する側だけは。
from満足民
前話で少し描写された残酷な描写(カードゲーム)の焼き回しがあります。
一次予選を通過した私は、そのまま二次予選と三次予選も苦戦することなく通過し、決勝トーナメントへの進出を決めた。これは私が強いではなく、ただ前世の歴史として強いデッキを知っていて、それを組めていて、最善のプレイングを心掛けているからに過ぎないと
1年前、私が全米チャンピオンになれたのは、叔父が遺した圧倒的なカードパワーを持ったカードがあったからだ。あの頃の私が使っていたデッキでは大会に出るわけにはいかなかった。
「油断しない、慢心しない、驕らない、ヨシ!」
決勝トーナメント1回戦の相手は初出場のウィラー・メット選手。聞き覚えのない人もいるだろうが、彼は遊戯王Rに登場する歴とした原作キャラクターだ。海馬瀬人相手に「俺に言わせりゃ青眼の白龍なんて、実戦じゃ使えない単なる観賞用のカードだね」と言ったキャラクターと言えばピンとくる人もいるだろうか。
トラッシュトークを仕掛けて海馬瀬人から冷静さを奪おうとしたのか、単なるお気持ち表明だったのかはファンの中でも解釈が分かれるところだが、トラッシュトークが挨拶同然のアメリカで今更どんなトラッシュトークを浴びせられようと──
「俺に言わせりゃバンデット・キースなんて、表の世界でイキってただけの三流デュエリストだね」
「私に言わせればカード・プロフェッサーは大層な肩書きを名乗ってるだけの三流未満のデュエリストよ。特別に格の違いを教えてあげるわ、プロフェッサー。受講代は貴方のプライドでいいわよ」
一瞬にして腑は煮えくり返り、私の頭は目の前の青年をいかに惨たらしく葬るかでいっぱいになった。観客席にいた『マリア・ハワードを応援しに来たバンデット・キースのファン』からの凄まじいブーイングと罵詈雑言という後押しもある。
絶対に許さないからな?
「私のターン。ドロー、スタンバイ、メインフェイズ。モンスターをセット、カードを3枚セットしてターンエンド」
「俺のターン! 俺は手札から──「ドローフェイズに《クリッター》を生け贄に《死のデッキ破壊ウイルス》を発動します」──ちぃっ」
ウィラーは苦虫を噛み潰したかのような表情をしながら手札を公開した。彼の手札は《ホワイト・ホーン・ドラゴン》《竜の霊廟》《リビングデッドの呼び声》《アックス・ドラゴニュート》《アルバスの落胤》《深淵の獣バルドレイク》の6枚。
明らかに今の時代にはないはずのカードが4枚も含まれている。彼が予選を免除されていたことを踏まえるとペガサスからの支援があったと見るべきだろうか。
「では攻撃力1500以上のモンスターを捨ててください。効果解決後に《クリッター》の効果を発動。デッキから《月読命》を手札に加えます。メインフェイズをどうぞ?」
「《竜の霊廟》を発動! 俺はデッキから《ダークストーム・ドラゴン》を墓地に送る。そして墓地に送ってモンスターが通常モンスターだった時、更にデッキからドラゴン族モンスターを墓地に送ることができる。《ダークストーム・ドラゴン》は墓地とフィールドでは通常モンスター扱いになる特殊なモンスター! 俺は《深淵の獣ルベリオン》を墓地に送る。カードを1枚セットしてターンエンドだ」
「エンドフェイズに手札を1枚捨てて《サンダー・ブレイク》を発動。今しがたセットしたカードを破壊します」
「チェーンはない」
「ドロー、スタンバイ、メインフェイズ。プロフェッサーの手札と場は0枚、墓地にもこのタイミングで効果を発動できるカードはないようですので、チェーンや優先権の確認は省略します。モンスターをセットしてターンエンドです」
「はっ、これだけ有利な状況でモンスターをセットするしかないとは全米チャンピオンも大したことないな」
セットしたモンスターは墓地の罠カードを回収する効果を持った《闇の仮面》だ。そして私は手札に《月読命》を握っている。更に言うならば1枚となったセットカードは《はたき落とし》だ。
「ドロー! 俺は《深淵の獣ドルイドヴルム》の効果発動ッ」
「出来ません。《死のデッキ破壊ウイルス》の『ドローしたカードを確認し攻撃力1500以上のモンスターならば破壊する』効果はチェーンブロックを作らない処理です。ドローした《深淵の獣ドルイドブルム》を捨ててください」
「そんなわけあるか! ジャッジ!」
「ハワード選手の言った通りだ。《死のデッキ破壊ウイルス》のドローフェイズに行なわれる処理はチェーンブロックを作らない」
「
「くそがっ、ターンエンドだ」
「ドロー、スタンバイ、メインフェイズ。《闇の仮面》を反転召喚、墓地の《死のデッキ破壊ウイルス》を対象にリバース効果を発動。墓地の《死のデッキ破壊ウイルス》を手札に加えます。《月読命》を召喚。召喚成功時に《闇の仮面》を対象に効果発動。《闇の仮面》を裏側守備表示にします。バトルフェイズに入ります。《月読命》でダイレクトアタック」
