モンスターハンター トラという猫   作:ガノトトスの炭火焼き

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※今回からモンスターハンターの世界観を崩さない程度のオリジナル食材(調味料含む)が出てきます。


第4話 『釣り猫』のお弁当

 集会浴場でさっぱりとしたトラは今朝釣った大食いマグロを調理するためにユクモ村の商店で調味料や付け合わせを吟味していた。

 

「ニャム…火山椒の実のピリッとしたのをアクセントに…うーんでもニャァ…あ、こっちにドスマツタケと特産タケノコがあるニャ!山菜マツタケご飯を喰らいながらの大食いマグロの赤身かマグロステーキ…!!ニャァ…!いいニャァ今回はそうしようかニャ」

 

 その後も目を輝かせながら「アレとコレと」と次々と食材を購入した後、滞在している宿で厨房を借りて調理を始める。

 

「さてと…まずは高玄米を仕込みからニャ」

 

 備え付けの大きな鉄釜に水を張り、で高玄米をジャクジャクと研いでは水を入れ替える。もちろんトラの毛が入らないようにヨツミワドウの皮で作った専用の手袋をして丁寧かつ迅速に、そして均等に。少し水に白さが残るくらいに研いだ後、もう一度水を張り、彗星岩塩を砕いて粉にしたもの、しょうゆ、みりんに龍ノコハク酒を入れて混ぜ、隠し味に竜ガラの濃いめのスープを少し垂らして蓋をして竈に火をおこす。

 

「ニャ、この間に特産タケノコの灰汁抜きと…ドスマツタケを切って軽く炙っておくニャ」

 

 トントントン、と軽快なリズムで食材を切る音とグツリグツリと灰汁抜きで煮られているタケノコの音、パチパチと爆ぜる竈の中の炭の音。トラが釣りの次に好きなひと時が流れていた。

 さて、今トラ作っているのはトラが自分で食べるもの…も、もちろんあるのだが…

 

「おおーい!トラさん!頼まれてたお弁当の箱と…竹水筒!こっちの台の上に置いとくよー!」

「ありがとうございますニャ!」

 

 村の雑貨屋の使いが木で作られた弁当箱と竹でできた水筒をそれぞれ30個ほど置いて行く。トラはこれに今作っているものを詰めて弁当を作ろうとしていた。

 旅の金策と、釣ったけども食べきれなかった魚の処理をするために始めた弁当屋だが、行く先々で好評となっていて売り切れ続出となっている。

 昨日の釣りも自分が食べる分と弁当を作るためのものだったが、新しい一歩を踏み出すハンターの為ならそれはそれ。貯蓄もあったので振舞うことにしたのだ。

 

「…よいしょ…そろそろマツタケとタケノコを入れるニャっと…!」

 

 蓋を開けて切って炙ったドスマツタケと灰汁抜きが完了していい歯ごたえになった特産タケノコを入れて蓋をして鉄釜の下の炭を散らして少し火を弱めてやる。

 

「さて…今の間に大食いマグロの調理だニャ…トロの部分は…均等に分けるかニャ」

 

 大食いマグロの頭をドスン!と切り落とし、腹に長包丁を差し込みマグロを解体していく。

 途中、中トロと大トロを取り分けたそれをサイコロ状に四角く切って氷水が入った桶に浮かべたボウルに移し、赤身はステーキ用に大きく切り分け鉄釜がある竈とは別でフライパンが準備してある台へと移す。

 

 切り分けたステーキ状の赤身にトパトパと醤油を垂らして染み込ませ、その上に乾燥させて粉末状にした薬草と粉々に砕いた怪力の種を合わせた特製のスパイスを軽く振ってから、熱したフライパンで軽く焼くと、辺りにふんわりと香ばしい香りが漂い、近くの人々の腹を鳴らせる。

 

「そろそろニャ…!ここから大急ぎニャァ」

 

 まずは空の弁当箱をずらりと並べると、焼きあがった大食いマグロのステーキを1箱の半分を使って詰めていく。次に鉄釜の蓋を開けて炊きあがった山菜マツタケご飯を横に詰め上側に最後のスぺースを空けてやる。

 

「岩アボカドも色止めのバチバチレモンもよしニャ!いそげいそげニャ!」

 

 ここで、先ほど氷水が入った桶に浮かべたボウルの中のサイコロ状の中トロと大トロにこれまたサイコロ状に切った岩アボカドを加えて醤油と、アクセントの酸味とアボカドの色味が落ちないようにするためのバチバチレモンを絞ってかけ、よく混ぜ合わせる。

 

「ニャッ、ニャッ、ニャッ…ふいー…オッケーニャァ…!」

 

 残ったスぺースに今作ったトロアボカドを入れてやり完成…なのだが、余分な熱を取るために蓋をせず少し置いておく間、先ほどまで鉄釜を置いていた竈に炭を足してやり、火を強める。

 

「今回は……このお味噌かニャァ」

 

 取り出したのは紅蓮味噌。紅蓮石のような赤さの赤味噌で、小さじひとすくいで何人分もの味噌汁が作れてしまうほどの濃厚な味噌で、これと水を空になった鉄釜に入れ、更には切り落とした大食いマグロの頭をそのまま入れてさらに出汁を取る。

 強火でグラグラとひと煮立ちさせた後は竹水筒に注いでこれで完成。そのころには弁当の粗熱も収まっており、いいタイミングで完成させることが出来た。

 

「ニャァ、完成完成…あとは出店する位置まで運んで…」

 

