Fate/firstborns wish 作:お兄ちゃん
「あー……むず痒い」
「ふふ、何よそわそわしちゃって。らしくもない」
俺とイリヤは今、白昼堂々街の中を歩いている。
フードや外套の様なものは一切なく、誤魔化しの魔術をしている程度。
イリヤは構わんだろうがな。
「俺はこんな面だ、目立つぜ」
「まじ……おまじないはしてあるでしょう? それに、目立ったところで私は気にしないわ」
あの夜からというもの、余計馴れ馴れしくなったこのお姫様。
馴れ馴れしいというより、他人への遠慮や配慮の類が消えたと言うべきか。
「……はぁ」
「ため息吐いちゃって、そんなに嫌なの?」
「慣れんだけだ」
この傷を人の目に晒してたことだってある、教会に住んでた時とかな。
だが……。
「無闇な同情の視線が、好きじゃない」
「無闇な同情?」
「好奇の視線はまだ良い、非現実的な光景を不思議に思うのは当たり前だろうしな」
理由の一つは、非常に捻くれたと己ですら感じる。
「経緯も痛みも知らない他人に、傷を負ってるからカワイソウだなんて思われたって、居心地も気持ちも悪いんだ」
「そう」
わからなくもないと言いたげな顔で、イリヤは押し黙る。
「それでも、
「急に馴れ馴れしいってかほんとに同い年かよ……」
未だに信じられない。
メルセデスを運転していたことから、免許を持っているということまで信じさせられたが……いやぁ、嘘だろ。
「シロウ、シキ、シロウ、シキ……」
一歩、歩みを進めるごとに俺と士郎の名前を呟く。
どう言う意図だ。
「……シロウは、今でもシロウなの?」
「それは間違いねぇよ、言峰が言うにはな」
今日は、件のシロウを一目見ようというイリヤの案によるもの。
じゃなきゃ俺は街中をこんな無防備に歩いたりしない。
「シロウは、私のことを知ってくれてるのかしら。シキのことも」
「お前はともかく俺のことは絶対知らねぇっての」
事故の後。
一度も会わなかったなんてことはない。
しかしだ。
「今より火傷が酷くないときにすら、赤の他人を見る目をしてたんだ」
「……そっか」
「ああ、だからあいつとは初対面なのさ」
記憶がない以上仕方のないことで、その原因は衛宮切嗣の起こした行動によるもの。
「シキ」
「ん」
「居たわ。行きましょう?」
「ああ」
今日は、すれ違う程度に済ませる手筈。
故に
しかし、俺とイリヤにとっては大きなものだ。
「緊張するか?」
「全然、いずれこうなるものだもの」
「なら良いさ、変に戸惑ってる方が印象に残っちまう」
2人して歩む。
黒い火傷の男と、白い雪のような少女が。
弟と
「……?」
刹那の邂逅だった。
だが……。
「元気そうで、何よりだ。士郎」
本人には言えない本心。
いずれ出会うがそれは戦場で、敵としてだ。
何せ俺は、イリヤの味方で、奴の理想を否定する者でもあるのだから。
「ねえ、きょとんとしてたわ。可愛いところもあるのね、シロウったら!」
「ハ」
見た目通りの少女の如く笑うイリヤに、俺も釣られてしまう。
……衛宮切嗣に思うところがある以上、こいつは士郎の敵にもなり得る存在なんだと思っていたが……。
「この様子だと、簡単には殺しそうにはないか」
「?」
どうやら、しばらくは杞憂として置くことができそうだ。
シロウがこの先あまりに変な選択肢を選ぶようなら、残酷さを露わにしてしまうだろうが。