from韓国語のトラッシュトークを理解できなかったデュエリスト
※残酷な描写(カードゲーム)があります。
全米選手権はアメリカ各地で開催される一次予選の上位成績者たちで争う二次予選、二次予選の上位成績者たちで争う三次予選、三次予選の上位成績者と予選会を免除された者たちで争う決勝ステージの4段階に分かれている。
(なんとなく予想は出来てたけど、明らかに去年より参加人数が少ない)
およそ1年前、私が初めて参加した時の一次予選(ニューヨーク州)の参加者は1500人くらいだったはずだ。しかし、今年の一次予選の参加者は1200人ちょっとしかいない。だいたい2割減だ。余計なお世話かもしれないが、このままデュエル・モンスターズは世界的ムーブメントを起こせるのか少し心配になる。
「よぉ、全米チャンピオン。今日は手加減してくれよ?」
「マークさん、お久しぶりです。幸いなことに手加減して通過できるほどニューヨーカーのレベルは低くありません。今年も本気で挑ませていただきますよ」
マークは叔父と鎬を削り合い、私とも前回大会の決勝リーグで戦った歴戦のデュエリストだ。彼の使っていた【デッキ破壊1キル】は異常なまでに成功率が高く、私もサイドデッキに《王宮の号令》と《ネコマネキング》を入れてなければ負けていただろう。
もっとも彼の【デッキ破壊1キル】も主要パーツの多くが規制されているので、今大会では別のデッキを使ってくるはずだ。
「おー、怖い怖い。それにしても──そうだな、予選が終わった後で少し時間を貰えないか?」
「構いませんよ」
予選の対戦形式はスイスドロー方式だ。スイスドローとは勝ち残り式ではなく、すべての参加者が一定数の試合を行うトーナメント方式のことで、対戦相手の決定はできる限り同程度の力量を持つ競技者同士が対戦し、同じ相手と二度以上対戦することがないように予め作られた規則に沿って行われる。全試合終了後に最も多くの勝ち点を獲得していた者が優勝する仕組みだ。勝ち点が同じ場合は失ったセット数、それも同じなら勝ったセットの残りライフポイントの合計で順位を決める。
一次予選を通過できるのは上位32名。多いように思えるが4戦〜5戦して1セットでも落としたら予選通過が絶望視されるという狭き門だ。
「ドロー、スタンバイ、メインフェイズ。《闇の仮面》を反転召喚、リバース効果を発動、対象は墓地の《はたき落とし》です。《はたき落とし》を手札に加えます」
「《月読命》を召喚。召喚時に《闇の仮面》を対象に効果を発動します。《闇の仮面》は裏側守備表示になります。バトルフェイズに入って《月読命》と《
「…………」
「どうぞ、貴方のターンですよ? まだ《死のデッキ破壊ウイルス》の効果が適用されているから、引いたカードは見せてくださいね?」
「ド、ドロー」
「《激流葬》ですか。では《はたき落とし》を発動しますね」
「っ、この冷血女! 人の心はねぇのか!!」
「手札と場のカードを0枚にされてドローロックされているのに諦めない姿勢は評価しますが、遅延行為とトラッシュトークのセンスのなさはいただけませんね。母胎から人生やり直してみては?」
とはいえ、今の私は有名無実だろうと全米チャンピオンになれるだけの実力がある。トラッシュトークの応酬で精神的に少し疲弊したものの、対戦そのものは特に苦戦らしい苦戦もなく一次予選を終えることが出来た。
「マークさん、お待たせしました」
「大丈夫、問題ないよ」
「話があるということでしたが、それは叔父が悪者扱いされている件でしょうか」
既に叔父とペガサスの対戦から2年か経っているとはいえ、デュエル・モンスターズ(当時はマジック&ウィザーズ)の創造者ペガサスによる不正行為はインダストリアル・イリュージョン社やペガサスの経歴に大きな爪痕を残した──はずだった。
それがいつしか叔父が試合放棄してイベントを台無しにしたという部分のみが強調され、まるで叔父が悪者かのような扱いを受けていることを、対戦相手から仕掛けられたトラッシュトークの中で初めて知った。
