キミの支えになりたくて   作:飯即斬

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26話 異界

 

柊木side

 

「それでは本日のツアーの資料をお配りいしたしますね」

 

ツアー開始の宣言と共にツアーのガイドであるタキシード姿の男の人が各参加者に資料を配り始めた。

 

「はいどうぞ、はい、どう・・・あれ?」

 

最後に俺が受け取ろうとするがガイドの手にはもう資料は無く、渡そうとしたガイドも困惑しているようだった。忘れたのでは?と尋ねたが、主催者から受け取ったのをそのまま持ってきたので間違いないらしい。

 

「誠に申し訳ありませんが・・・資料はどなたかに見せていただく形でお願い致します」

 

「分かりました。ねぇ、あざみ」

 

「はい?なんですか?」

 

「悪いんだけど、あの女の人に資料の写真を撮らせて貰えるよう頼んでくれない?」

 

「いいですよ!任せてください!」

 

あざみが資料の写真を撮っているとガタイの良い男の人がガイドに話しかけていた

 

「なんか気色悪い紙入ってんねんけど、演出?」

 

「えっ!は、はい!そうでございまーす!おめでとうございます!そちら当たりの紙となっております!」

 

何が入ってたのか分からないけど、絶対知らなかったよなあのガイド、それより・・・

 

「このツアーって過去に行方不明に者出てるって聞いたんやけど、大丈夫なん?」

 

続けて男の人が尋ねた。

 

そう、今回の調査で大事なポイントはそこなんだよな、どうなんです?ガイドさん。

 

「そんなわけございません!あくまで噂!それだけこのツアーがミステリアスという証拠でごさいますよ!」

 

簡単には喋らないか、もしくは何も知らないか、どっちにしろまだ話を聞く余地はありそう、あとで個別に話してみよう。

 

「では!気を取り直して!最初のミステリースポットであるこちらの不忍池でミステリーアトラクションを開始します!この不忍池には次のスポットに関係する4桁の数字が隠されておりますので皆様で協力して探してみてください!」

 

4桁の数字を探せ・・・か、探すついでに他の参加者やガイドさんから話を聞こうかな。それと、今回は3人で参加してることになっているから少なくともあざみとは一緒に行動した方が良さそうだ。

 

「あざみ、一緒に調査しない?その方が怪しまれなさそうだし」

 

他の参加者とは少し離れた所でそう提案した。

 

「はい!喜んで!せんにゅ・・・頑張りましょう!」

 

「アタシ、あざみーがボロ出しそうで心配になってきた」

 

「うん、俺も」

 

 

あざみと一緒に4桁の数字を探しながら他の人達に話を聞くことにしたのでまず最初にガイドさんに話しかけた。ツアーの事が少しでも分かればと思っていたのだか、ツアーの詳細を何も知らない雇われのガイドで主催者とは会ったことも無いらしい。

 

ついでに近くにあったスワンボートを調べた、座席もペダルも錆びていてとても古く感じた。うしろに3と書かれているがこれは違うだろう、一応メモはしておくけど。

 

それにしてもスワンボートか、懐かしいな

 

「スワンボートって結構揺れるよね」

 

「え!?柊木さん乗ったことあるんですか?」

 

「うん、結構昔だけどね」

 

「実は私も乗ったことあるんですよ、でも誰と乗ったのか思い出せなくて・・・」

 

「・・・そっか、まぁ、そのうち思い出すんじゃない?」

 

「そうだといいんですけど・・・あ、あの、柊木さんは一体誰と乗ったんですか?もしかして彼女さん・・・とかですか?」

 

「ん?違う違う、小さい頃に家族と乗ったんだよ」

 

「そ、そうなんですね、ご家族と・・・ヨカッタ」

 

「ん?どうかした?」

 

「な、なんでもないです!そうだ!今度ジャスミンさんも入れて3人で乗りましょうよ!きっと楽しいですよ!」

 

「お!いいねそれ!じゃあ、今度乗りに来ようか」

 

「はい!楽しみです!」

 

・・・・・・問題なしっと、次は猫背のガスマスクを被った人に話を聞こう。

 

 

「こんにちは、失礼ですが山田ガスマスクさんですよね?いつも記事見てますよ」

 

「・・・このままだと喋りづらいのでマスク取りますね・・・ふぅ、それで?本当にいつも見てるの?」

 

「ええ、特に旅館と汚職警官の関係を取り上げた記事は面白かったです」

 

「ふーん、よく分かってるじゃん。あれはボクも特に自信あるんだ」

 

「ですよね!ところで、今日はやっぱり取材に?」

 

「うん、勝手に取材してやろうって思ってね」

 

「やっぱり、行方不明者についてですか?」

 

「うん、でも正直分かんない、そもそも誰を招待しているか分からないからね、でも過去に参加した人に取材することはできたよ」

 

「その人はなんて言っていたんです?」

 

「それがさ、どうも言っていることに信憑性がなくてね、変な時代に迷い込んだとか、この世ではない場所みたいだとか、どうやらちょっと現実ではあり得ない体験をしているみたいでね」

 

