Fate/firstborns wish   作:お兄ちゃん

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第三話

「あー……むず痒い」

 

「ふふ、何よそわそわしちゃって。らしくもない」

 

 

 俺とイリヤは今、白昼堂々街の中を歩いている。

 フードや外套の様なものは一切なく、誤魔化しの魔術をしている程度。

 イリヤは構わんだろうがな。

 

 

「俺はこんな面だ、目立つぜ」

 

「まじ……おまじないはしてあるでしょう? それに、目立ったところで私は気にしないわ」

 

 

 あの夜からというもの、余計馴れ馴れしくなったこのお姫様。

 馴れ馴れしいというより、他人への遠慮や配慮の類が消えたと言うべきか。

 

 

「……はぁ」

 

「ため息吐いちゃって、そんなに嫌なの?」

 

「慣れんだけだ」

 

 

 この傷を人の目に晒してたことだってある、教会に住んでた時とかな。

 だが……。

 

 

「無闇な同情の視線が、好きじゃない」

 

「無闇な同情?」

 

「好奇の視線はまだ良い、非現実的な光景を不思議に思うのは当たり前だろうしな」

 

 

 理由の一つは、非常に捻くれたと己ですら感じる。

 

 

「経緯も痛みも知らない他人に、傷を負ってるからカワイソウだなんて思われたって、居心地も気持ちも悪いんだ」

 

「そう」

 

 

 わからなくもないと言いたげな顔で、イリヤは押し黙る。

 

 

「それでも、()()()としてちゃんと肯定してあげるわ。あなたは怖くも可哀想でもないって」

 

「急に馴れ馴れしいってかほんとに同い年かよ……」

 

 

 未だに信じられない。

 メルセデスを運転していたことから、免許を持っているということまで信じさせられたが……いやぁ、嘘だろ。

 

 

「シロウ、シキ、シロウ、シキ……」

 

 

 一歩、歩みを進めるごとに俺と士郎の名前を呟く。

 どう言う意図だ。

 

 

「……シロウは、今でもシロウなの?」

 

「それは間違いねぇよ、言峰が言うにはな」

 

 

 今日は、件のシロウを一目見ようというイリヤの案によるもの。

 じゃなきゃ俺は街中をこんな無防備に歩いたりしない。

 

 

「シロウは、私のことを知ってくれてるのかしら。シキのことも」

 

「お前はともかく俺のことは絶対知らねぇっての」

 

 

 事故の後。

 一度も会わなかったなんてことはない。

 しかしだ。

 

 

「今より火傷が酷くないときにすら、赤の他人を見る目をしてたんだ」

 

「……そっか」

 

「ああ、だからあいつとは初対面なのさ」

 

 

 記憶がない以上仕方のないことで、その原因は衛宮切嗣の起こした行動によるもの。

 

 

「シキ」

 

「ん」

 

「居たわ。行きましょう?」

 

「ああ」

 

 

 今日は、すれ違う程度に済ませる手筈。

 故に士郎(シロウ)からすれば何気ない日常の一幕になるだろう。

 しかし、俺とイリヤにとっては大きなものだ。

 

 

「緊張するか?」

 

「全然、いずれこうなるものだもの」

 

「なら良いさ、変に戸惑ってる方が印象に残っちまう」

 

 

 2人して歩む。

 黒い火傷の男と、白い雪のような少女が。

 

 弟と    

 

 

「……?」

 

 

 刹那の邂逅だった。

 だが……。

 

 

「元気そうで、何よりだ。士郎」

 

 

 本人には言えない本心。

 いずれ出会うがそれは戦場で、敵としてだ。

 何せ俺は、イリヤの味方で、奴の理想を否定する者でもあるのだから。

 

 

「ねえ、きょとんとしてたわ。可愛いところもあるのね、シロウったら!」

 

「ハ」

 

 

 見た目通りの少女の如く笑うイリヤに、俺も釣られてしまう。

 ……衛宮切嗣に思うところがある以上、こいつは士郎の敵にもなり得る存在なんだと思っていたが……。

 

 

「この様子だと、簡単には殺しそうにはないか」

 

「?」

 

 

 どうやら、しばらくは杞憂として置くことができそうだ。

 シロウがこの先あまりに変な選択肢を選ぶようなら、残酷さを露わにしてしまうだろうが。

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