夕日が沈みきる手前――黄昏と夜の境目。
地下鉄構内。非常灯だけが点々と残り、空調の風が埃を運ぶ。
「はぁぁぁ!!」
【ガングニール】を纏った響が、拳でノイズを穿つ。
波のように押し寄せる群れを、踏み込み→ボディ→肘、蹴撃で崩し、前へ前へ。
奥で葡萄房のような塊が身を揺すった。
房の一粒ひと粒――紫の球が飛ぶ。
「きゃ!?」
床に触れた瞬間、閃光と衝撃。
天井が割れ、梁が悲鳴を上げ、瓦礫が雪崩のように落ちる。
響の視界がコンクリの灰色で埋まり――静止。
葡萄型ノイズは、賢しらにタタタと後退を始める。
瓦礫の山へ、別のノイズが集まりだした。
――が、今の彼女は二年前の彼女ではない。
ズドォォォォン!!
瓦礫の山が内側から爆ぜ、赤い残光が一本、一直線に抜けた。
響はそのまま前転で着地し、迫る個体の胸板を穿つ。
「流れ星、見たかった!!」
拳に、怒りが乗る。
三人で見るはずだった“今夜”を、またもノイズに奪われた苛立ち。
「未来と……昇と……三人で!!」
動きは、もう“へっぴり腰”ではない。
重心は低く、ステップは最短。
殴る→抜く→次。戦士のリズムで駆ける。
「流れ星を! 見たかった!!」
暴走列車のように群れを掻き分け、葡萄型を追い詰める。
相手は球を補充して逃走継続。足を止めない。
「あんたたちがぁ!」
床に落とされた球から、新手が噴き出す。
親玉はその陰に紛れてさらに逃げる。
「誰かの約束を壊し! 嘘のない言葉も、争いのない世界も! なんでもない日常だって!! 剥奪するというのなら!!」
響の瞳が赤く灯る。
群れに怖じず、むしろ刈り込む。
掴んで千切り、拳で貫き、進路を開ける。
葡萄型も爆発で迎撃するが、傷は通らない。
「ッ……待て!」
危険を察し、葡萄型は球を天井へ――
巨大な穴が穿たれ、外気が流れ込む。
親玉は壁面に取り付き、トカゲのように這い上がった。
このまま地上へ――被害が拡大する。
響が踏み切ろうとした、その時。
「……流れ星?」
暗くなった空を、青い一筋が横切る。
次の瞬間、地上に出た親玉が蒼の線で縦に割れ、霧散した。
「…………」
地上に降り立った“星”の正体は、【天羽々斬】の装者――風鳴 翼。
白刃の残響が、空気を一段下げる。
「……私だって、守りたいものがあります! だから!!」
響はもう一度、並び立つ意志を口にする。
翼は答えない。
蒼い刃だけが、静かに構えを下ろした。
「だからぁ? んで、どうすんだよ?」
「ッ!?」「え!?」
響と翼の耳に、第三者の声。
二人が振り向いた先、林の闇から白雪の装甲が滑るように現れた。
肩口から腰へ流れる意匠は鋭く、手には紫晶の鞭――結晶が脈打つたび、微かに金属音が鳴る。
翼は、少女そのものより装甲に目を奪われた。
「――ネフシュタンの……鎧!?」
二年前のライブ事件で失われたはずの完全聖遺物。
回線の向こうで二課の驚愕が重なる。
『ネフシュタンだと!?』
白装の少女が肩をすくめ、口角を吊り上げる。
「へぇ? ってことは、あんた、その鎧の出自を知ってるんだ?」
「二年前の……私の不始末で奪われたものを忘れるものか。 なにより――」
翼の瞳に、過去が閃く。
奏と過ごした日々。
苦しくも楽しかったレッスン。
そして、自分の腕の中で消えた親友。
「私の不始末で失われた命を、忘れるものか!!」
言い切ると同時に、翼は刀を正眼に。
少女は紫鞭を肩でほどき、蛇のように垂らす。
(――奏を失った事件の原因。そして奏が残したガングニール。
時を経て、二つは再び揃い、私の前に現れた。
この残酷は……私には、心地いい!)
「やめてください、翼さん! 相手は人間なのですよ!?」
響が背後から抱きつき、必死に引き止める。
「「戦場で何を馬鹿なことを(言ってんだ!?)!?」」
言葉が重なった。
二人とも、自分で少しだけ可笑しくなる。
「――むしろ、あなたとは気が合いそうね」
白装の少女が笑う。
「だったら仲良く戯れようか!」
紫鞭がバチンと空気を裂く。
翼は響を押しやり、跳躍で回避。そのまま旋回――
【蒼ノ一閃】
蒼の斬撃が走る。
だが、少女は鞭の面で角度を合わせ、弾く。
斬線は逸れ、樹間の闇へ流れた。
着地と同時に翼が踏み込み、刃を叩き込む。
紫鞭が絡み、鍔迫り合い。
一瞬の遅れ――腹部へ膝。
翼の体が半歩、後退する。
(これが……完全聖遺物のポテンシャル――!)
