幼馴染たちが美しく歌う中、俺は哭き叫び狂い堕ちる   作:零城

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ムルソーのカセッティ人格だと!?てっきりシンクレアにカセッティ人格来るかと思ってた
てか、配布アナウンサーは放送のやつかい(これヂェーヴィチ協会の鞄のボイスじゃね?)


第十九話 複雑な感情

朝焼けが水面を薄く染める。城の外れ、池に張り出した桟橋の先端で、クリスは無言のまま立ち尽くしていた。足元の板は夜露に濡れ、靴裏がきしむたび、冷えた音が朝の静けさを裂く。

 

(・・・完全聖遺物の起動には相応のフォニックゲインが必要だとフィーネは言っていた)

 

片手に提げたソロモンの杖が、薄い光を受けて鈍く反射する。昨日の光景が、容赦なく脳裏を逆再生する。響の確保とデュランダル強奪――命じられた任務は、あの暴走と、昇の乱入で瓦解した。

 

(私がソロモンの杖を扱えるように半年もかかったのに——あいつはあっという間にやり遂げた。そればかりだけじゃなくぶっ放してきやがった)

 

歯噛みする。響に対して感じたのは「追いつかれた」悔しさだった。けれど、胸の奥を真っ黒に染めるのは別の感情――昇への劣等感だ。自分と同じ完全聖遺物を纏ってなお、あの殲滅力、あの破壊の伸び――悪魔が地上に降りたみたいだった。

 

「この私に身柄の確保を依頼するくらいフィーネはアイツにご執心というわけかよ・・・」

 

杖を強く握り込む指先に、かつての記憶が這い上がってくる。戦火の中で両親を失い、攫われ、売られた。二度と触れたくないはずの過去が、朝の冷気とともに皮膚の下まで忍び込む。

 

「結局・・・私はひとりぼっちになるんかよ・・・」

 

風が頬を撫で、乱れた前髪をそっと押し戻した。視線を空へ滑らせたそのとき、背後に気配。黒のドレスをまとったフィーネが桟橋の付け根に佇んでいる。

 

「わかっている。自分に課されたことくらいは!こんなのに頼らなくてもアンタの言うことくらいやってやらぁ!!」

 

クリスはソロモンの杖を放る。フィーネは言葉ひとつ漏らさず、難なく受け止めた。

 

「アイツなんかより優秀だってこと見せてやる。私以外に力を持っている奴は全部この手で打ち騙してやる!!」

 

「・・・そう。ま、死なないようにね」

 

踵を返し、城へ消える背中だけが朝靄に流れていく。

 

「・・・・・・なんなんだよ」

 

肩越しに吐き捨てる。叱咤でも抱擁でもなく、ただの一言。昨日からずっと、フィーネは不自然なまでに機嫌が良い。自分が響の暴力で満身創痍になっていることなど、取るに足らないと言わんばかりに。彼女は言った――戦いの後、男は響を撃ち、そして自分を撃って死んだのだと。

 

「ッチ」

 

舌打ちが木霊する。初対面で自分をためらいなく撃った奴が、なぜそんな最期を選んだのか。理解などしたくもない。だが、フィーネはそんな因果に興味はないらしい。気味の悪い笑みで「肉片を回収した」とだけ。

 

 

『なぁ、フィーネ。なんでそんなに上機嫌なんだ?』

 

デュランダル強奪失敗した日の夜、報告するためにフィーネの所にいた

自分から問いかけるのは、珍しい。それでも、聞かずにはいられなかった。

 

『あぁ・・・いいわ、教えてあげる』

 

机上に置かれた透明カプセル。中で、何かの肉片が静かに揺れる。フィーネはそれを、母親が乳児をあやすような眼差しで見下ろしていた。

 

『これ、()()()()()()

 

『・・・は?』

 

耳が拒む。

 

『ふふ、彼が自害した時に吹き飛んだ脳とか骨を回収するの結構大変だったのよ?』

 

白い指先がカプセルを撫でる。うっとりと、慈しむように。

 

『・・・そんなもん回収して何すんだ?』

 

『彼はUNKNOWNと融合した全身が完全聖遺物になったようなものよ。その一部ということはこんな肉片の一部でも実質、装者がシンフォギアを展開する程度の聖遺物のようなものよ』

 

背筋が冷える。翼や響が、欠片にフォニックゲインを注ぎギアを展開する――あの理屈を、死体の残滓で再現できると言うのか。

 

(本当は捕まえようとしたアイツよりあっちの方に興味が出たのか?)