「メインフェイズ2。《死のデッキ破壊ウイルス》のようなカードをセットしてターンエンド。エンドフェイズに《月読命》の効果発動。《月読命》を手札に戻します」
「ドローッ! 俺は手札から《烙印融合》を発動させるッ!」
20年近く未来のカードパワーで殴られるというのは腹が立つことこの上ない。前世の二次創作でよく見た未来のカードでマウントを取る転生者を相手するモブの心境が少し分かった。
「まずはドローフェイズにドローしたカードを公開してください」
「魔法カードだよ、見て分かるだろ」
「では《はたき落とし》を発動します。チェーンはありますか? ないようならドローしたカードを捨ててください」
「なんだとっ!?」
「ではドローフェイズの続きからどうぞ」
「……ターンエンドだ」
「ドロー、スタンバイ、メインフェイズ。《闇の仮面》を反転召喚。墓地の《はたき落とし》を対象に効果発動。墓地の《はたき落とし》を手札に加えます。《黒蠍-棘のミーネ》を召喚。バトルフェイズ。《闇の仮面》と《黒蠍-棘のミーネ》でダイレクトアタック。《黒蠍-棘のミーネ》の効果発動。デッキから《黒蠍-棘のミーネ》を手札に加えます。メインフェイズ2。カードを1枚セットしてターンエンドです」
「俺のターンッッ! ドロォォオ!!」
「《はたき落とし》を発動します。チェーンはありますか?」
【烙印ビースト】ならば今の状況を解決できるカードは限られている。「深淵の獣」モンスターを引かれた場合は《はたき落とし》を発動してチェーンさせ、それにチェーンして《黒蠍-棘のミーネ》を生け贄に《死のデッキ破壊ウイルス》を発動すればいい。「烙印」速攻魔法は手札コストが必要な関係上《はたき落とし》にチェーンすることは出来ない。
《烙印融合》を回収できる《烙印断罪》を引かれた場合はハンデスしなければいい。
「ない。……ターンエンドだ」
ウィラーがドローしたのは《ソウルチャージ》だった。遊戯王9期を代表するイカれカードの1枚だが、今の状況をひっくり返せるカードではない。
しかし、2セット目以降は《ソウルチャージ》を含めた未来のパワーカードを念頭において戦わなければならないというのは非常に面倒くさい。
なら、私が取るべき最善手は──
「ドロー、スタンバイ、メインフェイズ。《月読命》を召喚、効果で《闇の仮面》を裏側守備表示に変更。《闇の仮面》を反転召喚、墓地の《はたき落とし》を回収。《黒蠍-棘のミーネ》を守備表示に変更します」
「なっ、貴様、まさか……」
「バトルフェイズに入ります。《月読命》でダイレクトアタック。カードを2枚セットしてターンエンド。エンドフェイズに《月読命》の効果発動。自身を手札に戻します」
トドメを刺さずに《烙印断罪》をドローされるまで擬似ドローロックを繰り返してウィラーのデッキ内容を可能な限り詳らかにしてしまうことだ。
「サレンダーだ、やってられるか!」
「出来ません。サレンダーは降参を申し込まれた側が承認することで成立しますが、私は貴方の降参を承認しません。マジック&ウィザーズにおける歴代最強のデュエリストを三流と謗ったのですから、ここから逆転してみなさいよ。カード・プロフェッサー?」
これはサレンダーというルールを前世とは違いしっかりと明文化したインダストリアル・イリュージョン社(もしくはペガサス)が悪いと思います。
高評価・感想ありがとうございます。
趣味のレトロゲーで『遊戯王インターナショナル2』を始めました。毎週変更される禁止制限に四苦八苦しながらカードを集めています。ストーリークリア後の禁止制限全解禁モードが今から楽しみです。
・ウィラー・メット
ペガサスが死亡した世界線である遊戯王Rに登場したカード・プロフェッサーの1人。海馬瀬人を相手に立ち塞がったが、自身のエースの効果を利用され敗北。遊戯王Rのラスボス戦の解説役になる。出番が少なく、筆者の手元に遊戯王Rがないためキャラエミュは雑of雑。
本作ではマリア・キースを全米チャンピオンにしたくない組織からの依頼で全米選手権に参加。依頼主のコネで予選を免除された。依頼主から前報酬としてカードを貰っている。
【烙印ビーステッド(劣)】
ウィラー・メットが使用したデッキ。OCGで活躍した【烙印ビーステッド】を弱体化させたもの。《ソウルチャージ》や《第六感》などのOCG禁止カードが混ざっているため爆発力はあるがシナジーの薄い《ダークストーム・ドラゴン》や《ホワイト・ホーン・ドラゴン》がノイズとなっている。
キースside(vsイリアステル編)の話は──
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要る。
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要らない。