少女は間合いを切りながら、顎で挑発する。
「ネフシュタンの力だけと思わないでくれよな? 私のてっぺんは、まだまだこんなもんじゃねぇぞ!」
紫の残光が縦横に走る。
翼は受けず、避けに徹する。
刃先は常に内へ、足は外へ。
一拍でも遅れれば、鞭が絡み捕る。
夜気が震える。
蒼と紫が、森の狭間で火花を刻んだ。
「翼さん!!」
「あんたには用は無いんだよ。こいつらでも相手してな」
白装の少女が杖をひと振り。
緑色の線が地面に焼きつき、そこからノイズが隆起する。
「ノイズが操られている!?」
響の常識がきしむ。自然災害のように“湧く”だけの存在――そのはずが、目の前では意図的に発生している。
しかも現れたのはトーテムポールじみた怪異。こちらを見下ろして――
ブシャァ!!
「うそ!?」
粘液が噴き、響の身体を絡め取る。四肢が鉛のように重い。
一方、翼と白装の少女の戦いは、さらに速度を上げていた。
「あの子ばかり狙って! 私を忘れたか!!」
鍔迫り合い――同時に足払い、からの顔面蹴り。
だが少女は素手で掴み止める。
「お高く止まるな!!」
少女はそのまま翼を地面へ叩きつけ、遠心で投げ飛ばす。
踏み込み、ブーツの踵が翼の頬へ――
「のぼせあがるな人気者。誰も彼もが構ってくれると思うんじゃねぇ。
この場の主役だって勘違いしてんなら教えてやるよ。私の狙いは最初から“コイツ”を掻っ攫うことだ」
後方――粘液に囚われた響を、少女が指す。
「鎧も仲間も……あんたには過ぎてんじゃねぇか?」
嘲笑が落ちる。
「繰り返すものかと――私は誓った!」
翼が天へ刀を掲げる。瞬間、空が星の雨に変わった。
【千ノ落涙】
無数の蒼い刃が降り注ぐ。
少女は舌打ちし、大跳躍で射線を抜ける。
森はえぐれ、木は裂け、爆ぜる音と衝撃が重なる。
「そうだ! アームドギア!!」
響は身をよじり、掌を開閉。
――装者なら、武器が現れるはず。
(奏さんの代わりになるためには……アームドギアが必要なんだ!)
空気を掴むように、何度も手を振る。
「出ろ! 出てよ!! アームドギア!!」
……何も起きない。
ただ、虚ろな秒針だけが過ぎる。
「なんでよ……どうすればいいのか、わからないよ……」
その間も、前線の二人は響を無視して斬り結ぶ。
「鎧に操られているわけではない……ということは、この力は本物!?」
「ここでふわり考え事か? 死ねぇ!!」
横合いからの蹴り。翼はバク転でいなし、距離を取る。
少女は杖を構え直し、緑の照準を点す。着弾点に、次々とノイズが芽吹く。
「邪魔だ!」
翼は滑走で間を詰め、立ちはだかる群れを切り払いながら突っ切る。
刃と鞭、蹴りと肘。打撃の雨が交差する。
「っは!」
「ちょろくせぇ!!」
翼の投げナイフ――しかし、紫晶の鞭がはたき落とす。
「おら!!」
少女が跳ぶ。鞭の先に白い球――縁に黒い電撃が走る。
【NIRVANA GEDON】
「っく!?」
翼は太刀で受ける。
だが、こちらは欠片。あちらは完全。
桁の違う出力が、受け止めた刃の芯ごと押し砕く。
――轟爆。
白煙を割って、翼の身体が弾かれた球のように地面を転がる。
土埃が静まり、蒼の装甲にひびが走る音だけが、遅れて響いた
「ふん!まるで出来損ない」
「確かに・・・私は出来損ないだ」
翼はついて地面に倒れたまま悔しそうに言う
「この身を一振りの剣として鍛えてきたはずなのにあの日・・・無様にも生き残ってしまった。出来損ないの剣として生きてきた!!」
刀を地面に刺し杖代わりにして傷ついた体でなんとか立ち上がる
「・・・だが、それも今日までのこと。奪われたネフシュタンを取り戻すことでこの身の無念を取り晴らせてもらう!!」
「そうかい・・・脱がせられるものならッ!?」
少女がふらついている翼にトドメを刺そうと前に動こうとしたが全く動かなかった
そして、自身の影を見ると・・・そこには先ほど自分が弾き飛ばした翼のナイフが刺さっていた
【影縫い】
動こうにも自分の影が大地に縫われたかのように固まって動けない
「月が覗いているうちに・・・決着をつけましょう」
翼の目には覚悟に染まった目をしていた
・・・そして、少女は翼が何をしようとしているのか察してしまった
「歌うのか・・・絶唱を!?」
「防人の生き様!見せてあげる!!」
刀を前に構え叫ぶ
響は口を開けたまま絶句してしまう
「やらせるかよ!好き勝手に!!」
少女は逃げようとするが影縫いのせいで身動きが取れない
「あ・・・あぁ・・・」
響は翼が何をしようとしているのか知っている
それは2年前・・・ライブ会場にノイズが襲来し奏と翼がシンフォギアを纏って戦った。だけど、奏のガングニールの破片が響の心臓付近に刺さり意識が沈む中、奏が最後に放った美しい歌・・・『絶唱』。
絶唱とは装者の負荷を省みずにシンフォギアの力を限界以上に解放し増幅したエネルギーを、アームドギアを介して一気に放出する技。しかし、使用後は生命の危機に瀕するほどの反動が伝わり奏はそのせいで肉体残さずに消えてしまった
(翼さんが……あの時と同じことを!)