 

 

 

 

 

 

「っくそ!!」

 

足元にあった小石を蹴り飛ばす

 

「ッチ、なら勝ちゃぁいいんだろ!」

 

クリスはフィーネに認められたいがためにフィーネの元へと帰っていった

 

 

________________________

 

 

 

っは、っは、っは──。

 

リディアンの運動場。朝の乾いた空気を切り裂くように、響と未来が体操着でトラックを踏みしめる。靴底が砂を噛むたび、一定のリズムで呼吸が荒くなる。

 

(…怖いのは《デュランダル》の暴走そのものじゃない。ためらいもなく、ネフシュタンの子と昇に振り下ろした《自分の手》だ。私が——いつまでも弱いばっかりに)

 

胸の奥に刺さった棘は、走るほどに疼く。

 

(私は…ゴールで終わっちゃダメなんだ! もっと遠くを目指さなきゃいけないんだ!!)

 

未来がテープを切って減速した瞬間、隣を風が抜ける。響が加速したまま、もう一周へと脚を運んでいく。いつもは並んでいた背中が、今日は遠い。未来の胸に、ゆっくり濃い影が落ちた。

 

* * *

 

「もう、張り切りすぎよ!」

 

「えへへ、ごめんね。考え事をしていたらつい」

 

ランを終えた二人は、寮の浴場で肩まで湯に浸かる。湯気が白く立ちのぼり、ほどけた呼吸がタイルに溶けていく。

 

「やっぱり響は変わった子」

 

「日曜の朝なのに付き合わせちゃってごめんね」

 

「ううん、私も中学時代を思い出して気持ちよかったぁー」

 

「あれだけ走ったのに!?やっぱ流石だよ、元陸上部は。こっちはヘトヘトのトロトロだよ」

 

湯ぶねの縁にもたれる響の表情に、ようやく柔らかさが戻る。未来はその顔を見て、小さく安堵の息を漏らし、そっと隣へ寄った。

 

「響って・・・リディアンに入ってから変わったね。前まで何かに努力するなんてなかったし」

 

「そうかな?自分じゃ変わったつもりはないけど?」

 

「変わったよ!だって、なんか最近の響って筋肉とかつき始めたし。あ、よく見たら傷だらけじゃない!?どうしたの?こんなところにも?」

 

「あ、ちょ、や、やははは!?ちょ、やめてやめて!?」

 

未来の指先が遠慮なく触れて、響はくすぐったさに身をよじる。白い湯気の向こうで、笑い声が跳ねた。

 

「ねぇ、今度【ふらわー】でお好み焼きを奢ってよ。3人で、ね?」

 

「そ、そりゃ、おばちゃんの渾身の一枚はほっぺの急降下作戦って言われるくらい絶品だけど」

 

「それじゃ、契約成立ね」

 

「でも、そんなんでいいの?せっかく昇もいるんだよ?」

 

「そういうのがいいの♪」

 

“あの日”から、未来の胸にはグレーの雲が居座っていた。けれど、先日の夜に昇から電話が来た。唐突にバイト先から姿を消し、音信不通――あれこれ最悪の想像をしていたからこそ、その声がただ嬉しかった。

 

「・・・でもよかった。昇が単に自転車で盛大に転倒して入院してたなんて」

 

「そ、そうだね」

 

響は視線を泳がせ、曖昧に相槌を打つ。未来には「配達中に転んで入院、さらにノイズの災害で連絡が遅れた」と伝えてある。二課が用意した無難な説明だ。胸の奥に小さな棘がまた疼く。

 

「全く、昇の運転ってすごく荒いから気をつけてって言ってたのに」

 

「・・・まぁ、それはそうよね」

 

響の脳裏に、爆走する配達姿が浮かぶ。ママチャリで平然とドラフトをかける、あの無茶苦茶。見ているこっちの心臓に悪い――そう思いながらも、どこか誇らしい。湯面に映る灯りが揺れて、二人の横顔をやさしく撫でた。

 

「まぁ、それはそれとして少し()()()しないと、ねぇ?」

 

「・・・・・・ねぇ、やっぱり未来、怒ってない?」

 

