本来は本家のさすらいの狐みたいに四足歩行のやつですが戦闘描写とか表情表現を優先したいので侵食狐雨イサンみたいな感じでお願いします(侵食イサンより背中から大量の傘が生えている感じ)
響と昇はその後それぞれ別れ、昇は了子の実験補助――名目は手伝い、実体は被検――へ。
響は重い足取りで寮の自室へ戻った。
扉を開け、そっと中を覗く。
未来はベッド脇のランプだけを点け、膝に本を置いたままページを見つめていた。
「……おかえり」
「……うん、ただいま」
空気が硬い。
“用事がある”と嘘をついて約束を反故にした上、命懸けの秘密を抱えて戻ってきたのだ。
当たり前だ、と響は唇を噛む。
「入っても、いい?」
「どうぞ。あなたの部屋でもあるでしょ」
淡々。
いつもなら「遅かったね」と寝る支度に誘ってくれるのに、今日は体温のない言い方だった。
「あ、あのね――」
「何? だいたいのことならあの人たちに聞いたわ。今さら聞くこと、ある?」
視線は本から動かない。
「み、未来……」
「……嘘つき。隠し事はしないって、約束したのに」
胸の奥が痛む。謝りたいのに、言葉が出てこない。
――『未来に、誠心誠意、謝っとけ』
昇の声が頭の中で反響する。
響は深呼吸をひとつ。勇気を喉に押し込む。
「未来、あのね。聞いてほしい――」
「どうせ、また嘘つくんでしょ?」
刃のように冷たい一言。
夫婦喧嘩のあとのリビングみたいな気まずさが部屋に満ちる。
響は必死に続けようとしたが、未来は本を閉じ、そのままベッドにもぐりこんだ。
「……ごめん」
それだけを置いて、響は扉へ向かう。
ふとピアノの上――写真立てが目に入った。
三人で撮った、あの夏の日。
響に抱きつかれて照れる未来、その後ろで苦笑いする昇。
(……あの時は、あんなに笑ってたのに)
ランプの光が写真のガラスに細く揺れ、響の顔を歪ませた。
一方その夜。人気のまばらな公園には、間延びした蝉の声と街灯の唸りだけが残っていた。ベンチの背もたれには落書き、砂場は風に削られ、ブランコは錆びた鎖をかすかに鳴らす。
「……なんでだよ、フィーネ」
クリスは両手をポケットに突っ込み、アスファルトの継ぎ目を無闇に蹴りながら歩く。命令は“立花響を捕らえよ”。結果は、逆に正体を晒し、押し負ける寸前。胸の奥で何かが軋む。
——『話し合えばきっと分かり合えるはず! だって私たち、同じ人間だよ!?』
昼間の声が耳朶に焼き付いて離れない。クリスは舌打ちし、奥歯で苛立ちを噛み砕く。
「私は……“戦う意志と力を持つ人間”を叩き潰して、火種を消すんだろ……」
言い聞かせるように呟いたときだ。
「うぇぇぇん……」
「泣いたってどうしようもないだろ!」
街灯の下の長椅子に、小さな兄妹がいた。妹は鼻を真っ赤にして泣きはらし、兄は不器用に背中をさすっている。
「おい!弱い者いじめしてんじゃねーよ!」
反射で間に割って入り、拳を肩の高さまで引く。が——。
「お兄ちゃんをいじめるなっ!」
泣き顔の妹が、必死に兄の前へ。拳は空中で止まり、クリスの眉が跳ねる。
「……は? お前、さっきまで兄ちゃんに——」
「ちがうもん!」
兄が慌てて首を振った
「父ちゃんがいなくなって……探してたら、妹がもう歩けないって言うから、ここで休んでて……」
「迷子かよ。だったら最初っからそう言えっつの」
「だって……だってぇ……」
「……あーもう! メソメソ泣くな!」
妹の涙が増幅し、今度は兄が一歩前に出て、クリスを睨み上げる。
「妹を泣かせるな!」
この押し問答は不毛だ——と判断したクリスは、頭をがしがし掻き、肩で息をつく。
「わかった!探す!一緒に探す!だから静かに歩け!」
夜の街は、完全に眠らない。コンビニの白い光、遠くの国道のタイヤノイズ、マンションのベランダから漏れるテレビの青。クリスは左右の確認を怠らず、危険が少ない歩道と人通りのあるルートを選ぶ——他人に厳しいクリスだが子供には別のようだった
小さな手が、指先をつつ、とつまむ。振り返ると、妹が不安げに見上げていた。クリスは渋い顔のまま、そっとその手を握り直す。反対側では兄の手首も掴んで、歩調を小さく合わせる。
歩きながら情報をそぎ落とす。横断歩道の信号が点滅を始め、三人は小走りになる。
「〜♪ 〜〜♪ 〜♪ 〜〜〜♪」
無意識の鼻歌が、夜気に紛れて零れた。自分では気づかない。妹がクリスの横顔を穴があくほど見つめる。
「……なんだよ」
