「ここは俺に任せて先に行け!」をしたら先生たちが病みました。 作:ヤンデレはいいぞォ
次回先生視点と言ったな。アレは嘘だ。
そうだ、外に出よう。
俺がそう思い至った経緯は極めてシンプル、久しぶりに外に出たいからである。
目覚めて大体一週間と少し経ったわけだが、その間一切外に出ていない。外の空気を浴びるとしても室内の換気で窓を開けるときぐらいで、それ以外はこの病室にいる。
一度だけ外に出たいと話したことがあるんだが、『まだ早いよ』と頑なに外出許可を出してくれず、結局なあなあで終わったんだっけな。
まぁ、俺としては『いつか許可出るっしょ』と高を括っていたわけなんだが………俺にもね、我慢の限界というものがあるんですよ……!
大体ね、考えてもみてくださいよ。外にも出れず、室内では先生と二人きり+面会に来てくれた子が常に一緒がスタンダードな生活。オマケにめちゃくちゃ美人で可愛い異性である。そんな方々が同じ部屋にずっといるなんて思春期の高校男子には毒すぎではなくて?ほんの少しでもいいから、たまには息抜きが欲しいよ。
時刻は午前五時半。今なら誰も起きていないだろう。
先生が来る時間帯は午前八時半だから、あと三時間ぐらいある。全然余裕だ。
「よいしょっと………はぁ、車椅子に乗るだけ大変だ」
なんせ片手片足がないからね。そりゃバランスも崩れる。
あっ、ちなみにこの車椅子はミレニアム式最新型の物で機能面に関しては申し分ない。アレよ、ヒマリが使ってるやつだよ。しかも自動で動いてくれんの。今やコイツが俺の
「まぁ、こんな片目片腕片足の人間に何が出来るんだって話だけど」
せめて足さえ残っていれば……なんてない物ねだりを独りごちりながら引き戸を開く。
………よし、誰もいないな。ぶっちゃけ監視用のロボットとかいるかもとは思ったが、このフロアにはいなそうだ。これは嬉しい誤算だ。
その後も無人の廊下を車椅子で進むが誰とも出くわすことなく、遂に念願のお外に出ることに成功した。
上を見上げれば幻想的な朝焼けを展開する空が俺を出迎えてくれた。
やっば、スッゲー綺麗っす。写真撮っておこうかな───って今は少しでもお外の時間を堪能しなければ……
俺は車椅子を中庭に進ませる。
外に出て改めて気づいたことがあるんだが、この病院アホみたいに大きい。いや、設備を見ても結構いい所なんだなってのは何となく理解していたけど、改めて外観を見るとかなり立派だ。う〜〜ん、入院費が怖くなってきた。
恐らくだが、ここは連邦生徒会が直接管理する地域【D.U.区域】にある病院だ。前世でいう大学病院みたいなもんか。
コロコロと周辺を回っているが、ぶっちゃけデカすぎ広すぎでだんだん飽きてきた。だってずっと同じ建物見てるだけだし。
う〜〜〜ん……あっ、良いこと思いついた!
「このまま病院の敷地外出てみよっかな〜。ちょっとぐらい出てもバレへんやろ」
「はいダメですよ〜。看護師の言うことはちゃんと聞いてくださいね〜」
「は〜〜い」
そっか〜、看護師さんがダメって言うならダメか〜。それならしょうがないよね。
……………………………ゑ?
「セ、セリナチャン!?セリナチャンナンデ!?」
「はい!セリナです!」
いや見れば分かるわ!
俺の後ろには天使の如き笑顔を惜しみなく見せるゆるふわピンク少女──鷲見セリナちゃんがいた。
えっ、やばい。全然脳の処理が追いついていない。ん?え?セリナ?ふぁ?マ?
「えっと、いつからそこに?」
「ヨイチさんが病室を出たときからですね。お一人でお外に向かわれていたので着いてきちゃいました♪」
なるほど、つまりほぼ最初からいたと……
う〜〜ん、何で気づかなかった俺〜?腑抜けているにも程ってものがあるぞ〜?