「なるほど、今回もそんな現象が起こる可能性が大きいわけですね」

 

「うん、今回は取材した話が本当どうか見極めさせてもらうつもり」

 

ガスマスクさんもまだ行方不明者については殆ど掴めていないみたいだな。

 

よし、2つ目のスワンボートも調べよう。えーと、ボートの番号は8番で他には・・・ん?何か書いてあるな、"5Sきのこ参上!"って書いてある、こんなところに・・・

 

このボートはあらかた調べたし、次はあのオタク風の人に話を聞こう。

 

「こんにちは、お話いいですか?」

 

「はい。悪い時はそう言いましょう」

 

オタク風の格好をした藤原さんはかなりのオカルト好きで今回のツアーを楽しみにしていたそうだ。他の参加者についてもネットを通じて知っていたガスマスクさん以外は初対面だそうだ。

 

続けて話を聞いたのはツアーに集合した際にあざみが話しかけた眼鏡を掛けたロングヘアの女性、木村さんに話を聞いた。あざみの方が何かと聞きやすいと思い今回は任せることにした。

 

「こんにちは、あらためて、福来あざみです!」

 

「あざみちゃんって言うんだ、よろしくね」

 

木村さんがツアーに参加したのはさっきの藤原さんと似たような理由で怪談が好きだから参加したとのこと。

 

そして何より気になったのは木村さんが以前ここで撮った写真に男の顔が写り込んだ写真、木村さんによるとこの池には俯いてぶつぶつ喋る男の幽霊が居て、その幽霊の顔を見ると池に引き摺り込まれる噂があるそう、それを調べるのもツアーに参加した理由らしい。

 

「あざみ、幽霊だってよ、どうする?」

 

「だ、だだだ、大丈夫です、きっと!多分!おそらく!」

 

ダメそうだな、こりゃ。仕方ない、次を調べるかとするか、そう思い歩きだすと木村さんに呼び止められた。

 

「あの、キミ、どこがで会ったことない?」

 

「え?俺ですか?・・・無いと思いますけど?」

 

「そ、そう、ごめんなさい、私の勘違いみたい」

 

「いえいえ、気にしないで下さい」

 

・・・・よし、次を調べるか、あざみが看板を見てるみたいだし行ってみよう。

 

「柊木さん、見てください、看板の支柱に縄が括り付けられています。縄自体には何も繋がっていないみたいですけど」

 

「あっちにもう1台スワンボートがあるけど・・・もしかしたらあのボートが繋がっていたのかもな、あのボート変な所にあるし」

 

「なるほど、あり得ますね!」

 

「うん、近くで見てみようか」

 

最後のボートをよく見てみる、ボートの番号は13番と書いてあり、縄が繋がっていなかった。

 

やはりさっきの所から移動したんだろうな、何でここにあるかは分からないけど、とにかく最後の参加者にも話を聞くとしよう。

 

「こんにちは、お話いいですか?」

 

「あ?俺?別にええけど」

 

ガタイが良く、厳つい見た目をした松田さん、ツアーに参加しているのでそういった類が好きなのかと思えばそうではなく、人気のツアーの招待を蹴るのが勿体なく感じただけらしい。4桁の数字探しも他の参加者達にも興味が無いとのこと。

 

松田さんから聞けそうな話はこのくらいかな、あ、そういえばあざみに影を見てもらうの忘れてたな、早速見てもらおう。

 

あざみに眼鏡を掛けてもらうと2体の影が出できた。

 

1体目は木村さんの近くに出ていた。少し俯いている。

 

「これ、もしかして木村さんが言っていた幽霊じゃないかな?」

 

「こ、この影が・・・確かに男の人に見えますね」

 

「・・・あざみ」

 

「なんですか?」

 

「さっきからその幽霊の顔を見ているけど大丈夫?その幽霊の顔を見た人間は池に引き摺り込まれるって・・・」

 

そう言うとひぇーと声を荒げながら俺の腕を掴んできた。

 

「ひ、ひひひ、柊木さん!こ、これは影なんでノーカンですよね!そうですよね!なんとか言ってください!」

 

「う、うん、あざみが見たのは影だから大丈夫なはずだよ」

 

「ですよね!よかったー!」

 

ふぅ、あざみって結構力強いんだな・・・いやいや、そんなことより次の影も調べなきゃな

 

2体目はさっきの看板の近くに出でいていて、この影も少し俯いて、高いところに何かを書いているようだったので看板を改めて見てるが何もなかった。

 

おかしいな、絶対何かあると思ったんだけど・・・

 

左手をそのまま左頬に当てて考える

 

そもそもあざみが見える影はあくまで過去の出来事を可視化しているもの、つまり今の状況と影が何かを書いた時の状況は違う可能性がある。

 

影の時はあって、今はここに無いものといえば・・・そうか!そういうことか!4桁の数字が書かれているのは看板じゃなくて、ここに元々あった"13番のスワンボートの頭に書かれている"に違いない。うん、きっとそうだ、お!あざみも同じ結論に辿り着いたみたいだし、さっそく調べてみよう。

 