響はもがく。粘液が軋む。
何度、肩を振っても拘束は解けない。
(どうしたら……どうしたらいいんだよ!!)
目の前で止めるべき人が、踏み出していく。
自分は、届かない。
(動け! 皮膚が剥がれようとも! 腕が取れようとも!!)
鼓舞は虚しく、トーテムのノイズが道を塞ぐ。
このままでは――翼が死ぬ。
(何か! どうすれば……!!)
その時、脳裏に声が落ちた。
『ま、なんかあったらいつでも助けを呼べよ? 地球の裏からでも助けに行ってやる!!』
幼馴染――昇の、軽くて真っ直ぐな声。
それは保証にはならない。ただの口約束かもしれない。
けれど、胸の底で何かがほどけ、涙が一粒、地面へ落ちた。
「助けて……昇……」
その雨にも負けそうなくらい小さな声は虚しく消える
ーーはずだった
『諱先?悶→蟇セ髱「縺玲悴譚・繧剃ス懊l縲らスェ縺ィ蜷代″蜷医>閾ェ謌代r遒コ遶九○繧』
とても歌とは思えないほど不協和音で悲鳴のようで悲しい歌が聞こえた
【魔弾 一発目】
ズドォォォォオン!!
「っな!?」
絶唱のためにエネルギーを貯めていた翼は後少しで解き放たとうとした瞬間、響を捕獲していたトーテムポールのノイズを全て巻き込んで一発の銃弾が翼とネフシュタンの少女に迫っていた
弾丸は二人の間の地面を抉り二人とも吹き飛ばされてしまった
「何者、っがはがは!?」
絶唱を中断した代償かエネルギーの行き場がなくなり翼は口から血を吐き地面に倒れてしまう
しかし、絶唱を使わなかったおかげか動けはしないものの意識は保っていた
「え・・・誰?」
トーテムポールのノイズから解放された響は銃弾が発射されたであろう方向をみる
そこにいたのは・・・
灰色の服に金色の刺繍がされた青い外套、背はおよそ170cm以上はあるだろう。その背丈並みに巨大な狙撃銃。そして、何より顔が『黒い炎』とそこから見える青白い炎が瞳のように覗いていた
『現場にて新たなる反応を感知!・・・・・・UNKNOWN!?』
『馬鹿な!?UNKNOWNは大臣と共に護衛されているはずだ!?』
『司令!先ほど調査部からの報告によると大臣は射殺されているのが確認され、UNKNOWNも行方不明と判明しました!!』
司令室では突然現れた存在と二課にとって重要人物である広木防衛大臣が射殺されたことにより混乱していた
本来なら大臣が射殺された後、襲撃グループが犯行声明を出す予定だったが偶然出会した少年により全滅したためようやく通行人が見つけ現状に至った
『くそ!大臣のことは一旦後回しだ!今はUNKNOWNとそれの適合者について現場に向かうぞ!!』
弦十郎と数人の部下は司令室を後にした
そして、出て行ったと同時にディスプレイに砂嵐のようなノイズが走り・・・聖遺物の名前が表示されるところにはUNKNOWNではなくこう書かれていた
objectclass:HE 【魔弾の射手】
と一瞬無機質にそう書かれ、砂嵐と共にUNKNOWNに戻った
本当は魔弾の射手の戦闘シーンを書きたいけど確定で8000文字行くからやめた(てか、作者にまた8000文字を書く元気がない)