踏み台になりたい転生者のお話   作:一 八重

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リクルーターは弾圧で止められない
from就活中のデュエリスト


vsウィラー・メット(2/2)

 

 結論だけ言うならウィラーのデッキに《烙印断罪》は1枚しか採用されておらず、それもデッキボトムから4枚目の位置にあった。おかけで私は彼を徹底的に嬲り、メインデッキの情報を奪うことに成功した。

 

 問題があるとすれば私のデッキ内容も露見してしまったことだが、そんなものは今更だろう。予選から一貫してほぼ同じ内容のデッキを使っている以上、私は決勝トーナメントで対戦する相手にデッキ内容が透かされている前提で戦っている。

 

 

(【烙印ビーステッド】と言うにはOCGで【烙印ビーステッド】を愛用していたデュエリストたちに余りにも失礼極まらない劣化品と言ったデッキ。まるで強いカードやデッキの情報を得ただけの人が聞き齧った情報だけで組んだような印象を受けるデッキだった)

 

 

 今は1セット目が終わった後のサイドチェンジの時間。私はサイドデッキから《王宮の弾圧》を3枚投入する。入れ替える候補は《抹殺の使徒》2枚と《ミスティック・ソードマンLv2》にした。どちらも【烙印ビーステッド】が相手では単体では役に立たないカードだからちょうどいい。《月の書》や《月読命》とのシナジーに期待して入れたままにすることも考えたが、それは取らぬ狸の皮算用というやつだろう。

 

 サイドチェンジしながらウィラーの様子を伺うと、何やら思案顔でサイドデッキからカードを3枚抜き出してメインデッキのカードと入れ替えていた。これはサイドチェンジに慣れていない初心者がやりがちな挙動だ。

 

 

(サイドチェンジした枚数は本来は非公開情報。それをわざわざ教えてくれるだなんてね。一次予選はともかく二次予選くらいからは、メインデッキとサイドデッキを全て混ぜてから15枚抜き出すとか、入れ替えた枚数が分からないように工夫してる人が大半だったのにな)

 

 

 カード・プロフェッサーたちは、原作漫画やアニメのキャラクターたちのようにサイドチェンジのない1発勝負の世界で生きているデュエリストなんだろう。だからサイドチェンジに慣れていない以上は仕方のないことなのかもしれない。ありがたく情報アドバンテージをいただいておこう。

 

 

(サイドデッキから入れ替えた枚数は3枚。普通に考えたら現行のパックから出るカードで最も私のデッキに刺さる《群雄割拠》が最有力候補だ。あとは今の時代にないだけで【烙印ビーステッド】とは相性の良い《魔のデッキ破壊ウイルス》や《闇のデッキ破壊ウイルス》なんかも警戒すべきかな)

 

 

 しかし、警戒するしない以前にどれも先攻でセットされてしまうと詰みかねないのは事実だ。特にウイルスカードは先攻で展開されセットされた場合は対処しようがない。

 

 もしも《魔のデッキ破壊ウイルス》や《闇のデッキ破壊ウイルス》を使われたら2セット目は捨てる。そしてサイドチェンジで《次元の裂け目》を積もう。

 

 

「いくぜ、俺のターン! 《烙印融合》を発動、俺はデッキから《アルバスの烙印》と《深淵の獣ルベリオン》を墓地へ送り《烙印竜アルビオン》を融合召喚! 《烙印竜アルビオン》の効果発動。手札の《ホワイト・ホーン・ドラゴン》と墓地の《アルバスの落胤》をゲームから除去して《神炎竜ルベリオン》を融合召喚する。《神炎竜ルベリオン》は融合召喚成功時に効果発動ッ! 手札を1枚捨てることで除外されている《アルバスの落胤》と自身をデッキに戻して──《氷剣竜ミラジェイド》を融合召喚。場の《烙印竜アルビオン》を生け贄にして墓地の《深淵の獣ルベリオン》を特殊召喚。墓地に送られた《烙印竜アルビオン》の効果発動! デッキから《烙印の獣》をセットする。更に《深淵の獣ルベリオン》の効果でデッキから《復烙印》を発動! これが俺の最強の布陣だ! ターンエンドッ」

