「ここは俺に任せて先に行け!」をしたら先生たちが病みました。   作:ヤンデレはいいぞォ

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お久しブリーフ(気さくな挨拶)


消えない傷跡

 

 

 

 

 

 幽霊の存在を信じたことはあるかい?

 

 幽霊なんてオカルトだろというのが大半の意見だと思う。どちらかと言えば俺もそちら側だったのだ。今、この瞬間までは。

 

 えー、単刀直入に言いましょう。枕元に誰かいます。真夜中で、誰もいない筈の病室に、誰かがいます。

 ホラー番組で死ぬほど見たシチュエーションに、流石の幽霊不信派の俺でもビビり散らかしています。

 姿は確認していない。というか、怖くて出来ない。どうにか寝たふりを貫き通し、俺から興味を失くしてもらうのをひたすら待つことしか出来ない。これが、死んだフリをする小動物の気持ちか……

 

 というか、かれこれ数十分こんな状態なんですけど……。いい加減、我慢の限界が来ていた。

 

 ちょっと見るだけだから、薄目だから、絶対に気づかれないぐらい細めるから……

 誰に言い訳しているのかも分からぬままに、好奇心と恐怖心に背中を押され、そっと目を開けると─────

 

 

 「─────サオリ?」

 

 「ん?すまない、起こしてしまったか」

 

 

 幽霊じゃなかった。人でした。

 瞳孔かっ開いて、ただならぬ気配を纏わせた、ただのサオリ姉さんでした。

 は〜、よかったよかった。

 

 ………………よくよく考えなくても、こっちの方がホラーなんじゃないか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あの……来てくれたのは嬉しいんすけど、どうしてこんな真夜中に……?」

 「私は追われている身だからな。昼間に堂々と面会すれば騒ぎになってしまうだろう。お前にも迷惑をかけてしまう。それは……それだけは避けたかった。だから、すまない」

 「あぁ、頭上げてよ!ちょっとビックリしただけだから!」

 

 サオリは変なところで真面目だ。迷惑をかけたくないからと言って、真夜中に不法侵入してくるところとか、それって本末転倒では?なんて思わなくもないが、そんなところも天然で可愛らしいよね。

 あざとい、あざといよサオリ姉さん……!この天然可愛い存在を守護らなければ……!

 

 「具合はどうだ?もう、痛くないのか?」

 「元気元気!サオリが来てくれたから、もっと元気出たよ!」

 「大袈裟だな。私が来ただけで癒えるのなら苦労はしない。……だが、悪い気はしないな」

 

 あぁ^~心がぴょんぴょんするんじゃぁ^~

 

 サオリが笑ってくれる事実だけで涙腺ものだよね。この子らの生い立ちがあまりにもあんまりなので、こういった些細なことでもすごく喜んでしまう。これが……親心ってやつか……?

 

 「それより、他のアリウススクワッドのみんなは元気してる?」

 「まだ会っていないのか?」

 「まぁね。というか、サオリみたいな子の方が珍しいんじゃないかな。()()()死に損なった男一人のお見舞いに掛ける労力も時間も、今は惜しいだろうし───」

 「ヨイチ」

 

 蒼眼が貫く。瞬きもせずに、ただ俺の姿を映すのみ。

 どうやら、今のやりとりが彼女の琴線に触れてしまったらしい。

 

 「頼むから、お前が、お前だけは、そんなこと言わないでくれ。頼む……」

 「サオリ……?」

 

 何故、サオリが泣き出しそうな顔をして訴えてくるのか、よく分からなかった。

 ただ、よしてほしいと言うのなら、そうする他ない。それなら死に体の俺でも出来る数少ないことだろうからな。

 

 「ふふっ、冗談ですや〜ん。他のみんなが来てくれるの、楽しみにしてる」

 「ッ、あぁ、必ず来るさ。絶対だ」

 

 そんな念押ししなくても分かってるから……

 

 というか、この子に物申したいことがあったんだわ!

 

 「それより、サオリに言いたいことがあるんだけど!なんでさっき起こしてくんなかったのさ!おかげで幽霊と勘違いしたんですけど!」

 「あ、あぁ……すまない。その……」

 

 今度はサオリが言い淀む。なんだろ、俺の顔に見惚れてたとか?……自分で言うほど恥ずかしく虚無な物はないので、ここで一旦止めておくけど。

 ふと、サオリが俺のある箇所を見ていることに気がついた。その視線を辿っていき、彼女が見ていた物の正体を突き止めて────深い深いため息が溢れでた。

 

 「まったく、ま〜〜だ気にしてんのかい、このアンポンタン」

 「あ、当たり前だッ!私は、私たちは、お前の体に、決して消えない傷跡を……」

 

 しょうがないので、パパッと上着を脱ぎ捨て、その傷の全貌を月光の下に曝け出した。

 

 彼女の言う傷跡。それは、半身に渡る大火傷の跡だ。

 

 これはエデン条約の調印式で、彼女たちが発した巡航ミサイルを受けて出来た物だ。

 なんでこんなに重症化したのかというと、とある子を庇って直で喰らったのがマズかったんだと思う。

 いや〜、あん時は本当に肝が冷えた。流石に死んだと思ったが、ヘイローのおかげでギリギリ生きてたね。その後すぐさま飛び出してベアおば討伐……そして、俺史最大のトラウマが待ち受けているのだが、思い出すことすら拒絶反応を起こしているので、この話はまた今度。

 

 この傷跡について、彼女たちから何度も謝罪された。俺はもうとっくに許してるのに、彼女たちはひたすら謝るのだ。これではまるで、ネチネチと過去を掘り返してくる嫌な男ではないか。

 

 「触る?」

 「ッ、いや、私は───」

 「いいからいいから」

 

 震える手をそっと手繰り寄せ、その手のひらを火傷の跡に押し付けた。

 ………側からみたらヤバいことしてんね、俺。退院したら次は矯正局行きかな?

 

 「私は、なんてことを……。すまない、本当に、ごめんなさい……」

 

 違う!泣かせたいわけじゃないんだ!ただ、君に気づいて欲しくて。

 

 「ほら、なんともない。痛くもないし、痒くもない。もうただのちょと黒くなった肌だよ」

 「だが……」

 「だがも糸瓜もありません。俺はもう君たちを許した。だから、そう何度も謝罪されると心苦しいよ」

 「分かっ、た。善処する」

 

 謝罪に善処も何もないと思うんですけどね……?

 まぁ、これで少しでも、彼女の心を覆う憂いがなくなると嬉しい。

 

 さて、いい感じに話がまとまったところで、これから滅茶苦茶ダサい男になりま〜〜す!

 

 「あの、大変恥ずかしいんですけど、上着を着るの手伝ってほしいです……」

 「───ふふっ、アハハッ……!あぁ、勿論だ。私に任せてくれ」

 

 笑われた。やっぱり死にたいです……

 

 その後、羞恥に耐えながらも何とか着せてもらい、今日はもう遅いからと病院の寝室に彼女を寝かせた。

 どこでって、そりゃ俺のベッド以外ないだろ。大丈夫大丈夫、極力離れて寝たし、何なら爆速で寝たのも俺だし、彼女に手を出したとか、そういった事実は一切ないので安心してほしい。

 

 ただなぁ、気になったことと言えば、首元に出来た虫刺され。痒くはないんだけど、結構赤い点があってさ。サオリは蚊に刺されてなければいいんだけど……

 




首元に幾つもの赤い点?妙だな……
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