Fate/firstborns wish 作:お兄ちゃん
「忘れ物はないかね」
「ねぇ。ってか見送りなんざ要らねぇよ」
「そう言うな。10年見守って来た者の旅立ちに立ち会わん理由もあるまいよ」
「ハ、親のつもりかよ」
どの面下げて親してんだか。
「そう言うことしてぇんなら、お前の娘にでもしてやれば良いじゃねぇか」
「フ、あれはそう言う扱いを望まんだろうさ」
「俺も望んでねぇっての分かってて言ってんだよな?」
「さてな」
こんなとこで生を実感しようとすんな燃やされてぇのか。
できる気がしねぇな、うぜぇ。
「これから、どうするつもりかね」
「変わらねぇ、俺は俺の為に動くだけだ」
「そうか、ならば励むと良い」
言われずとも。
ま、その実やろうとしてることはあんまり褒められたことじゃないんだが。
「言峰士規」
「ぐ……んだよ、まだ何かあんのか」
「選別だ、受け取りたまえ」
「は?」
そう宣いながら出してきた、言峰の手に乗っていたのは……十字架ぁ?
「神なんざ信じちゃいねぇんだが」
「知っているとも」
「じゃあなんでそんなもん渡そうとしてんだよ」
「……この十字架は、とある信仰を捨てた女が遺したものでな。故あって私が預かることになっていた」
「……」
「しかし私が持っていても仕方がないだろう。お前が持っておくと良い」
「今更過ぎだろ何言ってんだ」
「仮にも、教会に住んでいた身のお前が信仰心の欠片も持ち合わせていないと言うのは、私の立場上よろしくない」
「そっちが本音かおい」
なんだこいつ……にしても古そうな十字架だな。
聖職者の癖してこんなもん……いや聖職者だからか?
「わかったよ、こいつは貰っとく」
「それで良い」
「……さあ、迷える子羊よ。教えるべきことは全て教えた、あとはお前の裁量次第だ」
「お前と言う存在の誕生を、私は祝福しよう」
「……」
それっぽいこと言いやがってこの腹黒。
生まれを祝福されるべきは俺じゃねぇんだよ。
「るっせぇ。じゃあな」
「ああ」
そうして、俺は10年間過ごして来た古宿を後にした訳だが……。
「この森から、アインツベルンの領域かァ」
俺は今、冬木の御三家たるアインツベルン家の領地の境目まで来ていた。
言峰は言った、あいつは必ず聖杯戦争に巻き込まれると。
「じゃあそういう体で準備するだけだ」
奴は胡散臭いがそこらの情報に嘘はねぇ。
まァその為にはアインツベルンと協力関係にならなきゃだが……。
「お互い、利用できる関係じゃあある」
衛宮切嗣という存在を上手く使えば、俺でも対等付近の関係には持ってける。
蟲爺や遠坂家は論外。
「さぁて、魔女の森にゃあ何が眠ってんだかなぁ?」
結界はあるが気にせず歩を進める。
敵対心はねぇんだし当たり前だよなァ?
しばらく歩いた辺りで、どこかからの視線を感じる様になる。
……思ってたより遅かったなァ。
「俺は、敵意を持ってここに来た訳じゃない、むしろあんたらに協力を申し出たいんだ」
「聖杯なんざに興味はない、俺は俺の目的を達成できりゃそれでいい」
「……なァ、聞こえてんだろ、アインツベルンさんよ」
『……』
無視、ま当然の反応だわな。
火傷だらけの怪しい男の言葉なんざ信用されても困るぜ。
「今から歩いてそっち行くから、それまでゆっくり考えといてくれよ」
「……何なのかしら、あの男」
いきなり現れて協力したい、ですって?
怪しいにも程があるわ。
「お嬢様、私は反対です。あんな男に手を貸されずとも我等に問題はありません」
「……」
セラの言うことは最もね。
あんな胡散臭い男、今すぐにでも
「私は、賛成」
「リズ?」
「リーゼリット、あなた……!」
「あの男、使えるなら、イリヤ、楽になる」
「使えなければ、死ぬだけ」
「……それも、そうね」
「お嬢様!?」
そうだ、奴は聖杯に興味はないと、はっきり言った。
それが本当であれ嘘であれ、聖杯戦争に巻き込まれることを承知の上であの男は協力したいと宣っている。
だったら、適当に利用して使い捨てにすればいい。
本当に有用だったとしても、現代の魔術師にサーヴァントとの実力差を覆す方法少ないのだから。
「いいわ、話を聞くだけ聞いてみようじゃない。使えないならその場で殺すだけよ」
「……わかりました」
「ねぇ、あの男はまだ来ないの?」
もう2時間は経ってるじゃない。
何をしてるのかしら。
「怖気付いて逃げたのでは?」
「迷子?」
「……一応、見てみましょうか」
髪を触媒にして使い魔を作る。
「行って、あの男の行方を探して」
結界の中で反応はしている。
しかし、どうにも反応が虚弱で、結界だけではどこにいるのか判別ができない。
「まるで……」
「お嬢様?」
「……いいえ、何でもないわ」
あの頃の、か弱い誰かさんの様だと、口にしようとして、辞めた。
……それが何だって言うのよ、今の私は、私には、バーサーカーがいるじゃない。
「……あんな無礼な男、見つけ次第……!」
『あ、おお使い魔か』
「見つけたわ」
使い魔と視界を繋いで、件の男を見る。
……何よ、もうボロボロじゃない、こんな程度の実力で私と協力関係を結ぼうとしたのかしら?