13番のスワンボートの頭を調べるとやはり4桁の数字が並んでいた

 

「柊木さん、見てください!ありましたよ!"0921"って書いてあります!」

 

「・・・うん、そうだね」

 

「どうかしましたか?」

 

「あ、いや、何でもないよ、数字も見つかったことだし、ガイドさんに報告しようか、改めて聞きたいこともあるし」

 

「は、はい」

 

数字を報告するため3番のスワンボートの近くに居るガイドさんの元に向かった。

 

「ガイドさん、4桁の数字分かりましたよ、0921ですよね」

 

「お見事です!その通りでございます!その数字が何なのかは次のスポットで分かる!はずです、多分!」

 

どうしよう、不安になってきた・・・ホントに大丈夫かな?この人、雇われって言ってたけどちゃんと審査したのかな主催者は・・・っと、それより聞きたいことがあるんだった

 

「あの、過去の参加者がツアー中にこの世ではないような場所に迷い込んだって聞いたんですけど、ガイドさんは何か聞いてます?」

 

「過去に何が起きたかは存じ上げませんが・・・変な場所に迷い込んだ際の対応は主催者の方からメールで聞いております。4桁の数字を答えられたら教えろとも言われておりました」

 

「対策ですか・・・」

 

「ええ、数字を当てられたのでお教えしますがそれは"来た道をそのまま戻る"という方法です!」

 

「柊木さん、それって当たり前のことなんじゃ・・・」

 

「ん?まあ、そういう時は無理するなってことでしょ」

 

「そういうもんですかね?」

 

「いざって時はそういう手段が1番効果なんだよ。それはそうと、一旦ジャスミンの所に戻ろうか」

 

「え?あ!そろそろ電話が掛かってきそうですもんね!」

 

「うん、ちょっと皆と離れようか、ガイドさん、ちょっと緊急で大事な話をしないといけなくて少しだけ待っててもらってもいいですか?」

 

「承知いたしました!まだ時間はありますのでごゆっくりどうぞ!」

 

これでよし、お、早速掛かってきたな

 

「ホントいつもタイミングバッチリだな」

 

「もう慣れたろ」

 

「慣れてる自分が怖いよ」

 

ジャスミンとそんなことを話しているとあざみがあのーと声をかけてきた。

 

「どうした?」

 

「いえ、その、センター長さんが今回は柊木さんに特定の作業をサクッとお願いしたいそうです」

 

「え!俺が!」

 

「お!いいじゃん!ラギッチがするの久しぶりに見るよ」

 

「私、初めて見ます!勉強させてもらいます!柊木さん!」

 

「はぁ、分かったよ、あざみ、スマホ貸して」

 

「はい!どうぞ!」

             

あざみからスマホを受け取り彼女の前に立った。

 

「もしもし、変わりました、柊木です」

 

「どうも、柊木さんと特定もたまには悪くないと思いまして、変わってもらいました、彼女に良いところ見せるためにも頑張ってくださいね」

 

「良いところって・・・まあ、分かりましたよ。それにしても今回の特定はなんとも言えないですよ」

 

「ええ、ですがそんな状態から特定するのも我々の役目です」

 

「ですね、サクッといっちゃいますか」

 

「では、早速質問です、このツアーで過去に起きたと言われている怪異めいた噂とはどんな内容でしたか?」

 

SNSでも言及されていたよね

 

「ツアー中に参加者が行方不明者になる噂です」

 

「great!その通りです、次にいきましょう。参加者がツアー中に見たものとはどのようなものだったでしょうか?」

 

ガスマスクさんが言ってたやつだな

 

「この世とは思えない場所を見たそうです」 

 

「excellent!そうでしたね。そして最後の質問です。この世とは思えない場所、そこからこちらに戻ってくる方法とはどのようなものでしょうか?」

 

これはさっきガイドさんが言ってたな

 

「来た道を戻る、です」

 

「brilliant!この状況から考えられる都市伝説は・・・」

 

 

ー特定ー

 

 

「異界です」

 

 

 

異界って過去や未来の世界とかのことだよな、ちょっと行ってみたいな

 

「柊木さん、あなたは今行ってみたいと思いませんでしたか?」

 

「え!いや、そんなことは」

 

「私もですよ、行けるのであれば今すぐにでも・・・」

 

「センター長・・・」

 

「おっと、話が逸れましたね、とにかく、今回の調査の目的はツアーの全容を知ることと、主催者の目的を探る事です。そして何かあった時は来た道を戻る、そのことを意識しつつ調査をお願いします」

 

「はい、分かりました。それでは・・・」

 

電話を切りスマホをあざみに返した。

 

「どう?俺の特定は」

 

「凄かったです!流石柊木さん!」

 

「なんか腕あがってね?」

 

「まあ、1人で調査する時もあるしね、あ、ガイドさんが呼んでる、そろそろ皆のところに戻ろうか」

 

「はい!」「だね!」

 

他の人達はガイドさんの近くに集まっていたので駆け足で戻った。

 

 

過去・・・か、もし戻れるのなら・・・いや、今は調査に集中しよう。

 

 

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