from公認大会ぼっちになったデュエリスト
叔父が失踪して1週間が経った。
その間、私は叔父が遺してくれたカードを整理しながら、デッキを組んで寂しく1人2役のデュエルをして遊んでいた。
別に一緒にマジック&ウィザーズで遊べる友人がいないわけではない。
そして昨日の夜、精神的に持ち直した私は叔父の失踪によって発生した世界の危機に気がついてしまった。SAN値チェックに失敗し、アイデアロールに成功した私は1時間ほど発狂していたらしい。
バンデット・キース不在の煽りを最も受けるのは城之内克也だろう。原作で城之内克也がバンデット・キースに関わったのは、バンデット・キースの手でデッキを強化されたゴースト骨塚との対戦と決勝トーナメントでの直接対決の2回。そして私は前者の対戦がなくなる(もしくは対戦内容が変わる)ことを恐れている。
原作において城之内克也とゴースト骨塚の対戦は城之内克也が《右手に盾を左手に剣を》を使用したことで形勢をひっくり返したシーンが印象的だが、それ以上に城之内克也が"魔法や罠とモンスターとのシナジーを気にするようになった"重要なターニングポイントである。この成長がなければ迷宮兄弟戦で
「城之内が成長しなければ迷宮兄弟に勝てない……は言い過ぎか。王様が何とかしてくれる可能性もあるもんね。問題はこの世界にドーマ編があった時だよ。真面目に世界滅亡の危機じゃん」
ドーマ編は遊戯王のアニメがマンガに追いついてしまったが故に作られたアニメオリジナルストーリーだ。初代遊戯王では数少ないカードゲームの勝敗が世界滅亡に直結するストーリーなのだが、それまで無敵超人のように描かれていた
「ゴースト骨塚に叔父さんのカードをあげるのは嫌だし、こうなったら私が城之内の踏み台になるしかないか」
ちなみに王国編が始まらないという心配はしていない。ペガサスにとって海馬コーポレーションが開発したソリッドヴィジョンシステムは何を捨てても手に入れたい技術だ。買収のための条件としてBIG5から『武藤遊戯の敗北』を指定されれば、何をおいても実現しようとするだろう。
「そうと決まれば、まずはデュエルキングダムに招待されるレベルの実績を積まないと」
私は叔父から譲り受けたカードで強化した【推理ゲート】でアメリカのデュエリスト社会に殴り込みをかけることにした。
「私のターン。ドロー、スタンバイ、メインフェイズ。《苦渋の選択》を発動します。チェーンはありますか?」
「あん? あるわけねぇだろ」
対戦相手が過去作レイプの異名で知られる遊戯王ARC-Vに出てくるような別次元の人間かもしれないからね。《灰流うらら》などの手札誘発を持ってる可能性を考慮しないわけにはいかないんだ。
「《苦渋の選択》の効果処理。私はデッキから《混沌の黒魔術師》3枚と《遺言状》と《強欲な壺》を選択します。私の手札に加えるカードを選択してください」
「《混沌の黒魔術師》だ」
「《混沌の黒魔術師》を手札に加えます。続けて《天使の施し》を発動。チェーンはありますか?」
「だからねぇつってんだろ」
「デッキから3枚ドローして……《混沌の黒魔術師》と《キラー・スネーク》を捨てます。《死者蘇生》を発動、対象は私の墓地の《混沌の黒魔術師》です。チェーンはありますか?」
「しつけぇぞ!」
「では以後はチェーン確認を行いません。《死者蘇生》で特殊召喚された《混沌の黒魔術師》の効果発動。対象は墓地の《死者蘇生》です。《死者蘇生》を手札に加えます。《死者蘇生》を発動、対象は私の墓地の《混沌の黒魔術師》です。《死者蘇生》で特殊召喚した《混沌の黒魔術師》の効果発動。対象は墓地の《死者蘇生》です。《死者蘇生》を手札に加えます。《死者蘇生》を発動、対象は私の墓地の《混沌の黒魔術師》です。《死者蘇生》で特殊召喚した《混沌の黒魔術師》の効果発動。対象は私の墓地の《遺言状》です。《遺言状》を手札に加えます。《遺言状》を発動。