神様転生させられたオリ主がセカイで自分の想いを見つける話 作:多重次元世界の研究者(自称)
タイトルはてきとー
晴れ空が嫌いだ。
明るく、爽やかで、眩しい。 そんな空が、何よりも嫌いだ。
・・・・・・あの光は、
眩しくて直視できないから、分厚い雲で、暗い雨で、遮らないと。
「ただいま~」
「あ、おかえりユウ~」
「・・・メイ、今更だけど学校は?」
「サボり。 なんなら明日もサボるつもり」
「お前なぁ・・・」
「ユウも司さんから聞いたでしょ? 咲希ちゃんが退院するって。 会うの面倒だから安全が担保されるまで行くつもりないわ。 下手に会うとユウの邪魔になりそうだし、ね」
玄関先で片割れと話していると、不意にスマホから光が放たれる。
「ユウ、スマホ光ってるよ?」
「そういうメイこそ」
「え? あ、ホントだ」
そう言いながら揃ってスマホを取り出すと、画面に一つの音楽ファイルが表示されている。
「「
そう呟くと自動でそれが再生され、身体が光に包まれる。
気がつくと、雨の降る夜の川岸にいた。
此岸には数多の水溜まりがあり、彼岸には枯れ果てた木が立ち並んでいる。
あまりにも殺風景で、まるで生命の気配を感じれない。
「ここは・・・? ねぇユウ、ワタシ達玄関にいたよね?」
「あぁ。 ここは、川・・・か?」
「ここは"セカイ"だよ。 ユウ、メイ」
そう言って背後から現れたのは、赤い髪にドリルみたいなツインテールを巻いた一人の少女だった。
「・・・重音、テト?」
「うん。 はじめまして、二人とも」
そう言うと軽く礼をして微笑む。
「・・・それで、セカイってなんだ? 雨冷たいから帰りたいんだが」
「セカイはね、誰かの想いでできているんだ。 想いの持ち主が本当の想いを見つけた時、想いが歌になる。 そしてその歌を歌うために、それぞれのセカイにそれぞれのバーチャルシンガーがいて、想いを見つける手助けをするんだ」
「????? ごめん、何も理解できないわ。 本当の想いってのも、想いが歌になるっていうのも、まるで意味がわからないのだけれど」
「別に、すぐわかる必要はないさ。 大丈夫、いつかわかる日が来るよ。 またね、メイ」
「待って、まだ話は終わってな───」
言い切る前に、メイが光に包まれて姿を消した。 雨に打たれながらテトはそれを見届けると、俺に向き直る。
・・・さて。
「「白々しい演技はここまで、だろう?
同時にそう口を開き、不敵な笑みを浮かべて視線を交わす。
「テト、ここにお前以外のバーチャルシンガーはいるか?」
「いいや、僕が認識している範囲内では僕以外のバーチャルシンガーを見たことはない。 ま、理由は大方検討がついてるけど」
「・・・へぇ? その理由って?」
「君が
「・・・さぁな。 それは俺にもわからない」
それは転生の時の願い。 あの時、俺は自身の複製を願った。 前世の記憶を持たず、この世界に生まれた一人の人間として生きるワタシを。 そして俺自身の記憶をそのまま引き継いだ俺を。
前者が冥衣で、後者が幽雨。 俺達のどちらか、あるいはどちらもが俺の願いによって創られた虚構だ。
「あぁ、だから"テト"なのか。」
「そういうこと。 虚構で創られた君たちと、虚構から生まれた僕。 なかなか皮肉めいた配役だろう?」
「・・・ホントだな。 にしても───」
そう言いながらセカイに目を向ける。 絶えず雨が降り注ぎ、あちらこちらに形成された水溜まりにはまるで占い師の水晶のように様々な光景が映し出されている。
セカイの真ん中を流れる川は黒く淀んでおり、底が見えない。 何も映さない水面はブラックホールのように全ての光を呑み込んでいるようで、一度踏み入ってしまえば水底の深淵まで沈み、二度と地上には戻れないのではないかと感じてしまう。
上空を見上げれば、夜空を遮るどす黒い雨雲だけが見える。 このセカイは夜の帳と幽かな雨が支配しているようだ。
「───ここは、まるで三途の川みたいだな。 さしずめ川の向こうは死の世界ってとこか?」
「さぁね、僕も向こうに行ったことはないからわからない。 なにせ、川を渡る手段がないんだもの」
そう言われて岸辺を見ると、なるほどたしかに橋はおろか渡り舟すら見当たらない。
川の向こうには灰色の空が広がっており、色のない世界とでも形容できる。 川も対岸に向かうにつれ赤色混じりになり、さながら血が滲んでいるように見えなくもない。
「そっか。 ま、それはどうでもいいとして。 ・・・テトは、本当の想いを見つけてもらう以外にも目的があるんじゃない? さっきの物言いからして、想いから生まれる歌はあくまで副題とでも思ってそうだけど」
「そうだね。 "それ"はあくまでもミク達の役目だ。 僕の役目はこのセカイを完全なセカイにすること。 ・・・このセカイはまだ不完全なんだ」
「・・・それは、俺がいるからか?」
「正解。 セカイはこの世界の
「なるほど。 だからそのノイズを消すことが、お前の目的ってワケだ」
「うん、理解が早くて助かるよ」
なるほどわかりやすい話だ。 リアルで生まれるモノにフィクションのノイズが混じれば、本来そこにいるはずの存在はそこに居られないということだろう。
