幼馴染たちが美しく歌う中、俺は哭き叫び狂い堕ちる   作:零城

1 / 32
まず、この駄作な小説を見つけてくれてありがとう
ただそれだけです、はい

あと、久しぶりの人はごめんなさい。すごく待たせました


無印編
第一話 響のもう一人の幼馴染


この世界には、ノイズと総称される特異災害がある。

形も大きさも一定せず、ときに兵器のような挙動すら見せるそれは、突如として空間から“にじみ出て”、人間に触れた瞬間に身体を炭素へと変換し、崩れさせる。常識的な武器の多くは効果を減じられ、あるいは無効化される。意思疎通の試みはすべて失敗に終わり、制御も交渉も通じない。ゆえに発生時、一般市民に許された最善は避難だけ――そんな現実が、いつしか世界の基準になった。

 

ノイズが恐れられる理由は、その“無敵さ”にある。奴らは存在の比率を、この世界と別位相にまたがるよう調整し、こちらからの物理的干渉をやり過ごす。攻撃に転じる刹那だけ現実側へ寄り、次の瞬間には離脱する。理屈の上では、その隙を突けば撃退も不可能ではない。だが再現性はなく、安定した対処法とは言いがたい。だからこそノイズは、被害の大きさ以上に、「対処不能」という事実で人々の生活を侵食してきた。

 

各国は防災警報やシェルターの整備を急いだが、抜本策にはならない。過去には、減衰される物理エネルギーを物量で上回って押し切ろうとした例もあった。だが長時間の爆撃は地形を変え、後続の災害を誘発し、結果としてノイズ以上の痕を残しただけだった。

 

そんなノイズに、正面から抗しうる手段がひとつだけある――『シンフォギア』だ。

 

――――――――――

 

「ん、んん……」

 

小鳥のさえずりで目が覚める。

俺の名前は蒼月昇。男だ。青みがかった銀髪に、氷みたいな青い目。見た目はちょっと浮くが、中身は至って普通――のはずだ。

 

「クソ眠い……」

 

布団の中でもぞもぞと体を起こす。一戸建てに一人暮らし。両親は俺が小さい頃に事故で他界している。朝の挨拶を返す相手もいないから、代わりに空気に向けて声を出す。

 

「……はーい、おはよーございまーす」

 

誰もいない寝室に、間延びした挨拶だけが転がった。

洗面台で顔を洗って覚醒させ、ドライヤーで寝癖をざっと撫でつける。パジャマから普段着に着替えると、スマホを手にニュースを流し見た。経済だの政治だの、賛否と炎上が延々とスクロールされる。その中に、一枚の画像が目に引っかかる。

 

「ツヴァイウィングのコンサート……ねぇ」

 

青と赤のポスター。風鳴翼と天羽奏のツインボーカルユニット――ツヴァイウィング。

俺は歌う人間より、曲そのものを聞くのが好きだ。アイドル事情は正直わからない。……けど、どうせ外に出る頃には“アイツ”が騒ぐだろう。

 

「……あー、ねみー」

 

トースターから取り出した食パンを、何も塗らずにもさもさ噛む。ブラックのコーヒーで流し込み、カップをすすいでシンクに伏せる。食器用洗剤が空なのを思い出した。

 

「そういや、洗剤切らしてたっけ。買わんとな」

 

鏡の前で身だしなみを整え、スニーカーの紐を締める。今日は土曜、学校は休み。部活もやっていない俺は、外に出て少しでも体を動かすことにしている。家にこもってると、考えなくていいことまで考えるから。

 

一人暮らし特有の独り言をぼそぼそ言いながら、駅前にある『ふらわー』へ向かう。生活費は、親の残した財産でどうにかなっている。だからこそ、せめて社会経験くらいはと、店の手伝いに顔を出すようにしている。頼れる大人はいないわけじゃないが、心配をかけたくない。早く自立したい。そういう性格になったのは、まあ――環境のせい、だと思う。

 