嬉しいのは確かだが、長い間連絡の一つもくれなかったので電話越しに未来がすごく怒った

うっすら般若のお面が見えるほどのオーラを出す未来と子犬のようにビクビクする昇の声が今でも鮮明に覚えている

 

「・・・・・・・・・・・・・・・怒ってないよ♪」

 

いや、怒っている人ほどそう言うでしょっと響は言いたかったが喉まで出たそれを飲み込んだ

 

 

 

                       

 

 

 

 

太陽が真上からわずかに傾きはじめたころ、響のスマホが震えた。ディスプレイに表示された名は「緒川さん」。表向きは翼のマネージャー、実際は二課のエージェントだ。

 

「え、私が!?」

 

『ちょっと手が離せないのですよ。すみませんがお願いしてもよろしいでしょうか? 昇さんにも頼んでいるので』

 

「わかりました!!」

 

元気よく応じて通話を切ると、背後に未来が立っていた。

 

「あ、ごめん未来! どうしたの?」

 

「響、これから買い物に行くけど一緒に行かない? その後に【ふらわー】に行こう?」

 

「…ご、ごめん。たった今、用事が入っちゃって」

 

「——そっか」

 

未来の声がわずかに沈む。響は眉を寄せ、肩を落とした。

 

「せっかく未来が誘ってくれたのに、やっぱり私って呪われているのかな」

 

「ううん、わかった。じゃあ、また今度」

 

「…うぅぅぅぅ」

 

「気にしないで。私は図書室で借りたい本があるから、今日はそっちにする」

 

「…ごめんね」

 

短く頭を下げ、響は駆け出した。目指すは、翼のいる病院だ。

 

* * *

 

リディアンに隣接する病院は、校門から走って数分。自動ドアを抜けると、消毒液の匂いが鼻を刺す。案内表示に従って階段を駆け上がり、指定された病室の前で一度立ち止まった。手には小さな花束。深呼吸で心拍を落ち着かせ、ノブに手をかける。

 

「すぅ——はぁ……失礼します」

 

緒川さんの話では昇も呼ばれている。見当たらないが、先に中にいるのかもしれない。そう思いながら扉を開いた——

 

「翼さん………………は!?」

 

目に飛び込んできた光景に、響は息を呑んだ。花束が、指先でかすかに震えた。

 

—床に脱ぎ捨てられた衣類

——捨てるのが面倒くさくなったのかゴミ箱周辺に散らばってたらゴミたち

———何日も水を変えていないのか萎れている花

 

 

 

そしてなにより

 

 

 

「チャウンスヨ、コレハシカタナイトイウカ………」

 

「・・・辞世の句は読み終えたか貴様?」

 

そんな汚部屋なのにベットに座ってゴミを見るような目で睨む翼と土下座をしている昇がいた

 

 

 

 

時間は響が来る十分前くらいまで遡る

 

 

 

 

「結構早く着いてしまったな」

 

翼の病室の前に昇が立っていた

無事、二課に配属され身柄の安全は確保できたとはいえ命令は守らないといけない

今日は緒川さんから翼さんのお見舞いを頼まれた

 

「・・・やべ、なんて言お」

 

うぅぅと気まずい顔になる

翼が入院した結果はネフシュタンの少女との戦闘の際に絶唱を使おうとしたが乱入した魔弾の射手により未遂で終わりエネルギーの行き場を失い倒れた後に黒い炎で火傷をしたからであった

あの時は制御出来ておらず自分の意思でやってはいないとはいえ怪我をさせてしまったのだから入ったらまず謝罪をするべきだろう

 

「ふぅ・・・失礼しまー・・・ふぁ!?」

 

入った瞬間に見た光景が汚部屋で昇は絶句のあまり立ち尽くしていた

部屋を間違えたのか?と思い部屋を出て番号を確認するが翼の部屋で間違えない

 

「え、ちょ、えぇ?」

 

目をパチクリとし呆然とする

あの完璧に見える翼さんが?と、あまりの光景に混乱しそうになる

 

「・・・うん、まぁ、一旦落ち着くか俺」

 

とりあえず中に入る

脱ぎ捨てられた衣類を股越しながら持ってきた換えの依頼などを机の上に置く

 

「でも、流石に汚いな」

 

あんな完璧人間でもこういうところはあるんだなと変な安心感を覚えるが・・・

 

(でも、この光景を見たら響はどう思うんだろ)

 

あのツヴァイウィングオタクの響だ

翼に会えること自体、とても嬉しいことだろう。しかし、このゴミ部屋を見たらどう思う?

