夜雀の女将さんと温かな食堂   作:ULTRA-7

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東方projectの小説は初めてなのでどうかお手柔らかに…

『深夜雀食堂』がとても面白くて書き始めました、あらすじにも書きましたが本人さんから小説を書く許可を頂いています。

ではひとつ、お酒でも飲みながらゆっくりお楽しみください。


第一夜 お店前で

 幻想郷――

 

 それは人や妖怪、吸血鬼、神…様々な種族が共に生きる、外の世界と隔離された世界。

 

 

 時には赤い霧が立ち込め――

 

 時には冬が終わらず――

 

 時には明けない夜が続き――

 

 時にはあらゆる季節の花が咲き乱れる――

 

 

 たくさんの不思議な現象や異変、事件が起こる場所…それでもその世界の種族は平和に、そして共に暮らしてきた。

 

 そんな幻想郷にある森の奥深い場所、木々は生い茂りカラスの鳴き声が辺りに鳴り響く、そんなところにひっそりと小さなお店が佇んでいた。

 お店の名前は『夜雀食堂』、幻想郷に住む一人の妖怪が切り盛りする一杯飲み屋。

 一杯飲み屋、要は居酒屋なので開店はお日様が暮れてから、そして今が丁度その頃だ。

 

 ガラガラとお店の開き戸が開く、そこから出て来たのは作務衣を纏い三角巾を頭に結び、背中に羽を生やした一人の妖怪の女性だった。

 その腕にお店の名前が書かれてある暖簾を持ち、背伸びをしながら一生懸命に開き戸の前に架けていった。

 

 

「んしょ…よしっ!」

 

 

 彼女の名前は『ミスティア・ローレライ』、この夜雀食堂の店主であり女将さんだ、ここではあえて女将さんと呼ばせていただこうと思う。

 

 女将さんは額の汗を拭い一息つく、そして鼻息をフンッと鳴らして意気込むと、笑顔になりながら開き戸に手を掛けた。

 

 

「さぁ、今日も頑張らなきゃ。たぶん鈴仙さん達は来る筈だし、いつものお酒とお食事を用意しておいて…」

 

 

 女将さんは鼻歌を歌いながら考える。

 

 

 今日はどんな料理を振る舞おうか? 違った料理を試してみようか?

 

 今日は常連さん以外にどんな人が来てくれるのかな? もしかしたら誰も来ないかも…

 

 どんちゃん騒ぎになるかもしれない、面白い話も聞けるといいな…

 

 

 心の中で期待を膨らませると自然と笑みが零れてくる、自分の料理を振る舞いながらお酒の席でその人の話を聞く、それは女将さんの密かな楽しみだ。

 

 女将さんはお店の中へ入ると調理の準備を始めた、まずは炭を起こしそれを焼き鳥器の中へと並べる、それが終わるとお店の奥に入って行き籠を持ち出した。

 そして徐に籠の中に手を入れるとあるものを取り出す、黒くうねうねとした細長い物体、とても生きが良い鰻だ。

 その鰻を水で洗いぬめりを取ると、前もって用意していたであろうまな板の上に置き目打ちを鰻の背と腹の境目に突き刺した、そして慣れた手つきで鰻の腹に包丁を入れてさばいていく。

 さばき終わった鰻を竹串で刺し丁度温まったであろう焼き鳥器の上に乗せて行く、ジューッと良い音を立てて焼かれる鰻、その上にタレを刷毛で塗って行き、団扇で扇いで炭火の火力を調整して行く。

 すると何とも美味しそうな匂いが立ち込め店の外へ、この匂いを嗅げば自然とお客さんがやってくるのだ。

 

 

「うな~♪ うなうな~♪」

 

 

 鰻を焼いている最中に不思議な鼻歌を歌う女将さん、そんな時でも鰻をひっくり返したり団扇で火力を調整する動作を止めない、さすが長い間このお店を切り盛りしてきただけある…のか?

 だけど女将さんの姿を見たらとても楽しそうだ、本当に幸せそう。

 このお店は最初屋台だった、暇つぶしのつもりで初めては見たもののお客さんは全くと言っていいほど来なかったが…それでも懲りずに続けていたら段々と人が集まる様になり、今ではここまで大きくなり有名になっている。

 女将さんは後に語る――

 

 『毎日用意するのは大変、だけどお客さんが喜んでくれると私も嬉しい』

 

 女将さんの優しい心が知らないうちに人を引き寄せていたのかもしれない…

 

 

「うなうな~♪ ふふ、いい感じに焼けてきたな~♪」

 

 

 焼き鳥器の上の鰻は丁度良い焦げ目を付けながら焼けてきた、油がポトッポトッとしたたり落ち見ているだけで食欲がそそられる、女将さんも鰻の焼き加減を見て満足そうな顔になっていた。

 さあ、後はお客さんがやって来るのを待つばかり、今か今かと女将さんはそわそわしながら、そして期待しながらお店の開き戸が開くのを待つ。

 すると女将さんの期待に応える様に開き戸がガタガタと音を立てた、女将さんは来た! と思い満面の笑みを浮かべて開き戸の方へ顔を向けた。

 だが…開き戸が開く事はなかった。

 

 

「……あれ? 可笑しいな…」

 

 

 確かに開き戸の方から音は鳴った、だけどそれっきり誰も入ってくる様子がない。

 女将さんはジーッと開き戸の方へ視線を集中させるがやはり誰も入ってこない、先ほどの音は気のせいだったのだろうか? もしかしたら風が強くてそれが原因で音が鳴ったのかもしれない、だけど店の中にはそんな風は吹きこんでこなかった…

 女将さんは段々とモヤモヤしながら考え込む、もしかしたら泥棒? それとも妖怪や妖精が悪さをしているのだろうか? 考えれば考えるほどわからなくなってしまう。

 

 

「うーん…ちょっと外の方を見てみようかな?」

 

 

 さすがに少し怖くなった女将さんは、意を決して外の様子を探る事にした。

 ソロリソロリと音を立てない様に慎重に、そしてゆっくりと開き戸の方へ向かって行く。

 開き戸の前に辿り着いた女将さん、ソロッと、なるべく音を立てない様に戸を開けた。

 

 

「あのーっ…どちら様でしょうかー? 私の店に入っても捕る様なものは…食材くらいかもです…」

 

 

 開き戸を楯にして端からヒョコッと顔を出しながら恐る恐る見えない何者かに声をかける、だけど外には人っ子一人おらずただヒュウっと小さな風が吹くだけ、いつも通りの景色が目に映るだけだった。

 

 

「……気のせいだった…のかな? …え?」

 

 

 ふと足元に目がいった女将さん、だがその目は見開き驚愕の表情となった。

 そして次第にあわあわとしながら身体を震わせて尻餅をついてしまう、何故そうなってしまったのか? その理由は女将さんが見た足元にあった。

 

 

「ひ、人が倒れてる!?」

 

 

 そう、お店の前で人が倒れていたのだ。

 その顔は酷く窶れ、ボロボロの衣服を着ていた男の人が… 




次回はオリ主登場!
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