寂しくないかって? 親が死んだときは、ちゃんと泣き喚いたさ。でも、近所に“幼馴染”がいたから、そこで踏みとどまれた。

 

「――あ、昇! おはよー!」

 

振り返ると、幼馴染その1――小日向未来。黒髪ショートに、やたら目立つ白いリボン。

 

「ん、未来。おはよ」

 

「眠たそうな顔。……また夜更かししてたの?」

 

「まあな。コーヒー飲んで本読んでたら、午前三時。翌朝に寝れば帳尻は合う」

 

「ダメだから!」

 

未来の小言は、昔から変わらない。

コーヒーの話になったのでついでに言っておくと、俺はやたらブラックが飲める。紅茶もストレートでいける。不思議と平気だ。理由は知らん。親が死んだショックで味覚が鈍ったとか、そういう話かもしれない――と、勝手に納得している。

 

「いーじゃねーか、人間いつか死ぬんだ。好きなもん嗜んで何が悪い」

 

「昇のは過剰! カフェイン摂りすぎは本当に体に良くないの!」

 

「へーい」

 

そんな与太を飛ばしつつ住宅街を歩いていると、後ろから全力疾走の足音。

 

「未来ー! 昇ー! おはよー!!」

 

幼馴染その2――立花響。明るくて、前向きで、すぐ走る。正義感が強くて優しい。で、少しばかり諦めが悪い。要するに、ヒーロー気質。

 

「おはよう、響」

 

「おはよーさん、響」

 

未来に勢いよく抱きつく響。距離感が近いのはいつものことだ。二人は女友達にしては――いや、女友達でもここまでベッタリなのは珍しいらしい。クラスの女子談。

 

(これが俗に言う百合ってやつか)

 

と、俺は俺で数歩だけ前に出る。嫉妬ではない。眩しすぎる光には、反射的に目を細めるものだろう。二人が“温度”なら、俺は“室温”――そんな感じ。

 

「――昇! 未来から聞いたよ。夜更かししたんだって?」

 

「……人の生活に踏み込みすぎ。俺の体は俺のものだ」

 

慌てて俺の歩調に合わせる二人。

コーヒー談義はまだ続く。

 

「コーヒーばっかりで飽きないの?」

 

「口に合う。それだけ」

 

「もー、昇って昔から変に“大人ぶる”よね」

 

「うるせ、バーカ。大人ぶるために飲んでるわけじゃない」

 

「飲みすぎるとおじさんになるよ?」

 

「俺、お前らと同い年」

 

そんなやり取りを続けながら、三人で商店街へ。電柱には、例の派手なポスターが何枚も貼られていた。ツヴァイウィングのロゴが朝日に光る。

 

「てか、響。なんで俺と未来がここにいるってわかった」

 

「……いーでしょ、そういうのは!」

 

まあ、未来の居場所くらい、響なら勘で嗅ぎ当てるだろう。そういう“勘の良さ”が、時々羨ましい。

 

「あ、ねえ、未来! 今度の休み、予定ある?」

 

「え、ないけど?」

 

「じゃじゃーん!」

 

響がポケットから取り出したのは、三枚のチケット。

 

「それって、ツヴァイウィングのライブチケット?」

 

「そう! 抽選で当たったの!」

 

ほらやっぱり。なんとなく朝からツヴァイウィングの記事を見て予想していた

響ってツヴァイウィングが好きすぎてダウンロード系にすれば楽なのにわざわざCDを買いに行くほどだった

 

「ほー、そりゃよかったじゃねぇか」

 

「そうそう! だから今度、三人で観に行こうよ!」

 

「……おい待て。なんで俺は最初から行くことになってんだ」

 

「……ダメ?」

 

響が小首をかしげ、潤んだ瞳で見上げてくる。

あ、それはズルい。ただでさえ美少女フェイスなのに、涙目で子犬みたいに訴えられたら断りにくいに決まってる。

 