『道に迷ったんだが、どうにかしてくれねぇか?』
「はぁ?」
『真っ直ぐ歩いてたんだが、どうにもおんなじところを巡ってる様な感じでね、道案内頼んでも良いかァ?」
「……はぁ、そこから右に進みなさい」
まさか、リズの言う通り本当に迷子だったの?
何とも馬鹿らしい理由で待たせてくれたものだ。
この男、話し合いなどする前に殺してしまうべきだろうか。
「……ってそっちじゃないわよ! 右よ右!」
『ハ? 右に進んでんじゃねぇか』
「右側に真っ直ぐって意味よ、何で右に大きく転回してるの!?」
『……マジかぁ』
……。
地理が絶望的過ぎるわね、この男。
その後も
「だからそっちじゃない! 左手側の2番目の木だって言ってるでしょ!」
「何で来た道を戻ってるの!? と、止まりなさーい!」
「あーもうっ! セラ、仕方ないから迎えに行ってあげて!」
男は、ちゃんと真っ直ぐ歩けるのかこっちが心配になるくらいには蛇行を繰り返し、最終的にセラを派遣することによって解決した。
「悪いな、迷惑かけた」
「全くよ! それが協力を申し出た相手に対する態度なのかしら!」
「ハハハ、面目ねぇ。どうにも地理感覚ってのに恵まれなくてね」
「……はぁ、まあいいわ。それで、具体的な内容って?」
「あァ」
慇懃無礼な態度を直さないまま、男はこちらを見据えている。
……ほんっと、これが協力して欲しいって言う立場なのかしら。
「具体的なことを言うと、あんたと取引がしたい」
「……取引がしたい?」
「あぁ、簡潔に言えばあんたの聖杯戦争に協力したいんだ」
……
どういう考えなのかしら。
「わざわざこのアインツベルンに、そんな話を持ちかけるなんて……どういうことかしら」
「何、単純で、簡単な話だよ」
「 俺の目的は、とある男の無謀な幻想を打ち砕くこと」
「……」
「その為ならどんな命令でも従ってやる」
「……それは、それが私に利があるの?」
「あるだろうさ、きっとな」
「その男の名は 衛宮、切嗣」
「!」
「奴が遺した
「何のために?」
「……さて、何のためだと思う?」
「復讐か、はたまた不快だったからなのか。そこら辺はあんたらのご想像に任せるよ」
「で、どうする。必要なら魔術的な契約だってしていい」
「……」
どうする、べきだろうか。
セラとリズは黙っている。
いつもならセラ辺りは否定の意見を述べて来そう……というか、実際述べかけていたんだけど、キリツグの名前が出た辺りから急におとなしくなった。
……そう、アインツベルンにとってキリツグは、遥かに重い存在なのだ。
今わかったわ、だからこそ、それをしっていたこの男は私に協力を呼びかけて来たのだろう。
「当然、協力関係の可否に関わらず契約はしてもらうわ」
「セラ」
「こちらに」
……これから行うことや、森の中でのあれこれを鑑みれば、協力を拒否したとしても結ばないといけないだろう。
「結果次第で、あなたとの協力関係を承諾してあげても良いわ」
「……へぇ」
「それで、その結果ってのは?」
「ふふ、簡単よ?」
ええ、とっても簡単なこと。
聖杯戦争に介入しようというのなら、ね?
「来なさい、バーサーカー」
「■■……」
「……」
「あら、バーサーカーを見ても驚かないのね、そこは褒めてあげる」
「 どんな方法でも良いから、バーサーカーを一回殺してみなさい」
「それができるなら、協力関係を結んであげる。できないなら去りなさい」
「それが、私からの条件よ」
原作キャラのエミュ難しい