手札から《キャノン・ソルジャー》を召喚。《キャノン・ソルジャー》を生け贄にして《キャノン・ソルジャー》の効果発動。貴方に500ポイントの効果ダメージを与えます。《遺言状》の効果を使用してデッキから《カタパルト・タートル》を特殊召喚。《混沌の黒魔術師》を生け贄に《カタパルト・タートル》の効果発動。貴方に1400ポイントの効果ダメージを与えます。《混沌の黒魔術師》はフィールドから離れる場合、墓地には送られずゲームから除外されます。《混沌の黒魔術師》を生け贄に《カタパルト・タートル》の効果発動。貴方に1400ポイントの効果ダメージを与えます。《混沌の黒魔術師》を生け贄に《カタパルト・タートル》の効果発動。貴方に1400ポイントの効果ダメージを与えます。対戦ありがとうございました」
前世で禁止カードやエラッタを経験している激ヤバカードを何枚も採用した【推理ゲート】で対戦相手を片っ端から血祭りにあげ続け、ついに私は僅か1年と2ヶ月という短い期間で叔父と同じ全米チャンピオンの肩書きを手に入れることに成功した。
ちなみに何回か手札事故でセットを落としているため勝率は10割ではない。私はアニメキャラクターのようなご都合主義的なドロー運なぞ持ち合わせていないということが分かったのは収穫だった。
「は? 新ルール導入に伴う名称変更?」
私が全米チャンピオンの肩書きを得た翌月、インダストリアル・イリュージョン社からマジック&ウィザーズをデュエル・モンスターズに名称変更することが発表された。同時に大規模なルール改正が発表され、私の全米チャンピオンという肩書きは有名無実*1のものとなった。
「いや、まぁ、マジック&ウィザーズのカードの互換性も保証してくれるみたいだからいいんだけどね。ルール改正だって、むしろ新ルールの方が慣れ親しんでるまである」
しかし、全米チャンピオンになるまでの労力が水の泡になったことは素直に腹立たしく思う。翌年の予選会をスキップできる権利もゲームタイトルの変更によってなくなった。
それだけではない。1年後の予選会の直前になってインダストリアル・イリュージョン社が『使用制限カードリスト』を発表、私の使用していたデッキのほとんどが致命的なダメージを受けた。
(1度の改定で60枚近く禁止カードに指定するなんて、もし前世でKONAMIが同じことしたらリンクショックの再来とか言われるんじゃないか?)
この規制によって対戦環境は原作の王国編の頃と同程度まで低速化するだろう。これは収まるところに収まったと考えるべきか。
「仕方ない。そう、仕方ない。これは羽箒や大嵐どころか、ハリケーンやサイクロン、砂塵の大竜巻まで禁止カードにしたインダストリアル・イリュージョン社が悪いんだ。私は悪くない」
そう自己弁護して私は前世の記憶を頼りに【ミーネウイルス】と【ロックバーン】を組み始めた。
感想・評価ありがとうございます。
【推理ゲート/サイエンカタパ】
《混沌の黒魔術師》を並べるハイビートデッキと《カタパルト・タートル》によるバーンデッキの混合デッキ。現代遊戯王でも規制を受けているようなカードが大量に投入されている。ライフポイント4000制で使っていいデッキではない。
【ミーネウイルス】
遊戯王3期終盤の環境で活躍したデッキ。活躍した理由は【カオス】に強いから。デッキ名から分かるように《死のデッキ破壊ウイルス》がフル投入されている。
【ロックバーン】
セットされた魔法・罠を除去するカードが大量に規制されたため使用者が増えると予想されたデッキ。いざ当時のデッキで相手するとかなり面倒くさい。
キースside(vsイリアステル編)の話は──
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要る。
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要らない。