「……わかった、わかったから。そんな顔すんなって。子犬どころか捨てられた柴犬にしか見えねえ」

 

「やったー!」

 

満面の笑みで飛び跳ねる響。

……思い返してみると、こいつ、何かにつけて俺を巻き込んでくるんだよな。お泊まり会だって、たまに俺の家でやるし。未来が響の嫁なら、俺は響の犬か。まあ、本人に悪気がないのはわかってる。

 

「……ま、いいさ」

 

誰にも聞こえないように、ため息まじりに呟く。

 

――――――――――

 

三人で並んで歩き、商店街のアーチをくぐる。

休日の朝らしく、道は人でにぎやかだ。総菜屋からは油の匂い、八百屋では店主の威勢のいい声が響き、どこかの家からはラジオの音が漏れてくる。夏の始まりを告げる空気。蝉の声はまだ遠慮がちだ。

 

「じゃ、私はちょっと買い物してから帰るね」

 

未来が手提げ袋を揺らしながら言う。

どうやら今日は母親のお使いで来ていたらしい。そういえば朝も「出かける」って言ってたか。

 

「そうだったのか。てっきり『ふらわー』に用があるのかと思った」

 

「ふらわー? ……あ、昇のバイト先の?」

 

「まあな。洗剤切れてたし、ついでに貰ってく」

 

「昇はほんと働き者だね」

 

未来の笑顔に、俺は肩をすくめて返した。

心配かけたくないだけだ――なんて言葉は、口に出すほどでもない。

 

「……なあ、未来」

 

「ん?」

 

「……いや、なんでもねぇ」

 

ふと聞きたくなった。「寂しくないのか」とか、「ずっと響と一緒で疲れねぇのか」とか。けど言葉にならなかった。

代わりに、鉄板で焼けるソースの音を思い出す。じゅうじゅうと鳴る音は、俺にとっての安心の証だった。

 

「よし! じゃあ今日の昼は『ふらわー』に集合ね!」

 

響が勝手に決めて、未来が「うん」と頷く。

俺は「はいはい」と片手を振って流した。

……どうせ、断っても巻き込まれる。そういう関係だ。

 

――――――――――

 

それからの数日は、特筆するようなこともなく過ぎた。

学校へ行き、授業をこなし、くだらないことで響と未来が騒ぎ、俺は呆れ顔で付き合う。

ニュースやポスターで“ツヴァイウィングのコンサート”が話題になれば、自然と響が目を輝かせ、未来が微笑み、俺は「はいはい」と受け流す。

気づけば、コンサート当日は目前だった。

 

俺の生活にとって、それはただの「休日の予定」のひとつにすぎないはずだった。

――けれど、それが運命を大きく変える一歩になるなんて、このときはまだ、考えもしなかった。

 

「ねえ、昇」

未来が、歩調を合わせながらふと口を開く。

「この三人でいられるの、すごく嬉しいんだ」

 

「……なんだよ急に」

 

「だって……私、昇がもし別の誰かに取られちゃったらって考えると……少し怖いから」

 

隣で響が笑いながらも、妙に強い声で言葉を重ねる。

「そうそう! 昇はずっと、アタシたちと一緒にいればいいんだよ。……ね?」

 

肩を寄せてくる二人の笑顔は、いつも通りに明るくて優しい。

――はずなのに、なぜか背筋をかすかに冷たいものが撫でていった。

 

俺はその感覚を振り払うように、わざと軽口を返す。

「おいおい、勝手に人をペット扱いするなよ。俺は自由だ」

 

「……うん、自由。そうだよね」

未来の声が、不思議と耳に残った。




Q.ヤンデレタグあるし百合展開が無し、主人公を囲んでるけどよぉ… どういうことだぁ?

A.作者は男主人公は百合に挟まる気はないのに向こうから囲いにくる展開が好きだから

投稿する際、どういう感じにして欲しい?

  • 完成次第、すぐに投稿する
  • 毎週、木曜(大体朝の10時)
  • お任せする
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。