 

 

 前世で飽きるほど見せられた《烙印融合》からのテンプレートな【烙印ビーステッド】の展開だが、幸いなことに初動が《デスピアの導化アルベル》ではなかったため手札消費が3枚とそれなりに多い。

 

 手札消費3枚で大型2体+妨害2は令和のOCG基準だと微妙なラインだと思うが、今世の基準では大型2の時点でかなり強い部類だ。手札が相応に良くなければ惨敗は確定的と言っていい。

 

 ウィラーは手札からカードをセットしなかったから2セット目を捨てることはしないし、この手札なら逆転することも不可能じゃない。

 

 

「ドロー、スタンバイ、メインフェイズ。《深淵の獣ルベリオン》を対象に《月の書》を発動。チェーンはありますか?」

 

「ない」

 

「続けて《地砕き》を発動。チェーンはありますか?」

 

「ない。破壊された《氷剣竜ミラジェイド》の効果発動だ」

 

 

 ここは《氷剣竜ミラジェイド》の効果で《アルバスの烙印》融合モンスターを墓地に送って《月の書》を除外するべきだったはずだ。

 

 

「テキストを確認させてください」

 

「いいぜ」

 

 

 あ、ミラジェイドってモンスターしか除外出来ないのか

 効果を勘違いして覚えていたようだ。

 

 

「ありがとうございます。ではモンスターをセット、カードを3枚セットしてターンエンド。エンドフェイズ時に《氷剣竜ミラジェイド》の効果が適用され私の《クリッター》が破壊されます。《クリッター》の効果を発動します。デッキから《黒蠍-棘のミーネ》を手札に加えます」

 

「俺のターン。《深淵の獣ルベリオン》を反転━━「スタンバイフェイズに《リビングデッドの呼び声》を発動します。チェーンはありますか?」━━なんだと?」

 

「チェーンはありますか?」

 

「ない」

 

 

 これで手札に「ビーステッド」モンスターがいないことは確認出来た。

 

 

「《クリッター》の特殊召喚成功時に《クリッター》を生け贄にして《死のデッキ破壊ウイルス》を発動します。チェーンはありますか?」

 

「またそれか! チェーンはないっ」

 

 

 彼の手札は《デスピアの道化アルベル》《ソウルチャージ》《烙印融合》《デスピアの凶劇(アドリビトゥム)》だった。フィールドの裏側守備モンスターは言わずもがな《烙印の獣ルベリオン》だ。

 

 

「効果解決後に《クリッター》の効果発動。デッキから《黒蠍-罠はずしのクリフ》を手札に加えます」

 

「俺は手札から《烙印融合》を発動する!」

 

「チェーンして《王宮の弾圧》を発動します。800ポイントのライフを支払って《烙印融合》の効果を無効にして破壊します。チェーンはありますか?」

 

「……ない。ターンエンドだ」

 

 

 ライフポイント4000制の《王宮の弾圧》はOCGよりもライフを支払える回数が少なく相対的に使いにくく感じる。ライフを払えるうちに勝負を決めてしまいたいところだ。

 

 

「ドロー、スタンバイ、メインフェイズ。《黒蠍-罠はずしのクリフ》を召喚。何かありますか?」

 

「その瞬間《復烙印》の効果発動!」

 

「チェーンして《王宮の弾圧》の効果発動。その効果を無効にして破壊します」

 

「チェーンはない」

 

「バトルフェイズ。《黒蠍-罠はずしのクリフ》でダイレクトアタック。《黒蠍-罠はずしのクリフ》は戦闘ダメージを与えた時、効果発動。セットカードを破壊します。チェーンはありますか?」

 

「くっ、チェーンはない」

 

「メインフェイズ2にカードを1枚セットしてターンエンドです」

 

「ドロー!」

 