「もちろん俺たちはキースが悪いとは思ってない。子どもが考えるような最強無敵のモンスターだとしても、それをテキストにしっかり書いておかなかったペガサスが悪い。にも関わらず気がついたらキースが悪者にされていたんだ。キースはインダストリアル・イリュージョン社を訴えるべきだ!」
「叔父は今も音信不通です。それにインダストリアル・イリュージョン社が情報操作をした証拠はありませんし、そもそも新興のホビーメーカーでしかない彼らにそれが可能とは思えません。犯人はペガサス・J・クロフォードの信奉者たちでしょうね」
嘘だけど。実際に情報操作をしているのはマジック&ウィザーズ──今はデュエル・モンスターズですね──が廃れると困る勢力だろう。候補としては本命が世界経済に大きな影響力を持つパラディウス社を隠れ蓑にしている秘密結社ドーマ、対抗が5Dsに登場する歴史改竄を繰り返した5Dsの黒幕的秘密結社イリアステル、大穴でARC-Ⅴに登場したアカデミアだ。
これらの組織は── 以前のように【デッキ破壊ワンキル】を使えるならともかく──今のマークさんでは勝ち目のない相手だ。彼が叔父のことを案じて怒ってくれているのは嬉しく思うけれど、だからこそ巻き込みたくはない。
「ペガサスの信奉者? ファンじゃなくてか?」
「ペガサスは目の前にいる人間の記憶や心を読むことの出来る異能の持ち主です。私はそれを記録に残っている彼のデュエルを全て閲覧して確信しました。それを使えば自分に心酔させることも容易いでしょう。ペガサスは年端もいかない子どもたちをペガサスミニオンと称して囲い込んでいますが、彼らから神の如く崇められているようですよ」
「胸糞悪いな。まるで洗脳じゃねぇか」
「そうですね。それに叔父を貶める噂を流している人たちはそれを真実だと信じていますからね。彼らを見つけたとしても説得するのは困難でしょうね」
半分くらい口から出まかせだけど、叔父に関する悪い噂を──それも真偽の確認が難しい話を──流布している人がいるのは確実だ。そしてマジック&ウィザーズを知らず、デュエル・モンスターズになってから遊び始めた層は噂を鵜呑みにして叔父を嫌悪する。
しかし、マジック&ウィザーズ時代から大会に参加している人の中には叔父に好意的な人が多い。それは叔父が彼らの目標であり続けていたからだ。しかも、カードの交換やデッキの相談も分け隔てなくしていたようだ。
両者の対立は今は目立っていないが、今大会の何処かで爆発してもおかしくないくらいピリピリとした空気が流れているのを感じた。
「マリア。お前はキツくないのか?」
「親愛なる叔父を貶められて平気なわけないでしょう。でも世界の命運が掛かっているから、ここで折れるわけにはいかないんです」
(世界の命運? そうか、マリアも14歳だもんな)
「どうしました?」
「いいや、何でもない。マリアの決勝トーナメント進出を願ってるよ」
「ありがとうございます。マークさんも頑張ってください」
そう言って私はマークさんと別れて帰途についた。
何か致命的な誤解をされた気がする。
マークはオリジナルキャラクターです。
今大会には【深淵ワンキル】で出場しています。
【トマハンミーネウイルス】
マリアが一次予選で使用したデッキ。遊戯王3期で活躍したデッキ同士のミックス。《闇の仮面》《月読命》《はたき落とし》を採用している。まだ隠し玉となるギミックが温存されているらしい。
アンケートを始めました。
キース叔父さんとポンコツヒロインによる世界救済の旅です。
キースside(vsイリアステル編)の話は──
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要る。
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要らない。