Fate/firstborns wish 作:お兄ちゃん
「くあ……ぁ……!」
お城の屋根ってのは、案外寝心地が良いもんだな。
思わずあくびが出ちまうくらいだ。
「まさか、聖杯戦争が始まるまでまだまだかかるとはなぁ」
腹黒め、中立だかなんだか知らねえがよくもそんな重要な情報黙っててくれやがったな。
お陰で暇を持て余してるところだ。
「……いや、予想外に上手く行っただけども言えるかァ?」
あの後、奴らの提示した条件を無事に満たし、俺はアインツベルンにて……なんだ、居候? ま、食客なんて上等なもんではないのは確かだ。
住める場所を提供してもらってるだけありがたいしな。
そうやって、静かな星夜を過ごしていたのだが……。
「やっと見つけたわ」
「……イリヤスフィール様か」
こんな時間に俺のとこへやって来たのは、この城の主たるイリヤスフィール。
こんなクソ危ないところに、使い魔らしき鳥を使って
「イリヤで良いわ、形式上私達は対等な協力者なんだから」
「あいあい。……そう呼ぶとメイドがうるせえんだが」
「セラには後でもう一回言っておくわ」
「そうか、ってか危ねえぞ」
「問題ないわよ、いざという時はバーサーカーがいるもの」
バーサーカー、あのでっけえ岩男か。
大層な信頼だねぇ。
「そりゃ安全上はそうだろうが」
「まだ何かあるの?」
「んなとこにお前を連れて来たなんて知られりゃ、俺がお前のメイドにどやされる。俺の身が危ねえよ」
「……まあ、それは良いわ」
良くねぇが。
あのセラとか言うメイドどうにも苦手だ、相手にしたくねぇ。
「それより、そろそろ聞いても良いかしら?」
「ああ?」
「……バーサーカーを殺した方法よ」
目の前で見せたろ、今更何言ってんだ。
「ただの魔術師くずれの、炎を纏った手刀なんかでバーサーカーの宝具を破れる訳ないでしょ」
「って言われてもなァ……」
……まあ謎の確信めいた『
「俺自身、俺の身に何が起こってるのか知らねぇんだよ」
「……そんなことあるの?」
「あんたにゃ心当たりがあるんじゃねぇか、ホムンクルス」
「それは……」
……意地の悪い質問だったか。
ま、そっちと詮索しようとしてんだしお互い様だろ。
「んー……ま、何かあったとすりゃあ、今から10年前の大火災の時だろうさ」
「……! それって」
「ああ、衛宮切嗣が聖杯をぶっ壊したってあれだな」
言峰から聞いた情報だし、どうしてだとかに心当たりがある訳もない。
ただ、その結果アレが起きたと言う奴の言葉を俺は信用した、それだけだ。
「あんたの表情を見る限り、間違いじゃなかったんだな」
「……それが、あなたの動機?」
「半分正解、半分違う」
確かにそう言う恨みも多少はあるさ。
「ま、お前に話した話してないでどうにもなんねぇか」
「……何よ、相変わらず嫌な言い方するわね」
「腹の黒い野郎と10年生活したらこうなるさ」
安心しろ、あれの抉り方はこんな生やさしいものでないことは、教会で見てきた俺が保証する。
「……あの神父、そんな一面があったのね……?」
「見かけ通りじゃあるが、まあ聖職者としても色々あるんだろ」
……話がズレたな。
さて、どう話そうか。
「……俺が衛宮切嗣の邪魔をする主な理由は、ある男に似たような結末に行かせたくないってのが主だ」
「ある男……って」
「ああ、衛宮士郎。奴の養子さ」
……士郎。
何にも覚えてねぇとは聞いたが、まさかあんな奴の夢を追うとはな。
お兄ちゃんは驚いてるぜ。
「……シロウとどう言う関係なの?」
「弟」
「え?」
「文字通り、実の弟だあいつ」
……。
んだよ、なんか言えよ目え見開いてないで。
そんな驚きだったか?
「まああっちは全く覚えてねぇ。……無闇に言いふらすんじゃねぇぞ」
「……そこは、安心しなさい。私にだって分別はあるんだから」
「じゃ、信頼しとくよ」
信頼しようがしまいが、俺にこいつは殺せない。
契約もあるが、俺の目的の為にも必要だ。
「……ねえ」
「ああ」
「弟に、忘れられて……捨てられて、憎いとは思わなかった?」
「……」
随分と意地の悪い質問じゃねえか、意趣返しか?
……てのはさておき、衛宮切嗣に思うところがあるのかね。
「憎いぜ」
「!」
「でもな」
……正直なところ、俺は俺で記憶は正確じゃない。
両親がいたことは覚えていても顔や声まで思い出せないし、どんな生活だったかも思い出せない。
だが。
「 一度でも、兄貴なんて呼ばれたらもう、守ってやるしかねぇだろ」
あいつに、兄と呼ばれたことは覚えてる。
だったら、俺は兄としてあいつを、俺のやり方で守るのさ。
「……」
「……そう」
「そう、なのね。兄は、弟を守るもの」
「お気に召さなかったか?」
「ううん。……何となく、理解したわ」
「ああ、そうかい」
そう答えイリヤは、夜空を見上げ始めた。
……深くは聞けねぇな、傷の舐め合いがしたい訳じゃない。
「ねえ」
「ああ?」
まだ何かあるのかこいつ、もうあれに関して話せることは大体話し終えたんだが?
「あなた、何歳?」
「……何だいきなり」
「良いから、答えなさい」
「……18だよ」
「あら、同じなの?」
「は?」
今なんて? 同い年? 俺とお前が?
……いやいやいや。
「どう見ても小学生だろお前」
「あら、失礼ね。これでも18歳よ?」
「冗談だろ同い年て……」
ホムンクルスってのは存在が年齢詐欺ってのは何となく考えてたが、こんな形で実感することになるとは思わねぇの。
「じゃあ、誕生日は?」
「知らねえ、ってか覚えてねぇ」
「んー……じゃあ、はっきりさせられないか」
「何の話だおい」
「こっちの話よ、シキ」