「《死のデッキ破壊ウイルス》の効果が適用されます。ドローしたカードを公開してください」

 

「ちっ」

 

 

 ドローされたカードは《烙印開幕》だった。もし《烙印開幕》と《ソウルチャージ》が使われたとしたら私の残りライフは800になって《王宮の弾圧》のコストを支払えなくなる。

 

 対するウィラーのライフは《黒蠍-罠はずしのクリフ》のダイレクトアタックで削られただけなので2800もある。次のターンに勝負を決めるのなら攻撃力1600以上のモンスターが必要になる。私の手札にあるモンスターは《黒蠍-棘のミーネ》だから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「ターンエンドだ」

 

「ドロー、スタンバイ、メインフェイズ。《黒蠍-棘のミーネ》を召喚。バトルフェイズに入ります。《黒蠍-棘のミーネ》でダイレクトアタック。《黒蠍-棘のミーネ》の効果でデッキから《黒蠍-棘のミーネ》を手札に加えます。《黒蠍-棘のミーネ》を対象に《破壊輪》を発動。《黒蠍-棘のミーネ》を破壊してお互いに1000ポイントの効果ダメージを受けます。チェーンはありますか?」

 

「チェーンは、ない。」

 

「最後に《黒蠍-罠はずしのクリフ》でダイレクトアタックします。対戦ありがとうございました」

 

 

 1セット目はともなく2セット目は薄氷の上の勝利だった。私の勝因は初手が相手の場と噛み合っていたことだろう。初手に引いたカードのいずれかがなければ2セット目は私の負けで終わっていたはずだ。

 

 それにしても初心者でもやらない優先権の確認忘れをカード・プロフェッサーが何度もするものだろうか。まるでデュエル・モンスターズのルールを覚えたての初心者のようだった。

 

 

「流石は全米チャンピオンだ。それと対戦前は悪か── 「まったく。誰だよ、ロクにルールも覚えてない初心者にカード・プロフェッサーを名乗らせてる奴。ウィラー・メットのそっくりさんとか何処で見つけてきたんだよ」──ッッ」

 

 

 この様子だと他のカード・プロフェッサーのそっくりさん*1デッキも未来のカードやテーマになっていそうだから、原作知識でデッキ読みするのは参考までに留めておいた方がいいだろう。

 

 初心者ならば簡単に勝てるだろうという驕りを鎮め、私はステージを後にした。2回戦の相手は前年にベスト8まで勝ち進んでいる青年か、カーク・ディクソンのそっくりさん*2のどちらかになる。

 

*1
本物です

*2
本物です




※対戦内容に不備があったため「ダメージステップは教養」を削除して本話に差し替えました。

全米選手権編のラスボス
「貴方は思っていた以上に役に立ってくれた。おかげでマリア・ハワードのデッキは丸裸も同然。これで私の負けはない」

ウィラー・メット
本物。デュエル・モンスターズ歴は3カ月の初心者。対戦前のトラッシュトークについて謝罪するつもりだったが、マリア・ハワードの悪意なき囁き戦術によって心がポッキリと折れた。

※本作のカード・プロフェッサーについて
カードゲームの賞金稼ぎたちによって構成された新興のプロチーム。スポンサーにインダストリアル・イリュージョン者が加わったことで、今大会からデュエル・モンスターズに参戦した。
本話時点でペガサスミニオン2人とマイコ・カトウ以外のメンバーはデュエリスト歴半年未満。ペガサスミニオンの2人がバンデット・キースの偏見を吹聴しているため、その影響を強く受けている。
これらの情報をマリア・ハワードは知らず、記憶にある遊戯王Rの印象から『闇遊戯や海馬瀬人、城之内と同程度か僅かに下回る実力を持った凄腕の賞金稼ぎ集団』として見ている。

マリア・ハワード
相手の実力を高く見積りすぎていた前全米チャンピオン。メインデッキの内容はほとんど晒してしまった。カード・プロフェッサーを本物のそっくりさんの集まりだと思っている。

キースside(vsイリアステル編)の話は──

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