ポケットモンスター 夢の向こう側へ   作:茶伽丸

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夢の始まり

 ここはドラオム地方。

 

 世界でもトップクラスに幻のポケモンの目撃情報があることで有名な地方だ。

 そんなドラオム地方の最北端にある街アイオラシティにはチャンピオンを目指そうとする10歳にも満たないであろう幼い少年がいた。

 少年の名はナツキ。茶色い髪を黒いヘアバンドで押さえ、緑色の瞳を輝かせている。

 

「確かこのあたりだったはず……あった‼︎」

 

 ナツキは好奇心に駆られアイオラシティの外れにある洞窟に足を踏み入れようとしていた。

 

「結構暗いな。懐中電灯持ってきておいてよかったぜ……ん?」

 

 洞窟の奥に光を照らすとそこには、数体のイシツブテが傷ついたココドラを追い詰めていた。

 

「弱いものいじめはやめろ!!」

 

 ナツキは、考えるよりも先に叫んでいた。本で見たことのあるイシツブテは、自分よりはるかに強いことはわかっていたが、目の前で傷ついたココドラを放っておくことはできなかった。

 ナツキはココドラを抱きかかえ、来た道とは違う、真っ暗な洞窟の奥へと走り出した。しかし、そこは行き止まりだった。

 

「ま、まずい」

 

 イシツブテの「たいあたり」が、ナツキとココドラに当たりそうになった、その時だった。

 

「みゅー…」

 

どこからか、優しい鳴き声が響いた。すると、突如として空間が歪み、虹色の光が洞窟を満たした。光の中から現れたのは、本で見たことのある幻のポケモン、ミュウだった。

 

「……ちょっとうるさいよ君たち。少しは静かにできないかな」

 

 ミュウは少し不機嫌そうな顔をしたすると「ねんりき」を使ってイシツブテたちを洞窟の壁に叩きつけた。

 

「す、すごく強い……」

 

 一件落着かと思ったその時、洞窟の奥からゴローンや、さらに多くのイシツブテが現れた。多勢に無勢。ミュウは小さな体を揺らし、必死にナツキたちを守ろうとする。

 

「ここは僕に任せて先に行きなよ。奥にココドラ達の巣があるからさ」

 

 ミュウはナツキ達にそう伝えるとイシツブテの群れに飛び込む。その隙にナツキ達は洞窟の奥へと向かった。

 

 *

 

「くそっまた行き止まりだ。ココドラの巣はどこなんだ?」

 

 ナツキはイシツブテの群れをミュウに任せた後ココドラを小脇に抱え洞窟内を探索していたがかなり入り組んでいるためなかなか目的地につけないでいた。

 

「モタモタしてたらまたイシツブテが出てくるかも……早く早く見つけないと……わっ!」

 

 とりあえず闇雲に洞窟内を歩こうとすると突然地面が崩れてしまいそのまま落ちてしまう。

 

「イテテ……大丈夫か?ココドラ――うわああ!」

 

 強く打った腰をさすりながら前を向くとなんとそこには右目に傷がついたボスゴドラがナツキのことを睨みつけていた。

 

「ボ、ボスゴドラまでいるのかこの洞窟」

 

 ナツキが驚いているとココドラが腕から抜け出しボスゴドラの前に立ち塞がる。

 

「おい!危ないぞ!」

 

 ココドラがボスゴドラに向かって吠えるとボスゴドラの表情が穏やかになりココドラを抱き抱える。

 

「もしかして親子なのか?てことはここが巣?」

 

 あたりを懐中電灯で照らしてよく見てみると壁の穴の中からコドラ達がこちらを窺っていた。

 

「そっかよかったなココドラ。……そうだ!ミュウが俺たちを助けて囮になったんだ。あの数相手だとどうなるかわからない……みんな助けてくれ!」

 

 幻のポケモンであるミュウならなんとかできるかもしれないが逃げる直前に見たイシツブテの数はかなり多かったので万が一のこともある。

 ナツキはボスゴドラ達に伝わったがどうか心配していたがボスゴドラはナツキの目を見つめた後洞窟が揺れるほどの声で吠えると洞窟の横穴からコドラやココドラ達が現れる。

 

「手伝ってくれるのか?」

 

 ナツキはボスゴドラにそう問いかけるとボスゴドラはうなづきコドラ達を連れて移動を始める。それを見たナツキは急いでボスゴドラ達について行った。

 

 

 *

 

 一方その頃ミュウはどんどん増え続けるゴローン達に苦戦していた。ゴローンの中にはイシツブテだけでなくゴローニャまで現れ始めていた。

 

「イシツブテやゴローンってこんなにいたっけな……」

 

 ミュウは悪態をつきながらもゴローン達の攻撃を軽々避ける。

 

 (大技を使えば一発なんだけど、それやると洞窟が崩れちゃうんだよね……どうしようかな)

 

 ミュウは戦いながら無限に湧いてくるゴローニャ達をどう対処するか考えていると突如洞窟内が揺れ始める。

 

「あれ?もしかして力加減間違えた……え!?」

 

 洞窟の奥に目線を変えるとそこには全速力でこちらに突っ込むボスゴドラがいた。

 ボスゴドラはその勢いのままミュウに攻撃しようとしていたゴローニャに体当たりして壁にめり込ませる。

 

「ええ……なんで僕の味方なんてするの?」

 

 ボスゴドラはミュウの問いを聞くと来た道の方に目線を送る。そこにはボスゴドラについてきていたコドラ達が走ってきておりそのうちの一体には先程逃した少年ナツキが乗っていた。

 

「は、早すぎ!ストップ!ストップ!のわー‼︎」

 

ナツキが乗っていたコドラは急ブレーキをかけて止まりナツキはそのままミュウの近くまで放り出される。

 

「イタタ……へへ、助けに来たぜ」

 

「人間のくせに無茶するね……もしかしてバカ?」

 

「う、うるさい……とにかく、みんなでこいつらをぶっ飛ばすぞ!!」

 

 ナツキがボスゴドラ達に喝を入れるとボスゴドラとゴローニャの縄張り争いが始まった。

 

 *

 

 数分後、ナツキとボスゴドラたちの協力もあり、イシツブテやゴローンたちは退散していった。

 

 全ての騒動が終わりると、先程のココドラがナツキの足元に駆け寄った。ナツキが屈んで頭を撫でると、ココドラは嬉しそうに体を擦り寄せ、ナツキを見上げてくる。まるで、「ありがとう」と言っているかのようだった。

 

「君結構やるじゃん気に入ったよ」

 

 ミュウは面白そうにナツキとココドラを見ながらそう言う。

 

「ボスゴドラのおかげさ俺は何もしてないよ」

 

「それでもあいつらを連れてきたことには変わりない……そうだ君もいつか旅に出るのかい?」

 

「ああ、12歳になったら旅に出るよ」

 

 ミュウはその言葉を聞くと腕を組み少しの間考え込むとナツキに提案する。

 

「じゃあさ僕もその旅に連れて行ってよ。1人よりも誰かと旅した方が面白そうだし」

 

 ナツキはその提案を聞き少し驚くがすぐに返事をする。

 

「ああ!もちろん!」

 

「じゃあ約束だ」

 

 こうして、ナツキとココドラ、そしてミュウとの間に、特別な旅の約束が交わされたのだった。

 




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