「お姉ちゃん、歌、好きなの?」
間。クリスは前だけを見て、足を止めない。
「……歌なんて、大嫌いだ」
吐き捨てるように言って、少しだけ声を落とす。
「——特に、“壊すこと”しかできない、私の歌は」
言葉の尻は、夜風にほどけて消えた。交番の赤いサインが角に見える。クリスは手を握る力をほんの少し強め、歩幅をまた子どもに合わせた
「——あ!」
「父ちゃんだ!!」
交番の扉が開き、背広姿の男性が飛び出してきた。男の目が兄妹を捉えた瞬間、肩の力が抜け、胸を撫で下ろす。
「お前たち、どこに行ってたんだ」
「お姉ちゃんが一緒に迷子になってくれた!」
「違うだろ? 一緒に父ちゃんを探してくれたんだ」
父親はクリスへ深々と頭を下げる。
「まったく……すみません。ご迷惑をおかけして」
「い、いや。成り行きだから」
「ほら、お姉ちゃんにお礼は?」
「「ありがとう!!」」
兄妹はそろって腰を折り、満面の笑みで礼を言う。小さな手がまた互いの袖を掴むのを見て、クリスはぼそりと呟いた。
「……仲いいんだな、お前ら」
父親は苦笑し、子どもたちの背を軽く押す。
「そうありたいもんだ。なあ、どうしたら仲良くできる?」
見つめられた兄妹は顔を見合わせ、同時に抱きつく。
「そんなのわからないよ。いつもケンカしちゃうし」
「いつもケンカしちゃうけど、仲直りするから仲良しー!」
答えは拍子抜けするほど単純で、残酷なほど眩しい。クリスは鼻を鳴らし、踵を返した。
「……チッ。やってらんねーよ」
夜風が前髪を揺らす。背後で「ありがとうございましたー!」という明るい声が遠ざかっていく。クリスは手をポケットに突っ込み、街灯の影に溶けるように歩き出した
——同時刻、二課・さらに地下、了子の研究室。
(装着者の身体機能を引き上げ、体表をバリアでコーティングしてノイズの侵食を遮断。同時に、“別位相”の存在であるノイズの在り方を、インパクト由来の固有振動で調律し、この世界の物理法則へ強制固着——位相差障壁を打ち砕く。それがシンフォギアの特性……そして、限界でもある)
壁面を埋める計器のランプだけが、暗い室内を脈打つように照らす。了子は中央のガラス張りのオフィスに腰を下ろし、カップの縁に唇を寄せた。
(解放されるエネルギーは容赦なく装者を蝕む。極点が“絶唱”。人と、シンフォギアを成す聖遺物との間に横たわる隔たりが消えない限り、負荷の本質は軽減できない——私の“サクライ理論”が示した通りよ)
コト、とカップを置き、視線を壁へ移す。そこには立花響のスチルと解析写真が、埋め草の余白すら残さず貼られていた。
(ただ一つ、ことわりを覆しうる可能性があるとすれば——立花響。人と聖遺物の“融合体”第1号)
モニタには、天羽奏と風鳴翼のライブ・フォーマットを模した起動実験ログ。観客から引き出され、さらに引き上げられたゲインによって、ネフシュタンは“条件つきの成功”を得た——そう記録が告げる。だが別窓には、たった一人で完全聖遺物《デュランダル》を起動した、少女の輝度過多な波形。
(人と遺物が一つになることで、さらなる“パラダイスシフト”が誘発されるのは自明。……やがて、人が負荷なく絶唱を口にし、聖遺物の力を“言の葉”で自在に渡れるようになれば——それは、遥か古の“カストディア”が課した呪縛を断ち切った証左。真なる言の葉で語り合い、“ルルアメル”自らの手で未来を築く時代。過去からの超越、ね)
薄闇に、笑みが浮かぶ。日常に飄々と貼りつける人当たりの良い微笑ではない。冷たく、正確に目的だけを映す、獲物を待つ刃のような口元——そのまま、了子は新たなウィンドウを開き、響の波形に指先でトレースを引いた。
(さあ、もう一押し。理論を現実へ)
了子は胸ポケットから一枚の写真を抜き取り、指先で縁をなぞった。写っているのは——立花響ではない。蒼月昇の顔だ。
(イレギュラーが立花響だとしたら、彼はさながら“ジョーカー”。手札の秩序そのものを書き換える切り札。切り札にもなるし最悪なカードにもなる)
卓上のホログラム・ウィンドウには、今日採取した蒼月昇の生体サンプルと行動ログが並ぶ。映像では、昇が次々と“姿”を変え、訓練用ターゲットを粉砕していく。
青黒い焔を曳く狙撃手——《魔弾の射手》。
両腕を欠いたまま、背から位相刃を伸ばして空間を裂く——《道を失った乗客》。
そして今回、新たに観測された狐耳と尾、雨具めいた装束、傘群の生成——《さすらいの狐》。