ショックするだろうか?失望するだろうか?

響だってこんな光景は見たくないはずだ。最悪、ファンやめますとか言い出さん

 

「よし、掃除するか」

 

響を泣かせないためにも昇の行動は早く、まず衣類の散乱が目立つのでそちらを先に片付けることにした

 

「こんなに汚いとか・・・いつもどうしてんだろ?・・・え、まさか緒川さんが?」

 

一人でそんな考察をしていく

黙々とこなしていき、衣類は集め終えてゴミ袋を片手に飲み終えてそのままなペットボトルなどを入れていく

来てからおそらく数分は経過した。リディアンと病室は隣同士だからあと数分もすれば響がやってくるだろう

その前には終わらせる

 

「さーてっと、あとは下着たちだけ・・・ん?」

 

衣類を畳もうと手を伸ばした時だった

ガシッと掴んだそれは服にしては細く軽い

 

「—————あ」

 

適当に衣類の山に手を突っ込んだが何を掴んだのかと確認してみるとそれは・・・『翼のブラジャー』だった

見た目の割には可愛らしいブラジャー、普通の男性ならすぐさま恥ずかしくなったりとそれらしい反応をするのだが昇は致命的な判断をしてしまった

 

 

「なんだ翼さんのブラジャーか」

 

 

昇はなんとも思わずにブラジャーなどを片付け始めた

そう、この男、小さい頃から『こういうのには慣れている』のである

原因としては響と未来がブラジャーをつけ始めたという時期に幼馴染の関係が二人が見せてきたのが始まりである

最初は昇も顔を赤くして見せんなと怒ったがそれからはというものよく家に泊まりに来たりで見慣れてしまったのだ

 

「いやー、スポーツブラみたいなのつけるイメージあったけど意外と可愛いとこはあるんだな」

 

しかし、二課に所属するまで壮大な出来事を体験した後のせいで気が緩んでしまったのか昇は無意識に禁忌の言葉を言ってしまった

 

 

 

「翼さんの胸って響より小さいんだなー」

 

 

 

その何気ない一言、部屋には自分以外誰もいないからと思い込んでいた

だが思い出して欲しい・・・この部屋の主人は誰のかと

 

「・・・・・・っな!?」

 

「・・・・・・・・・あ」

 

無機質な音と共に扉が開き翼が帰ってきたのであった

完治し数日後には退院出来るだろうと医師から判断され安堵した雰囲気が部屋に帰るとそこにいたのは見知らぬ男が自分のブラジャーを片手に座っていた

昇と翼の視線がぶつかり合う

今の昇はどう見ても不審者であった

 

「な、な、な!?」

 

翼の顔はみるみる赤くなった

それは汚い部屋やブラジャーを見られたことに対する羞恥だけでなく胸に関して馬鹿にされたような気がすることに対する憤怒が混ざったような顔だった

 

「——あ、ち、違うって!?」

 

昇もまずいと感じたのか必死に弁明をしようとする

しかし、戦士として鍛えられた翼の方が速く怪我をした身なのに軽々と足を振り上げ・・・

 

「この変質者がぁ!?」

 

「どぅはぁ!?」

 

翼の『踵落とし』が昇の脳天へ落とされた




アンケート結果、死んだ蝶の葬儀多くて草
やっぱ害悪でもカッコよかったら許されるんやな

次のアンケートです
今度は『TETH部門』・・・の予定でしたがTETHクラスはちょこちょこと出してはくれたのですが全然足りないので集まり次第、アンケートを取ることにしました
てなわけで今回はアホみたいにあった『WAW部門』をします!!
ちな、黒い森の3羽ですが終末鳥を出すために特別枠として出すことにしました

新しいアブノマ、どれがいい?『WAW部門』(今回は20票以上入ったら出すことにします)

  • 赤ずきんの傭兵
  • 軽蔑の視線
  • 縛られた王
  • 四百輪の薔薇
  • 魔法少女(全員)
  • 夢見る流れ
  • 夢貪る濁流
  • 次元屈折変異体
  • 蒸気運搬機械
  • 大きくて悪くなる狼
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