女

血の濁流に飲み込まれていく、手負いの獣じみて爛々と光る赤い瞳。

 

200:かわいい字幕の魔法少女

「この気配……」

シスター服の少女の声が震えている。

「だ、大魔女……さま……?」

 

 

201:かわいい字幕の魔法少女

やがて血が霧散する。

現れたのは、底知れぬ夜の闇を纏ったような、黒いドレス姿だった。

 

202:かわいい字幕の魔法少女

頭部に生える二本の角。

頬が裂け、ぎょろりと新たな瞳が開く。

黒い衣に混じる赤は、傷つき省みることのなかった自身の血か。

それとも彼女が常に胸に燃やしていた、理不尽への憤怒そのものか。

華奢で可憐で美しく、暗く危険で恐ろしく、そして何よりおぞましい。

得体のしれぬ悪魔じみた何者かが、陽の落ちた街路に静かに降り立った。

 

203:かわいい字幕の魔法少女

「違う……。誰……あなた、誰ですか……。

 私、あなたのことなんて知りません……!

 ファラリスさんっ!」

 

204:かわいい字幕の魔法少女

呼ばれた巨躯の雄牛が吼えた。

炎が噴き上がり、真鍮の全身を白熱させ、ヒロを叩き潰さんと破城槌めいた腕が夜気を裂いた。

 

205:かわいい字幕の魔法少女

ヒロは、軽く手を掲げただけだった。

 

206:かわいい字幕の魔法少女

腕が、空中で不自然に止まる。

何もない場所で見えない壁にぶつかったように……否、見えざる巨人の手に掴まれているかのように。

 

207:かわいい字幕の魔法少女

ヒロの指が、わずかに曲がる。

 

208:かわいい字幕の魔法少女

みしり。

巨大な真鍮の腕が軋み悲鳴を上げる。関節が歪み、外装が裂け、内側の熱が漏れた。

 

209:かわいい字幕の魔法少女

ファラリスがはじかれたように後ずさる。

初めて、怪物が痛みに反応した。

 

210:かわいい字幕の魔法少女

ヒロは進む。

 

211:かわいい字幕の魔法少女

歩きながら、彼女は足元の血だまりに手をかざす。

血は再び煮え立ち、渦を巻き、形を結ぶ。

剣。

華奢な少女には不似合いな凶器。

夜の闇に、ぬらりと刃が怪しく光った。

 

212:かわいい字幕の魔法少女

ファラリスが突進した。

 

213:かわいい字幕の魔法少女

狂ったように暴れまわる。民家を砕き、電柱をへし折り、アスファルトを大きくえぐる。がごん、がごんと大地が揺れ、瓦礫の山を量産していく。

どれか一つでも直撃すれば、人間など跡形もなく轢き潰される暴力の嵐。

 

214:かわいい字幕の魔法少女

そのすべてを。

ハエを払うように無造作に。

ヒロは剣を縦横にふるい、ことごとく叩き落とした。

 

215:かわいい字幕の魔法少女

ファラリスは一歩下がった。

 

216:かわいい字幕の魔法少女

ヒロは進む。

 

217:かわいい字幕の魔法少女

怪物が吼える。どこか悲鳴のような大音声。

組んだ両手が、真上から、隕石のように落ちてくる。

 

218:かわいい字幕の魔法少女

ふわりと、ヒロは跳躍した。

 

219:かわいい字幕の魔法少女

軽々と化け牛の背を跳び越す。

 

220:かわいい字幕の魔法少女

空中で身をひねり――すれ違いざま、剣が一度閃いた。

 

221:かわいい字幕の魔法少女

音のない着地。

 

222:かわいい字幕の魔法少女

ヒロが小さく振り返る。

ファラリスの太い首が、滑るようにずれ落ちた。

遅れて、巨体がどう、と倒れ伏す。瓦礫を巻き込み、炎を散らしながら。

 

223:かわいい字幕の魔法少女

その悪魔が現れてから、わずか数十秒のことであった。

 

 

 

 

224:かわいい字幕の魔法少女

 * * *

 

 

 

 

225:かわいい字幕の魔法少女

障害は排除した。

当初の目的を果たすとしよう。

 

226:かわいい字幕の魔法少女

私がつかつかと歩み寄ると、シスター服の少女は顔を青ざめさせ、小さく身を震わせて後ずさった。

 

 

227:かわいい字幕の魔法少女

「エマはどこだ」

「な、なんで……どうして?