いや待て、相手はあのセリナだ。神出鬼没、忍者より忍者してることで有名なあの鷲見セリナさんだ。俺の拙い脱走など見抜かれていても不思議ではなかったか……
……………冷静に考えてやっぱおかしいという結論に至ったことは忘れましょう。
「あ〜〜っと……なんだ、その……」
「はい、何ですか?」
こわっ。端的でスパッとした言葉が一番こわいのよ。
見て見て、スッゲー笑ってる。普段だったら天使だと持て囃していただろうが、何故だろう、今は死神が微笑んでいるようにしか見えない。片目がなくなったせいかな?(ブラックジョーク)
恐らく、というか十中八九病室に戻される。だが、ここまで来て諦め切れるのか?村田ヨイチ。ここは誠意を見せて、一か八かの博打を打つべきときだ。
「……セリナちゃん」
「はい」
やる!やってみせる!男を見せろ!
「今日だけでも見逃してくんない……?」
結果、なんとか外出の許可を得られた。
まぁ、病院の敷地内だけ+セリナ様監視の下ではあるが、そんな細かいことは道端に捨てておけ。
風が心地よい。春とか秋辺りにそよぐ生暖かくもほんの少し冷たさを感じる、そんな風。
車椅子に乗せられている状況も相まって、このまま船を漕いでしまいそうだ。
いや、他人に押させている手前、寝るなんて失礼をかますことはないんだけど。
「セリナちゃん。この車椅子全自動だから、わざわざ押してくれなくても大丈夫だよ」
「私はヨイチさんのお世話係です。ですので、どうかお気になさらず」
「………うん?いや、気持ちは嬉しいけど───」
「ミネ団長にチクりますよ?」
「本来外に出ちゃいけない身の癖にセリナ様のご厚意で出してもらってる分際でクソ生意気にも口出して大変申し訳ありませんでした。今はただ外に出れることに、そして大天使セリナ様に深謝申し上げております。だからどうかミネさんには……ミネさんだけはどうか……」
「ヨイチさんなら分かってくださると信じていました!これからも私がヨイチさんの足になりますので、どうか安心して任せて下さいね?」
「………………………ッス」
こわい。この子こわいよ。あれ、こんなに手段選ばない子だったっけ。何かある度にいつもミネさんから庇ってくれていたセリナちゃんはいづこへ……
「こんな穀潰しの世話も大変だろうに……いつも迷惑かけてごめんね?」
「迷惑だなんて……!そんなこと一度も思ったことありません!むしろ、もっと頼って下さい。私はヨイチさんのお世話をするのが大好きなんです」
ハハっ、随分過剰な言い方だ。俺じゃなかったら多分告白してたぞ?
まぁ、彼女なりの気遣いと受け取っておこう。いや、普通に考えて介護って絶対大変だからさ。それも患者の気まぐれでこんな朝早く付き合わされてるんだから、そりゃ肉体的にも精神的にも辛かろうて。
…………もう二度と朝早く散歩に出掛けるのはやめよう。申し訳なさで死にたくなってきた。
「君たち救護騎士団には何度も世話になった。もちろん君にも。いつもスゲー助かったよ」
「ふふっ、それなら良かったで───」
「だけど安心してほしい。こんな体になっちゃったし、多分、というかもう二度と君たちの世話になることはないからさ」
「ッ」
『ま、現在進行形で世話になってるやつが何言ってんだよってな!』と冗談めかして言ってみたものの、何故か空気が重くなった。えっと、なんで?
その後もセリナとブラブラと病院の中庭を周り、朝食前に病室に戻った。
ただ、セリナが心あらずで、受け答えがあまり出来ていなかったのが気がかりだった。やっぱり辛かったんかな?嫌われてなきゃいいけど……
それに時々首元にぬるい液体みたいなのも落ちてきたんだよね。アレってなんだったんだろう?