「まぁ、今日話すことはこのくらいかな。 帰り方はわかってるだろう?」
「当然。 じゃ、またな」
「あぁ、またいつでも遊びに来たまえ。 ・・・───」
それを聞き届けてUntitledの再生を停止する。 そうすると体が光に包まれ、次に目を開いた時には自室のベッドで横になっていた。
「・・・星空」
ふと窓から差し込む光に目を向けると、そこには満天の星空が広がっている。
きっと今頃、みんなも同じ星空を見上げているのだろう。 あの星明かりが導く先には、きっと素晴らしい未来が待っているであろうことを、俺は知っている。
(・・・だからこそ)
だからこそ、その先に俺はいけない。 いってはいけないんだ。 その場所は、俺みたいな
「・・・・・・・・・・」
Untitledを停止する瞬間、テトがおもむろに口を開いてこう言った。
『ユウ、例えただの虚構に過ぎないとしても、今君が生きているこの世界は、今の君にとって唯一の
光に包まれながら耳に届いたその言葉が、何故か頭に残って離れない。
小さい頃から、仲のいい友達がいた。
その頃は漠然と、これからもずっと一緒に過ごせるんだろうなって、そう思ってた。
───だけど。
中学に上がる前、咲希が遠くの病院に入院してあまり会えなくなった。
次に、私達が宮益坂女子学園の中等部に入ったのをきっかけに幽雨と会うことがなくなった。
そしていつの間にか、志歩とも穂波ともうまく話せなくなって。
・・・・・・気がついたら、私はひとりになっていた。
咲希には、たまにお見舞いで会いに行く。 その度に、学校のこととか、昔のこととかを話して。
志歩と穂波は、毎日学校で会える。 けど、志歩は学校だとずっと孤立してて、私ともあまり話そうとしない。
穂波は、話そうとしてもクラスの友達が呼んでるからって、すぐにそっちに行ってしまう。
そして、幽雨は。 ・・・幽雨とは、中学に上がってから一度も会っていない。 彼の双子の妹の冥衣に聞いても適当にはぐらかされて、どこで何をしているのかすらわからない。
けど、冥衣が言うには目標のために頑張ってるらしい。
「・・・会いたいな」
無意識にそんな呟きが出るくらいには参ってるらしいと、他人事のように自嘲する。
会えてもうまく話せない志歩達と違って、幽雨なら前と同じように接してくれるかもしれない。
なのに、会う理由がないからとか、会っても何を話せばいいのかとか、目標のために頑張ってる幽雨を邪魔しちゃいけないだとか、何かと理由をつけて逃げ続けて。
・・・多分、怖いんだ。 きっと幽雨も志歩達と同じで、三年前とは変わってる。 それが、怖い。
もし幽雨にも拒絶されたら、本当にひとりになってしまうんじゃないかって。
そうしてずっと逃げてばっかりで、勇気の出ない自分の臆病さに嫌気が差す。
そんな憂鬱な気分で席に座っていると、いつの間にかHRの時間になっていたようでチャイムの音が聞こえてきた。
そしてチャイムと同時に先生と、
「・・・咲希!?」
赤い川の畔で、水溜まりを見下ろす一つの影がある。 見下ろす水溜まりに映るのは二人の少女。
どうやら少女達は街でタピオカミルクティー片手に乾杯しているようだ。
「・・・これどういう原理?」
「ん? あぁ、このセカイはセカイの狭間と似た性質を持っていてね。 君と彼女達の"繋がり"を"道"として繋いで、そうやって水溜まりに映し出すことができるんだ。 この繋がりでは他にもできることがあるけど、まぁ今は割愛しよう」
斜め後ろにいるテトに問えば、そんな回答が帰ってきた。
さて、今俺が何をやっているかというと・・・。 やっているかというと~・・・・・・。
「・・・ねぇテト、これなんて言えばいいと思う?」
「意味不明な質問を僕に押し付けてこないでくれないかい?」
うーん、まぁ、人間観察・・・? とでも言えばいいのかな。
学校から帰り、この世界はセカイを軸にストーリーが進行するという理に従ってセカイに入った。 そうしたら入ってすぐのところにあった水溜まりに一歌と咲希が退院と入部祝いに乾杯してるシーンが映っていた。
ちなみに念じたら過去の映像も映せた。 感覚的にはつべとかのライブ配信に近いかな?
まぁつまり、だ。 これを介することで俺の目の届かない場所で何が起こっているのかを知ることができる。 なんとも便利な物だ。
おそらく現実世界での行いが彼女らにどう影響を及ぼしたのか、これを介して観察しろというセカイからのメッセージか何かが含まれているような気もするが、この際それはどうでもいい。
そんなことよりも、だ。
「・・・どう接触するべきか」
問題はコレである。 三年会ってない上に向こうもすれ違ってるしで、会いに行く理由がない。 どの面下げて会いに行けばいいというのか。
「あ、それについては問題ないよ」
「・・・というと?」
「ふふっ、その時が来ればわかる。 今はそうして観察してるといい」
テトの意味深な笑みが、水面越しに反射する。 理屈はよくわからないが、ここの住人がそう言うならそうなのだろう。
考えることをやめ、再び二人の観察に興じることにした。