(天羽々斬やガングニールのように“装甲を纏う”のではない。完全に聖遺物が肉体に《憑く》——役柄そのものを書き換える様式)
北極海の海底から発見されたUNKNOWN。聖遺物に精通する自分ですら、長らく「意味不明」と切って捨てるしかなかった代物だ。だが昇と出会ってからというもの、あれは今までが嘘のように多相の顔を見せている。
(立花響が“鳳凰の雛”だとすれば、蒼月昇は“光の種”。——何にでも育ち得るが、同時に何にでも変質し得る)
キーボードを叩きながら、了子は要点をメモへ落とす。響の軌道はある程度予測が立つ。対して昇は完全に未知だ。満開の桜になるのか、花畑を呑み荒らす雑草の群生になるのか——判別不能。
(第一に、なぜUNKNOWNは“造られた”のか。聖遺物の欠片を束ねて新たな聖遺物を作るなど正気の沙汰ではない。讃美歌にヘビメタと演歌を同時ミックスするようなものよ。破綻は必然)
ホログラムに波形を重ねる
(ガングニールや天羽々斬とUNKNOWNの起動波形は明らかに異なる。——さしずめ、周囲が完成品を積み上げる中、ひとつだけ“焦って”拵えられた不完全品。寄せ集めの合唱団)
昇の供述も添えておく。UNKNOWNの内部には“幻想体”と呼ばれる意思存在が共生し、ZAYN/TETH/HE/WAW——そして最上位ALEPHと危険度が振られている。現時点でHE級を三体確認。
コーヒーを一口。冷えた苦味が舌に残る
(制御は拙い。過去には幼馴染の立花響を誤射寸前まで追い込んだ。精神的な支柱は強固ではない——揺らせる)
利用価値は高い。だが同時に、二課としては最大級の警戒対象——それも事実。
(本来なら“実験”名目でいつでも拉致・隔離できる。——問題はALEPHだ)
映像を切り替える。ネフシュタン装者(雪音クリス)との交戦。デュランダル暴走下の響との衝突。どちらも彼我ともに未熟であったにもかかわらず、HE級の顕現だけで“完全聖遺物”と互角以上に渡り合っている。
(恐らく、HE=単独で完全聖遺物と同等かそれ以下。WAWは複数装者の同時対処をも凌駕。では——ALEPHは?)
了子は小さく息を吐いた
(世界のルールを書き換える規模——十分あり得る)
問題は発現条件だ。いつ、どの情動勾配で、どの位相鍵で顕現するのかが分からない。二課やこの街がどうなろうと構わないが、世界規模の巻き込みは計画の前倒しになる——それだけは避けたい。
(当面は“揺らし方”を精密化する。彼の悲鳴の歌——帯域も、言語化不能の断末魔も——すべて鍵になる)
写真の昇を、壁一面の響のパネルと赤い糸で結びながら、了子は薄く笑った
(雛を飛ばす風と、種を芽吹かせる土壌。どちらも——私が用意してあげる)
了子——フィーネにとって響は可能性の塊なら、昇は自身の夢の答えのような存在だ
単独で完全聖遺物を押さえるほどの出力・・・もはや『常時絶唱をしている』に等しい
(ま、やはりそこも彼がまだ未熟である証。UNKNOWNの使用後は必ず頭痛や幻聴などが確認されている。多分、危険度が上がるほど後遺症もひどくなる)
HEクラスで生活に支障が出るほどの幻聴などが聞こえる
ALEPHクラスにもなると最悪、装者の精神や肉体が崩壊するであろう
(今回の実験によるとUNKNOWNには連続使用限界というものがあると判明した。魔弾の射手と道を失った乗客を交互に変わらせたところ6回で限界が来てしまった)
内部のエネルギー分配や消費量から見るにZAYNはほぼ無限でリスク無し、TETHが12回程度でめまいなどの一時的な後遺症、WAWが3回が限界で体が変異したりなど治らない可能性のある損傷が生まれ・・・ALEPHは1回のみで確定で死ぬなどリスクが高すぎる何かが起きるだろうと了子は予想する
限界になると他の装者が絶唱を行った時と同等——いや、その数倍もの苦痛が襲いかかるだろう
(・・・せめて、いい答えだけは残してもらいたい)
今回の戦闘で『黎明』という彼の肉片から作られた兵器のような存在から得たデータも十分なものだった
(次は・・・そうね、始まりや夜明けを意味する黎明なら順調に進んでいるとして『白昼』とでも名付けようかしら)
読者の皆様にご相談があります
単刀直入に言いましょう
そろそろ、昇の聖遺物であるUNKNOWNっていう名前・・・変えたくね?
てなわけで感想にて昇の聖遺物の正式な名前を決めようと思います(複数あったらアンケートを取ります)