 刑具獣が……こんな、あっさり……」

 

228:かわいい字幕の魔法少女

うわごとめいた呟きを気にすることなく、私は彼女の細い首をつかみ、無造作に吊り上げた。

 

229:かわいい字幕の魔法少女

「あ、ぐ……っ」

「エマはどこだ」

 

230:かわいい字幕の魔法少女

優しく丁寧に、繊細な力加減で喉を絞める。

気を付けないといけない。力を入れ過ぎないように、よくよく注意が必要だ。

今の私の握力では、うっかり握り潰してしまいかねない。

これは大事な情報源だ。慎重に、大切に、壊れ物のように尋問しないと――。

 

231:かわいい字幕の魔法少女

風切り音。

咄嗟に手を放し、数メートルの距離を一息で稼ぐ。

異常に強化された聴覚が、何らかの攻撃をとらえたのだ。

 

 

232:かわいい字幕の魔法少女

いったい誰だ。邪魔をするのは。

苛立ちを込めて、私は攻撃者を、にら、ん、で……、………………………。

……………………………………………………………………………………………………………………………………………………。

 

233:かわいい字幕の魔法少女

思考が止まった。

 

 

 

 

 

 

234:かわいい字幕の魔法少女

「平気? メルルちゃん」

 

 

 

 

 

235:かわいい字幕の魔法少女

「エマさんっ!」

ぱっと笑顔を咲かせたシスター服が、現れた少女に抱き着いた。

桜色の髪の少女は穏やかな笑みを浮かべて、シスター服の背を優しく撫でている。

「大丈夫。怖くないよ」

 

236:かわいい字幕の魔法少女

知っている。

私は彼女の名前を知っている。

 

237:かわいい字幕の魔法少女

「エ、マ……?」

 

238:かわいい字幕の魔法少女

私の口から漏れた声は、ひどくか細く、おそらく誰の耳にも届かなかった。

 

239:かわいい字幕の魔法少女

「エマさん、ごめんなさい……私、失敗しちゃいました」

「いいよ。また二人で一緒に考えよう?

 何度でも繰り返せばいいんだよ。ボクたちの目的を遂げるまで」

「はい! えへへ……エマさん、大好きです!」

「ボクも好きだよ、メルルちゃん」

 

240:かわいい字幕の魔法少女

エマの背から、骨でできた天使の羽が突き出て、はばたいた。

シスター服を抱えたエマが、夜空に遠ざかっていく。

 

241:かわいい字幕の魔法少女

「待て……待ってくれエマ! 君はエマなんだろう!?

 私が君を見間違えるはずがない!

 私だ! ヒロだ! 君をずっと探していたんだ!」

 

242:かわいい字幕の魔法少女

喉を傷めて叫んだ声は、我知らず懇願の響きを帯びていた。

 

243:かわいい字幕の魔法少女

エマの視線が、私を捉える。

 

244:かわいい字幕の魔法少女

よく知った顔の大切な少女が、見覚えのない、冷たい笑みを浮かべていた。

 

245:かわいい字幕の魔法少女

「じゃあね、ヒロちゃん」

 

246:かわいい字幕の魔法少女

……。

…………。

 

247:かわいい字幕の魔法少女

エマが、遠ざかっていく。

 

248:かわいい字幕の魔法少女

「エマ……待ってくれ。どこに行くんだ。

 私を、私を置いていかないでくれ……。

 エマ……エマ? エマ! エマッ!」

 

249:かわいい字幕の魔法少女

「……エマァアアアアアアアアアアァアア――ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

250:かわいい字幕の魔法少女

企画  月代ユキ

 

 

 

 

251:かわいい字幕の魔法少女

キャスト

 

 

252:かわいい字幕の魔法少女

二階堂ヒロ/法の悪魔 役

  二階堂ヒロ

 

 

 

253:かわいい字幕の魔法少女

桜羽エマ 役

  桜羽エマ

 

月代ユキ 役

  月代ユキ

 

怪力の魔法少女 役

  橘シェリー

 

飛翔の魔法少女 役

  遠野ハンナ

 

シスター服の少女 役

  氷上メルル

 

254:かわいい字幕の魔法少女

入学式の司会/バーガーショップ店員/喫茶店の客 役

  蓮見レイア

 

ホームセンター店員 役

  紫藤アリサ

 

同級生の少女 役

  黒部のお姉ちゃん

 

 

255:かわいい字幕の魔法少女

スタッフ

 

256:かわいい字幕の魔法少女

監督

  月代ユキ

 

助監督

  蓮見レイア

  沢渡ココ

 

257:かわいい字幕の魔法少女

脚本

  夏目アンアン

 

サブライター

  二階堂ヒロ

  宝生マーゴ

  蓮見レイア

 

258:かわいい字幕の魔法少女

撮影

  佐伯ミリア

  黒部ナノカ

 

美術監督

  城ケ崎ノア

 

スタイリスト

  宝生マーゴ

 

特殊効果

  城ケ崎ノア

  橘シェリー

  沢渡ココ

  紫藤アリサ

  黒部ナノカ

 

259:かわいい字幕の魔法少女

協力

 焼肉様(ロケ弁提供)

 アンアンちゃんがスランプ中に励ましてくれた皆さん

 

260:かわいい字幕の魔法少女

制作

  【特撮】の人形劇

 

魔法少女ヒロちゃん~法の悪魔~

 

 

261:かわいい字幕の魔法少女

FIN

 

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