 ユクモ村の村長に許可を得て集会浴場の入り口横に場所に借り、何往復かして弁当を運び込んだ後、用意してもらった屋台の椅子に立ち、呼び込みをする。

 

「いらっしゃいニャー!弁当はいらんかニャー!今日のお昼に、狩りのお供に『釣り猫弁当』はいらんかニャー!」

 

 誰が呼んだか『釣り猫弁当』。いつのまにかその名が定着していたので、トラもそう呼んでいる。

 主な客層はハンターたちで、弁当に使われている食材が滋養強壮に良かったり、以前クロトビのサシミウオにふりかけた怪力の種入りのスパイスなどのように狩りの助けとなる効果があるためである。

 

「…1つくれ」

「あいよニャー!いつもありがとニャー!」

 

 早速全身をティガレックスの装備で固めた色黒でいかつい無表情顔の男が弁当を求める。この男、実はトラがユクモ村で弁当屋を開くときに毎回買いに来る男で、さらに言えば毎回1番手で買いに来るのだ。

 

「今日は大食いマグロのステーキにトロアボカド、ドスマツタケと特産タケノコの山菜ごはんですニャ…あと、お味噌汁もついてますニャ!」

「…分かった、感謝する」

 

 男はトラから弁当と味噌汁の入った竹水筒を受け取って代金渡したあと、足早に去って行った。

 

◆◆◆

 

 レックスハンター視点

 

 …俺はユクモ村を拠点に狩りをするハンター…この生まれながらのいかつい風貌から周囲からは浮くことが多いのが悩みだ。が、今はそんなことはどうでもいい。

 …またこの日がやってきたのだ。『釣り猫』トラが作る弁当が売られるこの日が…!

 

 俺がこの弁当と出会ったのは随分と前…そう、あの時は『お魚ハンバーグ弁当』……いや、失礼。正式名称でなくてはな…リスペクトは大事だ…「おさかニャハンバーグ弁当」の時だった。おろしポン酢ダレもあっさりとしていて、それでいて腹にガツンと来るあの感じがたまらなかった…!

 なによりッ!!!そのハンバーグには耳が付いていた!!!そう!アイルーの耳を模したハンバーグの耳が!!!!可愛すぎるだろ!!!!

 

 …しかしそんな『釣り猫弁当』はいつも手に入るというわけではない。『釣り猫』がここユクモ村に来た時しか食べられないのだ。

 売り切れることもある。だから俺は必ず1番手を掴むのだ。何があったとしてもッ!!!む?狩猟の依頼?後だそんなものッ!!!

 そして今回も1番手。ふむ、今回は大食いマグロか…食いでがありそうだ…!

 

「…1つくれ」

「あいよニャー!いつもありがとニャー!」

 

 ッ!聞いたか!?『いつもありがとニャー!』だぞ!?ふ、ふふふ…いやぁ他のものには分からんだろうな、この優越感は…!『いつも』だぞ?ふふふふふふ…!!

 

「今日は大食いマグロのステーキにトロアボカド、ドスマツタケと特産タケノコの山菜ごはんですニャ…あと、お味噌汁もついてますニャ!」

 

 なにィ!?お味噌汁もついてくるのか!?それでいて値段は以前から変わらないというのか…!?くっ…前回、 

 

「釣り銭は取っておけ」

 

と多めにゼニーを渡したら

 

「それは出来ませんニャ…余ったお金でハンターさん自身の狩りに使う回復薬とかを買うといいニャ!」

 

 …とお断りされたからそれは出来ない…!ならせめて!俺が出来るのは…このお弁当を美味しく食すること…!そして感謝することだ…!

 

「…分かった、感謝する」

 

 その後俺は速足で立ち去った。早く食べたくて仕方がないのだ…!…む?

 

「おい、見ろよ…レックス装備の旦那、笑ってるぜ…」

「ほ、ほんとだ…普段は無表情なのに…こわ…」

「きっと次に狩るモンスターをどう痛めつけるか考えてるんだぜ…」

 

 …聞こえているぞ若者ハンターたちよ。だがそんなことはどうだっていい!早く帰ってこの弁当を…!失敬。お弁当とお味噌汁を堪能しなければならないのだ!!!

 

「ぐふ…ぐふふふふふふ…!!じゅるり…!」

 

 おっとお弁当の事を考えると笑いとよだれが…いかんいかん。

 

「ひえっ…!」

「やべぇよ…!イビルジョーの生まれ変わりって説、ホントなんだ…!」

「い、行こうぜ…俺らも食われちまうかもしれねぇ…!」

 

◆◆◆

 

 

 その後、レックスハンターの家からは、美味さによる咆哮が聞こえたという…。

 





今回のオリジナル食材

『岩アボカド』:岩山などに自生するアボカド。その皮は岩のように固く、食べごろかを判断するには熟練の技術が必要だが、食べごろの中身は絶品でクリーミーな舌触りがやめられないとまらない。

『バチバチレモン』:もぎたてを生で食べると電気が走ったかのような酸っぱさが突き抜けるレモン。新鮮なうちはしばらくしても汁がパチパチと軽く口の中で弾ける。雷を受けたレモンの木が変異してバチバチレモンになったとも、幻獣キリンが電気を注いで作った、など様々な説がある。

『紅蓮味噌』:紅蓮石のように紅い味噌で、とても濃厚なため少しであっても必ず10倍以上薄めての使用が望まれる。味噌汁などを作る際に一緒に入れた他の食材の効能を引き出してくれる為、重度の二日酔いが紅蓮味噌のシジミ味噌汁で朝からの酔い覚ましにも用いる。
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